「ビューティさん…じゃなかった、もう《ただの》青木れいかさんでしたね」
「ただのとはなんですか、相変わらず失礼な方ですね」
弓道場で生徒会会長、青木れいかはため息をつく。
その隣には奇抜な恰好をした道化師がひとり。
「だぁって、もうプリキュアやめちゃったんですから、ただの女の子でしょう?」
道化師はわざと大げさにおどけた動作をしてみせる。
「私たちがプリキュアをやめたということは、世界が平和になったということ。結構なことです。」
そう言ってほほ笑むれいかに、道化師は面白くなさそうにふぅん、と返す。
「しかしジョーカー、何故貴方は消えなかったのです?」
ピエーロは浄化されたというのに、とつけたし、返答を促す。
道化師、ジョーカーはにたりと笑うと、自身の顔をぐぐっとれいかに近づける。
「どうしてだと思います?」
「わからないから聞いているのです」
ジョーカーの長い指が、れいかの眉間のしわをぐりぐり、とのばす。
「それは…れいかさんの愛の力でぇっす!」
ババーン、と手を広げにっこりするジョーカーに、れいかは怪訝そうに再び眉をひそめる。
「…何の話ですか、何の」
「やだなぁ、ピエーロ様がキュアハッピーに浄化されるとき、ボクのこと考えてくれてたじゃないですか」
「なっ、どうしてそんなことがわかるのですか!」
あからさまに動揺してしまったれいかは、慌てて道着の裾を整える。
「だからぁ、愛の力、ですよ」
ぺろり、と舌を出してそう言ってのけるジョーカーは、いつも通りで、
そんな彼に、れいかはなんとなく面白くないと思った。
「よく分かりませんが、どうにかして貴方が助かったのは理解しました。
しかし、何故ここに?」
ピエーロとの最後の戦いから数か月後。
放課後いつものように弓道に励むれいかの元に、ジョーカーはひょっこり現れた。
「ピエーロ様がいなくなってしまった以上、ボクの目的もなくなってしまいました。
ボクの”道”はなくなってしまったんですよねぇ」
「”道”は貴方の後ろにできるのですよ、ジョーカー」
そうか、この人は何をしたらいいのか分からずにいるのか。
以前の私のように。
あのときの、私のように。
急にジョーカーが人間らしく見えてきて、思わずふふ、と笑ってしまった。
そんなれいかに今度はジョーカーが眉をひそめる。
「ご自分がしたいことをすれば良いのです」
「ボクのしたいこと、ねぇ…」
暫く首をひねりうんうん唸っていたジョーカーが、ぱっと顔を上げた。
「ありました。ボクの、したいこと」
「まぁ、何ですか?」
ジョーカーはゆっくり立ち上がり、正座するれいかの後ろに移動する。
頭に?を浮かべるれいかを横目で見ながら、ジョーカーはれいかの髪をひとすくい手に取り、
ぺろりと舐めた。
「ジョーカー!?」
慌てたれいかは振り向いて後ずさるが、直後ジョーカーに手を取られた。
冗談はやめなさい、と言おうとしてジョーカーの顔を見たれいかは怯んだ。
いつもおどけて、表情がわからない彼の目が笑っていない。
少し怖さすら感じる。
れいかはいつになく真面目な彼の表情に息をのむ。
「ボクのしたいことは…君を」
れいか自身の鼓動と、混乱する思考に邪魔され、そのあとの言葉は聞き取れなかった。
代わりに彼から与えられたのは、熱いくちづけ。
ジョーカーの長い舌がれいかの柔らかい唇を割り、ぬるりと侵入する。
散々口内をまさぐられ、蹂躙される。
歯列を裏側からなぞられ、れいかの身体がびくりと跳ねる。
知らなかった快感にぞくぞくと震える。
(ダメ、私、こんな、おかしくなってしまう…)
力を振り絞りジョーカーの胸板を押す。
ジョーカーはそんな彼女の様子を見て、満足そうに唇を解放した。
「ジョーカー…いきなり何をするのですか…」
上気した頬、はぁはぁと乱れた呼吸、年端もいかない少女が醸し出すには
あまりに扇情的な情景に、ジョーカーは何度か瞬きをする。
(軽くからかうだけのつもりだったのに)
そう、頭の中で言い訳をしながら、ジョーカーはれいかに再び手を伸ばす。
れいかは一瞬強張ったが、素直に手を取られ、そのまま優しく倒された。
額に、頬に、首に、順々に唇を寄せられる。
道着をはだけさせられ、鎖骨と桜色のかわいらしい膨らみが露わになる。
ごく、とジョーカーの喉が鳴った気がした。
綺麗な鎖骨に沿って舌が這い、途中、音を立てて肌を吸われる。
「んっ」
れいかは未知の快感に戸惑いながらも、溺れていく。
ぎこちなく先端の突起に触れるジョーカーの指はひんやりと冷たい。
上気したれいかの身体には心地よく、はぁっとため息が出る。
「れいかさん、見てください。れいかさんのここ、こんなに膨らんで…」
「言わ、ないで…っくださ、あ、ぁっ」
はむ、と突起を口に含み、転がしたり押し付けたり、その感触を楽しむジョーカーを見て、れいかは何故か心が温かくなる。
同時に気分が高揚し、舌で弾かれるのに合わせ身体がビクリと反応する。
なんてはしたない、と思いながらも次々に与えられる快感に抗えない。
彼のしなやかな指が自分の頬を撫でている。
彼の長くぬらりと光る舌が自分の膨らみかけた乳房を這っている。
彼の仮面の奥の眼が自分のだらしない顔を舐め回すように捕えている。
彼は今、私だけを見ている。
それがたまらなく、嬉しい。
左手でれいかの敏感な膨らみを揉みしだきながら、
ジョーカーの頭は徐々に下へ下へと下がっていく。
器用に右手のみでショーツをずらし、まだ毛の生えそろわない秘所へ顔を埋めた。
「やっ!? じ、ジョーカー!そんなところっ」
れいかにとって突拍子もない行為に、足をじたばたさせ抵抗するが、あっけなくジョーカーの手によって押さえつけられる。
「ふふ、ちゃあんと感じてくれてたんですね、れいかさん」
そう言って、とろとろ流れる愛液をじゅるりと音を立てて啜ると、
れいかは身体に電撃が走るような快感に飲み込まれた。
「…っ、ぁ、はっ……、っ!?」
「感じすぎて声もでないれいかさん、可愛い」
ねとり、じゅぷ、くちゅりとわざと大きな音を立てて嘗め回していると、
ひときわ大きくれいかの身体がのけ反った。
びく、びく、とやまない痙攣にれいかは自分の体を抱きしめて抑えようとする。
「イっちゃったんですね」
「いく…? どこへ、です?」
嬉しそうに舌なめずりをするジョーカーに、
れいかは先ほどの余韻にとろんとしながら真面目に聞き返す。
そんなれいかの頬にジョーカーはキスをひとつしてから、
はち切れんばかりの服を脱ぎ、自身を取り出した。
「れいかさんがあまりにいやらしくて、こんなになっちゃいました」
ふふふ、と笑って、横たわるれいかに見せつけるように、
わざわざ膝立ちになってみせる。
そしてぐったりしているれいかの膝を割り、自身をれいかの愛液で濡らす。
(ああ、ジョーカーが、私の中へ…)
れいかがそう覚悟したとき、ジョーカーの動きが止まった。
「…何故、抵抗しないのです?」
悲しそうな、楽しそうな、どちらともつかない表情でジョーカーが尋ねる。
そんな彼の様子に、困った顔をしながられいかは首を傾げる。
「…さぁ、何故でしょう。私にも分かりません」
れいかはジョーカーの手を取り、指を絡めた。
「でも…抵抗したら、また貴方がいなくなってしまう気がしたのかもしれません」
(二度も貴方を失うなんて)
確かにピエーロ消滅の時、れいかはジョーカーのことを考えた。
皆が命を賭けて頑張ってる時に自分は何を考えているのかと、すぐに振り切ったけれど。
それでもふと気づけば彼のことを考えている自分がいて、その度に弓道で心を落ち着けてきた。
そんな折、彼はひょっこり戻ってきた。
もう、あんなことを繰り返したくはない。
これからはキュアビューティとしてではなく、青木れいかとして彼と向き合いたい。
だから
「私はもう、ただの青木れいかなんです」
おわり