「このチビ助、遊びすぎなんじゃないか?」
控えの間へ続く通路でアニータが声をかけてきた。
「大丈夫。軽いウオーミングアップよ」
とろんとした笑顔で爆乳少女が返すが、その乳房には無数の痣と血が滴っている。
「どうだか。戦いはいつも本気でなきゃ命を落とすよ」
アニータの目はいつになく真剣だ。
「大丈夫。あなた達との試合は最初から飛ばすから」
「だったら安心した、私は試合があるから」
「負けないでね」
「私が負けると思う?」
アニータは後ろ手を振りながらコロシアムに向かった。
「お怪我は大丈夫ですか?お嬢様」
控えの間に戻ると執事のキューブが大きなタオルを少女に羽織らせる。
「大丈夫、治癒魔法で直せるから。それよりキューブ。シルクの鎧のスペアを……」
「もう用意しております」
「ありがとうキューブ」
少女はまず治癒魔法を唱え始めた。
聖なる光が溢れ見る見る傷や痣が消えていく。
快感にも似た感覚が身体を走る。
これがあるから怪我の治癒は少女の楽しみになっているのだ
治癒系の魔法は、勇者である父親が魔王との戦いで深く負った傷を癒す目的で必死で覚えたのだ。
その成果で勇者の怪我は完治し、戦士として現役復帰を果たしている。
「はい、お嬢様」
キューブに差し出されたタオルで身体についた血を拭きとる。
そしてキューブはシルクの鎧のスペア…乳首部分の薄絹だけだが…をミスリルを編んだ紐に付ける作業を始めた。
キューブは修理しながら思考をめぐらす。
この父娘には常識が通用しない。
少女は幼い頃からの爆乳で、既製品の服が着れずに冬でもシルクの鎧一丁で過ごしている為、羞恥心が非常に薄い。
居間でくつろいでいる時も、だいたい全裸で父親の膝の上でちちくりあっている。
天性の素質と、毎晩続けられている『戦士として痛みに耐えるための特訓』の成果で、
少女に対するダメージは全て快感でしかない。
『……魔族でもここまで凄いのは居なかったよなぁ……』
彼としては非常に興味深い研究対象を見守り続けるだけである。
「お嬢様、直しましたけど予備のシルクがもう無いですよ。気をつけて闘ってくださいね」
乳首部分の僅かな布地を付け直したキューブがシルクの鎧を差し出す。
武闘会前の辻試合ラッシュで鎧の布地部分を浪費し、その補充が間に合っていないのだ。
「ありがとう気をつけて闘うわ、次の相手は……え〜と…チャン・クーロン…」
何事もなかったのように乳首を隠すだけの鎧を装備しながら、次の対戦相手の確認を始めた。
「チャンは東方の拳法家です。攻撃は一流、防御は四流の極端な奴です。
魔法は使いませんが、魔法を防ぐ術は心得ているようです」
「接近戦か……鞭よりは楽ね……ところでウェンディーは?」
「ウェンディー様はまだ治療室にいらっしゃいます。傷が深かったので試合直前まで大事をとるそうですよ」
「そう。大丈夫だと良いんだけど……」
少女の表情が曇る。
順当に行けば彼女と準決勝で当たる筈だ。
それまで無事に勝ち進んでくれることを祈った。
アニータの試合は相手を終始圧倒する形で勝利した。
ウェンディーも序盤から強力な魔法を発動させて一気にケリをつけた。
脚の傷をかばっての戦術だ。
さて、勇者の娘の試合の番になった。
「カカッテ来ナサイ!」
試合開始直後に少女を挑発するチャン。
少女が開始数分間回避に徹するのを分っていての事だ。
普段と違いチャンの手にはトンファーが握られている。
「そうきたわね……」
勇者の娘は化頸(かけい)の避正斜撃(ひせいしゃげき)の構えで
チャンを中心に円を描くように、しょう泥歩(しょうでいほ)を始めた。
完全な防御の構えだ。
「コナイナラ、コチラカライクアルヨ!」
チャンが軽やかな歩方で少女に近寄る。
「ハァッ!」
トンファーを袈裟懸けに繰り出す。
勇者の娘は右足を前に出したまま姿勢を思いっきり低くしてかわす。
本来ならここから脚払いの前掃腿(ぜんそうたい)にいくのだが、
はじめの数分は回避に専念せねばならない。
チャンは矢継ぎ早にトンファを振るう。
『攻撃だけは一流』のチャンだけあって、その連続攻撃は凄まじい。
勇者の娘は異常に柔らかい身体を駆使して避け続ける。
それでも『遅れて暴れる乳房』が避けきれずにトンファーの洗礼をうける。
「ハァ!!」
チャンが下段からの攻撃をかわされた後にフェイントのトンファーキックを放つ。
少女の身体は余裕で避けたが、慣性の法則で暴れる乳房に蹴りが決まった。
「手モ、足モ、デナイアルカ?」
ほくそ笑むチャン
「なかなかやるわね。でもこうされたらどう?」
少女はチャンに一気に接近した。
トンファーの間合いの更に内側に入り密着状態に近い形で打撃を捌き続ける。
武器を振るおうにも間合いが近すぎて、チャンには上手く対処できないのだ。
少女が行っているのは化頸の高等戦方、挨幇依靠(あいほういこう)だ。
守りには弱いチャンが攻めあぐねていると野次が飛ぶ。
「なに乳繰り合ってんだよ!」
確かに密着に近い状態でチャンの目の前で巨大な乳が揺れている。
観客から見れば乳繰り合っているように見えなくも無い。
「トンファーなんぞ捨てて乳揉んだれぇ!!」
その野次がチャンの心を激しく揺さぶり動かした。
「ウリャァァァァァァァ!!!」
おもむろにトンファーから手を離し、目の前の爆乳を鷲掴みにするチャン。
勇者の娘としては完全に予想外の攻撃だった。
国王陛下の前でそんな破廉恥な行動を起すとは思わなかったのだ。
さらに密着して相手の動きを封じる挨幇依靠(あいほういこう)が完全に仇となった。
「きゃーっ!!」
「秘伝ノ関節技アルヨォ!!」
思わず悲鳴をあげる少女。
チャンは素手で戦う格闘家だけあって、凄まじい握力を誇る。
爆乳を鷲掴みのまま乳房が変形するくらい拳をめり込ませたり、
反対の乳房を引き千切らんばかりに捻りつぶし捏ね繰り回す。
ちなみにこれは絶対に関節技では無い。
少女は「回避のみ」を父親から命じられているので、乳房を掴んだ拳を払うことが出来ない。
「くそぉーーー!その手があったか!!」
「俺、明日になったらおっぱい娘に辻試合申し込むんだ!」
「揉ませろ!俺にも揉ませろ!!」
スタジアムに野郎共の怒号が響き渡る。
「うらやましいのう」
貴賓席の国王陛下がその光景を見てボソリと呟いた。
クルーガー将軍も深く頷く。
が、父親である勇者の殺気を感じ二人とも姿勢を正した。
勇者はこの光景を苦々しく見守っていた。
この少女の乳房を揉んだり、叩いたり、しゃぶったり、握り潰してよいのは父親である自分だけの特権だったはずだ。
「嫌ぁーやめてーぇ!」
少女の悲鳴がこだまする中、乳房を嬲り続けるチャン。
すでにシルクの鎧から乳首がはだけて衆人環視のレイプに限りなく近いものだった。
少女は身体を許して良いのは父親だけと誓っているのだ。
しかしよりによって、このハゲに揉まれまくっているのである。
巨大な乳房が暴力によって様々な形に変化する。
父親でないのに何故かとても気持ち良い。
それが悔しかった。
勇者の娘の自尊心は崩れる寸前だった。
涙目寸前で父親の姿を泳ぎ見ると…
父親は首を親指ですっとなぞるサインを出した。
『殺レ』のサインである。
一瞬で少女の顔に闘志が戻る。
乳房が千切れそうに痛気持ち良いが父親のいつもの責めに比べればたいしたことは無い。
それよりハゲに乳房を掴まれているという羞恥心から開放されたい一心だった。
両の乳房を掴まれたまま身を沈め双拳掌(そうとうしょう)をチャンの鳩尾に放つ。
乳房が引き千切られるくらい痛いが気にしない。
ドン!!
打撃音ではなく彼女の震脚の音だ。
その重い音と共にチャンが吹き飛ぶ。
爆乳虐めに集中していたチャンに密着状態から全体重をかけたカウンターが決まった。
少女は間合いを取り鎧の乱れを直す。
乳房にはチャンが掴んだ跡と無数の痣が残っていた。
『簡単に楽にはさせない』
少女の怒りの炎が燃え盛る。
両の乳首が隠れて観客の男共が意気消沈した時、ようやくチャンが起き上がった。
その両脚は既にガタガタ来ているのが遠目にも分る。
少女は攻撃の為に三尖相照(さんせんそうしょう)の構えをとる。
そして目にも止まらぬ速さで放長撃遠(ほうちょうげきえん)の突き。
ゴリッ!
鈍い音がしてチャンの肋骨が折れる。
「はっ!」
バキッ!
続けて裡門頂肘(りもんちょうちゅう)の肘が肋骨を更に打ち砕く。
「てぇぃ!」
最後に鉄山靠(てつざんこう)の激しい体当たりでチャンはボロ雑巾のごとく転がった。
これらは勇者である父親から直伝の必殺技だ。
「……クカァ……ハァ……」
チャンは肋骨が砕け『参った』をする以前に呼吸もままならない。
既にHPは3である。
その頭上に影が落ちる。
苦痛の中見上げれば少女の姿があった。
少女は満面の笑顔で語りかける。
「さっきは秘伝の関節技って言っていたわね?私が本当の関節技を教えてあげる♪」
おもむろにチャンを蹴り転がしてうつぶせにする。
この時点で残りHPは2。
チャンの足首を自分の足首で固め、背中から左手を後ろ手に鶏手羽の形に極めた。
右手で顔を極めると、そのままチャンを上にしてひっくり返す。
現代で言う『裏STF』である。
残りHPは1。
しかし少女の巨大な乳房のせいでチャンの姿勢は弓なりになり呼吸困難に拍車をかける。
『裏STF』に『弓矢固め』を混ぜた技が近いといえば近いだろうか。
「楽にしてあげるわね」
少女はチャンの顔を極めていた腕を首にずらしてチョークスリーパーに移行する。
「うらやましいぞーーーーー!!!俺と代われぇ!!!!!」
「おっぱいが!おっぱいが!おっぱいがぁぁ!」
「……ワシにもかけてほしいのぅ」
拷問状態のチャンとは裏腹に、その羨ましい体勢を妬む観客席から野次が飛びまくる。
一方チャンは…途切れいく意識の中で今までの人生が走馬灯の様に流れていった。
わしづかみにしたおっぱいとか。
にぎりつぶしたおっぱいとか。
ぐりぐりしたおっぱいとか。
つかんだおっぱいとか。
ねじったおっぱいとか。
のばしたおっぱいとか。
はさんだおっぱいとか。
ひねったおっぱいとか。
ゆがんだおっぱいとか。
おっぱいと…
おっぱい…
おっ……
……
…
「試合終了!」
チャンが落ちたことを確認して審判役の騎士は試合を止めた。
既にチャンの肋骨は砕け、極められた左肩から腕にかけての筋肉の腱は引き千切られ、
更に御前試合での猥褻行為で格闘家としての威厳はへったくれも残っていなかった。
明日……いや今日からこの国の女性を全て敵に回したも同然である。
彼は傷が癒え次第、この国を去ることになるだろう。
控えの間に戻る少女にキューブが駆け寄った。
「もう最低の試合だったわ、これじゃお父様のお嫁さんになれない……」
「お嬢様、もうすぐ準決勝の試合なんですが……」
「あっ、でもお父様から、きっと物凄く酷いお仕置きされるかも……あんな事やこんな事や……」
「お嬢様っ!!妄想するのもいい加減にしてください!」
「次の試合はウェンディーでしょ。わかっているわよ」
「本当にしっかりしてくださいね……」
時々『自分だけの世界』に突入する少女を止めるのが最近のキューブの重要な役目だ。
延々淫らな妄想をにやけた顔で続けるので始末に終えない。
ちなみに屋敷での『父娘だけの世界』には、野暮なので関わらないことにしている。