「みんなーっ、声出していこうーっ!」  
夏も本番を迎えて、暑さはいよいよ激しさを増し、絶え間なく夕凪中のグラウンドを照りつけ続けていた。  
しかし、子供たちのソフトボールにかける情熱はそれ以上に熱く激しいものだった。『打倒、黒潮中!』と  
いう大きな目標が、彼女たちの闘志を駆り立てているのだ。  
「もっと、ボールをよく見て。腰が引けてるよ!」  
「一年生は今のうちに基礎をしっかり身に付けておいて。まずは、ダッシュ100本!」  
「咲。ナイスピッチン! 本番でも、この調子で頼むよ!」  
「もちろんナリッ!」  
サツキがいちいち指図せずとも、子供たちは自分で判断し、練習メニューを組み立て、一週間後に迫った  
強豪、黒潮中との練習試合に向けてのモチベーションを高めていっていた。サツキの病欠(?)による不在  
が子供たちの自主性を促していったようだ。  
久しぶりにグラウンドに立った日のことを思い出す。みんな、サツキのそばに駆け寄り嬉しそうな顔をしてい  
た。泣き出す子までいた。  
「先生、おかえりなさい!」  
「わたしたち、自分たちで出来ることは自分たちでやります。だから、先生はあまり無理なさらないで。あっ、  
日差しが強いですから早く日陰の方へ」  
何も知らずにサツキを心配し、励まし、労わってくれる子供たち。まさに穴があったら入りたい心境だった。  
(そんなんじゃないの・・・私は、あなた達の教師でいられるような人間じゃない。ごめんね。本当にごめんなさい)  
教師失格の自分。それでもサツキは今日もグラウンドにソフトボール部の顧問として立っていた。現在の過  
酷で歪んだ二重生活を送る上での、一服の清涼剤といえるものが、こうして子供たちと共に汗をかき泥まみ  
れになりながら過ごす時間といえた。きらきらと輝く瞳。躍動する肢体。一時期の若者が持つ特権的な溢れ  
んばかりのエネルギーの中に身をさらす事で、サツキは癒されていった。  
(みんな・・・ありがとう。私、あなた達の先生でいられて本当に幸せよ)  
しかし、その幸せな時間は、生徒のたった一言によってぶち壊されることとなった。  
「先生、あの・・・」  
「どうしたの?」  
「メール、来てるみたいなんですが・・・」  
「?」  
ベンチのスポーツタオルの上に置いた自分の携帯電話。見ると確かにメールの着信ランプが点滅している。  
(また、いつもの迷惑メールじゃないの?・・・)  
いまは、何であろうと子供たちと共に過ごすこのひと時を邪魔されたくない。軽く眉をしかめつつ念のため送  
信者を確認して・・・愕然とした。  
(そんな・・・嘘でしょ・・・何故、今なの?・・・)  
茹だるような暑さすら遠のき、サツキの背筋を寒気が走り抜ける。携帯を持つ手と膝頭の震えが止まらない。  
信じられなかった。しかし、何度目を凝らして確認しても結果は同じ。メールの送信者は水下だった。しかも送  
信されたのは十分も前。  
あの水下を十分も待たせているっ!  
 
 
「先生、どうかなさったんですか?」  
サツキの様子がおかしいので、さすがに生徒がいぶかしんだ。  
思わず、その生徒に詰め寄り、  
(何故、もっと早く教えてくれなかったのっ!)  
と怒鳴りつけそうになり、慌てて口元を押さえる。とんでもないことだ。これは私一人の問題だ。彼女に責任はない。  
「ううん、なんでもないのよ・・・そうだ、先生、用事が出来たからしばらく席を外すわね。みんなはこのまま練習  
を続けて。いいわね」  
自分が何を喋っているのかも判然としない。生徒たちに不審がられないよう、なるべくゆっくりと落ち着いてその場を  
離れる。駆け出したい気持ちで一杯だったが、そうすれば確実に脚をもつれさせ転倒し・・・二度と立ち上がれそうもない。  
これまで水下との『個人診療』は特別な指示が無い場合、深夜九時と暗黙の了解となっていた。今回のようにメール  
での急な呼び出し一度もなどなかった。それ故、サツキは日中は教師としての活動に専念していられたのだ。  
(ああ・・・どうしよう。油断してた。こんなことになるなんて・・・どうしよう)  
水下は時間には特に厳しかった。そこには一切の言い訳の入る余地は無い。彼女はきっと嬉々とした表情を浮かべ、  
サツキを折檻するだろう。それを思うと、悲鳴を上げそうになる。背筋がゾクリとする。職員玄関で靴を履き替えるのもも  
どかしく、校内を駆け足でいく。階段で足を踏み外しかけて、ヒヤリとする。  
(とにかく、謝罪しよう。どこまで効果があるか疑問だけれど、今はそれしかない・・・)  
今回、これまでになかった事がもう一つ。いつもなら、『個人診療』を行う場所は水下のテリトリーである保健室であった。  
ところが今回は・・・  
ようやく扉の前に立った。メール文をもう一度確認し、目の前の教室のプレートを見上げる。間違いない。ここだ。しかし、何故?  
教室のプレートには『2−B』と表示されていた。サツキの受け持っているクラスである。水下が早急に来るよう呼びつけた  
場所がこのクラスであった。  
心臓が張り裂けそうに痛い。冷たい汗が身体を伝い落ちる。口の中がカラカラになった。  
窓は全てカーテンで塞がれ、中の様子は窺い知れないが水下がここにいることは間違いない。  
震える指先で扉の取っ手を掴み引き開けた。ここで、一体どんな運命が待ち構えているのか?  
「サツキです。・・・あの・・・失礼します」  
 
なけなしの勇気を奮い起こして開いた扉の先には・・・。  
いつもの風景。いつもの教室。そこには、誰もいなかった。人がいたという形跡すらない。  
勇んで突入した分、拍子抜けしてしまったが安堵の息をつくには早過ぎる。恐怖が先延ばしになった  
だけだからだ。  
(どこへ行かれたの?・・・まさか、余りに遅いので怒って帰られたのかも?・・・)  
それは最悪のパターンといえた。自分の命令を無視されたと思い怒り狂った水下が、どのような恐ろし  
い報復に出てくるのか。考えただけで身が竦む。血の気が引いた。  
(ああ、どうすればいいの? どうすれば?・・・)  
目の前が真っ暗になって頭を抱え込む。絶望という言葉が現実的な重さを伴って、サツキの両肩に圧  
し掛かってくる。そんな状態だったから、背後から音も無く忍び寄る影には、最後まで気付きもしなかった。  
「ほうら、捕まえた!」  
「ひっ、ひゃぁあ!・・・お・・・お姉さまっ!」  
背後からまったく突発的に抱きすくめられ、サツキは仰天した。扉は閉じたまま。確かに教室には私一人  
だけだった。一体どこに隠れていたのか?  
「サツキったら、なんて声を出すの。耳が痛くなったじゃないの」  
大げさに渋面をつくりながら、その左手はTシャツの布地越しにサツキの小ぶりな乳房を揉みしだいていく。  
サツキの脳内のスイッチが『教師』から『水下の玩具』へと切り替わった。  
「はああ・・・あの・・・お姉さま、今まで・・・どちらに?」  
揉まれ、掴み上げられ、掬い上げられ、指先で微妙な振動を与えられ、巧みな愛撫で乳房はたちまち熱く  
なり乳首の勃起がTシャツの上からでも、はっきり判断できた。下着類の着用は水下から厳しく禁じられて  
いた。そのため連日の猛暑の中、重ね着をするわけにもいかず、サツキは始終人の目をきにしながら過ご  
さねばならなかった。  
「どちらにって、わたくしずーっとこの教室でサツキを待ってたのよ。一人で。ずーっとね。すっごく寂しかっ  
たんだからぁ」  
迂闊だった。肝心なことを忘れていた。水下に逢ったら真っ先に言わなければいけなかった事。  
「ああっ! あの、あの・・・私、お姉さまからせっかくメールを戴いたのに、気付くのが遅れて・・・部活動に夢  
中になっていたものですから・・・本当にもうしわ・・・ウゴォッ!」  
謝罪の弁を述べていたサツキの口に、今度は右手の中指、人差し指、薬指が差し込まれてきた。侵入した指  
三本はグネグネと縦横無尽に蠢き、口の内部を犯しはじめた。突然の行為に息が詰まりそうだったが、何とか  
それを迎え入れるべく、歯を立てないよう注意しながら舌を指に絡めて行く。  
両手で犯しつつ、サツキを抱きかかえたまま水下は近くにあった生徒用の椅子に腰を下ろした。サツキは小柄  
で体重も軽いせいか、それほど苦にはならない。  
口の中の指は挿入された時と同様、唐突に引き抜かれた。ズボッという音と共に溢れた唾液が顎を伝い、指と  
唇の間に糸を引いた。急に呼吸が楽になり、深呼吸を繰り返しながらニ、三度咳き込んだ。  
「・・・お姉さま。私いま汚れてますから・・・」  
直前までグラウンドにいたため、サツキは汗と埃にまみれていた。水下の身体や衣服まで汚しかねない。遅刻し  
ただけでも一大事なのに後々、これ以上の折檻のネタを造りたくはなかった。  
だが、水下は意にも介さずに  
「構わないわ。わたくし、サツキのエッチな匂い大好きですもの」  
そう言って、首筋に舌を這わせ耳を噛んだ。  
「ふうっ!、くっ・・・あの、こんな時間に呼び出されたのって・・・何かご用が御ありだったんですか?」  
「今日のサツキは随分おしゃべりね。別に用なんてないわ。ただ退屈だったから、ひまつぶしの相手をしてもらおう  
と思っただけよ。それとも、迷惑だったかしら?」  
「いいえ、そんな! わたしもお姉さまに逢えてうれしいです」  
「本当にぃ?」  
勃起した乳首を指先でグイッと押し潰す。  
「ああっ、嘘じゃありません! 本当に、本当に,嬉しいです!」  
「本当か嘘かは、身体に直接訊いてみましょう」  
唾液まみれの右手の指が、トレーニングパンツの中へ潜り込む。パンティを穿いていないので、容易に女陰に触れら  
れた。乳房の愛撫と口への指戯だけで、こちらは準備万端の状態だった。上の口の次は下の口へ。唾液と蜜液の二  
重の潤滑効果であっさりと秘裂への挿入を許してしまう。上の口と同じように指を蠢かさせ内部の襞肉を柔燐しながら  
膣外の親指の腹で、充血した陰核を擦る。  
一方、左手はTシャツを捲り上げて乳房を剥き出しにさせ、硬く尖った乳首を指で挟んで弄ぶ。  
 
「あらあら、これじゃぁ大喜びしてくれてたのは疑いようがないわね。ごめんねぇ、サツキ。あなた  
のこと、信じてあげなくって」  
それどころではなかった。間断なく責め続けられ、嬲り続けられ、サツキは恍惚の境地にあった。  
腰が浮き上がり、身体を弓なりに反らせて、喉からはヒューヒューと空気の漏れるような音が出て  
いる。もう、喘ぎ声さえまともに出せずにいた。  
(ああ・・・イキそう・・・)  
血が沸騰し、頭の中を閃光がはしり真っ白になっていく。絶頂を登りつめ喜悦の雄叫びを上げよう  
とした、まさにその瞬間、窓の外を子供たちの声が通り過ぎていった。今更ながらに思い出す。こ  
こは教室からも職員室からも離れた位置にある深夜の保険室ではない。夏休みとはいえ部活動な  
どで、あちこちに子供たちの存在する校舎の、しかも自分が担任を務めているクラスの教室なのだ。  
いつ生徒や他の職員に見つかってもおかしくはない。  
急速に身体から熱が引いていった。ここは危険だ。時間と場所が悪過ぎる。しかし、それでも水下は  
指戯を止めようとしない。却ってますます激しく巧みなものになっていく。  
感じちゃいけない。しかし、サツキの中のマゾの血が自身の願いを裏切っていた。こういう追い詰めら  
れた状況だからこそ、燃え上がり昂ぶっていく淫靡の炎。こうなっては、サツキにもどうしようもない。  
(あああ・・・お姉さま。いまは堪忍して・・・)  
また子供たちの声がした。なにか熱心に歓談しながら、こちらに近付いてくる。サツキは歯を食いしば  
って、彼らが通り過ぎていくのを堪えて待つしかない。  
(早く・・・早く向こうへ行ってちょうだい)  
不意打ちだった。女陰を犯していた指が引き抜かれ、そのまま尻の方に這い進み、蜜液と唾液でベト  
ベトになった人差し指が肛門に一気に打ち込まれた。第二間接まで挿入された指が直腸を抉る。何度  
か浣腸調教を受けたため、サツキの肛門はひどく敏感なものになっていた。背筋を電流が駆け抜けて  
いった。  
カァッと目を見開き、思いがけずに  
「ヒィック!」  
と、しゃっくりのような嬌声があがった。  
一瞬の静寂。そして窓の外で声がした。  
 
「ねえ、いま何か変な声がしなかった?」  
 
 
 

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