友達が無惨にも陵辱されている。それも同じ女性に、という
ショッキングな事態に、娘の精神はパニックを起こした。なんとか
しなければ、と思いつつも体が動かない。まるで体が石になってし
まったかのようだ。
心の奥底で、二ヶ月前にあのバナザードに、まだ幼い体を嬲り尽
くされたときの恐怖が甦ってきたのだ。全身に冷や汗が浮き上がっ
ているのを感じた。胸の鼓動が速くなり、膝ががくがくしている。
その一方で、娘の眼前では、二つの肉体、犯すものと犯されるも
はあやしく蠢いている。アニータのうつくしい褐色の肉体は、上に
のしかかっている陵辱者が腰をつきいれる度に、その苦痛と屈辱に
に震えている。レイプ犯の謎の女性は、それとは対照的な白い膚
を、興奮と快感のために朱に染めている。
娘は必死で自分の心に言い聞かせた。落ち着かなければ、この場
所でアニータを救えるのは自分しかないのだ。唇をぎゅっと結ぶ
と、覚悟を決めた娘は剣を持って立ち上がった。そおっと二人の背
後にまわり、謎の女性の首筋に刃をあてた。
「その子から離れて、立ちなさい。早く! 両手は上に上げて」
決しては大きくはないが、鋭く厳しい声だった。内心娘は自分に
こんな声が出せたのかと驚いたくらいだ。しかしレイプ犯はすこし
は驚いたようだが、すこしも慌てたそぶりをみせず、娘の指示に
従った。なごり惜しそうに、アニータの女性器からペニスを引き抜
く。
女性が立ち上がり、娘にむきなおったとき、あのペニスの正体が
わかった。長い、やや湾曲した樹脂製の棒だったのだ。それが半分
ほどは謎の女性の女性器に深々と埋もれている。その根元からは愛
液が溢れ出て、膝まで濡らすほどだった。反対側がアニータのあそ
こに侵入し、陵辱を繰り返していたのだ。やや弾力があるらしく、
それの先が娘の目の前で、小馬鹿にするようにぷらぷら揺れた。そ
の先にはなまなましい鮮血が付着している。アニータの花びらが踏
みにじられたときのものだろう。改めて、娘はそのおぞましさに戦
慄した。
娘は知らなかったが、それは双頭ディルドーと言って、女性同士
の性行為に用いられる性具であった。
剣の先は謎の女性につきつけたまま、娘は横目でアニータの状態
を確認した。どうやら、気を失っているらしい。あちこちに殴打と
切り傷がある。股間から血が流れ、体の下の草まで濡らしているの
が見えた。
アニータは娘と同い年。普通なら「男を知る」年ではない。それ
なのに、望まぬ事態によって、その純潔を散らされてしまったの
だ。男勝りな行動の一方で、だれよりも女性らしい繊細さを持って
いたのに…。目から涙があふれそうになったが必死でこらえ、謎の
女性を見据えた。
「な、なんでこんな酷いことを…。あなたは誰なの!?」
女性のほっそりとした顔は美しかった。だが、それを美しいとい
うことは、血まみれのナイフを褒め讃えるようなものであった。細
い眼には、鋭さとともに、狡猾で残忍そうな光がひかっている。そ
れはあのバナザードすら凌駕しているように娘には思える。きれい
に紅がぬってある唇にはさきほどから冷笑が浮かんでいる。それが
いま動いて、娘の問いに対して答えを発した。
「あたしの名は“血薔薇のバニスター”。聞いたことぐらいあるで
しょ?」
その名を聞いて娘は驚いた。“血薔薇のバニスター”といえば、
残忍さではこの国一番と言われるほどの盗賊である。被害者が皆殺
しにされることなど珍しくないという…。この水郷地帯に潜んでい
たのか。
「さっき、ここの隣の島でさぁ、なんかそこのチンクシャが“たい
じしてやるー”なんて突っかかってきたのよ。で、軽くひねって
やったんだけど、ただ殺すだけじゃ面白くないから、ちょっとお仕
置きしてやったのよ。実はここ、あたしのお気に入りの場所なの。
あたしからみたらあんたのほうが賊だわ。」
そこまで言うとバニスターはげらげらと笑い出した。
「ま、がさつそうなやつだったけど、体はけっこうおいしかった
わ。それに…」
バニスターの顔がいっそう邪悪そうに歪んだ。
「バージンいただいちゃったし。」
バニスターの嘲笑を聞きながら、娘は考えをめぐらせた。アニー
タもまた、武勲をたてるべく水郷地帯に赴いたのだろう。それがこ
んな無惨なことになるとも知らずに…。アニータは若年とはいえな
かなか手練の剣士だった。それを倒したというのであればこのバニ
スターという賊、かなりの強さだ…。
激しい怒りを含んだ娘の視線を正面から受け止めながら、バニス
ターは再び口を開いた。
「あたしは面倒なことが嫌いなの。200Gあげるから見逃してくれ
ない? その子もつれてかえっていいわ」
娘は呆れた。この女はそんなことが本当に通ると思っているのだ
ろう。しかも自分は丸腰どころか素っ裸で、相手に剣を突きつけら
れているのである。だが、呆れた奴とはいえ油断は禁物である。場
合によっては四肢の腱を断ち切ってでも…。娘の口から怒声がもれ
た。
「断るわ。あんたみたいな奴大嫌い!!」
娘の返答を聞いたバニスターの眼がぎらりと光った。さらに歪ん
だその唇から呪いの言葉が出た。
「愚か者め! 地獄で後悔するといいわ!!」
もう許さない。そう思った娘が女盗賊に向かって一歩踏み出した
瞬間、空気が切り裂かれる音がした。
黒い、小さいなにかが娘の頬をかすめた。かすめた箇所にかすか
に血がにじむのを娘は感じた。投石だ。石だといって馬鹿にできな
い。訓練されたものによるそれは、娘の頭ぐらいかんたんに砕くで
あろう。しかもそれはその一発だけではなかった。
二発、三発、四発…次々と、しかも複数の場所から石は放たれ
た。娘は草のうえにころがってそれらを避ける。しかし眼は素早く
動いて、敵の居場所をさぐりだそうとした。いた。草むらのある場
所にみえた微かな人影にむかって、娘は剣を振り下ろした。
絶叫とともに敵は草むらから転がり出て、月光にその正体をさら
した。ヒトではない。すくなくともまともなヒトではない。右肩を
袈裟切りにされてのたうちまわるそれは、あきらかにヒトのものと
は違う黒みがかった紫色をしていた。赤いトンガリ帽子をかぶり、
緑色のシャツと黄色いズボンを着ているが、それらはいま、自分自
身の血で赤く染まり始めている。人さらいだ。
人さらいは、邪悪な亜人類ともモンスター化した人間とも言われ
るが、その正体はよくわからない。だが王国の住民たちにとってお
ぞましい存在であることはたしかだ。背中にしょった大きな袋に子
供や若い娘を放り込んで連れ去ってしまうとされている。
ま、まさかこいつらはバニスターの仲間なのか…? 娘は驚いた
がすぐに頭を切り替えた。ひとさらいはこいつ一人ではない。それ
にアニータとバニスターは…。
ラフレシアの方角へ眼をむけた娘は、自分が完全に失敗したこと
をさとった。人さらいがひとり、アニータの上半身を後ろから抱き
かかえながら、その首筋に短剣をつきつけていた。その意味すると
ころは明らかであった。その人さらいは嫌な笑いをうかべながら、
空いている方の手で、アニータの小振りな胸をもてあそんでいる。
その横にバニスターが立っていた。いつの間にかディルドーを引
き抜き、その先端をいとおしそうに舐めている。
娘があきらかに狼狽しているのを悟ると、バニスターは満足を笑
みを浮かべ、高笑いをあげた。その背後にはさらに数人の人さらい
たちがおり、唱和するかのように彼らも笑い声をあげる。
「あんたの負けよ。たのしかったわぁ。こっちのチンクシャの命が
惜しかったら剣をすててね、ウサギちゃん」
娘はその言葉に従った。自分はじめから負けていたのだ。おそら
くこの女は、陵辱を楽しんでいる最中も、自分のまわりをこの人さ
らいたちに周りを厳重に警戒させていたのだ。あの余裕はそれゆえ
のものだったのだ。娘は自分の浅慮に腹が立った。涙が出そうだっ
た。バニスターが娘に近づいて来た。
右手を娘のあごの下にあてて、強引に顔をあげさせた。娘の顔を
まじまじと見つめたバニスターは、思わず感嘆の声をあげる。
「あらあら、よくみるとかわいいウサギちゃんだこと。たっぷりお
しおきしてあげるわ…。まっててね、いますぐ気持ちよぉくしてあ
げる…」
そう言うとバニスターは毒々しいまでに真っ赤な自分の唇を、娘
の可憐なピンク色のそれに押し当てた。ファーストキスが奪われた
ことを悟った娘の眼から、とうとう一筋の涙がこぼれ落ちる。
バニスターは残忍さだけではなく、性技にも通じていた。彼女の
舌はすかさず娘の唇を押し開くと、その中に侵入した。そしておも
うがままに娘の口腔の内壁や舌、歯茎を嬲り尽くす。
思わぬ方向からの快楽責めに、娘はなすすべがなかった。バニス
ターに唾液をすわれ、もしくは反対にバニスターの唾液を飲まされ
ながら、快感に敏感に反応する。乳首が、シルクの鎧の上から確認
できるほどに固くしこった。娘の程よく日焼けした膚は、興奮が高
まるにつれ赤く火照る。いまだ純潔の股間の秘裂からは、粘り気を
もった液体が大量にもれだし、太ももにまで伝わった。それをみて
人さらいたちもにたにたと笑いつつ、ズボンに隠された陰茎をそれ
ぞれ硬くした。
娘の顔から気迫が失われていく。あれほど鋭かった瞳すら快楽に
蕩ける。しばらくの後、バニスターの唇がようやく娘を解放した。
ふたりのくちびるの間にねっとりとしただ液の橋がかかり、月光に
一瞬光ったあと崩れ落ちた。娘の体はまるで糸を失った操り人形の
ように、地べたに崩れ落ちる。
足下に崩れ落ちた娘を見下ろしたバニスターは満足そうにうなず
くと、気を失った二人の娘を、アジトまで連れて行くよう、人さら
いたちに指図を下した。彼らはそれを直ちに実行に移した。
人さらいの一人からうけとった鎖帷子とムチを装着しつつ、バニ
スターはこのあと始まるであろう狂乱の宴に思いを馳せた。主役は
もちろん娘である。
「ふふふ、あのウサギちゃん、どうやって料理してあげようかしら
…」
そしてまた笑う。いつの間にか月は赤く染まっていた。まるで、
このあと娘を待ち受ける運命を予感したかのように…。
「どこなの? ここはどこなの!?」
どことも知れない薄暗がりのなかを、娘の意識はさまよってい
た。娘の周囲は、見渡すかぎり灰色の荒野であった。すさまじく冷
たい風がびゅうびゅうと吹きつける。寂しさと不安、そして焦燥感
が、娘の心を締めつける。
しばらくの間荒野をさまよい歩き、ついに疲れ果てた娘は、つい
にその場に立ち尽くした。手足が鉛のように重い。餓えと喉の渇
き、胃の底からわきあがる不快感に、魂を食い尽くされたかのよう
に…。
「もう…ダメ…」
ただ立っている力さえ失い、娘は地面に崩れ折れそうになった。
が、その時だった。それまで風の音しか聞こえなかった荒野に、人
の声がしたのである。
娘はもう一回気力を振り絞って体勢を建て直すと、必死で耳をす
ませた。
“あ…ああっ…っぐうう”
それは聞き覚えのある声であった。それも尋常なものではなく、
苦痛の呻き声である。その声の主に思い当たった瞬間、娘は荒野に
向かって絶叫を発したーーーーー
「はっ!?」
娘が眼を開くと、目の前には幾人もの屈強な男たちがいた。人間
と人さらいたちが半々である。娘の声に驚いたのか、ほんとんどの
男が一瞬娘の方へ顔をむけたが、すぐに自分たちの前で展開されて
いる物事へ注意を向け直す。
そこは石造りの地下室のようであった。じめじめとした不快感が
娘の柔肌に染み入ってくる。広さはちょっとした貴族の邸宅の食堂
ほどである。松明がいくつも盛んに焚かれており、視野は思いの他
明るい。
その一角にダブルベッドほどの大きさの石の板が垂直に立てられ
ており、娘の両手首と両足首は、その表面に鉄の輪でがっちりと押
え付けられていた。つまり娘は、あの教会でよくみる神の像のよう
に、その石の板の上に磔にされているのだ。
しかも、両腕だけ左右に開いている神の像とは違い、娘の両足は
股をおおきく開いた格好で固定されていた。羞恥心を覚えた娘は、
思わず足を閉じようとするが、それは当然かなわない。立ったまま
娘は身をよじらせた。
幸い“シルクの鎧”の布の部分はそのままであったが、籠手や膝
当て、頭飾りといった金属部分は奪い去られていた。自分の置かれ
ている状況を把握した娘は、注意を眼前の男たちに戻した。
男たちのまえには、なにか柔らかそうな褐色の物体が横たわって
いた。下半身を曝した男のひとりがその上にのしかかり、上下にう
ごいている。褐色のそれは必死で逃れようとするが、残りの男たち
にがっちりと押え付けられている。
褐色のそれに気づいた娘は、また大声をあげそうになってしまっ
た。声だけではなく吐き気さえわいてきた。男たちに好き放題に蹂
躙されているそれの正体は…アニータであった。
仰向けに押え付けられているアニータにのしかかった男は、下卑
た笑顔を浮かべながら、腰を振り続けている。アニータはいやいや
をするかのように、必死で首を振っている。そのたびに彼女の真っ
赤な髪が激しく揺れる。
だが、アニータにできる抵抗はそこまでであった。娘のそれより
は小ぶりだが形のいい乳房も揺れたが、それは男たちを喜ばせただ
けであった。アニータを犯している男はその右の乳首を激しくかみ
と、ますます激しく腰を動かす。
アニータの赤い髪は、なにか粘性をもった液体でぐっしょりと
なっていた。その正体に気づいた娘は思わず鳥肌を立てた。それは
精液だったからだ。髪だけではなく、かつては凛々しく輝いていた
顔も、男たちの欲望を思う存分ぶちまけられて穢されていた。おそ
らく、娘が目覚める相当まえから、荒くれ男や人さらいたちに嬲ら
れ続けていたのだろう。それを思うと、娘の目に涙があふれはじめ
た。
アニータの赤い髪は、なにか粘性をもった液体でぐっしょりと
なっていた。その正体に気づいた娘は思わず鳥肌を立てた。それは
精液だったからだ。髪だけではなく、かつては凛々しく輝いていた
顔も、男たちの欲望を思う存分ぶちまけられて穢されていた。おそ
らく、娘が目覚める相当まえから、荒くれ男や人さらいたちに嬲ら
れ続けていたのだろう。それを思うと、娘の目に涙があふれはじめ
た。
アニータにのしかかっている男の動きに変化が起こり始めてい
た。クライマックスが近づいているのだ。ふいに男の腰がふるた。
アニータの胎内に子種がそそぎこまれたのである。
しばらくなかの感触を楽しんだ後、男はアニータから身を離し
た。ペニスの先端とアニータのアソコに、白い毒液の橋が一瞬かか
り、そして消えた。アニータの秘部周辺は、たびかさなる陵辱に
よって真っ赤にはれあがっていた。窒からあふれた精液が太ももを
つたわり、石がしかれた床の上に垂れ落ちる。そこには白い大きな
水たまりができていた。もう数十回目であろうか、絶望の種を窒と
子宮にそそがれたアニータの眼の光は消え、体からはすべての力が
抜けてぐったりとしている。
娘は怒りに震えた。もはや自分ひとりの身の安全などかまってい
られない。男たちをあらん限りの力を振り絞って罵倒しようとした
その瞬間、女の声がした。
「あーら、おめざめかしらウサギちゃん?」