「じゃあおフロ入ってくるココ!」  
「行って来いナツ」  
「行ってきますミル!」  
「……なんでミルクが返事するココ?」  
金曜日の午後21時。微妙に日常が異常だった。  
 
「ミルクはココ様とナッツ様のお世話役見習いですミル」  
「分かってるけど、おフロくらい一人で入れるココ」  
「お背中をお流しいたしますミル」  
「い、いいココ! 今までも一人で入ってたココ!」  
脱衣所まで付いて来たミルクは、いつになく強引だった。  
普段はもうちょっと素直に引き下がってくれるんだけどな。  
「なんで急にそんなことを言い出したココ? ミルクは充分お世話してくれているココ」  
「ミルクはココ様のお役に立ちたいミル。なにか少しでも出来ることがあれば、やらせてくださいミル」  
「ミルクは、掃除、洗濯、食事と色々してくれているココ。今さらそんなこと気にしなくていいココ」  
「ミルクは……」  
あれ。なんだか急に勢いが弱まった。  
別に怒るような口調では言ってない……よなあ?  
「ミルクは……本当はなにもできていませんミル」  
彼女は少し俯きながら、耳をぎゅっと握り締めて呟いた。  
「そんなことないココ。立派にやっているココ」  
「でも、お食事もいつも、のぞみやこまちが用意してくれた物ばかり召し上がっていますミル」  
「そ、それは、たまたまココ。たまたま好きな物がそれだっただけココ」  
「お洗濯も、ミルクではお洋服を洗濯機に入れることすらできませんミル」  
「それは仕方ないココ。この世界とは大きさが違うココ」  
「だからお掃除も時間ばかりかかって、結局ロクに出来ない有様ミル……」  
「き、気にしなくていいココ! ココたちだってやらなくちゃいけないことだココ!」  
「ダメですミル! ココ様とナッツ様にお手伝いさせては、お世話役見習いの意味がありませんミル!」  
なるほど、これだけ食い下がって来たのはこういう訳か。  
ミルクなりに色々悩んでいて、その結果思い立った行動みたいだ。  
だからと言って、ミルクは歴とした女の子。  
年頃の娘さんにそんなことさせる訳にはいかない。  
「うーん、仕方ないココ……」  
「分かってくれましたミル?」  
ぼむ!  
僕はあえて人の姿になった。  
……もちろん服は着たままで。  
「悪いけど、おフロに入る時もこの姿なんだ」  
「み、ミル……」  
「ミルクには体が大きすぎるだろ? だから諦めてくれ」  
「ミル……」  
「あまり考えすぎなくてもいいから、ミルクに出来ることをしてくれればいいんだよ」  
僕は出来るだけ丁寧な言葉で、さりげなく彼女に退出を促す。  
だっていくら姿が違うと言っても、女の子の前で服を脱げる程度胸ないもん。  
「さ、このままじゃいつまでたってもおフロに入れないだろ? 気持ちだけ受け取っておくから、ナッツの肩でも揉んであげてくれ」  
さりげなくナッツにミルクを押し付けつつ、圧倒的な体の大きさでミルクをドアの外へ連れていく。  
ちょっとしょんぼりしてるけど、まあ……仕方ないよな。  
僕は脱衣所のドアを閉めると、念の為に鍵をかけて、その中でふうと息をついた。  
 
ワシャワシャワシャ  
「さて、明日は土曜日だしナッツの手伝いでもして……」  
頭を洗いながら、記憶にあるシャワーの位置に手を伸ばす。  
「あれ? シャワーがないぞ」  
カラカラカラ  
「シャワーならフックから外れて床に落ちていますミル」  
「ん? あ、ホントだ。いやあ助かったなあ」  
シャー……  
「って、うおおおいっ!」  
振り返るとヤツが居た。  
「ミルク!? いや、鍵をしたハズなんだけど……」  
「叩き壊しましたミル」  
「なに涼しい声で恐ろしいこと言ってんの!?」  
お世話役見習い、っていうか人として失格だろう、それ。  
ミルクは銭湯でもないのに戦闘態勢だった。  
流れるお湯の間から目を細めると、彼女がタオルに石鹸を付けているのが見えた。  
「じゃあお背中お流しいたしますミル!」  
「ま、待ってくれ!」  
僕は手を後ろに伸ばして、彼女の行動を制止する。  
「気持ちは嬉しいけど、そういうのは良くない。ダメだよミルク」  
「遠慮することありませんミル。ミルクにお任せくださいミル」  
「そ、そうじゃなくて!」  
思ったより声が大きくなってしまった。  
その声は、蛇口を閉めてシャワーの流れる音がなくなった浴槽内によく響いた。  
「ミル……」  
「遠慮とかじゃなくて、ミルクはその……」  
「分かってますミル」  
「え?」  
「だけど、ミルクがこうでもしないと……ココ様には気が付いてもらえませんミル」  
「気が付いてって……」  
彼女に正面を向ける訳にはいかないので、背中越しに会話をする。  
それがなんだか彼女に冷たくしているみたいで、少しイヤだった。  
「ココ様は……のぞみといつも一緒にいますミル」  
「い、いや、別にのぞみとだけじゃないよ。それは皆も一緒じゃないか」  
「ミルクには分かりますミル……やっぱりココ様は、この世界の姿のほうが好きなんですミル」  
「そ、そんなことないよ! のぞみの姿とかじゃなくて、彼女は僕の為に一所懸命になってくれて、優しいし、明るいし……」  
「やっぱり、のぞみのことが好きなんですミル……今、認めましたミル」  
「ふぐっ! ち、違うよ! そうじゃなくて……!」  
一瞬、重心を落とす気配がしたと思ったら、彼女の耳がぽふっと僕の背中に触れる音がした。  
う……いくら姿が違うと言っても、なんだか罪悪感があるなあ……。  
「ミルクだって……皆と同じ姿になりたかったですミル」  
「それは仕方ないよ。ミルクのせいじゃない」  
「そうすれば、ココ様だって少しはミルクのことを……」  
「ミルク……」  
それでも僕は彼女に正面を向ける訳にはいかなかった。  
彼女の言いたいことはなんとなく分かるけど、それに気が付いてあげることはできない。  
「ミルクだって……皆と同じ姿で居たいですミル」  
「それは仕方ないんだよ……王族だけの力なんだ」  
「じゃあ、ココ様の義理の妹にしてくださいミル……養子でもいいですミル」  
「いやそういう問題じゃないから! そんなのでいいなら、いくらでも妹にでもなんでもするけどさ」  
「ホントですミル? じゃあミルクは今日から妹でいいですミル?」  
ぼむっ!  
「はい?」  
後ろでなにか大きな音がした。  
それと同時に僕の背中に触れていた柔らかい感触が消える。  
 
「…………」  
「…………」  
 
なんか出た。  
思わず振り返ると、後ろには見知らぬ裸の女性が座っていた。  
「…………」  
「……なんか出ましたミル」  
「……なんか出たね」  
「わーい、ココ様と同じですミル!」  
「ち、ちょっと待って!」  
おかしい、これは明らかにおかしい。  
僕は頭の中でなんとかこの超常現象に整理をつけようとする。  
「ココ様ー!」  
が、その前に、背中に当たるさっきよりも弾力のある感触が僕の思考を打ち消した。  
「おわあっ!」  
「これでミルクもココ様と同じ姿ですミル。嬉しいですミル」  
「いいいいや、これはおかしい! おかしくないか!」  
「なにがですミル?」  
「だって、王族だからとか、口で言ったからとか、そんなのだけで……」  
「でもなってしまったものは仕方ありませんミル」  
クレイジーだ。パルミエ王国はクレイジーだ。  
自分の生まれ育った国が理解不能になってきた。  
「じゃあお背中お流しいたしますミル」  
だけど、背中に伝わってくる感触だけは、このクレイジーな世界の中で否定できない事実だった。  
「ミルッ♪ ミルッ♪」  
そしてその事実は、僕の脳内で明らかに危険な状態をもたらしていた。  
「うーん、耳が使えないから慣れませんミル……」  
止める間もなく、それを考えるゆとりもなく、ミルクは勝手に僕の背中に石鹸をつけてこすり始めてしまっている。  
「み、ミルク、待ってくれ、やっぱりこれは……」  
「いいんですミル」  
見慣れない手が後ろから伸びてきて、すっとシャワーを手に取ると僕の背中に浴びせていく。  
その手は驚くほど綺麗な肌の色をしていて、少し上気したようにうっすらと浮かぶ紅みがヤケに官能的だった。  
「ミルクは……ココ様のお気持ちも分かっていますミル」  
「ミルク……?」  
「だからこれは、あくまでお世話役見習いの仕事として……やらせて欲しいんですミル」  
流し終わったのか、彼女の手が伸びてきて、蛇口の口をひねった。  
それと同時に再びこの浴槽内に、音の無い世界が訪れる。  
時折シャワーのノズルから垂れる水滴が、タイルに落ちる音だけが聞こえてきた。  
「あ、あ〜……えっとだね……」  
なにか別の話題を見つけようと、言葉にならない音をムリヤリ口から発させる。  
「じゃあ」  
だけど彼女の行動の方が、僕の思考よりも機先を制してしまった。  
後ろからミルクの腕が僕の体に巻きついてくる。  
さっき感じた極上の柔らかさが、僕の背中に押し付けられた。  
「ぶっ!」  
やばい、この感触は本当にやばい。  
なんとか理性を呼び起こそうとしている思考能力も、押し潰される柔らかさの前に霧のように散っていく。  
「もう一箇所……お流しいたしますミル」  
そしてミルクは抱きついたままの体を滑らせて僕の正面に体を持ってくると……  
タオルに隠れていた僕の陰茎を露にして、何の迷いもなくその屹立したモノを口にした。  
 
「……っっっっっっ!!」  
驚く間もなく、既にそそり立っていたその陰茎が、ねっとりとした感触に包まれる。  
んじゅっ、じゅううう……  
ミルクが口にしたその場所から、淫靡な音が聞こえてきた。  
僕はそのモノが大きくなっていたという事実が暴かれたことにも動揺して、その行動を止めることに頭が回らない。  
「んっ、んむっ……ん、むぅ……んむっ、んん、むっ……」  
じゅうっ、ちゅくっ……ちゅううう……ちゅうっ  
「うっ、くう……」  
予想していなかった事態と、その生々しい感触が、僕の体から伝わってくる快感を増幅させる。  
「んん……んんんっ、んっ、むっ……んむ、んんん……んむっ」  
ちゅぱっ、ちゅう、ちゅうううっ……ちゅぶっ、ちゅっ、ちゅぱっ  
しかも段々と動きが激しくなってきた。  
このままじゃマズイ。  
僕はあらん限りの理性を発揮して、彼女の頭をぐっと抑えた。  
「だ、ダメだよ、ミルク……! こういうのはダメだ!」  
「いいんですミル!」  
「いや、ダメだ!」  
僕は官能を打ち消すかのようにぶんぶんと頭を振った。  
「だって、僕たちは仲間で……そういう関係じゃないんだ!」  
「いいんですミル!」  
「ダメだって!」  
「ミルクは……ココ様にとってお世話役見習いでしかありませんミル」  
頭を抑えられたミルクは、その手でぎゅっと僕の陰部を握り締める。  
その手の感触が、またしてもどうしようもなく、僕の煩悩を刺激した。  
「だからこれは……お世話役見習いの仕事だって、それだけで構いませんミル」  
「ち、違うよ! これはお世話役見習いの仕事じゃ……」  
「それだけでいいんですミル。その意味だけでいいから……ミルクにやらせて欲しいんですミル」  
唾液の付いた僕の陰茎の上で、彼女の手がぬるぬるといやらしく動いている。  
こらえていなければ、すぐにでもイッてしまいそうだった。  
「ココ様が喜んでくれるなら、ミルクの体をどんな風に使っても構いませんミル」  
「で、できないよそんなこと」  
「ココ様の気持ちいいことのためだけに……ミルクの体を使ってくださいミル」  
「み、ミルク……」  
「ココ様の言うことなら、どんなことでもお聞きしますミル……ミルクの体はココ様のためだけにあるんですミル」  
そこまで言うと、ミルクは再び僕の陰部に舌で触れ、愛しそうにキスをすると……  
その屹立した棒を、ゆっくりと口内に沈めていった。  
「ぐっ」  
さっきまで少しだけ残っていた理性が、その感触で儚くも打ち消される。  
もう僕の頭の中に、彼女の行動を止められる余裕は残っていなかった。  
「んむっ、んうっ、うっ、んむむっ……んむっ、ふはぁっ、はっ、んっ……」  
もう僕の制止がないことが分かったのか、ミルクの動きが思い切りのいいものになっていく。  
既に肉と化した僕の棒を、彼女の舌と喉が容赦なく責めたてた。  
「はぁっ、はっ、んむっ……んむむ……んっ、んんっ……ぷはっ……はっ、はぁ……んっ、んむむっ」  
「み、ミルク……どこでこんなこと、覚えたんだ……?」  
「聞いたことがあって……だけど迷っていたらココ様に止められてしまうから……初めてだけど、やってみたんですミル」  
「そ、そうなんだ……うっ……」  
「気持ち……いいですミル……?」  
「……うん……気持ちいい……よ」  
心配そうに見上げる彼女に、僕は素直に頷いた。  
彼女の問いかけに逆らえないほど、その行為は僕の脳を溶かしている。  
 
「気持ちいい……」  
そんな僕の答えに、彼女は嬉しそうに顔をほころばせた。  
「ココ様に……誉めてもらえましたミル……」  
決して誉めた訳じゃない。  
だけどそんな僕の言葉を、彼女は心から嬉しそうに受け止めてくれた。  
考えてみれば、ミルクが今までしてくれたことに対して、誉めてあげたことは少なかったかもしれない。  
彼女はそれが自分の存在価値を示すかのように、再びその行為に没頭し始めた。  
じゅぷっ、ちゅうっ、ちゅうう……ちゅっ、じゅっ、んちゅうう……じゅぷっ  
「ココ様……ミルクの体を、好きにして……いいですミル……」  
ミルクの手が伸びてきて、僕の手を彼女の体へと誘う。  
その先には、さっき背中で触れていた彼女の豊満な乳房の感触があった。  
で、でかい……。  
手に少し力を入れると、指がその脂肪の中に沈んでいく。  
「んむっ、んっ、んふぅ……んっ、んんんっ……んっ、むっ……」  
やっぱりミルクだけに牛なのか。  
とかおっさんくさいギャグを考えてしまうほど、この感触は蠱惑的だ。  
その大きな胸の癖に、人としての姿でも小さいその体は、必要以上にいやらしかった。  
思わず胸に触れる手に力がこもる。  
むぎゅっ……  
「んっ、ふうっ、ん、ふっ、んふぅっ……ん、むううっ……」  
おおおおおお……。  
とんでもなく柔らかい。  
この手が沈む感触は、今まで触れてきたものの中でも、極上と呼ぶに相応しいものだった。  
むぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅうう……  
ミルクは僕の手がその乳房を弄んでも、その行動に淀みがない。  
なんだか虐めてみたくなって、指を動かして、その先をクンとつまんでみた。  
「んっ……!」  
僕の肉棒を口に咥えたまま、彼女の体がピクンと震える。  
その突起を親指と中指で責めるように虐めると、彼女の口の動きが乱れ始めた。  
僕が動きを止めずに弄りつづけると、ミルクがイヤイヤとクビを振る。  
「ん、ふっ……あ、あ……こ、ココ様、そこは……」  
だけど僕はそこを虐めるのを止めなかった。  
ミルクは必死に口での愛撫を続けようと、舌を伸ばしている。  
その懸命な姿は、逆に僕の嗜虐心を刺激した。  
「あ、んっ……あ、こ、これじゃお世話役見習い失格ですミル……」  
彼女はへたり込むように僕の股間に顔を埋める。  
「うっ」  
その時、彼女の舌が僕の玉に触れた。  
「ミル……?」  
その様子を見て、ミルクが目の前の袋を不思議そうに見つめる。  
「ここ……気持ちいいですミル?」  
「あっ、いやその……」  
言葉を濁す僕の返事を肯定と理解したのか、ミルクは人差し指でつつつとそこをなぞった。  
途端に、例え様のない快感が神経を上ってくる。  
「み、ミルク……!」  
「分かりましたミル」  
咥えて欲しい。  
そう口にする前に、ミルクは僕の期待に応えるようにして、袋を丸々口に収めた。  
れろっ……れろ、れろ……ちゅうっ……れろっ  
「うううっ……!」  
ミルクの口の中の粘膜に包まれ、その舌で僕の玉が好きなように形を弄ばれる。  
あまりの快感に、理性の時とは逆に、彼女の頭を押さえつけるように抱き締めてしまった。  
「うれ、しいです……ミル」  
それでもミルクは僕のために喜んでくれた。  
僕への奉仕がこの世で至上の悦びであるみたいに。  
 
「んぶっ、んっ、んんんっ……んむぅ、んっ、んっ……」  
男のメカニズムを理解したのか、玉を口で責めながら、彼女の手が僕の肉棒を上下する。  
ここまで溜まった快感に、僕の限界はすぐそこまできていた。  
「み、ミルクっ……! 僕は、もう……!」  
「はい……いっぱい、いっぱい出してくださいミル」  
ミルクは僕の意図を全て理解してくれているのか、口を袋から外して発射寸前のモノを咥え込む。  
そして一際大きく根元を手でこすると……  
「う、うあああっ!!」  
ドクッ!ドク、ドクンッ!  
僕の限界まで達したモノが、ミルクの口内を汚していった。  
彼女は僕の脈動が終わるまでその状態を維持していたが、やがて射精が収まると……  
一滴もこぼさずに、ゴクンと喉を鳴らして飲み込んでしまった。  
射精を終えた僕は、疲れたようにミルクの頭に覆い被さる。  
彼女は僕の体の下で、愛しそうに萎びた陰部に頬擦りしていた。  
 
やっちまった……。  
その後、理性が戻ってきたころに僕を襲ったのは、激しい罪悪感だった。  
「ココ様、元気をお出し下さいミル」  
「出ないって……」  
王子として、教師として、っていうか人として、やってはいけないことをしてしまった。  
「そんなに出してしまいましたミル?」  
「いやそっちじゃなくてね」  
ツッコミをする気力すら出てこない。  
がっくりと肩を落とす僕の頭を、ミルクがタオルでワシャワシャと拭いてくれた。  
「今回のことはミルクが悪いんですミル。もし怒られるならミルクは覚悟いたしますミル」  
「いやミルクは悪くないから……」  
「ココ様が罪の意識を感じるくらいなら、ミルクは強姦罪で逮捕された方がマシですミル。お顔をお上げ下さいミル」  
「じゃあパルミエ王国が復活したら、三年以上の有期懲役な……」  
「待ってくださいミル、待ってくださいミル、よく考えたら他に解決方法があるかもしれませんミル。まずは被告人の陳述からミル」  
謝ってはいるものの、ミルクはご機嫌だ。  
はあ、どうしようかな、このあと……。  
「でもココ様、ミルクは本当にココ様のお気持ちを大事にして欲しいですミル」  
タオルを脇に置くと、ミルクが少し真面目な顔で話しかけてきた。  
「だからミルクは贅沢は言いませんミル。ココ様のお側においていただければ、それで幸せですミル」  
「いや、そういう訳には……」  
「じゃあミルクのお願いを一つ聞いて欲しいですミル」  
「お願い?」  
なにを言われるんだろう……でも責任は取らなくちゃいけないしな。  
僕はミルクに差し出された下着を身に付けながら、彼女のほうへ顔を向けた。  
「ミルクは贅沢は言いませんミル。ココ様に意中の方がいるのは分かっていますミル」  
「い、いや、だからそれは……」  
「だから第二王妃でも構いませんミル♪」  
「はい?」  
なんか今とんでもないこと言われた。  
思わず下着を穿きかけた間抜けな態勢のまま固まってしまった。  
「な、なにを言ってるんだ、パルミエ王国もこの国も、一夫一妻制だよ」  
「だから」  
ミルクは嬉しそうに手を合わせながら身を乗り出した。  
「ココ様が王様になって、パルミエ王国の法律を変えてくださいミルー♪」  
「…………」  
クレイジーだ。パルミエ王国の連中は、どいつもこいつもクレイジーだ。  
「これが絶望の力というやつか……!」  
最早肩を落とすだけじゃ飽き足らず、膝までついた僕の背中に、ミルクが飛びつくように抱き付いてきた。  
 

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