「うっ、ううっ……私もう……あんなことのためにプリキュアの力なんか使わないよ……!」
「えりか……」
「プリキュアになれば何でもできると思ってたけど……責任だって持たなくちゃいけないんだよね……」
「ボクも悪かったです……力とは大事なであると同時に恐ろしいものでもあるです……
それを教えなかったボクにも責任あるです……はっきり言うです。今のえりかにプリキュアの資格、ないです!!」
「返す言葉もないよ……」
「良く頭、冷やして考えるです……」
砂漠の使徒との戦いが終わり、プリキュアの役目は終わった。
プリキュアに変身する能力はまだ残っているが、使い道がない。
災害救助をするか? しかし自衛隊や警察の足手まといになるだけだ。中途半端な力はかえって邪魔になる。
泥棒や強盗を捕まえるか? しかしニュースで事件を知ってからでは遅すぎる。
尖閣諸島や竹島……論外。どこかの魔法少女みたいに、プリキュアの力で中国や韓国の軍隊をぶっ飛ばせと?
結局、プリキュアなんてもう必要ない。
普通の女の子に戻るしかないのだ。
だが、変身する快感、力を使う快感を忘れられない、意志が弱い者もいた。
キュアマリンに変身して、ブルーフォルテウェーブで大掃除を軽々と終わらせるえりか。
あー、スッキリ。こうして正月を迎えるハートキャッチプリキュアたち。
初詣を終えて、家に帰ったえりかは、隣の家の少女が大けがをして、今病院で生死の境をさまよっていると母から聞かされる。
なんでも、キュアマリンという無法者が放った技で、落ちて来た木材に当たって重傷を負ったというのだ。
なんだって!!
大変なことをしてしまった。過失とはいえ、無関係の人を巻き込んでけがをさせてしまったプリキュアなんて前代未聞だ!
マリンはこころの大樹から薬を持って来て、少女は回復した。
意識が戻った少女を、マリン=変身を解いたえりかが見舞う。
病室で、自分はプリキュアのキュアマリンだと明かした。自分の行為を詫びるえりか。
「……でも信じて、私たちの戦いで世界は、ぶっ!!」
次の瞬間、起き上がった少女はえりかの右頬に平手を飛ばしていた。
「あんたなんか、あんたなんか……プリキュアじゃない! 悪魔だよ!」
「……」
「プリキュアのこと好きだったのに……あんたなんか、やられちゃえばいいんだ!! わああああ!!」
少女の泣き声が病室に響いた。えりかは土下座し続けるしかなかった。
その後、えりかは両親から激しく叱責され、ココロパフュームを没収された。
「お前の服を売って、あの子の入院費を立て替えて払いなさい」
「そ、そんな、無理……」
「無理じゃない!! やるんだ!!」
「は、はい……」
つぼみ、いつき、ゆりには絶交された。
「もう顔も見たくないです」
「口もききたくないよ」
「デザイナーごっこもいいでしょう、その前に大人になることね」
こうして、えりかの中学時代、プリキュアの現役時代は不完全燃焼のまま幕を閉じたのだった。
その後えりかは、デザイナーの夢を捨て、普通の高校に進んだ。
そこから三流短大に進み、卒業後は小さな会社で、事務の仕事に就いた。