「おーい、咲ーっ! 相変わらずタヌキみたいな顔してるなー!」  
「う、うるさいわねーっ! タヌキって言うなっ!」  
「あん? なんだぁ? なんか咲にしちゃあ元気ねぇなあ。まさか、気にしてんのか?」  
「け、健太なんかになに言われても、気になんかしないわよっ! 大体あんた、タヌキなんて見たことあんの!?」  
「パンパカパンってパン屋に、でっかいのが一匹いるぜ」  
「あたしだーっ! それ、あたしじゃんかーっ! 頭きた! 橈骨手根関節へし折る!」  
「さ、咲、それはどこの骨?」  
「お〜お〜、でっかい口開けると、ますますタヌキだ! ははっ、じゃーなー!」  
 人の顔をバカにして、健太は階段を、すごい早さで駆け下りていった。  
 どうせあたしはタヌキですよ。  
「ふふっ、星野君もひどいね。咲の顔ってタヌキよりもぜんぜんかわいいと思うけど」  
 舞……タヌキと比べられても、嬉しくない……。  
 ときどき思う。舞みたいに、かわいくなりたかったなって。  
「そういえば、今日っていつもより髪が整ってる?」  
「うん、新しいの買ったから」  
「ヅラなの!?」  
「あはは、ウソウソ! いつも通りだよ! ほらほら、早くいこいこっ!」  
「うん。じゃあ、いこっか」  
 別に、自分の顔は嫌いじゃないけど、あたしだって女の子だから、かわいくなりたいなって思う。  
 舞みたいにかわいければ、きっと、恋に自信なんかも、持てたんだろうなって。  
「ただいまー」  
「お帰り。あれ、今日は咲ちゃんも一緒?」  
「は、はい、こんにちは、和也さん……お、お、おじゃじゃじゃまままお邪魔します……」  
 特に今日みたいな、こんな日は。  
 
「え〜っ!? 私に!?」  
「うん。大事な話がしたいから、今から二人で話できないかって」  
「で、でも、その人に会ったこともないし……」  
「結構、カッコいい先輩だったよ。話だけでもしてみれば?」  
「う、う〜ん……そんなこと言ったって……」  
「いいじゃん。変なこと言ったら、変身して平手打ちすればいいじゃない」  
「咲、私が戦ってるときの攻撃、意外と見てるんだね」  
「YOU、カカト落としやっちゃいなよ」  
「咲、それはジャニさんよ」  
 今日の昼休みに、舞に告白したいって先輩が話し掛けてきた。  
 恋愛っていうのは、まず本人の周りから。うん、それは間違ってない。  
 だけど問題は、多すぎて、あたしは誰の味方もできないってこと。  
「さ、咲もいっしょに来てくれる……?」  
 最初は舞に告白したいって人がいて驚いた。  
 舞と二人ですっごく騒いだりしたこともあったけど……。  
 夏休みが終わった最近はピーク。  
 夏休みデビューなんかしちゃった男子達に頼まれて、10日間で3人目。  
 さすがのあたしも驚き疲れちゃった。  
「うん、いいよ。いっしょにいこっ」  
「あ、ありがとう。こういうのって苦手だから……」  
「ちなみにYOUはDOしちゃうの?」  
「ジャニさんはもういいから。ゴメンなさい……って言う」  
「あはは、舞の連勝記録更新中〜!」  
「も、もーっ! 変なこと言わないでよ〜っ!」  
 別にあたしは告白されたいワケじゃないけど。  
 
 でも、舞はかわいいし、ちょっといいな〜って思わないでもない。  
 あたしだって、ドキドキしたいなって思うときもあるし……。  
「なんの話してるんだ?」  
「キャーッ!!!」  
 二人で飛び上がった。  
 か、和也さん……。ビックリした……。  
「お、お兄ちゃ〜ん! ちゃんとノックして入ってきてよ! 咲だっているんだから!」  
「おいおい、したよ。したけど返事がないから、開けてみたんだよ」  
「そこで開けないでっ! も〜、お兄ちゃんは、デリカシーとか、そういうのが足りないの!」  
「いやだって、ジャニさんの声が聞こえたし」  
「そ、それは、気のせいじゃないかな」  
「お菓子持ってきたんだよ。飲み物も」  
「あ、ありがとうございます。そんな、気を使ってもらわなくても……」  
「咲ちゃんこそ気を使わないで。気にしないで冷蔵庫でも戸棚でも開けてくれていいから」  
「は、はい……」  
 和也さんの部屋の扉を開けたいです。  
「ところで、告白とかなんとか、ってのも聞こえたけど」  
「そ、そんなことまで聞いてたの!? やめてよ〜っ!」  
「咲ちゃんのことを好きな人でもいるの?」  
「あ、あたしですか!?」  
 ははは、あたしなワケないじゃないですか。  
 相手がタヌキならともかく。  
 はぁ……。  
「いえ、舞に……」  
「咲! そんなこと言わなくていいの! もう、お兄ちゃん! 恥ずかしいから、一時間ほどトネリコの森でもさ迷ってて!」  
「おいおい、目的もなく一時間も森をさ迷う兄のほうが恥ずかしいと思うぞ」  
「だってお兄ちゃん、よく意味もなく海とか眺めてるじゃない」  
「言うな」  
「か、和也さんは……」  
「ん?」  
「和也さんは、告白とか……されたことありますか?」  
「えっ、俺?」  
 そこで舞が、珍しく目にいやらしい色を浮かべた。  
「お兄ちゃんは人気あるよね。この間も、お兄ちゃん宛てに女の子から電話がかかってきたもん」  
「あのな、あれはただの友達だって」  
「多いから携帯持ってって言ってるのに。私だって気を使うんだから」  
「舞にだって、この間かかってきただろ。クラスの男の子から」  
「だ、誰!? あたし、初耳なんだけど!」  
「キャーッ! やめてやめてやめて! お〜に〜い〜ちゃ〜ん〜……!」  
 もてもて兄妹だ……。  
「ま、まあまあ、和也さんなら、断り方も知ってそうじゃない」  
「断り方?」  
「は、はい、告白されたときの断り方とか……」  
「咲ちゃんが?」  
 和也さんって、ときどき天然かもしれない。  
「い、いえ、あたしは告白とかって、されたことないですから!」  
「そうなんだ? 咲ちゃんって人気あるのかと思ってた」  
「咲はみんなに人気あるよね」  
 しまった、和也さんだけじゃなくて、美翔兄妹が天然だった。  
「あの、あたしじゃなくて舞がですね」  
 
「なんだ、断っちゃうのか。舞に彼氏ができたら見てみたいけどなあ」  
「も、もーっ! もうその話はいいの! 咲のいじわる!」  
 舞が立ち上がった。  
「もういい! 私、トネリコの森を一時間ほど徘徊してくる!」  
「夕飯までには帰って来いよ」  
「あ、あのさ、返事はどうす……」  
 バタン!  
 舞が怒っていっちゃった。  
 珍しいこともあるんだな。  
「はは、怒らせちゃった。あとで俺が舞に謝っておくよ」  
 和也さんがいたずらをした子どもみたいに笑った。  
 やっぱり、兄妹でこういう話をするのって、イヤなのかな。  
 ん?  
 っていうか、よく考えたら……。  
「それにしても、咲ちゃんを置いていくのはよくないよな。あ、お菓子食べる?」  
 二人きりだーっ!  
「い、いただきます……」  
 あたしは、当たり前のようにストローをつかんで引き抜いた。  
「さ、咲ちゃん、それは食べられないよ?」  
「い、いえ、あたしこういうの好きなんです。こう、噛むごとに味があるっていうか、あはっ、あははっ」  
「そ、そうなんだ。珍しい舌をしてるね」  
 …………。  
 ああ〜っ、会話が続かない……!  
 こんな機会ってめったにないのに、なにやってんだろあたし……。  
「あ、あの、ちょっとお手洗いに……」  
 とりあえず気持ちを落ち着けよう。それがいいよ、うん。  
 あたしは前も見ずに立ち上がって、ドアのほうへ寄ろうとした。  
「あっ、危ない……!」  
「えっ?」  
 ガシャッ  
「うわわっ!」  
 思いきりジュースを蹴飛ばした。  
「あっ、あ、あっ、舞の部屋のじゅうたん……!」  
「あ、いいよいいよ俺がやるから」  
「い、いえ! あたしがやります、あたしがっ……!」  
 ガコッ  
 今度はお菓子のお皿を真上から踏んづけた。  
「ひえーっ!」  
「さ、咲ちゃん!」  
 ドサドサッ  
「あたた……」  
「大丈夫?」  
「へっ?」  
 目の前に和也さんの顔があった。  
 あたし、和也さんの上に……。  
「おおひょーっ!? あた、あたたあたし、す、すみませーんっ!」  
 グッ  
 起き上がろうとしたら、背中に力を感じた。  
 あ……。  
 和也さんの腕があたしの背中に……。  
 
「あ、あっ……」  
「ケガはない?」  
 目の前にある顔が、優しく笑った。  
 あたしは和也さんに抱きしめられたまま、しばらくその顔に見とれていた。  
「あ、あの、あたし……」  
「ん?」  
 きっとこれは、神様が一度だけくれたチャンスなんだと思う。  
 恋なんて縁がなかったあたしに、こんな素敵な人が目の前にいるなんて。  
「あ、あの……。……か、和也さんって、その……つ、付き合ってる人とかいるんですか?」  
 思い切って、大胆なことを聞いてみた。  
 っていうか、いたらどうしようなんて考えずに、頭に浮かんだことをそのまま口に出した。  
「俺?」  
「は、はい。さっき、舞も人気あるって言ってたし……」  
 今までの人生で、一番胸がドキドキした。  
 9回裏2アウトのバッターボックスよりも、ダークフォールの連中と戦ってるときよりも、ドキドキした。  
「いないよ」  
 そこであたしのドキドキは頂点に達した。  
「なんで?」  
 和也さんの声がかろうじて聞こえる。  
 どんな顔してるかはわからない。顔を上げる勇気はないから。  
 だから、残りの勇気を、全力でしぼり出して口までもっていった。  
「す、好きです」  
 言った。  
 あたしの人生の中で、初めての言葉を言った。  
 今あたし、どんな顔してるんだろう。  
 泣きたいような笑いたいような、不思議な気持ちで胸がいっぱいだった。  
 告白する人って、みんなこんな気持ちなのかな。  
『あれはただの友達だって』  
 さっきの和也さんの言葉が頭をよぎる。  
 あたしもその一人になっちゃうのかな。  
 涙が出そうなのを必死でこらえた。  
「つ、付き合ってください……」  
 最後のほうは、和也さんにしがみつくように言った。  
「いいよ」  
「えっ」  
 頭の中によぎった、どのシチュエーションとも違う返事が聞こえた。  
 え、今なんと?  
 あたしには「いいよ」って聞こえましたが。  
「咲ちゃんならいいよ」  
「は……」  
 言葉が出ずに、ただ、顔を上げた。  
 そこには、あたしを見て微笑む和也さんの顔があった。  
「う、うそ……?」  
「うそじゃないよ」  
 あたしの背中を押さえる腕に力がこもる。  
 あたしを「押さえて」た腕が、あたしを「抱きしめ」たに変わった。  
「うそ……」  
 まだ信じられない。  
 宝くじの一億円が当たった人も、初めて月面に到着した人も、多分、今のあたしと同じ顔をしてる。  
「あ、あのっ、でもあたし……!」  
 
 今まで我慢してた何かが、堰を切ったように喉を通った。  
「ま、舞みたいにかわいくないし、お母さんみたいに美人でもないし、今日だってタヌキみたいな顔だって言われて……」  
 和也さんがキョトンとした顔であたしのほうを見る。  
「み、みのりでさえ、あ、あ、妹なんですけど、幼稚園の頃から人気があって、小学校でも男子がよくウチに来てて……」  
 自分でもなにを言ってるのかよくわからない。  
 昔から、あたしの長所は前向きなことだ、ってみんなが言ってくれた。  
 だけど今のあたしは、ネイティブ・アメリカンがビックリして酋長に訴えるほどネガティブだ。  
「なのに和也さんがあたしのことなんて、そんな、そのあの、あのその、あああああっ!?」  
 和也さんが、困ったようにあたしの顔を見て笑った。  
「こらこら、俺の彼女をかわいくないなんて言ったら、例え咲ちゃんでも許さないぞ」  
 は……。  
 俺の……。  
 彼女……!?  
 あ、あたし!? あたしのことですか!  
「俺さ、舞からずっと咲ちゃんのこと聞いてたんだ。だから、咲ちゃんはすごく素敵な子だって思ってた」  
「い、いえ、そんな……」  
「ずっと興味あったんだ。だから、咲ちゃんなら付き合ってもいいよ」  
 恋愛っていうのは周りから。  
 それが今日、よくわかった。  
「で、でもまだ、信じられないです……」  
 あたしの目の前にいる人が、あたしの彼氏だって。  
 だって、相手が素敵すぎたから。  
「んー……そう?」  
 和也さんがちょっと考える風を作った。  
「じゃ、目を閉じて」  
「はい?」  
 め、目ですか?  
 目を閉じるってまさか……。  
 アレですか!  
「は、はひ……」  
 緊張しながら目を閉じる。  
 あ、あ、薄目開けたい……。  
 怖くてまぶたがぴくぴくしてるのが、自分でもわかった。  
 ダメです、緊張して、頭がくるくるミラクルスプラッシュです。  
 だけど、あたしの緊張とは関係なく、和也さんの顔があたしの顔に重なった。  
「ん……」  
 唇が触れ合う。  
 あたしの初めてのキス。  
 誰に何を言われてもいい。  
 今だけ、世界で一番かわいい女の子でいたいって思った。  
 多分、数秒だったんだと思う。  
 すごく長い時間に感じられて、だけど、もったいないくらいすぐに、二人の唇が離れた。  
「咲ちゃん」  
 離れてすぐに和也さんの声が聞こえる。  
「好きだよ」  
 その言葉から、ようやくいつもの前向きなあたしに戻れた。  
「あ、あたしも好きです」  
 はっきりと和也さんの顔を見つめて言う。  
 もう、自分がかわいくないなんて、思わない事にしよう。  
「うん」  
 
 今度は嬉しそうに、和也さんが笑った。  
 その手が、あたしの頭をなでてくれた。  
 すごく気持ちいい。  
「……っと、しまった、ジュースの後片付けしないとな」  
 和也さんは思い出したようにじゅうたんを見た。  
 そういえば、ここって舞の部屋だっけ。  
 でも、今のあたしはもっとドキドキしたくてたまらなかった。  
「あ、あの」  
「ん?」  
 和也さんの袖をひく。  
「も、もう一回……その」  
 恥ずかしかったけど、思い切って言ってみた。  
「したいです」  
 和也さんの顔が再びキョトンとなる。  
 そして、改めてあたしのほうに向き直ると、今度は両手であたしの顔を包んでくれた。  
「いいよ」  
 そのまま二回目のキスをする。  
 またしばらくして顔が離れたけど、追いかけるように、あたしのほうから唇を奪う。  
 和也さんも最初は驚いたみたいだけど、それから離れるたびに、何度もお互いの唇を奪い合った。  
 もう何度目か数えてないけど、ちょっと長いキスをした。  
 和也さんの口から、舌が伸びる。  
「ん……」  
 それはあたしの下の唇に触れると、ふちをつたうように、つつっとなぞっていった。  
「んんっ、ふっ……」  
 体が強張るのがわかった。  
 だけど、和也さんの舌があたしの唇をなぞるたびに、だんだん力が抜けていく。  
「ふあっ……」  
 あたしの口が自然に開いていくと、あたしの口の中にも侵入してくる。  
 子どもが大人の真似をして喜ぶみたいに、あたしも和也さんの真似をして、必死に舌を絡めた。  
「あ、はっ……あ、ぅん……あっ、はぁ……」  
 お互いの舌から、長い粘液の糸が伸びる。  
 それはなんだかいやらしくて、恥ずかしかったけど……。  
 お互いの気持ちを繋いでるみたいで嬉しかった。  
「咲ちゃん……」  
 和也さんの手があたしの制服に触れる。  
 一瞬体が震えたけど、黙って目を閉じてうなづいた。  
 だけど、和也さんに嫌われるのが怖くて、一つだけ言い訳をした。  
「え、エッチな子だって、思わないでください」  
 目を閉じてたから、和也さんがどんな顔をしたかはわからないけど、ちょっと笑い声が聞こえた。  
「ゴメン、俺はエッチかも」  
 制服がまくられていく。  
 なんだか、言い訳した自分が恥ずかしくなった。  
「あ、う、うそです。やっぱりエッチかもしれないです……和也さんと……したいです」  
「あははっ、じゃあ一緒だね」  
 あたしの下着が和也さんの目の前に晒される。  
 こんなことになるなんて考えてなかったけど、舞の家に行くからって、今日はちょっといい下着だった。  
 それがなんだか嬉しい。  
「かわいい下着だね」  
「そ、そんなことないです……その、あたしって……」  
「ん?」  
 
「クラスの子と比べても、ち、小さいし……」  
 最近ちょっと大きくなってきたけど、仁美や優子に比べると、ぜんぜん小さい。  
 ああ、仁美と優子は今ごろなにしてるのかなあ……。あたしは人生の一大事なり……。  
 なんて思っていると、下着の上からあたしの胸を和也さんの手が包む。  
「咲ちゃんの胸、好きだよ」  
「んっ」  
 軽く力がこもる。  
「んっ、ふっ、んんっ、あ、ああっ……」  
 だんだんと、一定のリズムで力が加わるようになってきた。  
 すごく胸がドキドキする。  
「ああっ、はっ、んんん……んんっ、んっ、はぁ……」  
 だんだん力も強くなってくる。  
 恥ずかしいけど、声が勝手に口から出てきた。  
「えと……」  
「え……?」  
 急に手の動きのリズムが止まる。  
 和也さんが、困ってるみたいだ。  
「ど、どうしたんですか?」  
「いや……その、ゴメン。これって、どうやって外すのかな」  
 和也さんは申し訳なさそうにあたしに訊ねてきた。  
 一瞬、問いかけの意味がわからなかったけど、思わず軽く吹き出してしまった。  
 なんだか、完璧そうに見える和也さんが、こんなことがわからないって、すごくかわいく感じる。  
「えと……ホックは後ろにあるんです」  
「あ、背中なんだ」  
 和也さんが感心したように、手をあたしの背中にやる。  
 そっか、和也さんもこういうの初めてなんだ……。  
 すごく嬉しい。  
 プチッと音がして、ブラジャーが外れる。  
 すごく恥ずかしいけど、嬉しいから我慢できた。  
「わあ……」  
「う……」  
 和也さんがあたしの胸を見つめる。  
 あんまりじっと見てるから、ちょっとだけ腕で隠した。  
「そ、そんなにじっと見られると、小さいんで恥ずかしいです……」  
「あ、ゴメンゴメン」  
 下着で隠していないあたしの胸に、和也さんの手が伸びる。  
「すごく綺麗だなって思ってさ」  
「あんっ!」  
 下着の上から触られるのと、ぜんぜん違う感覚が頭に走った。  
 肌と肌が触れ合う感触に、全身が震える。  
「あっ、ああっ、んっ、ん、んんっ! んっ、ふぅっ……!」  
 恥ずかしいのに声が大きくなる。  
 体から、どんどん力が抜けていった。  
「あああっ、あんっ! ふあぁ……ひあっ! あ、ああんっ……やんっ!」  
 あたしの胸の先っぽに触れられると、抑えようとしても声が出ちゃう。  
 そこはダメって言いたかったけど、どうしても言い出せなかった。  
「ひゃうっ! あっ、ああああんっ! あっ、あ、やぁ……あ、あーっ!」  
「気持ちいい?」  
「あうっ、うっ、き、聞かないでください……ああっ! あ、あんんっ!」  
 どこを触って欲しいのかばれてるみたいで、あたしの先っぽは、色んな角度から指で弄られた。  
 
 指が当たるたびに、あたしの体がビクンッて跳ねる。  
 いつもより大きくなって、色も濃くなってるみたいで、すごく恥ずかしい。  
「ああっ、やぁんっ! はっ、ふあっ、ひっ、いいっ……あっ! あーんっ! あ、ああああんっ!」  
 もうだんだん、ものが考えられなくなってきた。  
 頭の中がボーッとして、すごく気持ちいい。  
 そして、和也さんの手があたしのスカートに伸びる。  
「あ、はぁっ、はぁ……」  
 あたしの一番恥ずかしい場所に、和也さんの手が触れる。  
 誰にも見せたことのない、あたしの大事なところ。  
「んっ、ふっ、ぅうんっ……」  
 下着の上から、人差し指が触れた。  
 くにっ、くにっ、と指が動く。  
「あ、ああ、あぁ……」  
 もう片方の手が、あたしのスカートのホックを外す。  
 あたしはとうとう、和也さんの前で、下着一枚の姿になった。  
「す、すごく恥ずかしいです……」  
「かわいいよ、咲ちゃん」  
 和也さんの指が、あたしを下着の上から責めてくる。  
「う、うぅ……」  
 胸ほど敏感じゃないけど、それとは違う感覚が全身に広がる。  
「あぁっ、はぁ……」  
 そのうち、和也さんの指が、ある場所に当たった。  
「あんっ!」  
 思わず、体をくねらせる。  
 そこを触られると、電気を走らせるみたいに、感覚が体の中をまっすぐ走った。  
「咲ちゃん……」  
「あ、ああっ……」  
 ちょっと怖くなって和也さんにしがみつく。  
 でも、気持ちは止まらなかった。  
「つ、続けてください」  
「咲ちゃん」  
「好きです」  
「うん」  
 和也さんの指が、そこに力を加える。  
「ふあぁんっ! あんっ、あ、ああっ、あ、ひゃうんっ! あうっ、き、気持ち、いいです……」  
「咲ちゃん、ここがいい?」  
「はいっ、そ、そこ……いい、です……和也さんの指、キモチいい、です……」  
「直に触れるね」  
「は、はい……」  
 下着の脇から、二本の指が侵入してきた。  
「ああっ! あああっ、あんっ! はうっ、はっ、ああああっ……あ! あああんっ!」  
 もう、恥ずかしいなんて考えずに声をあげた。  
 エッチがこんなに気持ちいいなんて、初めて知った。  
「咲ちゃん、ちょっとだけお尻を上げて」  
「え……?」  
 和也さんはあたしの最後の一枚に手をかけると、もう、お尻の半分くらいまでずらしていた。  
「は、はい……」  
 和也さんが、あたしの下着を脱がせるように腰を動かす。  
 どうしようもなく恥ずかしいけど、和也さんがしてくれることなら、なんでも我慢できた。  
 その時、あたしの下着から、さっきのキスの時みたいに糸が引いてるのが見えた。  
 
「や、やだぁっ!」  
「え?」  
「い、糸……ご、ゴメンなさい、あたし……エッチな子で……」  
 だけど和也さんは、あたしの頭を優しく撫でてくれた。  
「咲ちゃんが感じてくれて嬉しいよ」  
「う……」  
 和也さんはすごく優しかった。  
 この優しさに応えるには、どうしたらいいんだろう。  
「か、和也さんがしてくれるの……すごくキモチいいです」  
 あたしの気持ちを、正直に伝えることにした。  
「そっか……」  
 和也さんはあたしの頭に置いていた手を、そのままゆっくり背中に回す。  
「嬉しいよ」  
 そして、抱きしめてくれた。  
「あ、あたし……なんでもできます! なんでも……します」  
「あははっ、ありがとう。でも、今日は俺にさせて?」  
「は、はい」  
 和也さんが少しズボンを下ろす。  
 そこには、初めて見る男の人のそれがあった。  
 か、和也さんにもあるんだ……なんだか、ちょっと不思議な感じ。  
 今まで、性的なイメージで見たことなかったから想像できなかったけど、実際目の前にあると納得せざるを得ない。  
「う……」  
 少しでも和也さんがしやすいように、動かされるままに体を任せる。  
「じゃあ、いくね」  
「は、はいっ」  
 和也さんのそれが、あたしの肌に当たった。  
「んっ……」  
「あれ……?」  
 なかなかあたしの場所に当たらないみたいで、和也さんは苦戦していた。  
 その和也さんを見て、なんだか嬉しくなる。  
「あ……」  
 和也さんの手に、あたしの手を重ねた。  
「ここ、です……」  
 和也さんのそれを、あたしの入り口に誘導する。  
「ありがとう……はは、助けられてばっかりだね」  
「ううん、そんなことないです……あたしのほうこそ、してもらってばっかりで……」  
「挿れるよ……」  
「んっ!」  
 あたしの入り口が開いていく。  
 話には聞いてたけど、やっぱりキツイ。  
「んんっ! んっ! んーーーっ!!!」  
 和也さんがゆっくりとあたしの中へ入ってくる。  
 すごく痛い。  
 ホントに裂けるように痛い。  
 でも、あたしの初めての人の顔を見ると、全部我慢できた。  
「か、和也さんっ……」  
「えっ……」  
「好きです……大好きですっ」  
「咲ちゃん……」  
 あたしの体の中で、何かが破れる音がした。  
 
「俺も好きだよ」  
 和也さんの体が、あたしの体にぴったりとくっつく。  
 あたしはもう、初めてじゃなくなったんだなって思った。  
 あたしの体の中にある和也さんが、すごく愛しいと思えた。  
「咲ちゃん……動かすけど、平気?」  
「だ、大丈夫です……」  
 大丈夫じゃないけど、必死に笑顔を作った。  
 笑顔だけは誰にも負けない自信があったから。  
 和也さんの抽挿が始まる。  
「ああっ、あっ、あああっ! くあっ、あっ、ぅうんっ、はっ! あああっ!」  
 最初はゆっくりだったけど、そのリズムはだんだんスピードを上げていく。  
「ああああっ! ひあっ、あぁんっ! んあっ、あっ、ふあっ、はああっ! あっ、やあああああっ!」  
「咲ちゃん……すごく気持ちいい」  
「ひぐっ、う、うれしい、です……あた、しも……ふああっ! あっ、あんっ、き、キモチいいですっ……!」  
 あたしの中を出し入れする音がここまで聞こえてきた。  
 そして、あたしの体になにかの波が襲ってくる。  
「ひうっ、あっ、ああっ、か、和也さん……あたし……あたしっ、な、なにか……き、きちゃいますっ……!」  
「咲ちゃん……俺も、もう……気持ちよくて出そうだよ」  
「は、はい……出してください……あたしっ、あんっ! あた、あたしも……もう……っ!」  
 和也さんの動きが、いっそう早くなった。  
「あああっ! あんっ! 好き、好きですっ……! あたしのこと、彼女にしてくださいっ……!」  
「うん……俺も好きだよ。咲ちゃんのこと、大好きだよ」  
「ああっ! ああああああっ! あんっ、あっ、い、イッちゃ……ああっ! 出ちゃう、出ちゃうよぉっ!」  
「咲ちゃん……! 出るっ!」  
「あんっ、あっ、あああああああああああっっっ!!!」  
 和也さんのそれが引き抜かれて、その先から、白いものが飛び出してきた。  
 勢いよく飛び出してきたそれは、あたしの胸と顔をいっぱい、いっぱい汚していった。  
 そして、それと同時にあたしも……。  
「はあっ、あああああああっ!」  
 勢いよく、おしっこがあふれ出した。  
 恥ずかしいけど止まらない。  
 しかも、すごく気持ち良かった。  
「ご、ゴメンなさい……お、おしっこ……止まらないよぉ……」  
 全身から力が抜けて、あたしはそこに横たわった。  
 そんなあたしを、和也さんは優しく膝枕してくれた。  
「ゴメンね、いっぱい虐めちゃって」  
「いえ……すごく、気持ち良かったです……大好きです……あの……」  
「ん?」  
「キス……してください……」  
「うん」  
 そして、あたしたちはもう一度キスをした。  
 すごく、すごく長いキスを……。  
 
 
「あの……ホントにゴメンなさい」  
「い、いや、咲ちゃんが謝ることじゃないから」  
 あたしがシャワーを浴びてる間、和也さんは舞の部屋を掃除してくれていた。  
 っていうか、思いっきり血の跡が……。  
「ど、どうしましょう、これ……」  
「トマトジュースじゃダメかな」  
「ダメだと思います……」  
 とりあえず話し合いの結果、あたしがジュースをこぼして、頭からかぶったのでシャワーを貸してもらった、ということにした。  
 だけど、血はどうしようもない。  
「よし、こうなったら、ジュースをこぼしたときに、俺に顔面シュートを決めた、ってことにしよう」  
「はい……すみません」  
「ホントは咲ちゃんの初めての跡だから、切り取って大事にしたんだけどな」  
「そ、そんな恥ずかしいこと止めてください〜っ! あ〜ん、もう舞の部屋に来られないよ〜!」  
「だ、大丈夫、じゅうたんは俺が買い直すから」  
「何から何まで、ゴメンなさい……」  
 そんなあたしを、和也さんは優しく抱きしめてくれた。  
「これから色々大変だと思うけど、よろしくね」  
「……は、はい」  
 だけど未だに信じられない。  
 この和也さんが、あたしの、か、彼氏だなんて……。  
「ただいまー」  
「うわあっ!」  
 慌てて離れるあたしたち。  
「咲、ゴメンね、置いていっちゃって……あれ? どうしたの?」  
「い、いやははは……ちょっと顔面シュートを……」  
「も、もう咲ちゃんは帰るみたいだから、送っていってあげなよ」  
「うん、そうするけど……って、あ〜っ! なにこれ!?」  
「だ、だから顔面シュートを……」  
「そ、そう、俺の鼻血が……」  
「ぜ、ぜんぜん意味がわからないよ〜! ちゃんと説明して〜!」  
「あうう、もう歩くのもギリギリなり〜……あーん、ゴメンなさ〜い!」  
「咲〜! ちゃんと説明してくれるまで、帰さないからね!」  
「あ〜ん、あ〜ん」  
「あはは……」  
 結局、あたしが帰れたのは、ウチの家族が夕ごはんを食べ終わった後だった。  
 そして、疲れてるのにお母さんにも怒られた。  
 もう動けないし、明日、学校行きたくないくらいへとへとだけど……。  
 幸せだからいいやって思えた。  
 最後の力をふりしぼって、ガッツポーズを作る。  
「ぜっ、絶好調……なりっ!」  
「絶好調なりィ〜! ……に見えないよ、お姉ちゃん」  
「がくっ」  
 そのまま崩れ落ちるように、ベッドの上で眠りに落ちていく。  
 明日起きたら……かわいい女の子になってますように。  
 
 幸せ創ろう……Growin☆  
 

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