キュアハッピーこと星空みゆきは苦戦を強いられていた。
自らの心の分身であるバッドエンドハッピーが、予想以上に手強かったからである。
相手は自分と同じ容姿、力を持つ相手である。
しかし繰り出す技には一切の容赦や妥協がない。
普段は戦いながら人々や自然を守るため、無意識のうちに常に手加減していたみゆきと、自分以外の何も気にせず容赦なくぶつかってくるバッドエンドハッピーとでは、攻撃力に差が出ることは明白である。
はじめは互角に見えた勝負も、次第にバッドエンドに染まってゆく……。
「最高にハッピーだよね〜!」
素早く間合いを詰めたバッドエンドハッピーが、みゆきに向かって乱れ撃つようにパンチを放つ。
ショットガンを至近距離で撃たれたように回避することができない。
「くっ……こんなのわたしじゃない!!」
「ううん、私は貴女……いつも隠れてる本当の貴女だよ」
身を固くして必死にブロックするみゆきの腕をすり抜けて、バッドエンドハッピーの鋭い拳がボディにヒットした。
「ぐはっ!……あううっ!」
「あはっ、当たっちゃったね〜! ハッピー♪」
みゆきの腹部に深々と漆黒の拳がめり込む。だが悪意の攻撃はそこで終わらない。
体勢を崩した彼女をあざ笑うかのように、バッドエンドハッピーは身体を密着させたまま何度もパンチを放った。
「ほらほらほらほらぁ♪」
「ぐっ、うぶっ、あ、あ、ああぁっ!」
脱力しかけたみゆきの身体に左腕を絡め、密着した状態から何度も拳を繰り出す。
先程よりもスピードを殺し、一発の重みが増した拳が容赦なくみゆきの体から抵抗力を奪い取ってゆく……。
「もっとボロボロにされたいの? クスッ」
「わたしは……逃げない!」
気丈に振る舞うみゆきだが、その身体にはすでに限界を迎えつつあった。
バッドエンドハッピーが拳を叩きつける度に、バッドエナジーがみゆきの身体に蓄積されてゆく。
そんなことも知らぬまま、宙に浮いたままの状態でみゆきは耐え続ける。
そのダメージをうまく逃すこともできずひたすら耐え続ける。
(き、気合だ気合だ! 耐えるんだ……この攻撃に耐えて反撃するんだ……!)
連続的に襲い掛かってくる痛みに、あらためて歯を食いしばろうとした時、不意に身体が軽くなった。
「えっ……」
バッドエンドハッピーの攻撃が不意に止んだ。
「ふふっ、貴女って実力はなくても根性だけはあるもんね? じゃあこういうのはどうかな?」
目の前ではバッドエンドハッピーが不敵な笑みを浮べている。
そして先ほどとは違って優しくみゆきを抱きしめてきた。
「ちょっ……な、なにを……!」
「全部抱きしめてあげる。バッドエンドシャワー!!」
みゆきの背中に回されたバッドエンドハッピーの両腕が、彼女をきつく抱きしめた。
そして密着した状態でバッドエナジーが開放された。
「きゃああああああああああああ!!」
人々の憎悪や、ネガティブな感情が濃縮された邪悪な力がキュアハッピーの身体を蝕んでゆく……。
「は、離して! あああぁぁぁぁ!!」
「きゃはっ、逃げないよね? 逃げないんだよねぇぇ?」
バッドエンドハッピーは更に拘束する力を強めた。
みゆきは必死で逃れようとするが、たっぷり痛めつけられた身体では充分な力を発揮できない。
二人の体の間で渦巻くバッドエナジーが、まるで球体のように膨れ上がってゆく……。
――そして数十秒後。
「ごめんね? 手加減できないからもうボロボロだよね?」
バッドエンドハッピーは、自らの腕の中ですっかり脱力したみゆきを眺めていた。
「う、ううぅぅ……そんな……」
「あははっ、その絶望に染まっていく目……感じてきちゃう……」
嗜虐に満ちた邪悪な瞳には、自らの分身であるみゆきの痛々しい姿が映っている。
手足の先までバッドエナジーを流しこんだから、しばらくは身動きがとれないはずである。
「いつもウルトラハッピーを探してる貴女が、最後にたどり着いたのがここだよ? ほら見て……」
みゆきは顔を上げてバッドエンドハッピーが見上げた先を見る。
「みんな……」
見上げた先にはまるでテレビ画面のように4つのビジョンが浮かび上がっていた。
そこには離れ離れにされた4人の仲間が打ちのめされた姿が映し出されていた。
バッドエンドサニーの地獄の炎に焼きつくされるキュアサニー。
バッドエンドピースに翻弄されるキュアピース。
バッドエンドマーチに蹂躙されるキュアマーチ。
バッドエンドビューティーに見下されるキュアビューティー……。
ひと目で分かるほど全員が窮地に立たされている。
(みんなを助けなきゃ……早く……!)
それでもみゆきは我が身の心配よりも、仲間を優先しようとした。
バッドエンドハッピーはその様子を見て、小さく笑う。
「いいこと教えてあげる」
「……えっ」
「私をもっとハッピーにしてくれたら、みんなの元にいかせてあげる」
無邪気で、そして邪悪なほほ笑みを浮かべるバッドエンドハッピー。
今のみゆきに対してどんな言葉を投げかければ彼女が食いついてくるか……分身であるバッドエンドハッピーは当然のように知り尽くしている。
みゆきはその偽りの笑顔に対して、素直に反応してしまう。
「ど、どうすればいいの? あなたはどうすればハッピーになれるの!?」
「うふふっ、それはね………………んちゅっ♪」
予定通り餌に食いついてきた獲物に対して、バッドエンドハッピーは静かに微笑みながら、優しく唇を重ねた。
「んんぅっ!?」
「ふふふふふ♪」
突然の出来事にみゆきは反応できない。
ねっとりと唇を舐められ、トロリとした液体を流し込まれ、口の中を弄ばれる。
ピチャピチャと響く淫らな音に意識が混濁していく……。
「はふ……」
「キスだけで夢中になっちゃうんだ?」
耳元に響く自分の声に意識を取り戻す。
「はっ! きゃ、きゃあぁっ!」
「わかった? 貴女と一つになれたら、私はそれが一番ハッピーだよ」
慌てふためくみゆきの唇を、バッドエンドハッピーが再び奪う。
今度は貪るように、体中をくねらせ、こすり合わせながら……。
(わ、わたし……自分とキスしてる…………!)
みゆきは混乱しながらも現状を認識しようとした。
キュアハッピーとして相手を倒さねばならないのに、甘い痺れが正常な思考を濁らせる。
「あ、ああぁぁ……こんなことしてる場合じゃないのに!」
「うん?私をハッピーにしてくれるんでしょう? 貴女はそういう性格だもの」
バッドエンドハッピーの手が、みゆきの背中を優しく撫で回す。
「ひゃっ……そんなとこ……なんで……あはあぁぁ!」
「貴女が気持ちよくなってくれると、私も一緒に気持ちよくなれるんだよ」
なめらかにうごめく手が、背中からお尻……さらには太腿を撫で回す。
(そこはわたしの感じやすいトコロ……なのおおぉぉ!!)
そして太腿に伸びた腕が、みゆきの一番感じてしまう場所に辿り着こうとしていた。
恍惚とした表情を浮かべるみゆきに向かってバッドエンドハッピーが口を開く。
「もっと素直になってくれたらハッピーなんだけどな?」
「そ、そうな……の……?」
「うん、そうだよ。貴女の目から希望の光が消えて、ゆっくりと快楽に染まっていくとね……私はとても満たされるの」
「!!」
「だからもう諦めちゃいなよ? バッドエンドに染まっていく世界のことよりも、私の指先をじっくり感じて?」
バッドエンドハッピーの黒い指先が、みゆきの秘所をそっとなぞる……。
「きゃうんっ!」
「ふふふ♪」
更に指先は奥に進み、スパッツの上から感じやすい部分だけをあぶり出すように弄ぶ。
「ああぁ、だめ……そこは触らないでぇぇぇ」
「ふふっ、かわいい。やめるわけ無いでしょう?」
あっさりと願いを却下され、軽く絶望したみゆきのクリトリスをバッドエンドハッピーは強めに擦り上げた。
「はあぁぁん!」
ビクンと大きくのけぞるみゆきを、バッドエンドハッピーがしっかりと抱きしめる。
「貴方も随分ハッピーになってきたんじゃない?」
「そんなこと……ないもん……」
「嘘。こんなにしてるじゃない」
「言わないでぇぇぇ!!」
太ももの内側から忍び込んだ指は、すでにみゆきの秘所からしたたる粘液まみれになっていた。
それをわざと見せつけるようにしながら、バッドエンドハッピーはみゆきの目の前でクチョクチョと音を立てる。
「ふふっ、もっと素直にならないといけないよ?」
「いやああああぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりの恥ずかしさに激しく顔を左右に振るみゆき。
その様子を見ながらバッドエンドハッピーは淫らな笑みを浮かべた。
「もっといいことしてアゲるぅ……」
バッドエンドハッピーの背中から、大きな黒い翼が現れた。
そしてまるで天使の翼のように、ふわりとみゆきの身体を包み込む……。
「ほら、気持ちいいでしょう。バッドエナジーに包まれて」
「ああぁぁ……なにこれぇ……」
希望の光を包み込むように、漆黒の翼がみゆきの全身を覆い尽くした。
その中でバッドエンドハッピーは先程よりも激しく彼女を愛撫し始めた。
「ダ、ダメ……だよ……そんなとこ、触っちゃダメェェ!!」
みゆきは必死で抵抗する。自らの心が快楽に負けぬよう、声を上げ続ける。
「私は貴女と一つになりたいの。そのためにはこうやって『繭』になる必要があるの」
「ま……ゆ…………?」
「そうだよ、この中で私と貴女はひとつになるの」
バッドエンドハッピーが言うとおり、それは「繭」であった。
生暖かい繭の中で、彼女はみゆきの身体を取り込もうとしていた。
「ほら、もっと溶けなさい」
黒い指先がクリトリスを押しつぶし、みゆきの身体を内側から乱す。
「ひゃああぁぁ、なにこれ……すごい……」
「体中をむき出しにされて、優しく撫でられたらハッピーでしょう?」
黒い翼によって逃げ場を失ったみゆきの身体を、バッドエンドハッピーが丹念に舐めまわす。
小さな蕾みたいな唇や、整った耳、ほっそりした首筋から脇の下にかけても味わい尽くす。
「う、あ……はああぁ……ん」
「すごくいい顔するんだね、キュアハッピー。それが本当の貴女の顔よ……」
バッドエンドハッピーは、更にピンク色の乳首を軽く噛み締めながら指先で転がす。
みゆきの身体が仰け反り、秘所から愛液が弾け飛ぶ!
「ああぁぁぁっ! こんなのいやぁ……!」
「なぜ拒むの? 私と一つになってくれるんでしょう?」
心に絡みつくようなバッドエンドハッピーの声を、みゆきは必死の思いで振り切ろうとする。
「やっぱりダメ! わたしは……わたしは!」
「もう手遅れだよ?」
「えっ」
「他の四人も貴女と同じように『繭』にされてしまったわ。見てごらん……」
バッドエンドハッピーに促され、再び宙を見上げるみゆき。
その希望の瞳に映ったものは――
「なっ……!?」
みゆきの目に入ったのは4つの黒い繭だった。そこには仲間たちの姿はない。
全てが闇に覆い尽くされたようなビジョンが映しだされていた……。
「わかったでしょ? 無敵のプリキュアたちも、甘美な快楽には勝てなかったってコト」
「嘘だよ! わたし絶対信じない!!」
健気に抵抗する様子を見せるみゆきの身体を、バッドエンドハッピーが優しく抱きしめる。
「クスッ、じゃあ貴女がイくところからみんなに見てもらおうね?」
「えっ……」
次の瞬間、みゆきの身体は完全に裸にされてしまった。
バッドエンドハッピーが生み出した黒い翼に吸収されてしまったように。
「実はね、貴女にハッピーなお知らせがあるんだ」
怯えるみゆきに向かって、バッドエンドハッピーは続ける。
「この『繭』の中で起こっていることは、さっきから他の四人に伝わっているわ」
「!!」
みゆきは瞬間的に悟った。
バッドエンドハッピーのキスや愛撫によって、無防備にされた自分の心を仲間に見られていたことを。
「う、うそだ……そんなの、やだ……やめて!」
「嘘じゃないし、もう終わったことだもん。貴女の仲間はね、リーダーのハッピーが可愛く悶える姿を見て、簡単に心が折れちゃったの」
ポロポロと大粒の涙をこぼすみゆきの目に、バッドエンドハッピーが軽くキスをする。
こぼした涙が瞬時に乾き、代わりにジワリとした快感が流し込まれる。
「み、みんな……ごめん……」
みゆきがガクリとうなだれた瞬間、バッドエンドハッピーの身体に一段と黒い力が満ち溢れた。
「ほら、とうとう貴女も心が折れちゃったね? クスクスッ」
すっかり抵抗しなくなった自らの分身……みゆきの身体を、バッドエンドハッピーは両手で撫で回す。
もはや心の支えを失ったみゆきは、バッドエンドハッピーの愛撫を素直に受け入れていた。
自らの性感帯を知り尽くしている指先の動きに、恥ずかしげもなく喘ぎ、歓喜の声を上げる。
「いっぱい楽しもう? 私と一つになって、私の世界をハッピーにしよう?」
バッドエンドハッピーは、みゆきの絶望によって増大したバッドエナジーを右手の人差指に集中させた。
「体の中から黒く染めてあげる……」
黒い人差し指が、すっかり快楽で火照ったみゆきの膣内を押し広げてゆく。
「ああぁぁぁっ、指……そんなに突き刺しちゃダメェェェ!!」
淡い抵抗を無視して、バッドエナジーをたっぷり乗せた指先がゆっくりと、そして確実にみゆきの膣奥へと突き進んでいく。
そして一番深い部分にズブズブと指が沈んでから、バッドエンドハッピーはみゆきに嬉しそうに笑いかけた。
「じゃあ最高にハッピーにしてあげる……いくよ? バッドエンドシャワー!」
「ひっ…………あ、あはあああ、イ、イっちゃぁ、わたし、もうダメッ、こんなあああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」
凝縮されたバッドエナジーが、瞬時にみゆきの体を貫く。
髪の毛の先から爪先まで、黒い欲望が一気に駆け巡った。
みゆきの身体には今までで一番の刺激が流し込まれ、細身の体が何度もビクビクと跳ね上がった。
「あああぁぁぁっ、わたし……身体……ああぁぁ」
みゆきの身体が、彼女の意識から離れていく。
バッドエンドハッピーがもたらす快感に流され、我慢できなくなった清純な身体がゆっくりと黒く染まっていく。
「そうだよ、もう溶けはじめてるの。貴女の心も体も、記憶も全部私のものなるんだよ……」
「いやだよ! そんなのっ……」
「ううん、これは貴女が選んだことだもの。私と一つになってくれるんだもんね?」
バッドエンドハッピーの指先が、みゆきの膣内でクルクル回る度に意識が遠くなってゆく。
極上の快感と引き換えに、みゆきは自らの身体を悪の色に染めてゆく…………。
――数時間後。
黒い繭が破れて、中から新たなプリキュアが生まれた。
その瞳に、邪悪な幸せを宿して。
(了)