準決勝の戦場に立つ少女が二人。  
「うふふ☆勝負よ!」  
自称『魔☆法★少☆女』のウェンディー・ラキシス。  
いつもの魔法少女ルックに変わりはない。  
1回戦で受けた脚の怪我も回復したようだ。  
「手加減無用!!」  
勇者の娘である爆乳少女。  
その身長は同い年のウェンディーより9cm以上小さい。  
が、16歳とは思えない爆乳がたわわに揺れる。  
 
「初めからそのつもりよ。手加減なんかしてたら勝てないでしょw」  
「私もお父様から『貴方達』には初めから全力で行って良いって言われてるの。覚悟してね」  
「へぇー。私って勇者様に認められてるんだ。うれしいな☆」  
試合開始直後にもかかわらず間の抜けたやり取り。  
ウェンディーはいつものようにマイペースだ。  
 
「「エネルギー・ボルト!」」  
まずは詠唱無しの魔法が激しくぶつかり合い相殺されて消る。  
挨拶代わりの基本魔法だが、直撃すれば駆け出しの戦士などは一撃で敗北が確定するほどの威力だ。  
 
「うふふ♪いくわよ〜ファイヤー・ボルト!」  
ウェンディーが構えた腕からリンゴ大の火球が一秒で16発連射された。  
もちろん詠唱無しである。  
高速で拡散しながら迫る火球群。  
少女はその灼熱の弾幕を軽やかなステップで回避する。  
火球群は全て彼女の背後の石壁に炸裂する。  
炎が飛び散り最前列のかぶりつきで観戦していた野郎共は撤退を余儀なくされた。  
 
「お返しよ!ファイヤー・ボール!」  
スイカ大の火球を乳首の先端から少女は発射した。  
腕の長さと乳房のサイズの都合上、彼女の魔法の発動位置がそこになってしまうのだ。  
 
ウェンディーもたたらを踏みながら大火球を何とか回避した  
……かに見えた瞬間、その火球が急激に膨らんで爆発した。  
防御結界を張って爆発の威力を減らす。  
とばっちりをうけたのはウェンディー側に居た観客である。  
「こ、このぉ!焼き殺す気かぁぁぁぁ!!!」  
「ちょ、ちょい後ろ下がろうぜ、この試合ヤバ杉だぜ」  
「すごいのぅ。腰が抜けたわい」  
 
今回は魔法に関しての『同門対決』なのだが、実態は多少違う。  
パットナムの魔法教室に通う二人は、  
上級レベルに昇級後は書庫の呪文書から古代魔法の復活を行うようになってきている。  
それぞれ単独で研究することがメイン。  
難解な魔法に限っては協力し合って研究する場合がある程度。  
したがって、お互いに使える上級魔法は別の呪文でがほとんどで、パットナムは名ばかりの師に過ぎない。  
逆に彼女達が復活させた魔法で論文を書いたりして食っている状態。  
パットナム師曰く「真の魔法使いはみだりに魔法を見せないこと」だそうだ。  
 
さて、話を試合に戻そう。  
数度の上級魔法の応酬で双方と観客席が、それなりととばっちりのダメージを負った。  
少し息が上ってきたウェンディー。  
しかし少女はうっとりとした笑みを浮かべている。  
魔法によるダメージが快感に置き換わっている訳だが、ウェンディーには理解できない。  
ダメージを与えれば与えるほどライバルである少女はうっとりとした笑みをたたえるのだ。  
真性マゾヒストの心理を、普通の16歳の少女に理解しろと言っても土台無理な話である。  
マイペースのウェンディーでも、これは相手の余裕としか捉えられなかった。  
 
「出し惜しみしていたら本気で駄目かも★」  
ウェンディーは呪文の詠唱に入る。  
勇者の娘も同時に詠唱に入った。  
どちらが先か。  
「サンダー・ストラック☆」  
「エイミング・サンダー!」  
ほぼ同時に魔法が発動した。  
ウェンディーに向かって一直線に眩い稲妻が走る。  
 
チリッ  
勇者の娘の傍では小さなプラズマが光っだけであった。  
 
見たことがない呪文。  
 
双方とも回避に入る。  
必死に稲妻をかわすウェンディー。  
とりあえずプラズマから充分距離をとる少女。  
 
次の瞬間。  
回避された稲妻は雷球の形をとってから再びウェンディーを襲う。  
「こんなのありなの〜?」  
何度でもホーミングを繰り返す雷撃。  
それが『エイミング・サンダー』である。  
ウェンディーは必死でかわす  
かわす  
かわす  
かわす  
かわす  
 
「ぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ〜〜〜〜〜」  
一方、爆乳少女は電撃の檻の中にいた。  
発動まで時間がかかるが、半径15mの高圧電流の球体が30秒間発生するのが  
ウェンディーの『サンダー・ストラック』  
勇者の娘は10m近く回避したが、魔法の効果範囲はそれ以上だった。  
少女の髪や身体は焼け焦げ、シルクの鎧の布の部分は灰になった。  
手足のアーマー部分にも激しく通電する。  
この凄まじい高圧電流の中で少女は何度も達していた。  
至極の快感だった。  
父親の今までのハードな責めには無かった快感だった。  
焼けつく子宮から愛液が滲み出る。  
 
「アース・グレイブ」  
地面に這いつくばった状態で呪文を唱えるウェンディー。  
大地を割り天を突く岩の槍。  
その岩の槍にエイミング・サンダーは吸い込まれ消えた。  
避雷針の応用である。  
「たすかった♪」  
すかさず電撃の檻の中の少女を見る。  
彼女の姿は…高圧電流の中、髪を逆立てボロボロのまま『うっとりと笑みを浮かべている』  
ウェンディーは恐怖した。  
あの状態で笑みを浮かべているのである。  
 
あわてて立ち上がると、間髪いれずに『サンダー・ストラック』を残りの魔力を全て使い連発し続けた。  
7発の『サンダー・ストラック』を唱え、それを発動させる魔力が足りなくなってからは、  
『ファイヤー・ボルト』の256連発で高圧電流の檻で悶絶する少女に追撃を加えた。  
高圧電流を浴び続ける少女に火炎弾は全弾命中し身体はダンスを踊るが如く爆ぜた。  
炎と雷撃の饗宴が終わるまでの3分57秒間を観客は固唾を飲んで見守った。  
審判の騎士も、あまりに危険すぎて近づくことが出来ない。  
 
少女は高圧電流の檻の中で歓喜の表情を湛えて悶える。  
鼻の奥から自分の肉が焦げる臭いがする。  
既に焦点は定まらず自分がどのような状態なのかもわからなかった。  
ただ単に今まで最大の快感を味わっていた。  
自分の意思とは別に痙攣する身体。  
火球が炸裂する度にアクメが続く。  
すでに歓喜の悲鳴も声にならない。  
この短い時間に何度絶頂を迎えただろう。  
失禁もしたがそれも雷撃と火炎弾で即座に蒸発する。  
常人なら既に死んでいてもおかしくない。  
その生と死の狭間の快感に少女は酔いしれていた。  
 
凄まじい高圧電流が爆ぜる音がふっと消え、少女は糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちた。  
肩で息をするウェンディー。  
ほぼ全ての魔力を絞りつくして『あの勇者の娘』を倒したのだ。  
遂に勝ったのだ。  
「私の勝ち?♪」  
審判の勝利宣言の前に小躍りするウェンディー。  
勝敗の確認のために倒れた少女に近づく審判だったが……  
 
ゆらり  
 
敗北したはずの少女が幽鬼の如く立ち上がった。  
 
身に付けているものはボロボロになったガントレットとグリーブだけ。  
シルクの鎧はとうに燃え尽きていた。  
黒く焦げ付いた肌に焼けて縮れた髪の毛。  
爆乳に無数に残る電撃の跡と火傷が痛々しさを増していた。  
 
「……ウェンディー…ちゃん……もう…これで…おわり…なの……?」  
その表情は幼児が玩具をねだるような泣き顔であった。  
尋常ではないその姿に後ずさる審判。  
そしてウェンディーの表情が絶望で満たされた。  
 
「アレでまだ動けるなんて…う、嘘でしょ?」  
すでに自分の魔力は底を付いた。  
あの娘の体力は無限なのか?  
『サンダー・ストラック』と今の魔力なら魔王軍の三個中隊程度なら全滅させる自信があった。  
現に辻試合をいどんだマッスル・ハルバルをも『サンダー・ストラック』の一撃で倒したのだ。  
その自信がことごとく打ち砕かれる。  
ウェンディーは泣き顔で首を振りながら後ずさりをはじめた。  
 
「…おわり…なんだ……じゃぁ……」  
心底残念な表情を浮かべる少女。  
「…ウェンディーちゃんも……きもちちよく…してあげるね……」  
その顔を満面の笑みに変える。  
瞳には淫靡な輝きが湛えられている。  
 
ゆらり  
ゆらり  
ゆらり  
 
歩みを進める少女。  
 
「いやぁ!こないでぇ〜!!!!」  
ウェンディーは届くはずもない遠い間合いにも関わらず闇雲に杖を振り回している。  
すでに半狂乱だ。  
 
ゆらり  
ゆらり  
ゆらり  
 
ウェンディーの手前で歩みを止めると、  
 
にやり  
 
その黒く焦げた顔に女神のような笑みを浮かべた。  
 
「……ドラグ・トルネード」  
天に掲げた両腕を振ると勇者の娘を中心に猛烈な竜巻が発生した。  
 
「ひぃっ」  
逃げようとするウェンディー。  
しかし。  
 
「……スネア」  
竜巻の中心にいる少女が唱えた初歩の精霊呪文は、逃げる相手を盛大に転ばせた。  
突風に吹き上げられて見えるスカートの中は、白地にピンクのストライプであった。  
防御本能で地面に転がったまま身を丸くするウェンディー。  
恐怖のあまり顔面蒼白で歯をガチガチと鳴らしている。  
 
「……にげちゃ…だめ……もっと……きもちちよく…してあげる……ね……」  
バチン!  
勇者の娘は足元でエネルギーボルトを発動させ、  
その推進力で竜巻の中を数十メートル垂直に跳躍しその頂点を越えた。  
そして軽やかに落下しながら手刀で竜巻を十字に切り裂く。  
少女の技で四本に増殖した竜巻が絡み合い一つの龍となりウェンディーを襲う。  
 
逃げる間もなくウェンディーは凶悪な竜巻に吸い込まれ天高く巻き上げられる。  
悲鳴をあげてても、その声は激しい竜巻の唸り音でかき消された。  
揉みくちゃに引き裂かれながら、どんどんとその高度を上げる。  
 
 
ウェンディーは数分間もの間、竜巻に切り裂かれながら天を舞い、  
その消滅とともに硬い地面に叩きつけられた。  
 
トレードマークのコスチュームはボロボロになり衣装としての原形をとどめていない。  
まだ発達途中の乳房が傷だらけで露になっていた。  
彼女はすでにピクリとも動かない。  
 
赤胴奥義『ドラグ・トルネード真空十文字斬り』である。  
 
「…まだ…ねちゃだめだよ……もっとすごいのを…してあげるから……」  
少女はまた呪文の詠唱を始める。  
「……ティルト……」  
 
「ストップ!ストップ!もう止めるんだ!!勝負はついたんだ。だから止めたまえ!!」  
審判の騎士が少女の前に立ちはだかり制止を試みる。  
まさに命懸けの行為だった。  
しかし、残念ながら間に合わなかった……  
 
「……エクス……プロージョン……」  
魔法が発動した。  
審判の騎士を中心に超巨大な炎の塊が発生しコロシアム内の少女達も一緒に巻き込まれる。  
更に膨張する火球。  
膨張が頂点に達した時一気に爆発した。  
 
凄まじい火炎が闘技場内を渦巻く。  
観客席にも爆風が吹き荒れ逃げ惑う野郎共。  
「ギャァ!!!あじっあじぃぃぃぃぃ!!!」」  
「熱いぜぇ!熱いぜぇ!熱くてぇ死ぬぜぇ!!」  
「ワ、ワシのかつらが燃えてしまうぅぅぅぅぅぅ!」  
 
貴賓席の前には勇者が立ちはだかり、爆風から国王陛下を守る。  
客席の婦女子は試合途中から後方に避難させられていた。  
避難誘導した兵士達が身を張って守るがそれでも熱風の洗礼を浴びる事になった。  
 
荒れ狂う炎がようやく消え去り、闘技場上空に発生したキノコ雲が風に流され始める。  
爆心地には黒焦げで横たわった騎士と、何事もなかったの様に爆乳少女が佇んでいた。  
ウェンディーも黒焦げでピクリとも動かない。  
 
「……めちゃくちゃに…すごいの…するね……」  
うっとりとした表情で更に呪文の詠唱をはじめる少女。  
「試合終了ぉぉぉぉぉぉ!!終了ぉったら終了ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」  
「お嬢様ぁ!お気を確かに!!!!」  
これ以上の被害を与えてはならないと、通路に隠れていた副審の騎士とキューブが止めに入る。  
「お嬢様!もう終わったんですよ!!勝ったんです!」  
少女の裸身にマントをかけて隠しながら、キューブは肩をゆする。  
 
「……キューブ…?あれ?私なにしてるの?……」  
少女の目に少しづつ正気が蘇って来たようだ。  
「良かった!お嬢様ぁ!正気に戻ったんですね!!」  
涙を流しながらキューブは歓喜の声を上げた。  
 
傍らを救護員が黒焦げの騎士とウェンディーに駆け寄る。  
すでに二人とも瀕死の状態だ。  
「…もしかして……私……やっちゃったの?」  
「ええ、暴走なさって大爆発の魔法を」  
「……」  
顔を引きつらせる少女。  
 
ふらつく足で倒れた二人に近寄る。  
救護員はあまりの重度の火傷に手出しが出来なく諦めかけていた。  
「ごめんなさい。私にやらせて」  
騎士の上に両手をかざすと最上級治癒の呪文『マディ・ベホマ』を唱える。  
癒しの光の中、火傷の痕が全て消えていく。  
 
 
 
 
「う、うぅっ」  
なんとか息を吹き返す騎士。  
「大丈夫ですか?」  
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」  
少女の顔を見るなり悲鳴をあげて必死に後ずさる。  
あの大魔法の直撃を食らったのだ。  
トラウマにもなろう。  
 
「その元気があれば大丈夫ね。次はウェンディー。  
……救護員さん客席で怪我人がいたら連れて来て下さい。私がヒーリングをかけますから」  
治癒魔法の効力の凄まじさに驚いていた救護員が、我に返って指示を飛ばす。  
ウェンディーと自分に『マディ・ベホマ』を続けて唱え回復する少女。  
二人とも焼けて焦げて縮れた髪の毛まで元通りだ。  
流石は最上級の治癒呪文だけの事はある。  
 
「ごめんなさい…ウェンディー」  
「……私こそ、あんなに酷い魔法かけちゃって」  
顔を引きつらせながら答えるウェンディー。  
「気にしないで、悪いのは私なんだから……身体は大丈夫?」  
「うん。いちおう大丈夫だよ…」  
体力は完全回復したものの精神的ダメージは残っているようだ。  
主審の騎士とウェンディーは救護員に連れられて救護室へと姿を消した。  
 
 
 
少女の魔法治療が続いている間に国王陛下と将軍、大会を運営している武官達との間で議論が行われていた  
議題は決勝戦をこのまま行うか否か。  
 
審判が試合終了を次げたにも関わらず魔法を発動させた勇者の娘の処遇についてである。  
同僚が被害にあったため、少女の反則負けを主張する騎士達。  
次の試合の審判で巻き込まれるのは御免なので必死である。  
 
宮廷魔術師達やパットナム氏らの見解は以下の通り。  
「あれほどの大魔法を途中で止めた場合は、行き場を失った魔力の暴走は非常に危険であり、  
発動させた方が被害は少なかっただろう。  
しかし、あのクラスの大魔法を観衆がいる武闘会で使用するのは魔術師として倫理上、大変遺憾である」  
 
まぁ、彼ら王国の魔法使いが使えるのは最大で『ファイヤー・ボール』程度。  
勇者の娘やウェンディーの能力には足元にも及ばない。  
そのレベルでの開催なので『サンダー・ストラック』や  
『ティルト・エクス・プロージョン』級の魔法は全くの想定外だったのだ。  
 
少女と懇意なクルーガー将軍としては、決勝戦でまたあのエロイ身体を見たかった。  
国王陛下もほぼ同じ意向らしい。  
「何とかならないのか」と目でサインをしきりに送ってきている。  
しかし、それを通すだけの『大義名分』が彼らには用意できないのだ。  
 
「国王陛下、失礼いたします」  
ノックの後ドアが開くと衛兵が入室してきた。  
「なにごとだ?」  
「先の準決勝で勝った剣士が、国王陛下に決勝戦についてお目通りを求めておるのですが、いかがしたものかと……」  
「……通すが良い」  
いくばくか逡巡した後、国王は面会を許可した  
 
衛兵と共に入室してきたのはアニータ・カサンドラである。  
「武器屋のゼノの養女アニータか。さきほど見事な試合ぶりあったぞ」  
カタナ・テラー、ナターシャ・ドリプシコワ、マッスル・ハルバルを、  
剣技の真っ向勝負のみで圧勝してきたのだ。  
 
「国王陛下、お褒めの言葉を頂き恐悦至極に存じます」  
国王に対しての最敬礼を表しながら深々とこうべをたれる。  
「さてアニータよ、この会議に具申しに来たのであろう。忌憚無く意見を述べよ」  
「ははっ。国王陛下の恐れ多いお言葉痛み入ります。  
先ほど決勝戦は中止になり、わたしくが優勝になるだろうと騎士様からお話をいただきました。  
しかし、わたくしは承服しかねます」  
「そちが優勝するのだぞ?それでも不服か?」  
「はい。王国一の武芸者を決めるのに、闘わずして優勝などありえませぬ。  
なにとぞ決勝戦を……」  
 
「アニータ・カサンドラの言や良し」  
国王陛下は毅然と言い放った。  
「魔王の軍に滅亡寸前まで追い込まれたこの国に、このような勇敢な剣士が育つとは感慨ひとしおじゃ」  
「では、陛下」  
「うむ。決勝戦は行うこととする。試合再開の支度をせい」  
「「「ははぁ」」」  
騎士達は不満顔ながら作業のために退室する。  
国王陛下と将軍閣下は決勝戦の大義名分が立ち、また勇者の娘を見れるのでご満悦だ。  
 
「わたくし如き市井の声をお聞き届け下さり感激です」  
アニータは自分の言葉で決勝戦が行われることとなり嬉し泣きしている。  
「そちも試合の支度があろう。下がるが良い」  
「ははっ!」  
衛兵と共に退室するアニータ。  
 
「陛下。御英断感服仕りました。」  
クルーガー将軍が国王陛下に一礼する。  
「いや、王国の未来を背負って立つ娘達だ。当然の事をしたまでじゃ」  
「それにしても我が軍の騎士や魔法使いのなんと貧弱なこと。  
収穫祭が終わったら猛特訓で鍛え上げねばなりませぬな」  
「左様。しかし我が国の財源でどこまで兵を鍛えられることやら…何か妙案は無いかのう……」  
「やはり勇者殿の手をお借りする他には…」  
シリアスモードに戻った彼らの、国政についての苦悩は続く。  
 
 
「はい次の方」  
「手の火傷がヒリヒリするんじゃがのう」  
勇者の娘は『ディオ・ホイミ』を唱えて老人の傷を癒す  
「どうですか?」  
「もう大丈夫じゃ。若い娘さんに魔法で治してもらって寿命が延びたわい」  
老人は勇者の娘のおっぱいを名残惜しそうに見つめつつ次の負傷者に席を譲った。  
 
次に来たのは、なんと『パトレイシア・ハーン』だった  
「貴方、もう少し周りを見て魔法を使ったほうがよろしいのでなくて?」  
「ごめんなさーい。あの時は意識が飛んでいてあまり覚えてないの」  
「なんで意識が飛んでいて、あそこまでとんでもない魔法が使えるの?」  
嫌味たっぷりに聞いてくるパトレイシア。  
「次の人が待ってるから、その話は今度のお茶会でね」  
勇者の娘は苦笑しながら治癒の魔法をかける。  
「次の試合もせいぜい頑張ることね」  
治療が終わるとパトレイシアはプイと席を立った。  
 
「だいじょうぶ〜?パトレイシアさんが何か言っていたみたいだけど〜」  
横からゆっくりした口調の『マルシア・シェアウェア』が現れた。  
「ううん。それよりマルシアは怪我とか無い?」  
「パトレイシアさんがかばってくれたの〜。本当はパトレイシアさんはとてもいい人なんだよ〜  
でも、思っていることを上手く言えないだけなの〜かわいそう……」  
「……そうなんだ」  
少女はいつもお高くとまっているパトレイシアの意外な一面を友人から初めて教えられた。  
「魔力は大丈夫なの〜?いっぱい魔法かけてたら無くならないの〜?」  
「心配してくれてありがとう。でも私は平気よ」  
次の怪我人に治癒魔法をかけながら勇者の娘は答える。  
 
勇者の娘はMPが減らなくなる『無敵の指輪』を『大魔法使いフェイ』に頂いているのだ。  
魔法合戦で彼女に勝てる者は、事実上この王国にはいない。  
 
少女は治癒魔法を使える者達と共に、残りの怪我人の治療を黙々と続けた…  
 
1時間後、大司教とシスター、そして勇者の娘や救護員を総動員した怪我人の治療もほぼ終わった。  
決勝戦を控えた勇者の娘はキューブを伴って控えの間に向かう。  
その道すがらキューブが少女に耳打ちをした。  
「お嬢様、先ほど小耳に挟んだのですが…」  
「どうしたのキューブ?」  
「先ほどのお嬢様が無茶な魔法を使ったせいで決勝戦が中止になりかけたところを、  
アニータ様が国王陛下に直談判して続行が決定したらしいんです」  
「えっ、アニータが?」  
「はい。闘って勝利してこそ王国一の武芸者だと……お嬢様?聞いていらっしゃいます?」  
「あっ。うん。アニータが……あとでお礼しなくちゃ」  
 
勇者の娘は自分の暴走で武闘会がそんな状況になっていたとは思っていなかった。  
アニータの直談判もとても嬉しかった。  
そしてアニータは相当の覚悟で試合に臨んでくることも……  
 
「キューブ。鎧のスペアは?」  
「前にも申しましたが、もうスペアはございません……いかがいたしましょう?」  
「わかったわ。このまま決勝戦に出る」  
「えっ?残ってるのはボロボロのガントレットとグリーブだけですよ?裸同然じゃないですか!」  
「下手に取り繕っても試合の邪魔になるだけよ。私に考えがあるから」  
「あの、秩序良俗に反するのではと……」  
「大丈夫よキューブ。お父様も試合を見てくれれば判ってくださるから」  
「そういう意味で言ったのでは……」  
アニータとの決戦に闘志をみなぎらせる少女。  
そして半分あきれ返っているキューブ。  
決戦の火蓋が切られようとしている。  
 

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