秋を象徴するかのような黄金色の夕暮れが空に広がる時間帯、時折吹いてくる穏やかな  
秋風に乗ってイチョウがフワフワと落ちてくる。  
 
「いやーーーやっぱり秋は心が落ち着くっピねー」  
ベランダでお茶をすすりながらフラッピが気持ちよさそうにくつろいでいた。  
「おっ茶柱が立ってるっピこれはいい事ありそな予感がするっピ」  
クルリと巻き耳を揺らしながら湯呑みに口をつけた瞬間。  
 
「フゥラッピィーーーーーーーーーーーーーーー!!」ドーーーーン!!  
 
バチャン!!「うにゃあぁっぁぁぁぁぁ!!」 
後ろからのショルダータックルで茶をモロに顔に浴びたフラッピーが悶えた。 
「びぇぇぇぇん!!フラッピーーあのねっあのねっ!」  
「なにすんじゃーー!おのれはっ!」茹でタコのように真っ赤にしたチャッピーが咲を一喝した。  
「グスッ・・・ごめんっ」  
見れば咲が目からポロポロと涙を流して  
泣いていた。「・・・あーー。まぁまぁ。ゴホン。どうしたっピか?」 
予想外の展開にややバツの悪そうな顔でチャッビーが聞いた。 
「うんっ。実は」  
話は学校の昼休みまでさかのぼる。  
 
給食も食べ終えて休むまもなく男子生徒達は運動場へかけて行った。  
女子の半数も図書室や他のクラスへ移動し。教室はごく少数の女子生徒のみになる。  
多感な14歳。男子がいると言えないアレやコレやの話にも花が咲くようで。  
「ジャーン」一人の生徒が胸をはり一冊の雑誌を机の上に広げた。  
「えーーっこれってラブジュースじゃん」周りに集まっていた友達の一人が口に手をあて  
驚きの表情になっている。  
ラブジュースは最近話題になっている月刊誌だった。女性のファッション紹介や恋愛ネタなど一見するとそこら変の女性専門誌と変わらないのだが。  
 
性に関して深い所まで堀探ったコーナが人気を呼び密かに売上を伸ばしていた。  
その内容はオナニー特集・はたまたジョークグッズ(エログッズ)の紹介と使い方。  
中には男女の絡み合った過激な描写があったりなど一部の親からは教育上問題が 
あるとクレームをつけられる程で咲の住んでいる町でも販売してる店はごくわずかであった。  
 
「えへへ」 
自慢下に彼女はページをパラパラとめくり読み始めた。  
「えーとなになに。今月は思春期の女の子の体特集だって。」 
「やーーーん」 
「なんだかエッチ」  
おのおの勝手な事を言いキャッキャッ盛り上がり始めた。  
「女性の発育過程において如実に変化がおこり始めるのが14〜16歳と言われている  
生理後第2次性徴として乳房の発育、女性らしい丸みを帯びた体になっていきます。 
またそれにともない個人差はあるが発毛がみられるようになる。と」 
「なんだか性教育みたいな話ね」 
「はつもう?お参りのこと?」 
「そりゃ初詣でしょうが。毛よ け 」 
1人がニヤリと笑みを浮かべた。  
 
「ねぇねぇ。もう生えた?」 
「えっ・・・はっ・生えてないよっ!」 
「あっ私もまだだょっ」  
しだいに生えた生えないなどと奇妙な会話で盛り上がり初めてしまった。  
宮迫がここにいたら思わず教室を出て行ってしまっているだろう。  
 
そんな光景を一人遠巻きに咲が眺めていた。いや本来なら真っ先に輪の中に入るであろう  
彼女が今日は変に大人しく顔をややうつむき加減にじっとしていた。  
 
「ねぇ。咲?」 
「えっ・・・あっ。ど・どうしたの」 
女子生徒達が咲の、周りに集まってきた  
咲の場合静かなほうが逆に目立ってしまう。 
「ねーぇ。聞いてたんでょ?」 
意地悪そうに本をもってきた女子が顔を近づけてくる。そして小声で 
「咲は生えてるの?」 
「そっ!そんな事ないよっ!」 
「ほんとにぃ?」 
「ほっほんとだよっ!まっ、まだ全然っ! やっ、やだなぁアハハハハ」 
「そっかぁ。咲はもう生えてると思ったのになっ」 
「なっなんで?」 
彼女は本を開いて読み始めた 
「スポーツなど運動神経の高い女性のほうが成長が早い傾向にある。て」  
 
「そっそうなの。それは初耳だなぁ。アハハ」 
耳元に汗がたれるのを咲は感じた。  
「ねーぇっ舞」 
今度は机で読書をしていた舞にも彼女がよっていって同じ質問をした。  
 
やや赤らんだ顔を見せた舞だったが 
「・・・もぅ。なんの話かと思えばっ」 
「いいじゃないすか。でどうなんですか」 
TVレポータのようにマイクをもった振りをしながら舞に問いただす。  
「・・・まだ産毛ぽぃくらいかなぁ」 
「えー。そうなんだぁ」 
絶対言わないと思ったが意外とあっけなく返事は返ってきた。 
とかく当たり前だといいたそうな顔をする辺り。さすがは優等生である。 
「舞。産毛なんだ・・」 
小さく咲が呟いた。  
 
「おつかれさまでしたーーー」 
部活の練習も終わり更衣室で服を着替えた1年生が挨拶をして帰っていく。 
「ねぇ咲」 
「んっ?なに。」 
「今日フォーティーワンのアイス食べて帰らない?」  
「あっ。ゴメン。今日はパス」 
「そっか。じゃあまたね」 
「うん。バイバイ」 
チームメイトの誘いを断った咲は帰ろうとせずなぜかゆっくりと身支度をしていた。  
一人。また一人と帰路についていく中、いつしか咲一人になっていた。  
「・・・・」 
窓越しから男子野球部の声が遠くから聞こえてくる。練習をまだ続けているようであった。  
 
咲は立脚鏡に立ちおもむろにパンティーを脱ぎスカートを捲し上げた。  
そこには細めでやや薄茶色のホームーベース状に生えそろった毛がうっすらと秘部を  
覆い隠している。それは産毛ではない十分女性の陰毛と表現できる程だった。  
「・・・いやだっ。きっと私だけだ。恥ずかしいよこんなの」 
唇をかみ締め咲は顔を背けた。  
 
「なーーるほどっ」 
ズズズッ。一通り話しを聞いたフラッピーがお茶をすする。  
「で。どうしろと言うのピ?」 
「だっだからねっ!冬のスキー教室の時まで魔法をかけてほしいの」 
毎年学園恒例の泊りこみの実習会では大浴場で一クラスが入浴する。 
「魔法ってなんの魔法だっピ?」 
「だっだからっ・・・そこだけ見えなくなるとか。全部抜抜けちゃうとか。とにかくなんでもいいからおねがぃっ」  
ズズズズ−残ったお茶をすべて飲み干したフラッピーが湯呑みを置いた。  
「咲」 
「聞いてくれるっ!ありがとうフラッピー!」  
 
「ぶぁぁぁぁぁぁかぁぁぁぁもぉぉぉぉん!!!」  
咲がピューーと吹っ飛んでいく。 
「必死になってたから何事かと心配して聞いてみればいったい何考えてるっピかっ!!」 
「だっ。だってぇ・・・」 
頭をさすりながら咲が力なく答えた。 
「いいかっ咲っ。それは人間にとって当たり前の事だっピ。 
むしろ問題なく成長してる証拠だっピ。恥ずかしがる必要なんて少しもないっピよっ!」  
 
「それは。分かってるよ。けど・・・」 
下を向いて目を瞑り咲はベットに腰を下ろした。  
「友達に・・・言っちゃったんだ。全然生えてないって。 
ほんとはもういっぱい生えてるのに。私。このままじゃ。このままじゃ嘘つきになっちゃう」 
「咲・・・」 
フラッピーが咲の膝に乗った。垂れた髪ではっきりとは確認できないが瞼に光る物が見えていた。  
 
「咲。気持ちは分かるけど。やっぱり正直にしてたほうがいいと思うっピ。 
それにそんな魔法もあるかどうかわからないっピ」 
「・・・うん」 
「きっとみんな分かってくれるッピよ」  
「うん。」 
咲はギュッとフラッピーを抱きしめた。外は暗くなり始めていた。  
 
 
キーーンコーーーンカーーーンコーーーン  
「いぇーーぃ腹減ったぜっ!今日はなんじゃらほい」 
健太がいつものノリで宮迫に話かける  
「きょ、今日はコーンスープにビフテキとパンです。」  
「おおっ洋風ですなっ。ビフテキビフテキ不敵なビ」 
「なんですか?それ?」 
相変らず微妙なノリツッコミは健在である。  
 
「おおっ!今日の飯はうまいっ」 
「味が薄いなこれ」 
「おかわり頂戴」  
ワイワイガヤガヤ給食の時間が過ぎていく。  
 
ちぎったパンを口に運んで咲がニッコリと笑った。  
「あのねっ」机を向かい合わせにしていた昨日の友人が咲を見た。  
「んっ?咲。何」咲はゆっくり2度深呼吸した。そして  
「あのね。私。昨日嘘ついてたんだ。」 
「えっ??何が」  
 
 
                    「私ね   もうアソコに毛生えてるの」  
 
 
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!  
健太が向かい合わせで座っていた宮迫に牛乳を吹きかけた。  
 
「・・・・健太君。何?いきなり?まさか例の探偵物語ネタですか?」  
騒がしかったクラスは水をうったように静まり返った。  
「ちょ、なっ、何言ってるのよっ咲っ!」  
「だってさっ。なんだか嘘ついてて気分が晴れなくて。でも言えてスッキリしたよっ。」  
 
「さっ、咲」 
青い顔をした舞が咲の肩を掴んだ。」  
「ゴメンネ。舞。でもほんとなんだっ。うらやましいなっ舞が。だって舞はまだ産毛なんでしょ?」  
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」  
健太がまたもや宮迫に牛乳シャワーを浴びせた。  
 
「でもほんと不思議。だって三角ベースみたいにきれいに生えてくるんだもの。  
私って体までベースボール好きなのかなぁ??」  
 
「フーーーーッ」 
バタン!!舞が卒倒してしまった。  
 
「星野クン。あなたね。日向さんに変な事吹き込んだのは」  
篠原先生が赤い顔をして健太に近づいていく  
「ひぇーーー!!俺は何もしらなってのっ!!」  
 
 
「秋だっピ。秋はいい季節だっピ」  
あいかわらずフラッピーはベランダでお茶を片手に上機嫌だった。  
 
雲ひとつない秋空がどこまでも広がっていた。  
 
 
 
 

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