寒さで元の姿に戻ってしまったココをジャンパーの中に抱き、のぞみは雪の中歩いていた。  
ぎゅっぎゅっと、雪を踏む音が夜の街に響いている。  
雪はまだしんしんと降り続き、寒さは増していっている。  
(人間界の冬がここまで寒いとは知らなかったココ。  
 それに比べて、…ほんとにのぞみの中はあったかいココ…。)  
のぞみに申し訳ないと思いつつ、ココはその温もりを満喫していた。  
幸せとはこういうことを言うのだろうか、などとぼんやりと考える。  
 
のぞみの家とナッツハウスへの分かれ道まで来た。  
すっとのぞみが立ち止まる。  
「のぞみ?どうしたココ?ナッツハウスはあっちココ。」  
「わかってるもん。」  
ココを見下げて、頬を膨らます。  
(かわいい…)  
そんな一瞬の表情にすら自分の心は反応し、のぞみを愛しいと思ってしまう。  
それほどココはのぞみのことを好きになっていた。  
 
「ねぇ、ココ。」  
「なにココ?」  
「このまま、あたしの家まで一緒に帰って?」  
「ココ…?」  
「今日は、あたしとお泊り会しよ!…うんっ、そうしよっ!  
 けってーいっ!」  
「こっココーーーッ?!」  
 
彼女の中で既に決定した「お泊り会」のために、のぞみはさっきより勢いよく雪の道を歩き始めた。  
もちろんその方向はのぞみの家の方向である。  
「ちょっとっのぞみっ?!ダメココっ!」  
「なんでダメなの?」  
返事をする間もずんずんと歩き続ける。  
「なんでって…」  
(なんでって…それはっ…って言えるわけないココーーーーっ!)  
ココは一人で赤くなっているが、のぞみは気付かず話し続ける。  
「…だってっココと一緒にいられるのはもう少しなんだよ?  
 ならっその間はできるだけ一緒にいたいんだもんっ。」  
「のぞみ…」  
 
…できるだけのぞみの笑顔を見ていたい、とは思っていた。  
ずっと一緒にいられたら…、ともどこかでは思っていた。  
いつもナッツハウスの前で別れる瞬間がつらかった。  
しかしその願望を認めてしまうと、  
今後待ち受けている本当の別れがますますつらくなることがわかっていた。  
それが怖くて、自分の願望に気付かないふりをしてきていた。  
 
そこへ、こののぞみの提案。  
しかものぞみは素早く実行しようとしている。  
先のことなど気にせずに、今、したいことを真っ直ぐに主張する。  
この純粋さがまぶしかった。  
(これだから…のぞみに…惹かれてしまうんだ…)  
ココは己の想いと不甲斐なさを同時に実感して、そっとため息をついた。  
 
「ココ?!」  
黙ってしまったココに少し不安を感じたのか、のぞみが覗き込んでくる。  
「いい…ココ。」  
「え?」  
「ただしっ今夜だけココ。あと、ナッツに外泊の連絡を入れるココ。」  
「ココ!うんっわかったっ!着いたらすぐに電話するねっ!」  
 
のぞみは嬉しかったのかさらにぎゅーっとココを抱きしめた。  
(…今夜、何もせずにいられる自信がない…ココ。)  
 
 
帰宅後も、のぞみはずっとココを離さない。  
さすがにお風呂の間は離してくれたが、あがってからはやっぱりココを抱く。  
本当はお風呂も一緒に入ろうとしたのだが、それは断固拒否させていただいた。  
そんなの…無理だ。  
 
布団の中に入ってからも横向きに寝転び、ココを抱きしめている。  
「のぞみ。もう寝る時間ココ。」  
「あ、うん。そうだね!」  
そう元気よく答えるものの、ココを放す気配はない。  
「のぞみ?」  
どうしたのだろう、とのぞみを見上げる。  
「ごめん、苦しい?」  
「それは大丈夫…ココ。」  
のぞみは腕の中のココを見つめていたが、ふっと微笑んだ。  
「なんか…ね、ココといつかお別れするのかと思うと  
 …こうすることもできなくなるのかと思うと、ココをずっと抱っこしてたくなるの。」  
「のぞみ…」  
のぞみはココを抱いたまま体をぎゅっとくの字に丸め  
「ココ、大好きだよ。」  
とつぶやいた。  
ココからはのぞみがどんな顔をしているかは見えない。  
ただ、のぞみのトクントクンという心臓の音だけが伝わってくる。  
「ココも…のぞみのことが大好き、ココ。」  
「ココ…」  
ココの一言で、のぞみの心音が一気に早まったのがわかる。  
(ああ、のぞみ…)  
愛しさで胸がいっぱいになる。  
 
「…のぞみ」  
「ん?」  
「この状態だとココからのぞみの顔が見えないココ!  
 一回離すココ。」  
「うん?」  
言われるがままにのぞみはココを抱きしめる腕を緩める。  
 
その瞬間――  
 
「のぞみ!」  
 
ココは人間に変身し、力いっぱいのぞみを抱きしめていた。  
 
「こっ…ココ?苦しいよっ?!」  
のぞみが腕の中で窮屈そうにしながら見上げてくる。  
「ふふ、のぞみだってさっきまで僕のことを抱きしめてたくせに。」  
「そっそうだけど…」  
「僕だって、のぞみの顔を見ていたいし、のぞみのことを抱きしめていたいんだよ。」  
 
のぞみの目がキラキラと潤む。  
ほっぺたも桃色に色づいている。  
その顔は卑怯だ、と思う。  
抱きしめるだけじゃ終わらなくなるじゃないか。  
のぞみは、人間の女の子だし、子供だし、いつかお別れしないとなんだから  
これ以上踏み入っては――  
 
「うん。」  
 
のぞみが背中に腕を回してくる。  
 
「ずっと…ぎゅっとしてて?」  
 
「のぞみ…」  
 
思わず唇にキスを落とす。  
「あ…」  
のぞみは少し驚いたような顔をする。  
それはそうかもしれない。  
数時間前にファーストキスをしたばかりなのだ。  
「ごめん。」  
「ううん。」  
二人で抱き合ったまま黙ってしまう。  
のぞみは腕の中で下を向いてしまった。  
その耳はほっぺたと同じくらい桃色だった。  
「のぞみ。」  
そっと呼びかける。  
 
「キス、してもいいかな?」  
「もう、した後、でしょ?」  
 
のぞみは恥ずかしそうに、かつ、嬉しそうに顔をあげ、目を閉じた。  
ん、という感じに唇を少し尖らせる。  
(ああ、本当にその顔は卑怯だ――)  
 
喰らい付くようにのぞみにキスをする。  
それだけでは足りない気がして、のぞみの唇を舌でなぞってみる。  
のぞみは驚いたのか唇を薄く開ける。  
その隙から一気にのぞみの口腔へ舌を侵入された。  
「んんんんぅーっ?!」  
のぞみはさらに驚いたようで喉の奥から謎の声を発している。  
(ごめん。のぞみ。もう止まらないんだよ。)  
なんて思いながらのぞみの舌を絡めとる。  
今可能な限りののぞみの内部を感じつくす勢いで口腔内を侵し、唾液を吸う。  
最初は戸惑っていたのぞみも、おずおずと舌を絡めてくる。  
 
「んっはぁ…んっ…くちゅッ」  
気が付けば、二人の間からは吐息と粘液の絡まる音が響きだしていた。  
 
 

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