「ん……」  
目が覚めたときには、カーテンの隙間から、明るい光が差し込んできていた。  
「朝……?」  
ぼやついた頭で、昨日のことを思い出す。  
「お兄ちゃん……」  
もう、お兄ちゃんはここにはいなかった。  
「夢……じゃないよね」  
その証拠に、シーツには昨日の行為の後が染み付いている。  
それと同時に、痛みもよみがえってくる。  
「なんだか、変な感じ……」  
お兄ちゃんとの行為よりも、体にある違和感のほうが大きかった。  
その痛みで、意識がはっきりとしてくる。  
「今、何時!?」  
10時30分。  
「うそ……」  
時計を見て呆然とした。  
だけど、今の私には、呆然としている時間ももったいない。  
「うそ、うそーっ!」  
慌ててベッドから飛び起きて、バスルームにむかう。  
サァァ……  
「ふえぇぇぇ……」  
落ち着いて、落ち着いて、私!  
今から支度して30分、学校まで全力で30分……1時間!  
試合が延びていれば、ギリギリ間に合うかもしれない!  
「うわぁぁん、咲と会うのに、こんな髪型じゃイヤ〜……」  
髪を乾かしながら、自分の失敗を嘆く。  
髪型をがんばっても、あんまり意味ないんだけど。  
「チョッピ、ゴメンね! 鞄の中に入ってて!」  
「なにを慌ててるチョピ?」  
服も適当につかんで、何の差し入れも用意できないまま家を飛び出る。  
「あーもぉ、サイアクだよ〜……」  
学校に向かいながら、服はアレが良かったとか、飲み物用意しておけばよかったとか、そんなことばっかり考える。  
じ、自転車ほしいっ……!  
「ハァッ、ハァ……!」  
ようやく学校に着いた。でも、なんだかすごく静か……。  
も、もしかして、もう試合終わっちゃったりしてない……よね?  
「あれ、舞」  
「仁美! 優子! な、なんで制服なの?」  
「なんでって……今から帰るところだから」  
「試合は!? 試合はどうなったの?」  
「ん……それがね〜……」  
「うん……」  
なんだか言いごもる二人。  
も、もしかして……ホントに終わっちゃったの!?  
「ご、ゴメン、私今日、寝坊しちゃって……結果だけでも知りたいなって」  
「うん……でも、今日は来なくて良かったかも」  
「結果は21対0。3回でコールドゲーム負け」  
「に、にじゅう……!」  
なにそれ!?  
 
「こ、コールドゲームってなに?」  
「点差がつきすぎて、途中でゲームを終わらせること」  
「相手の学校も、攻撃に疲れちゃって、先生たちと審判で話し合ったの」  
「なんで!? なんでそんなことに……」  
「咲が初回から大乱調でね、一回だけで10点も取られちゃったの」  
「調子悪いときもあるから、元気出してって言ったんだけどね〜……」  
咲が……確かに、昨日からずっと元気なかったけど……。  
「そ、それで咲は今どこに?」  
「部室に一人で残ってるみたいよ。帰りも誘ったんだけど……」  
「先生も、今日はもうみんな帰っていいって。怒ってはなかったけど、咲がものすごくヘコんじゃってて……」  
「私たちも残ってるって言ったんだけど、一人にしてほしいって言うから、みんなも帰ることにしたの」  
咲……ホントに、なにがあったんだろう。  
「わ、私、ちょっと行って来るね!」  
「うん! 舞が来てくれたら元気出るかもね!」  
「ゴメンね、舞! 咲のことよろしくね〜!」  
ここに来るまで全力で走ってきて、疲れてたのも忘れてソフトボール部の部室に急ぐ。  
「咲……」  
コンコン  
ドアをノックしても、返事はなし。  
どうしよう……勝手に入っちゃっていいのかな……。  
えいっ! いっちゃえ!  
「咲! いるの?」  
「え……?」  
部室の中はガランとしていて、ユニフォーム姿の咲だけが残っていた。  
「舞……どうしたの?」  
なんとか笑ってみせようとする咲だけど、ウサギさんみたいに目が真っ赤になってる。  
「うん……応援に来たんだけど、試合が終わっちゃってて……」  
「そっかぁ……あのね、今日は負けちゃって……」  
「結果は聞いたよ。咲、どうしたの?」  
「え、なにが?」  
「なにがじゃないよ〜!」  
「あはは、ゴメンゴメン、昨日から調子悪いんだ」  
咲はから元気みたいに笑ってみせた。  
その強がりが、なんだか寂しく感じる。  
「ただ、調子が悪いだけじゃないでしょ? そのくらい、私だってわかるよ」  
「そんなことないよ! 私だって、不調なときだってあるもん!」  
咲がめずらしくムキになる。  
思わず、私も感情的になってきてしまった。  
「だって、昨日私の家に来てから元気なくなったもん! 私たち友達でしょ? 話してくれたっていいじゃない!」  
自分で言っておいて「友達」って言葉にズキンときた。  
「そ、そんなの、話せることと話せないことがあるよ!」  
「やっぱり、私の家に来たことが原因じゃない! それでこんなに咲が落ち込んでたら、気になるよ!」  
「舞のせいじゃないってば! そういうのじゃないの!」  
「じゃあ、どういうの!?」  
「うっ……」  
急に咲の目に涙がたまってきた。  
 
「さ、咲……?」  
「うん……ゴメンね、舞……ホントは、私が悪いんだぁ」  
「咲……ど、どうしたの?」  
咲の目から、一筋の涙が頬を伝っていく。  
「昨日ね、舞の家に行ったとき……私、ちょっといなくなったよね?」  
「うん……」  
「あのときね、トイレに行こうとして、たまたま舞のお兄さんに会ったんだ」  
「お兄ちゃんに?」  
そういえば、戻ってくるのが遅かった気がする。  
「うん……あのとき『明日からしばらくお兄さんに会えないんだ』って思っちゃって……」  
「うん」  
「『好きです、付き合ってください!』って告白しちゃったの!」  
「ええ〜っ!!!」  
咲がお兄ちゃんに!?  
ぜ、全然気がつかなかった……。  
「ゴメンね、こんな大事なこと黙ってて」  
「そ、それで?」  
「うん……『僕には好きな人がいるんだ』ってフラれちゃったよ」  
「そ、そうなんだ……」  
ご、ゴメンね、咲……。その好きな人って、私……。  
「それで、ショックでしばらく立ち直れなくて……しかも、舞にも話せなくて……」  
「うん、うん……」  
「家に帰る途中も、舞のこと裏切っちゃったってずっと思ってて……舞にも迷惑かかるのに……」  
「そ、そんなことないよ! 裏切ったなんて言わないで!」  
「何度も電話しようと思ったけど、明日試合が終わったら話そうって逃げちゃって……だけど、結局試合も負けちゃって……」  
「咲……」  
「試合だって、みんなにはぜんぜん関係ないのに、私が一人でチームの和を乱しちゃって……最低だよ」  
咲はぽろぽろと涙を落とし始めた。  
咲……そんなことがあったなんて……。  
落ち込む咲に、なんて声をかけたらいいのかわからない。  
もう……お兄ちゃんのバカッ……!  
「舞……ゴメンね、黙ってて、本当にゴメン!」  
「そんなに謝らないで……私はいつもの元気な咲が……」  
そう、私は咲のことが……。  
「ううっ、うえっ、えっ……」  
好きな人に告白するのが、すごく勇気がいることだっていうのは、すっごくわかる。  
しかも、フラれちゃったなんて……。咲……すごくがんばったんだね。  
そんな咲を見て、胸がキュンとなった。  
「咲」  
「え?」  
ぐいっ  
咲の顔をつかんで、私のほうをむけさせる。  
「舞?」  
「んっ」  
そのまま、咲の唇に口づけをした。  
 
「えっ?」  
咲の目が点になる。  
「えっ……」  
咲の唇は、すごく柔らかかった。  
「ええ〜〜〜っ!!!」  
「ご、ゴメンね、でも私……」  
私も、咲と同じ立場に立たなくちゃ。  
「私、咲のことが好きっ!」  
外に聞こえるとか、何も考えないで大きな声を出してしまった。  
「す、好き……?」  
「うん」  
咲の目はしばらく点から戻らなかった。  
「そ、そりゃあ、私も舞のことは好きだけど……」  
「付き合って」  
「えええ〜〜〜っ!!!」  
咲のリアクションが大きくなった。  
よかった、いつもの咲だ。  
「私、ずっと咲のこと好きだったよ。友達としてもだけど、ずっと好きだったもん」  
「そ、そりは……」  
咲の顔が青ざめてるんじゃなくて、赤くなってくれていたのが、せめてもの救い。  
「わ、私ってば、確かにがさつで男っぽく見えるけど、女の子なりよ?」  
「もう〜! そんなこと知ってるよ〜!」  
「そ、そうそう! 咲ちゃんは女の子なり〜!」  
「知ってるってば〜!」  
もうっ……咲ってば!  
でも……そういうところが好きなんだけど。  
「だから一人で落ち込まないで!」  
「えっ?」  
「私だって、たった今フラれたんだから!」  
「あ……」  
お兄ちゃんのことが好きなのは気づいてたけど、付き合ってほしいなんて知らなかった。  
だから、悲しいのは同じ。  
「だから、泣かないで……元気出してっ!」  
「うん……ありがと!」  
ようやく、咲に笑顔が戻った。  
私はやっぱり、笑ってる咲が好き。  
だから、これでよかったんだと思う。  
やっぱり悲しいし、これからのことを考えると辛いけど……。  
「だけど、なおさらゴメンね。舞のお兄さんに付き合ってって私が言って、しかも舞が私のこと好きで……あれ?」  
「え?」  
「あ、あれ……? よくわかんないや」  
「咲……」  
咲は、私の気持ちに気持ち悪がったりせずに、ちゃんと正面から向かい合ってくれてる。  
咲はすごく優しいっていうのが、改めてわかった。  
 
「あはは、ダメだね、私ー」  
「咲……」  
ダメ、もう我慢できない。  
これ以上やったら、嫌われちゃうってわかってるのに……!  
ギュッ  
「ふえ?」  
咲を抱きしめてしまった。  
「ま、舞、ダメだよー、舞は私服なのに、私ってば、泥に汗だらけなんだから!」  
「お、お願い……もう少しだけ、このままで……」  
「舞……」  
咲を抱きしめる腕に力がこもる。  
咲は、私の腕に手を重ねた。  
「うん、ありがと……なんだか、すごく安心する」  
その一言で、咲を好きでよかったと思えた。  
思わず、涙がこぼれてくる。  
「あははっ、舞だって泣いてるじゃん」  
「いいのっ」  
ごしごしごし  
「よくないよ、人に泣くなって言ったくせに〜」  
「じゃ、じゃあ、キスしてくれたら泣き止む」  
「へ?」  
またわがまま言ってしまった。  
嫌われちゃうってわかってるのに、甘えちゃダメだってわかってるのに、どうしても期待してしまう。  
「そっか。私もさっきキスしたら泣き止んだもんね」  
「…………」  
「んっ」  
咲は目を閉じた。  
「一回も二回も同じだもん。キスしよっ」  
「咲……」  
ドキドキしながら、咲の唇に顔を寄せる。  
「ん……」  
咲と、2回目のキスを交わす。  
「あはは、けっこう恥ずかしいね」  
「う、うん……」  
「あ、でも、2回目って言っても、1回目は私のファーストキスだよ? も〜、舞ってば!」  
咲のファースト……。  
その言葉で、とうとう私の中のなにかがキレた。  
どさっ  
「わっ」  
その場で咲を押し倒す。  
「ま、舞……?」  
「な、何……?」  
「さ、さすがにこれはまずいんじゃないかなぁって……」  
「だ、だってしたいんだもん……!」  
押し倒した咲の上に乗って、体を重ねる。  
 
「あはは、あははっ……ま、舞、落ち着いて、どうどう……」  
「さ、咲のこと気持ちよくするから……!」  
「き、気持ちいいってなに!?」  
私の手が咲の頬に伸びる。  
「な、なに? なんなりか? 咲ちゃんよくわかんない〜! だ、だから、ちょっと待って、ちょっと待って、舞……」  
するっ  
「んっ」  
私の手が咲の首筋に触れると、咲がかすかに息を漏らした。  
「舞ってばぁ……」  
さわ……さわ……  
「んっ、んっ」  
昨日お兄ちゃんがしてくれたように、咲の首筋をくすぐっていく。  
「ま、舞……恥ずかしいよ……」  
「わ、私も恥ずかしい……」  
「そ、そう……じゃあ仕方ないね」  
咲が諦めたように目を閉じる。  
「って、仕方なくないよー! 恥ずかしいならやめようっ!」  
「や、やだ!」  
咲に抱きついて、首筋に口をつけた。  
「だ、ダメだよ! ホントに私、まだシャワーも浴びてないんだから!」  
「咲の体で、汚いところなんかないよ」  
ぺろ……  
「んっ」  
咲の体が震える。  
咲の言う通り、その体は少し汗の味がした。  
だけど、それが咲の体だと思うと、本心から世界で一番綺麗なものだと思えた。  
ぺろぺろ……  
「んっ、んんっ」  
咲の体がもぞもぞと動く。  
咲は首筋が弱いみたいだった。  
ぺろぺろぺろぺろ  
「んんっ、んっ、はぁっ」  
咲の顔がどんどん甘くなっていく。  
ちゅうっ、ぺろん、ぺろぺろっ  
「あ……ま、舞……なんだか、くすぐったいよぉ……」  
くすぐったそうに体を動かす咲の体に、私も興奮してくる。  
「咲……かわいい」  
「か、かわいくない、かわいくないっ」  
じたばたじたばた  
ぺろぺろぺろぺろ  
「ああんっ」  
暴れる咲を大人しくさせるために、咲の弱いところをいっぱい舐めて攻撃する。  
「ま、舞……も、やめて……」  
咲の目にとろ味がついてきた。  
こんなかわいい咲は初めてかもしれない。  
そんな咲を泣かせるなんて……お兄ちゃんのバカバカバカ。  
 

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