娘は目を閉じ息を潜めて待つ。父親からの――これからは彼女の夫となる男からの誓いの口づけを。  
 唇に触れた先から温もりが伝わる。彼とのキスは初めてではなかった。幼い頃、何も知らない無邪気だった頃、彼への想いに気づきもしなかった頃、何度ねだったことか。  
 ――パパ、ちゅーして!  
 ものあの頃には戻れない。だけど何も変わりはしないのだ。今までも、これからも男はずっと傍にいてくれる。  
 お父様、そう言おうとして言葉を飲み込む。先ほど約束したばかりではないか。これからは別の呼び方をするのだと。  
 「あなた……」娘の切ない吐息が男の唇を撫でる。二人は離れ、しばし見詰め合う。  
 その間、娘は自身の左手の薬指を撫でた。男が渡した指輪の硬い感触がする。  
 彼女を包むのは真っ白なドレス。目の前には愛する男。  
 二人だけの結婚式は終わろうとしている。  
 その後続くであろう夜に思いを馳せ、娘はもう一度目を閉じた。  
 
 男は 娘を横抱きに持ち上げ、寝所へと向かう。娘は瞳を閉じたまま身を任せる。上下の揺れに。男の厚い胸板に。  
 やがて二人は淡いランプの灯りで照らされた寝室に辿り着く。男は娘をベッドに下ろした。  
 そこは男が普段使っている寝台だった。二人が眠るにはいささか窮屈過ぎる広さ。結婚という儀式を急ぎすぎて今後の生活を考慮しきれなかった。早く新しいベッドを買おう。娘は密かに決意する。  
 男は娘の上に覆いかぶさった。彼が落とす影に娘は心の奥底にあった恐れが首をもたげるのを感じた。  
 それはとても痛いと聞いた。耳年増な友人たちがそう騒いでいた。娘はそれを聞きながら男とのその日をどんなに心に浮かべたことか。幾日も、幾夜も、時には指でそこに――男に触れてほしいと思うそこを――慰めながら。  
 ようやく待ち望んだ日が来たのだ。しかし、彼女は震えている。自分はどうなるのだろう。  
 そんな娘の心境など構わないかのように男の手が娘の身体へ伸びる。背中へ滑りより、衣装の紐一つ一つを解く。娘の縛りを失くすかのように。そして全てを終えると娘の両肩を掴み、ドレスを下へと落とした。それと共に娘の硬くなった心も剥がれ落ちるようだった。  
 
 男は目を細める。娘の肌の白さに。そこに流れるのは魔の血。かつて男が愛した女の血。娘の姿もまた――その女を思い出させる。  
 もちろん男は承知していた。娘はあの女ではない。しかし敢えてそこに目を背ける必要もないだろう。彼は彼女の全てを愛しているのだから。  
 かの女性がかつての宿敵と交わって産まれた子であることも、男が我が子のように育ててきた事実も、そして娘を妻としてずっと傍にいさせたいほど愛していることも。  
 今、彼女に欲望を抱いていることも――男は全て受け入れていた。  
 
 男は娘の身を包む全てを取り上げる。娘の震えが空気すら揺らしているようだった。彼はこの時どうすれば良いのかを知っている。男は娘の細い身体を抱きしめ、彼女の髪を優しく撫でた。幼い時からこうしてきたのだ。  
 男は自身の口元に近い娘の耳たぶをそっと噛む。びくりと跳ねる彼女の身体を相変わらずその腕で包んだまま、男の唇は降りてゆく。娘の首筋へと、彼女の豊かな胸へ。  
 先端を含んだ。男の舌によって娘の蕾は硬くなり、たちあがる。空いたもう一つの丘は男の掌に包まれ形を変えていった。  
 「ああ、ああ……」娘が切なそうに喘ぐ。  
 男は娘の胸を蹂躙しながらゆっくりと彼女の身体全体をベッドへと沈ませる。そして一旦娘の身体から離れ、また近づいた。唇へと。  
 手で娘の顎を持ち上げ、唇を重ねる。男の舌が娘の口内に割り込んだ。歯茎をなぞり、娘の舌を巻き込んで唾液で互いを濡らす。くぐもる水音はやがて一糸のきらめく形となり、二人の唇の間で零れ、 落ちてゆき、シーツに染みを作る。  
 
 男は手をかざし、娘の肌の表面をなぞる。胸も、腹も、太ももも、どこも柔らかく、なめらかだった。こんな身体でどうやって剣を取って幾人もの猛者と渡り合ったのだろう、今更ながら男は不安になる。  
 娘は知らなさ過ぎるのだ。己自身を。その美しさを。何時までもお転婆で、少年のように跳ね回って、どんなにハラハラしたことか。  
 快活な娘の元には常に友人たちがいた。もちろん男友達も。  
 沢山の男性が彼女に求愛をした。中にはとても高貴な者もいた。強く優しい理想のような少年もいた。 魅力的な異性たちが娘に愛を示しても、彼女は結局誰も選ばなかった。いや、最初から決まっていたのだ。  
 何時からか男も気づかざるをえなかった。その熱い眼差しを。丸みを帯びた身体を。  
 もう、そこから逃げなくてもいいのだ。娘は勇気を出して男に言ってくれた。まっすぐな愛を。それを受け入れなくてはどうするのか。  
 
 男の指が娘の下腹でうずまく茂みを掻き分け、触れる。娘の秘めた性が隠れている入り口へ。娘は声を上げた。羞恥と、切なさと、悦びで。  
 娘のそこは濡れそぼっていた。誘うかのようにひくひくと蠢く。  
 男はこれ以上耐えられなかった。下着をおろし、己の隆起した男根を出す。  
 娘は息を飲んでそれを見つめた。初めてだった。男のこんな姿の性器は。おぼろげな幼い頃の記憶ではこんなものではなく――そもそも彼は娘にあまりそれを見せなかったが。  
 大きく、猛々しく、上を向いて。あれが己の中に入るのだというほんの少し先の未来を娘は想像しようとして、止めた。ここまで来たのならもう男を信じて全てを任すしかない。  
 
 男は己の先端を娘の割れ目へ宛がう。滴る液が男の亀頭を包み込む。  
 男はしばし思案する。ゆっくり進むべきか、それとも一気に終わらせるべきか。どちらが娘の痛みをより少なくさせるのだろう。  
 「大丈夫だよ」ふと娘が囁く。「でも……ぎゅっと抱き締めて」甘えるような声。上目遣いの仕草。そうだ。痛い時は必ずしていた二人の約束。娘が子供の時から求めてきたもの。  
 男は少し先端を離してから、娘の腰を掴み、引き上げた。自然と娘は男と向き合う形になる。二人は微笑んだ。男は娘の腰を浮かせながら、己の男根へと再び導く。後は娘を降ろすだけ。  
 娘はうなずいた。  
 男は娘の腰を落としながら、先端を彼女の中へ沈ませる。娘は男の首に腕を回した。  
 姿勢に少し無理があるため、男は一息に終わらせることに決めた。腰を突き上げる。しかし貫くには男の根は太すぎた。きつい。男は顔をしかめる。このまま続けてもいいのか。壊してしまうのではないか。  
 いや、もう後戻りは出来ない。  
 娘もあまりにも痛みに歯を食いしばる。差し迫る熱い塊に押し込まれ、娘は悶える。裂かれるような、ちくちくと小さな針で穴を開け続けられるような、とにかく自分の膜を破く痛みに。  
 だが耐える。全てを男で埋め尽くすとき、彼は娘を強く強く抱き締めてくれるだろうから。  
 ――終わりは突然だった。ふと娘の腰が下へとずり落ち、娘は心の準備が出来ずにやってきた圧迫感に思わず悲鳴を上げる。  
 「お父様!」  
 助けを呼ぶかの声に男ははっとする。娘もまた男を父と呼んだことに瞬間の痛みすら忘れてしまう。  
違う、彼はもう……そのために娘は男と夫婦の契りを交わしているのではないか。  
 娘の胸中に己への戒めが広がるが、男は違う考えを持っていた。  
 男は娘の耳に口を近づかせ、囁いた。娘の名を。そして抱き締める。ぎゅっと力強く。  
 応えてくれた、娘は気づく。父と呼んでも男は変わらずあの頃と変わらず名前を呼んで、抱き締めてくれて。  
 「お父様!!」娘はもう一度叫び、男の背中にしがみつく。そうだ、変わらないのだ。男が娘の父親だった事実と記憶は、たとえ二人の関係が変わっても未来永劫残っている。  
 それに娘は父親であった男の全てを愛したのだから。  
 「お父様、好き。大好き」娘の目に留まっていた涙が彼女の頬を光らせる。男はもう一度頷き、彼女の髪を梳いた。  
 
 二人は寄り添ったまま静かに行為を再開させる。男はゆっくりと繋がりながら娘の中で円を描いた。 そして少し腰を浮かせ娘の中で油送を繰り返す。娘の襞が繰り返し繰り返し男を引き寄せては、押し戻す。  
 娘はじくじくと継続する痛みに息を切らせる。だが苦しみは感じなかった。  
 男の呼吸もまた荒くなる。気をゆるめれば娘の膣内で激しく腰を動かしくなるほど余裕がなくなっていた。必死に己を律しながら小刻みに娘の内壁に男根を擦り、快感を高めさせる。  
 ――そして腰をめいっぱい突き上げ、限界まで競りあがらせた精液を娘の中へ送り出す。  
 娘はじわっと注がれた男の熱い欲情が自身の中心へと向かい降り立ってゆくような気がした。  
 しばし二人は動きを止める。息遣いが辺りに響く。  
 娘は下腹を撫でる。男の種を受けたそこを。子供が出来るのだろうか。出来て欲しい。でも出来たら今度こそ男をお父様とは呼びづらくなるな、と思った。  
 いや、二人きりの時はこっそり読んでしまおう。二人だけの秘密として。それぐらいは許されても良いのではないだろうか。なぜなら、男はやはり娘の父でもあるのだから。  
 「お父様」娘は男の肩に頭を置く。眠りの到来を感じながら。昔のように。幼い頃のように。これからも、ずっと。――大好き、私を放さないでね。自身がそれを呟いたのかどうか娘は確かめることが出来なかった。そのまま夢へと誘われてしまったから。  
 男は娘が寝入ったのを見つめ、頬を緩ます。娘を起こさないようにそっと娘と一緒に横たえ、男の腕を枕にさせる。どんなに大きくなろうとも彼女は男の腕の中にすっぽりと入るだろう。  
 シーツを引き寄せ、目を閉じる。  
 ――愛している。眠りに落ちる前に娘へ囁いた己の言葉をはっきりと心に残しながら。それは誓いだった。誰よりも愛する我が子への、妻への。  
 

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