「――で、世話役を体験取材するんだったな。定休日だから別に構わないが」  
「ありがとう。ナッツさん」  
事前にお願いしていた話をナッツさんは快く引き受けてくれた。  
最初はミルクさんに質問しようとしたら、  
「聞くより慣れミル」と返されて、今日私は一日世話役をする事に。  
さしずめ世話役見習い見習いという所かしら。  
ミルクさん曰く「自分が側にいたら、こまちより先に動いてしまいそうで」  
ミルクさんはかれんの家に、ココさんはのぞみさんとそれぞれ出掛けて留守。  
ナッツさんとマンツーマン状態で甘えが許されないわ。緊張するけれど、頑張らなくちゃ。  
「違う」  
「え?」  
「ナッツ‘様’だ。世話役なら主人の事はきちんと様付で呼ばないか」  
「は、はい!よろしくお願いします……ナッツ様」  
 
――こうして前途不安な私の世話役体験が始まった。  
 
 
まずは形から。という事で、ナッツさんが用意してくれた世話役服に着替えてみたんだけど、  
レースのカチューシャとお揃いのエプロン。  
白のニーハイソックス。  
胸元の開いた黒いワンピースは、ホオズキみたいな袖に、ボリュームのあるペチコートを覆って膝の上でフワッと膨らんで。  
……これってメイド服よね…  
 
慣れない服にてこずりつつも着替えてナッツさんの所に戻ると時間はもうお昼前。  
「こんな時間か。こまち、早速だが昼食の支度を頼む」  
「はい、ただいま」  
支度といっても「これだけは任せられないミル」と言って、ミルクさんが出掛ける前に準備してあった料理を温めて出すだけなんだけど。  
私は二階で待つナッツさんの前に料理を運び、並べ終わると、すぐ脇に立って食べ始めるのを待った。  
だけど、ナッツさんは手をつけず怪訝そうに私を見て、そして  
「何している、早く俺の膝に座って食べさせないか」  
「ひ、膝って私がナッツさ……まのに…ですか?」  
「そうだ」  
何事もなさげに頷くナッツさんは真剣そのもの。  
もしかしてパルミエ王国では正式な食べ方なのかしら……  
「し、失礼します」  
私は、ためらいながらナッツさんの膝にそうっと腰を降ろした。  
 
「お、重くないですか…?」  
「大丈夫だ。ちゃんと冷ますのも忘れるな」  
お姫様抱っこみたいで気恥ずかしいけれど、照れてる場合じゃない。  
体験取材なんだから仕事をしなくちゃ。  
きのこのリゾットをすくい、二回息を吹き掛けて冷ますと、体を捻ってナッツさんの口にスプーンを持っていく。  
「ではナッツ様。口をお開けになって下さい」  
「『あーん』は?」  
「……あーん」  
口を開け、冷ましたリゾットを含むと、ナッツさんは満足げに次を促した。  
次々と料理を平らげるナッツさんを見てると、まるで子どもにご飯を食べさせている気分。  
つい嬉しくなって、フフッと笑ってしまう。これがいけなかった。  
「熱っ……し、失礼しました」  
口へ運ぶ途中こぼれたリゾットが、鎖骨にかかってしまった。  
ナッツさんにかからなくて良かった。なんて考えながら、拭き取ろうとした私の手をナッツさんが制止する。  
「いや、そのままでいい。食べ物を粗末にしたら罰が当たるからな」  
そのまま私の鎖骨に唇を這わせて、垂れたリゾットを舐めた。  
 
鎖骨といわず、露出している肩の付け根から膨らみの登り際まで、唇と舌の責めが続く。  
「やあっ…き、汚いですからっ……やめて…んっ、ください」  
首の下で縦横無尽に舐め回している舌の持ち主に話しかけたけれど、顔を上げる気配が全くない。  
「もうきれいに…んぅ…なりましたから…」  
くすぐったくて身を捩ると、ナッツさんはやっと顔を上げてくれた。  
「そんなに動いたら食べられないだろう。それに…」  
取りこぼしたのか、ご飯粒が一つ、服の中に垂れ入ってしまった。  
「そんなに動いたら服に入るぞ、と言おうとしたんだがな」  
 
…………誰のせいでこうなったんですか。  
言おうとした言葉は背中に感じる冷気に遮られた。  
後ろに回した右手がワンピースのファスナーを、ツーッと降ろしている。  
「食べ残し厳禁もパルミエのしきたりで――」  
 
――絶体嘘だわ。  
 
含み笑いをしたナッツさんは、開いたファスナーから手を忍ばせて袖をずらし、ワンピース全体をお臍の辺りまで下げてしまった。  
「やっ…!!」  
「ん?こまち、何故下着を着けていないんだ?」  
 
……あれだけ胸元が開いていたら、ブラジャーが丸見えだもの。着けたくても着けられなかった。  
「淫乱なんだな、こまちは」  
「違います!」  
「じゃ、この尖ったものは何だ?」  
乳房の上で硬くなった私の乳首をナッツさんが指で転がした。  
「…んっ……これは…」  
「これは?」  
コリコリと捏ねるように指遊びをしながら、意地悪な質問を楽しそうに繰り返す。  
どうあっても言わせたいなら……  
「ま……豆大福です」  
素直に言ったりしないんだから。  
「豆大福?……そうか。デザートならしっかり食べないと…なぁ?」  
 
ナッツさんは片方の‘豆大福’を口に含み‘豆’に歯を立てた。  
唇が舌先が歯が、忙しなく私の頂きを責め上げる。  
「やぁっ…んっ、ナッツ…さん、恥ずかし――」  
「ナッツ様だと言ったはずだ。……仕置が必要だな」  
そう言うと、ナッツさんは責めていなかったもう片方の乳首を痛いくらい強く噛み、乳房を伸ばすように勢いよく引っ張った。  
その一方で、空いている左手がペチコートを掻き分け脚の間に侵入してくる。  
激しい痛みの中、甘やかな動きが淫らに音を立てた。  
「はぁんっ!!いっ…いやぁぁ」  
「下は穿いているのか。でもこんなに濡れているんじゃ、意味はないな」  
ナッツさんが喋った事で痛みからは開放されたけど、私はもうそれどころじゃなかった。  
溢れ出る蜜を十分吸い込んだショーツを取り除くと、ナッツさんは指を割れ目を上下させ、丹念に塗り込んできた。  
音が聞こえるようにわざと激しく擦り上げ、細かく出し入れする刺激を、逃がさないよう私の体がくねる。  
「いやらしい動きだ」  
「…言わない…で」  
「折角の服が汚れてしまった」  
「あ…ごめ……なさ……」  
「――聞こえないな」  
「やあぁぁ!んんっ!んーっ……ご、ごめんなさぁぁぁ……っ!」  
 
 
 
 
 
ナッツの指でこまちが達するのと同時に、ナッツハウスの階下で「カラン」と鈴が鳴り響いた。  
トントントンと小気味良い足音をたてて階段を登ると、その人がヒョイと顔を覗かせる。  
「こんにちはー!って……あれ、もしかして思いっきりお邪魔でした?」  
「へぇー、今日は‘主人とメイド’プレイか。ナッツ達は変な所に凝るからな」  
「悪かったな」  
「でもでもその服超可愛い!ココ、わたしも着てみたい〜」  
「じゃあ次は僕たちもそれでやってみようか。ナッツ、今度貸してくれよ」  
「ああ。……あと二・三回済んでからだな」  
「わーい、じゃ約束だよ。けってぇーい!!」  
 
 
 
 
 
終わり  
 
 

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