『どこへ出しても恥ずかしくない、立派な人間になりなさい』  
これがサツキが記憶を辿った中で、両親から聞かされて憶えている最も古い言葉である。おそらく物  
心つく前より呪文のように繰り返し吹き込まれていたのではないかと思う。そして、その後も折々に聞  
かされ続ける、いわば篠原家の家訓のようなものだ。  
篠原家は代々、教育者を輩出する家系だった。両親は無論、祖父母も曽祖父母も教職に就いていた。  
ある意味、サツキは生まれた時点で人生のレールがすでに敷かれていたといって過言ではなかった。  
そして篠原の血の為せる業か、そのことについて疑問に思うことも反抗するようなこともなく黙々と一族  
の期待に応えるべく定められたレールの上を進んでいた。  
それには弊害もあった。小学生の頃、サツキはクラスで浮いた存在になっていた――と言っても、苛め  
られたり仲間はずれにされたりしていたわけではない。友人もたくさんいたし、クラス委員長にも推薦さ  
れ信頼も厚かった。  
ただ、どうしてもクラスメイトの話題についていけない。人気のTV番組、アイドル、ゲーム、漫画、遊び  
……サツキは流行りものには、とことん疎かった。食事時と就寝時以外は勉強やお稽古事に費やして  
しまうので当然の結果ではあったが。  
それにより友人たちと会話していても長続きはしない。決まって話が噛み合わなくなり、ぎこちない沈黙  
が訪れることになる。  
「――えっと、じゃあまた後でね」  
沈黙に耐えかねて友達が去っていく。そしてそのまま戻ってくることが無い。それでもサツキは寂しいと  
は思わない。なにしろ、やらなければいけないことが多過ぎるのだ。  
終業時間が来た。今日の放課後は英会話と算数の塾に行かなければならない。ランドセルと塾の用具  
の入ったバッグを持って急いで下校する。  
「本当に、それでいいの?」  
途中、不意に誰かがサツキに声をかけてきた。振り向くと、見知らぬ女性が自分を見つめて立っていた。  
「おばさん、誰?」  
心の中を不安がよぎる。『知らない人と無闇にお話してはいけません』両親や教師から何度も聞かされて  
きた注意事項が脳裏に浮かんだ。  
「『お姉さま』よ――そんなに怖がらなくてもいいわ。私はあなたの味方」  
そう言ってその女性――自称『お姉さま』は、サツキの目線に合わせるようにしゃがみ込んだ。  
「あなた、お名前は?」  
「サツキ……篠原サツキです」  
何故かスラスラと答えてしまう。目を合わせていると、逸らすことが出来ない。何でも正直に言わなければ  
という気持ちにさせられた。  
「そう、サツキちゃん。いい名前ね――サツキちゃんは、何故お友達と一緒に帰らないの?」  
「塾に行かなきゃならないから」  
「まあ、学校の他に塾通いなんて大変ね。そんなことで寂しいとは思わないの?」  
「別に……」  
「本当にぃ?」  
『お姉さま』の瞳の輝きが増したような気がした。その光の中に吸い込まれてしまいそうになる。  
(私の心の中は全て見透かされている。嘘をついても、すぐにバレてしまう)  
「私は……」  
唇が勝手に動いていく。  
「私は寂しいです。お友達ともっと遊びたい。お話がしたい。お勉強もしたくない。塾なんて行きたくない……」  
涙が自然にポロポロと零れ落ちた。果たして本心を打ち明けているのか、それとも操られて喋らされているだけ  
なのかは、自分でも分からなかった。それでも『お姉さま』は、充分に満足したようで  
「ありがとう。よく打ち明けてくれたわね。それじゃ、私が特別にサツキちゃんが自由になる方法を教えてあげま  
しょう」  
「――本当に? 本当に、そんなことが出来るの?」  
「本当よ。私は嘘はつかないわ。それにね、その方法はとっても簡単なことなのよ」  
そう言うと腕をスウッと伸ばし――サツキの制服のボタンを外し始めた。さすがに慌てて、指を振り払い胸元を  
隠す。  
 
「な、何をするの!?」  
「なにって、服を脱がしてるのよ」  
サツキとは対照的に、お姉さまは落ち着き払い、あっさりと言ってのけた。  
「周囲の大人たちから勝手に押し付けられたしがらみ。植えつけられた自尊心を排除するには裸にな  
るのが一番の近道なのよ。自由になりたいんでしょ?」  
「でも、でも……」  
「ウフフッ、いいから、いいから。さあ、脱ぎ脱ぎしましょ♪」  
抵抗する間もなく、あっという間に服を脱がされ全裸にされた。純真無垢の白い肌が白日にさらされ眩  
しいほどに輝く。今度はサツキがしゃがみ込む番だった。  
「あらあら、どうしたの? 顔を真っ赤にしちゃって」  
どこか面白がっているような口調で、お姉さまが言う。  
「は、は、恥ずかしいです……」  
「ウフフッ、本当に可愛らしい。食べちゃいたいくらいよ。何にも恥ずかしがることなんてないわ。産まれ  
た時は皆はだかだったんだから、こっちの方がごく自然な状態なのよ――さあ、私の目を見て」  
人差し指で顎を持ち上げられ、至近距離でお姉さまと見つめあう形になる。そして、唇と唇が重ねあわ  
された。  
――息が詰まるような瞬間、寒気がはしった。外気に肌をさらしているせいなのか、子供の自分が見知  
らぬ同性の大人とキスしていることの淫靡さのせいなのか、サツキには幼すぎて分からなかった。  
「これで契約成立ね。これからお姉さまが直々に楽しいことを一杯教えてあげる。つまらない現実とも面  
倒なお勉強ともおさらばよ。サツキは自由になるの。一人の女として牝としての快楽を存分に味わいなさ  
い」  
身体がどうしようもなく火照ってきた。股間が疼く。オシッコを我慢しているような気分になってジッとしてい  
られない。  
「おばさん……」  
「『お姉さま』でしょ?」  
メッ、とばかりに頬を軽く抓られた。  
「――はい、お姉さま」  
「よく言えたわ。いい子ね、サツキ」  
 
 
 
「サツキ、いい加減に起きなさい!」  
水下は、ほとほと困り果てていた。女陰と肛門のニ穴同時指責めで気を失ってから、時折身体を痙攣  
させたりはするものの、サツキが一向に目を覚まそうとしない。頬を打ったり、鼻を摘んだり、抓ったり  
色々試してみたがブツブツとうわ言を呟くきりで、目覚める気配すらなかった。。  
(まさか、もう壊れちゃったとか? 冗談じゃないよ!)  
調教がようやくノッてきたところなのだ。これから、と言うときにおシャカになられたのでは、これまでの  
苦労が水の泡である。  
当のサツキはこちらの気苦労を知ってか知らずか、心なし口元に笑みを浮かべているように見える。今  
頃、どんな夢を見ていることやら。  
(忌々しいねえ)  
物事が上手く運ばないことが何より嫌いな水下が、渋面のまま指でサツキのクリトリスをピンッと弾いた。  
特に他意はなかったのだが――。  
(んっ?)  
気のせいかと思った。それで再度、クリトリスを弾いてみる――やっぱり、そうだ。間違いなかった。  
サツキの腰がユラユラと揺れる。太腿を擦り合わせ、恥らっているようにも、もっと刺激を欲しているよう  
にも見えた。  
目を覚ましているわけではない。それでもこれだけ如実に反応を示すということだ。  
(ふうん、意識は失くしてても、身体はちゃんと感じることが出来るんだねえ。これは知らなかったよ。それ  
じゃあ……)  
今までの不機嫌が嘘のように、ニヤリとほくそ笑む。捕まえた蝶の羽を毟り取る子供のように無邪気で残  
酷な笑み。  
(この機会に誰が支配者で、自分がどういう立場の存在か徹底的に叩き込んでやろう。細胞の一つ一つ、  
血の一滴に至るまで克明に。二十四時間、私のことを忘れられず悶えっぱなしになるほど淫欲狂いのジャ  
ンキーにしてあげる)  
手始めに半開きの唇に顔を寄せ、舌先で濡らしていった。耳を甘噛みし、首筋から鎖骨にかけて舌を這わ  
せていき、乳首をしゃぶった。同時にもう一方の乳房を丁寧に掌で包み込み、こねまわしていく。  
 
 
「な、なんだか、怖いです……」  
脱いで綺麗に折りたたんだ制服を枕にして、サツキは身を横たえた。土と草の匂いがした。  
どうして、こんな事になってしまったのか。今ひとつ釈然としない気持ちもある。  
(いっそのこと、悪い夢であってくれれば……)  
だが、腋の下や股間を擦り抜けていく風が、お尻にチクチクと当たる砂粒が、これが現実であることを突き  
つけている。  
内心、お姉さまが『やっぱり、こんなこと止しましょう』と、言ってくれるのを期待していた。だがしかし、サツ  
キに覆い被さるように肩を押さえつけ、頬を上気させ薄い笑みを浮かべた表情を見るにつけ、そんなつもり  
はサラサラ無いことが窺い知れた。  
「馬鹿ね。何も怖がることなんて無いのよ。私がちゃんと説明してあげるから、サツキちゃんはそれに従っ  
ていればいいの。その代わり、私が質問したことには正直に答えなさい。嘘をついたりしないでね。ついて  
も、すぐに分かっちゃうから。もし、嘘をついたら――お仕置きしなきゃいけなくなるわ」  
『お仕置き』。その言葉を聞いてブルッと震えが来たのは裸で寒かったせいなのか、それとも……。  
「それじゃ、そろそろ始めましょうか。まずはキスから。さっきもやったでしょ? 今度はちょっと舌を出してみ  
て。そうよ、それで舌を絡ませるように……こうすると、お互いをもっともっと感じ合うことが出来るのよ。じゃ、  
唾を飲ませてあげる――駄目よ、吐き出しちゃ。ちゃんと飲み込みなさい。いまは気持ち悪いって思うだけか  
もしれないけれど。その内……ウフフ。次はおっぱいね。サツキちゃん、マッサージをしたことは? ないの?   
しょうがないわね。日頃からきちんとマッサージをするのとしないのとでは、将来のバストサイズに大きく影響  
してくるのよ。お姉さまがやり方を教えてあげましょうね――手をおっぱいに添えて、優しく優しくゆっくりと掬い  
上げるように、揉みしだくように……これを繰り返すの。そう、上手よ。今晩から寝る前に最低十分間は、これ  
をやっておきなさい。あと、時々乳首を指で摘んで刺激することも忘れないでね。サツキちゃんは、そのまま  
マッサージを続けて。私は、と……」  
「あっ、駄目っ!」  
咄嗟に太腿を擦り合わせ、両手で覆い隠した――お姉さまが無造作に、サツキの性器に手をのばしてきたの  
だった。  
「あらあら、急にどうしたっていうの? びっくりするじゃない」  
「そんなの――だって、ここ汚いし……」  
まだ幼いサツキにとって、性器は小用を足すための器官でしかない。そんな箇所へ他人の手が触れることなど、  
あっていいはずが無かった。  
 
「なに言ってるの。唇とおっぱいは良くて、アソコは駄目なんて理屈が通らないでしょう。サツキち  
ゃんはねんねだから知らないのね。ここは女性の身体の中で一番美しくて神秘的なところなのよ。  
ほら、見て御覧なさい。こんなに綺麗でツルツルしてる」  
まだ陰毛さえ生えていない剥き出しの恥丘の秘裂を、そっと指でなぞり上げていく。  
「ああん、嫌。恥ずかしい」  
「ウフフ、可愛い――まあ、いいわ。そんなことより、マッサージはどうしたの? 手がお留守にな  
ってるわよ」  
お姉さまに促され、薄い乳房への愛撫を続ける。その間も、性器への辱めは続いていた。ギュッ  
と目を瞑った。とても直視することができない。それでも指が股間から尻にかけて這い回っている  
のが分かった。羞恥心で、全身が熟柿のように赤くなる。  
(やめて……お願いだから、やめて……)  
必死に祈った。だが、願いも空しく辱めは徐々にエスカレートしていき、遂には、  
「ああっ!」  
思わず声を漏らした。身体が硬直する。目を見開く。まさか、そんな……  
サツキの両脚を折り曲げ、秘部に顔を埋めたお姉さまが見える。そこから伝わってくるヌメリとした  
生温かくおぞましい感触。  
舌を這わせている! 股間に!   
(ああ、信じられない……どうして、そんなことが出来るの?)  
 
 
この道にかけてはスペシャリストを自認する水下でも、日々新しい発見がある。意識のないダッチワ  
イフのようになった女を好き放題に犯すという行為が意外に燃えるということを、今日初めて気が付いた。  
苦痛と快楽に歪む表情や、嗚咽と喘ぎの入り混じった声を愛でる楽しみこそないが、相手を思うがま  
まに嬲りつくせるという凌辱の原点ともいえる悦びを久々に堪能し、大いに満足だった。それに意識こ  
そないものの、うっすらとピンク色に染まる肌、あらたに湿り気をおびた女陰で確かにサツキが感じて  
いることは分かっている。相変わらず目を覚まそうともせず、締まりの無い笑みをうかべたままであっ  
たが。  
(まったく、いい気なもんだねえ。私をこんなに働かせておきながら、当人は夢の中なんて。一体、なん  
の夢を見てるんだろう? まぁ、この娘のことだからコテコテの淫夢にちがいは無いと思うけど。夢の中  
も現実も状況はさほど変わらないって気付いたら、どんな顔をするんだろう?)  
そう思うと堪らなく愉快な気持ちになる――さて、そろそろ仕上げにかかろうか。  
サツキの膝の裏に手をあて、グッと一思いに押し上げた。裸身を海老のように二つ折りにし、股間の全  
てがあからさまとなった。べっとりと濡れて股間に張り付いた繊毛を掻き分け、皮膚を左右に引き桜色  
をした真珠のような肉芽を剥き出す。そこに尖らせた舌をチロチロと添わせていった。次いで人差し指と  
中指を花芯に挿入させた。陵辱の限りを尽くされ、なんの抵抗もなく、やすやすとそれを受け入れた。肉  
襞と粘液の感触をしばらく味わった後、指をVの字にして秘裂を押し開く。そして興味深く中を覗き込ん  
でみる。そこはまるで湯気が立ち上がりそうなほど熱く、沼のようにおどろで、ねっとりと指に絡み付いて  
くる。水下の好奇に満ちた視線を恥らうように周囲の内壁が、その奥にあるポッチリと開いた穴がヒクヒク  
と収縮を繰り返し、淡く可憐なピンクの色彩が、目に痛いくらいに迫ってくる。タラタラと滴り伝う透明な蜜  
が、『もっと弄って!』と訴えかけているようだ。  
「フフフッ、なかなか美味しそうに仕上がってるじゃないの」  
冷笑とともに水下は秘唇に己の唇を交わらせ、淫裂に長く尖った舌を挿入させていった。そして膝裏を抱  
え込んだまま、サツキの乳房に手を掛ける。掌にすっぽりと収まるサイズのそれを慣れた手つきで揉み  
上げた。同時に硬く勃った乳首を親指の腹を使い擦り付けるように弾いていく。  
静かだった。小高い丘の上に建てられた校舎は、夜ともなれば昼間の喧騒が嘘のように闇と静寂に包ま  
れる。その中で闇に浮かび上がっているのは保健室のみ。そこで繰り広げられる世にも異様な光景。噎  
せ返るほどの淫蕩な妖気が満ち満ちて、部屋全体が陽炎のごとく輪郭を崩し、霞みながら燃え立ってい  
るかのようだった。  
チュッ……ピチャ、ピチャ  
間断なく響く淫猥な音が、耳が痛くなる静寂を余計に強調し続けていく――が、  
「う……うう……んんんっ」  
瞼を痙攣させ、唇から白い歯を見せながら、サツキが甘い喘ぎ声を漏らし始めた。  
 
 
 

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