「のぞみ、起きるココ〜! 朝ごはんの時間だココ〜!」  
 窓から朝日が差しこむ部屋に、目覚まし時計のように淫獣が、のぞみを起こそうと騒ぎ立てる。ピョンピョンと小さな体を飛び跳ねさせて慌しい。  
「あと十分、むにゃむにゃ……」  
 大きな枕を抱きかかえているのぞみは、ベットでのんびりと寝ている。  
「休みの日だからって、いつまでも寝てちゃ駄目だココ。こうなったら力ずくで」  
 ココは、どろろんと煙をもくもくと出すと、人間の姿に変身した。  
「起きないとおしりぺんぺんだぞ! のぞみ!」  
 すらっとした長身で、すっきりとした顔立ちの青年が、のぞみに顔を近づける。  
 すると、出入り口のドアが開く音が響く。  
「のぞみ、起きなさい! いつまで寝てる気なの!?」  
 ドアを開けたのはのぞみのお母さんだ。ココは咄嗟のことで再び淫獣の姿に戻れない。  
 ジーンズで覆われた膝が、のぞみのベットに掛かっているのを、お母さんに見られてしまった。  
「ま、まあ! お取り込み中でしたか!?」  
 丸いメガネを通して見たその情景に、お母さんは目を大きく見開いて、びっくりする。  
「こ、こ、これは、ち、違います! お母さん、僕は決してそんな……」  
 今更淫獣の姿になれないので、ココはそのままの姿で必死に言い訳をする。  
「うるさいなあ、起きればいいんでしょ」  
 のぞみが重そうなまぶたを擦りながら、ベットから起き上がる。  
 固まっているお母さんとココをよそに、彼女は早々に部屋から出て行った。  
「え、えーっと。どちら様ですか?」  
「ぼ、ぼ、僕は……」  
 お母さん問いかけに、直立不動になって答えようとするが、どう自己紹介すればいいかわからない。  
 プリキュアの話をしても理解してもらえるだろうか。プリキュアに年齢制限がないことは、五番目の戦士が証明しているが、勧誘しようにもメンバーはもう満員だ。  
「僕は、のぞみさんの……」  
 人間状態の職業を言おうとしたが、それも不味いと思った。「のぞみさんの担任の教師です」、なんて言ったら学校はまず首になる。  
 そして自分の年齢が二十歳以上だと推測されてしまう。その場合この世界の都市規則で、とても頑丈な檻の中に閉じ込められることを、ココは知っている。  
 そこに閉じ込められたら、例えプリキュアを十人以上集めても、ナッツを解放したときようには抜けだせないだろう。  
「と、友達です!」  
 この答えは無難だと思った。  
「はあ〜〜。この歳で家に男を連れ込んで、よろしくやってるなんて、これも血筋かねぇ」  
 ココの返答にお母さんはおおきく溜息をついた。  
「で、でも、お母さん。僕は何にも……」  
 お母さんがなにか勘違いをしていると思ったので、ココは誤解を解こうとする。  
「いいのよ、言い訳しなくても。私も十四のときにあの子を産んだんだからね、あなたたちを責められないわ」  
 緊張が解かれたお母さんは、のぞみが寝ていたベッドに腰をかけ、胸のポケットからタバコの箱を取り出す。箱から一本取り出し口にくわえ、ライターで先っぽに火をつけた。  
 火がついて先端が真っ赤になると、口から離して、お母さんは先ほどの溜息のように、タバコの煙と一緒に息を吐き出す。  
 
「い、いえ、ですから! 違うんです! 僕は本当にただの友達なんです!」  
「だからと言っても、こうして私も人の親になって、ようやくあのときの親の気持ちが、分かってくるのよねぇ」  
 ココの言うことなんてまるで聞いていないようだった。タバコは先からだんだんと灰に変わっていき、短くなっていく。  
「あ、お母さん、灰が」  
 それに気づいたココは、ナージャの絵が正面に見える学習机に置いてある、飲みかけのティーカップに敷かれた受け皿で、タバコから離れ落ちようとする灰を受け止めようとする。  
「ああ、ありがとう。やっぱり男は気が利かないとね」  
 お母さんの好感度がアップしてしまった。  
「お母さん、今日の朝ごはんなーに?」  
 開いているドアにのぞみが顔を出す。彼女は顔を洗ったようで、前髪がしっとりして、首にタオルを掛けていた。  
「ああ、のぞみ、先に食べていなさい。お母さん、ちょっと用事があるから」  
「うん!」  
 のぞみは軽快にスリッパの音を立てて、キッチンの方へ駆けていった。  
「よく見ると、あんたいい男ねぇ。私の好みだわ。母子で趣味が近いのかしら?」  
「は、はあ」  
 ベッドから立ち上がり、短くなったタバコを受け皿に押し付けて火を消し、しゃがんでいるココを見下ろす。  
 お母さんは、紺のランニングを着て、足の付け根あたりの部分まで切り取られた、肌にぴっちりと張り付くようなショートパンツをはいている。  
 ランニングは短くへそが露出していた。見上げているココには、彼女のふくよかな胸のボリューム感がよくわかる。  
「話が飛ぶけど、ところであなた、ちょっぴり年上には興味があるかしら?」  
 お母さんは、目を細め頬を上げ、少し暗い感じの笑みをココに投げかける。  
「は、はあ」  
 質問の意図が理解できず、生返事を繰り返す。  
「最近、主人とご無沙汰でね。それに一度の回数も減っちゃって。やっぱり、若い子じゃないと」  
「な、何をするんですか! お、お母さん、止めてください!」  
 お母さんは、ココの両肩をつかみ押し倒し馬乗りになった。ココは身動きが取れない。  
「うふふ、かわいいわねぇ。のぞみには悪いけど、ちょっとつまみ食いしちゃおう」  
 お母さんは自分のランニングの下の端を、交差させた両手で持ち、捲り上げて脱ごうとする。  
「うーーん、よいしょ、よいしょ」  
 途中で布地が、大きな乳房についているピンク色の突起物に引っかかってしまった。  
 ようやく引っかかったものから離れると、露になった乳房が反動で上下に震える。  
「お、おっぱいお化け!」  
 果肉がぎっしりと詰まった果物のような乳房を見つめ、ココは驚きと感動の声を上げる。  
「いいのよ、触っても」  
 ランニングを脱ぎ捨てたお母さんは、裸を見られて恥かしがるどころか、乳房をココに見せ付けるようにして持ち上げた。  
「のぞみのよりおっきいココ〜〜」  
 ココは思わず淫獣のときの口調になってしまった。  
 

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