「これより武闘会決勝戦を始める。両者コロシアム中央へ」  
エルウィン・ヨハネス・オイゲン・クルーガー将軍の声に従って東西の通路から二人の少女が入場する。  
 
「待ってました!」  
「二人とも頑張れよー!」  
「さっきみたいな無茶は勘弁なー!!」  
「( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!」  
観客席からは色々な野次が飛び交い、テンションも最高潮だ。  
 
二人の少女は共にマントを纏り、闘志で満ち溢れた精悍な表情だ。  
長身の少女……『アニータ・カサンドラ』は紅いマント。  
彼女より約20cmほど背が低い『勇者の娘』は白いマントだ。  
 
「アニータ。この試合の為に王様に直談判までしてくれてありがとう」  
「チビ助、何言ってるんだ?試合前に馴れ合う気は無いね」  
「一言お礼をしたかっただけよ」  
「そうかい。じゃあお礼がてらに本気でいくよ!」  
アニータはそう言い放つなりマントを高く脱ぎ捨てた。  
 
その姿を見た野郎共は一斉に歓声を上げた!!  
「うををををををををををををををををををを!!!!!!!!!!!!!!」  
「アニータまで脱いだぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!」  
「最高ぉーーーーーーーーーーーーー!!!!!」  
「おっ!おっ!おっ!おっ!おっ!おっ!おっ!おっ!」  
 
「ア、アニータ?その格好……恥ずかしく…ない?」  
「こっ、こら!チビ助!お前に言われる筋合いは無いよ!!」  
アニータの装備…乳房と股間のアーマー以外を外した超軽量型のミスリルの鎧。  
ガントレットとグリーブはつけたまま。  
右手にはミスリルの剣が輝る。  
某ドラ○エ3女戦士に似てなくも無い。  
 
「あ、あんたのスピードに対応するにはこれしか無いようだからね!!!」  
羞恥心で顔を真っ赤にしながらアニータが怒鳴る。  
「そう。じゃぁ私も遠慮しないわよ!」  
勇者の娘もマントを脱ぎ捨てる。  
その下から眩い裸身が現れた。  
圧倒的なまでに巨大な乳房と、下腹部の淡い茂み。  
黒焦げになり壊れかけたガントレットとグリーブがそのままなのが、逆にその美しい裸身を際立たせる。  
 
「ぜ、全裸?!?!?!?!」  
「は、穿いてないよな!ぱんつ穿いてないよな!!!!」  
「誰か望遠鏡もってこい!!!!!」  
輪をかけて騒然とする観客席。  
 
「チ、チビ助!そ、その格好……穿け、ぱんつくらい穿け!!」  
「なに言ってるのアニータ。あなたに勝つにはこれしか方法が無いみたいだから。あなたと一緒よ」  
「それでも限度とか恥じらいとかあるでしょ!」  
「ちょっと恥ずかしいけど、私は慣れてるから平気よ」  
「ああっ!見てるこっちが恥ずかしいんだよ!ああぅう……本気で行くから!どうなっても知らないよ!」  
顔を真っ赤にしながら怒鳴るアニータ。  
勇者の娘のとんでもない姿に完全に狼狽している。  
「アニータ、試合に集中して。じゃないと大怪我じゃすまないわよ……」  
いつに無く真剣な勇者の娘の口調にアニータも普段の落ち着きを取り戻す。  
「私とした事が……仕掛けたはずの心理戦で負けるところだった……行くよ!!」  
 
アニータはミスリルの剣を上段の構えにかざす。  
勇者の娘は拳を腰溜めに三尖相照の構えを取った。  
 
「それでは開始!」  
審判が高らかに試合開始を告げた直後に急いで後方に退避する。  
先ほどまで副審をしていた騎士だ。  
退避したのは、おそらく生命の危機を感じてのことだろう。  
 
二人の距離は約5m。  
じりじりとその間合いをつめる。  
と、アニータが大きく一歩踏み込んで上段からの剣を振るう。  
すっと身をずらす勇者の娘。  
その横スレスレを、剣圧による衝撃波が石畳を深く抉った。  
 
昨年の準決勝で、勇者の娘の鎧無視で肉体に直接ダメージを与える必殺技『暗頸』で辛酸を舐めた。  
アニータはその技に対抗するため一年かけて習得したのが『電光剣・唐竹割り』 衝撃波を伴った斬り技だ。  
 
上段から、下段から、次々繰り出される衝撃派を勇者の娘は最小限の動きで避ける。  
その攻撃は何条もの深い傷を石畳に与えるだけだった。  
 
「リーチは約4m。モーションが大きいから避けるのは楽よ。アニータ」  
涼しい顔で技の分析をする勇者の娘。  
「そうかい?」  
アニータはニヤリと笑って剣を上段に構えなおす。  
そして袈裟懸けに『電光剣・唐竹割り』を放った。  
勇者の娘は切っ先の軌道を読み、身をかがめて斜めの衝撃波を避ける。  
髪の毛が数本、天に舞った。  
間髪いれず、アニータは踏み込みながら逆袈裟懸けに剣を振るう。  
少女はX字の衝撃波を転がってかわすが、乳房が巨大すぎて真横に転がれない。  
回転軸となって避け損ねた脚部グリーブの部品が砕け散った。  
それでも勇者の娘は痛みを全く表情に出さずに回避行動を続ける。  
 
アニータは更に一歩踏み込んで、地面スレスレを水平に『電光剣・唐竹割り』を放った。  
鋭い衝撃波が走る。  
「くっ!」  
勇者の娘は軽やかにジャンプしてそれをかわす。  
「獲った!」  
アニータは更に踏み込んで跳躍し、体を回転しつつ下段から剣を一閃させる。  
対空技の必殺『電光剣・ツバメ返し』  
超軽量型のミスリルの鎧だからこそ出来る技。  
空中の標的にミスリルの刃と衝撃波が放たれた。  
ジャンプ中の相手は回避できない事を狙ったアニータの作戦だ。  
 
が、  
ぶるん!  
勇者の娘は身体を捻り、巨大な乳房の遠心力でジャンプの軌道を変える。  
標的スレスレを空振りの衝撃波が飛び、また数本の髪の毛が舞った。  
「しくじった?」  
『電光剣・ツバメ返し』を空振りしたアニータは空中で完全無防備状態だ。  
 
勇者の娘は足元で『エネルギーボルト』を発動させる。  
その衝撃で半壊していた右足のグリーブが完全に砕け散った。  
一気に上昇して反転。  
左足で『エネルギー・ボルト』を発動させ急降下を始める勇者の娘。  
残った左足のグリーブも『エネルギー・ボルト』の反動で全壊した。  
 
『スーパーイナズマキック』が来る。  
そう判断したアニータは空中で手足を丸めて防御姿勢をとる。  
雷を纏い10Gの猛加速で飛来するする『スーパーイナズマキック』を防ぐにはこれしかない。  
 
しかし勇者の娘が放った技は違った。  
 
『どこの誰かは知らないけれど カラダはみんな知っている……♪』  
勇者の娘が放った技は、よりによって『おっぴろげジャンプ』だった。  
 
「ぶっ!!」  
高速で迫る大股開きの勇者の娘のあそこ。  
避けることも叶わず、アニータの顔面に少女の局部がモロにぶつかった。  
更に不幸なことに、小陰口にアニータの鼻が見事にホールインワン。  
勇者の娘はアニータの頭を太股で挟むと、反動をつけて反り返った。  
巨大な乳房が激しく移動し慣性力を増強させる。  
空中での『おっぴろげジャンプ』から『フランケンシュタイナー』への連続技。  
アニータの脳天を激しく地面に叩き付けた。  
 
「うらやましいぞーーーーーーーー!!!俺にも見せろーーーーーーーーーーーーー!!!」  
「俺、この試合が終わったらアニータになるんだ!」  
「観音様じゃ…観音様じゃ……ありがたや、ありがたや……」  
見れずに心底残念がる観客の怨嗟の声とと、モロ見えでラッキーな観客が気勢が交錯する。  
 
頭を強打し大の字になったアニータと、その顔面にまだ股間を密着させている勇者の娘。  
審判が決まったかと恐る恐る近づいてくる。  
 
と、アニータが動いた。  
離さなかった右手のミスリルの剣を闇雲に振り回し始める。  
 
急いで顔から股間を退けて、アニータから距離をとる勇者の娘。  
「このチビ助!変なの見せるな!!」  
起き上がりながら顔を真っ赤にして怒鳴るアニータ。  
「嫁入り前なんだからもう少し考えろ!なんだかヌラヌラするし、なんだか酸っぱいし!私を馬鹿にしてるのか?!」  
「ごめんね。アニータのガードが固いからこれしか技が無かったの!」  
笑顔で謝る勇者の娘。  
「この技は封印だよ!使ったら今度こそ絶交だからね!」  
アニータは本気で怒っていた。  
 
「じゃあ、そろそろ体も温まってきたしピッチ上げるね」  
勇者の娘は微笑みながらそう言うと……消えた。  
いや、正確には消えたのではない。  
加速する『ピオラ・ヘイスト』の呪文重ねかけで、自己の速度を限界まで上げて高速移動しているのである。  
 
「幻影破裏拳か!」  
激高していたアニータが技に気付き、我に返る。  
周囲に出現する多数の爆乳少女。  
これらは全て高速移動している勇者の娘の残像である。  
 
「うっひょー!おっぱいがいっぱいだぜ!」  
「1人もらって帰っていいか?」  
「もっとこっちこい!おっぱいもっと見せろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」  
ボルテージが上る野郎共の野次を完全無視してアニータは全神経を切っ先に集中する。  
現れては消える勇者の娘の幻影。  
 
「そこだ!!」  
ミスリルの刃が一閃する。  
 
ギン!  
しかし必殺の刃は、壊れかけたガントレットによって受け止められた。  
その衝撃で左ガントレットが完全にお釈迦になったようだ。  
「アニータ、よく見破ったわね」  
バックステップで後ろに下がりながら、壊れたガントレットを外す勇者の娘。  
「チビ助、いい事を教えてやるよ。幻影の胸は動かないけど、本物の胸は動きまくてるってね」  
「ありがとう。アニータ」  
苦笑しながら返す勇者の娘。  
 
「じゃあ弱点を教えてくれたお礼ね」  
また勇者の娘の姿が消える。  
『ピオラ・ヘイスト』の効力はまだ切れていなかったのだ。  
 
「ぐぉっ」  
アニータが苦痛に満ちた呻き声を漏らす。  
 
勇者の娘は超加速のピーカーブースタイルで相手の懐に飛び込み、  
全体重を乗せたリバーブローを喰らわせたのだ。  
この一撃でアニータの脚が止まった。  
 
勇者の娘の上半身が∞の軌道を描き出す。  
ボクシングでいう必殺ブローの『デンプシー・ロール』  
だが……この王国では『ゲッチュウ!おっぱい!∞(むげんだい)』と呼ばれている。  
なぜなら、連続のフックと共に巨大な乳房が∞(むげんだい)の軌道を描きながら同時に攻撃を加えるからだ。  
誰が命名したわけではないが、いつの間にか定着した技の名前だ。  
 
アニータの割れた腹筋に体重が乗った拳が降り注ぐ。  
20cmの身長差の上に完全に懐に潜り込まれたのが致命傷になった。  
ミスリルのガントレットで防ごうとしても、素手のパンチで逆に装甲が凹む。  
勇者の娘の壊れかけの右ガントレットも自身のパンチ力で完全に吹き飛んだ。  
豪腕である。  
 
アニータは崩れかけた膝に力を入れてバックステップを試みる。  
間合いを取ればただのフックパンチ。  
ミスリルの剣で対処できる。  
が、最初のリバーブローが効いて脚がいうことをきかない。  
 
ドン!  
『ゲッチュウ!おっぱい!∞(むげんだい)』を繰り出しながらも、  
震脚で更に一歩前に出てアニータをその暴風圏から逃さない。  
「アニィィーーータァァァーーーーッ!あなたがッ、参ったを言うまで、殴るのをやめないっ!」  
絶叫する勇者の娘。  
 
バキッ!  
遂にアニータの乳房を覆った鎧が吹き飛ばされた。  
鍛えられた腹筋と引き締まったバスト。  
それが勇者の娘の流血した拳で染め上げられていく。  
 
ドン!  
更に一歩前に出る震脚。  
そして身を大きく屈めてからの渾身のガゼルパンチ。  
 
アニータがゆっくり宙を舞う。  
ミスリルの剣も持ち主から離れて飛ぶ。  
そして大地に伏した。  
 
「これで決まりましたかな」  
「そのようじゃの…」  
国王陛下と将軍が言葉を交わす。  
 
今まで『ゲッチュウ!おっぱい!∞(むげんだい)』を喰らって立ち上がったものは誰一人居ないからだ。  
 
動かないアニータ。  
だが、勝利者である勇者の娘は血塗られた拳を構えたまま殺気を放っている。  
 
恐る恐る審判の騎士がアニータに近寄ろうとする。  
が、ぴたりと足を止めた。  
 
「……き…………うき…………ゆうき……」  
呟きながらゆっくり身を起すアニータ。  
「……ゆうき……勇気……勇気……勇気ィ!!」  
上半身血まみれで、常人なら動けないダメージを負っているはずだ。。  
しかしアニータは立ち上がった。  
両の足で大地を踏みしめて絶叫した。  
「……勝利をこの手に掴むまで……私の勇気は……死なないっ!!」  
 
アニータの全身から放たれた凄まじいまでの闘気と殺気で誰一人身動きできない。  
それは勇者の娘すら例外ではなかった。  
 
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」  
両の拳を組んで標的へと突貫する。  
そしてその拳が、動けない勇者の娘の巨大で柔らかな乳房の中へとめり込んで行く。  
 
「 ゲム・ギル・ガン・ゴー!グフォー!!! 」  
剣士のはずのアニータが呪文を叫ぶ。  
 
両の肘まで乳房の肉で隠れた時、ようやく拳が勇者の娘の肋骨まで届いた。  
 
 
「 ウ ィ ー タ ァ ァ ァ ァ ァ ! ! ! 」  
 
 
アニータの拳に込められた渾身の闘気が勇者の娘の乳房の中で爆発した。  
凄まじいエネルギーで砕け散るアニータのガントレット。  
ありえない形にひしゃげた乳房をさらしながら宙を舞う勇者の娘。  
そして地に臥した。  
 
「勇気の力は……無限を超えたぁ……絶対勝利の力なんだぁぁぁっ!」  
肩で息をしながらアニータは勝利の雄叫びを上げた。  
 
その雄叫びは凄まじい観客の歓声でかき消された。  
『あの勇者の娘』を大逆転の末に倒したのだ。  
沸き返る観客達。  
しかし、その歓声は絶句へと、そして悲鳴へ変わった。  
 
異変を感じたアニータは皆の視線の先を追って振り向く。  
そこには勇者の娘が再び立ち上がっていた。  
乳房から激しく出血をさせながらも、その顔には淫靡な笑みが溢れている。  
 
あの時と同じだ。  
コロシアムにいた人間は皆、準決勝の悪夢を思い出した。  
暴走した勇者の娘はなにを起すかわからない。  
逃げ出す者。  
悲鳴をあげながらうずくまる者。  
『THE BEAST II』の幻聴が聞こえた者。  
 
審判の騎士は恐怖の為ただ立ち尽くすのみ。  
未だ勝利判定はなされていない。  
試合は続行中のままだ。  
 
「……アニータも……きもちよく……して…あげる……」  
とろんとした表情でアニータに語りかける勇者の娘。  
 
次の瞬間その姿が消えた。  
 
「おっぱいはどこに行った?」  
「また幻影破裏拳じゃないのか?」  
「逃げようぜ、巻き込まれるのはもう御免だ!」  
 
審判である騎士はこの状況に戸惑っていた。  
勇者の娘が消えたのは何らかの技を出す為だろう。  
このままでは自分も準決勝の主審だった同僚のように巻き添えを喰らう可能性が高い。  
消えていることを口実に敵前逃亡戦意無しとしてアニータを勝ちとすべきか。  
いや、勝ちとしよう。  
命あっての物種だ。  
審判はアニータを勝利者にすべく彼女の方を向こうとした。  
 
「あれは何だ!!」  
が、観衆が騒ぎ出す。  
皆が指差すその先を見上げる。  
「鳥だ!」  
「ドラゴンか?」  
「いや、おっぱい娘だ!!」  
金色光りを放ち両手を開き十時の形で天に浮かぶ勇者の娘があった。  
 
審判である騎士は試合を止めるタイミングを完全に逸した。  
 
アニータも傷ついた身体を起こし天を仰ぎ見る。  
少しずつ大きくなる勇者の娘の姿。  
始めは落下してきているからかと誰もが思った。  
しかしそれは違った。  
神々しい金色の光を放ちながら勇者の娘は急速に巨大化していく。  
その大きさは街を守る城壁をも越えるサイズに達した。  
既に王城よりもよりも超巨大な乳房。  
それがコロシアムを押し潰さんばかりに天から降臨した。  
 
一体どうなるのか?  
もしかしたら王国はおっぱいで滅びてしまうのか?  
国王も将軍も観客も街にいた民衆も恐ろしいまでの絶望感に襲われた。  
ただ二人。  
この状態でも微動だにせぬ勇者とアニータを除いて。  
 
「見せてやる……本当の勇気の力を!!!」  
 
アニータは天に向かって吼えた。  
 
「…これが!勝利の鍵だぁぁっ!!!」  
 
そして天に両手をかざす。  
 
「……ジー・マジ・ジジル…………いでよ!キング・カリバァーーーー!!!」  
 
呪文の詠唱が終わるとアニータの手には刀身だけで2mを越える輝く魔剣が握られていた。  
 
天より迫り来る果てしなく巨大な乳房。  
中心にある超巨大な乳輪とドラゴンより大きな乳首。  
それに向かってアニータは『魔剣キング・カリバー』をかざし、全身全霊の闘気を注入した。  
 
「空間湾曲っ!ディバイディング・キング・カリバァァァーーー!!!!」  
 
キング・カリバーの切っ先の時空が歪みを作り、迫り来る超巨大な乳首を包み込もうとする。  
しかし、輝く乳房の圧倒的な質量はそれを拒み更に増大を続ける。  
『ディバイディング・キング・カリバー』の力では、超超々乳を防ぎきれない。  
 
既に観客席も何もかも輝く超巨大な乳房に押し潰された。  
残っているのはアニータの『ディバイディング・キング・カリバー』で作られた僅かな空間と、  
いつの間にか彼女の後ろで震えている審判の騎士だけである。  
周囲360度、輝く乳房の肉塊で覆いつくされている。  
 
力負けして膝を着くアニータ。  
『ディバイディング・キング・カリバー』の力も弱まってきた。  
 
「……勇気は……絶対に……負けないっ!!」  
アニータは自分の持てる最大の技を使う決断をした。  
この状態では成功する可能性は限りなく0に近い。  
しかし0ではない。  
足りない分は勇気とガッツで補えば良い!  
 
「ゴルディオン!キング!カリバァァァーーー!!光になあぁれぇぇぇ!!!!」  
アニータは絶叫した。  
金色に輝く『キング・カリバー』が超巨大な乳首に突き刺さった  
 
 
 
 
光になった。  
 
 
 
 
そこは光の世界だった。  
上も下も右も左もなかった。  
地面も空も何もなかった。  
光だけがあった。  
 
そこに王国の人達もその世界で宙に浮いていた。  
犬や猫、鳥達もいた。  
 
「ここはいったい?……」  
呆然とするアニータ。  
と声が聞こえた。  
 
「……おそいじゃない……アニータ……」  
 
声がする方を見る。  
更に眩しい光があった。  
 
そこには神々しく輝く勇者の娘の姿があった。  
 
「…アニータも……すごく……きもちよく…して…あげるね……」  
 
蕩けるような表情の淫靡な女神が囁いた。  
大の字に広げた四肢と巨大な乳房から留めなく光があふれ出す。  
 
 
 
 
「 裸 身 活 殺 拳 究 極 奥 義 ・ 全 裸 万 象 」  
 
 
 
宇宙の始まりのような光だった。  
ただただ光があった。  
目をつぶってもその光は変わらなかった。  
永遠に光が続くかと思われた。  
 
その光が急速に失われていく。  
そして光が消えた時、人々は恐る恐る目を開けた。  
 
自分の体がちゃんとあった。  
隣に居た人も無事だった。  
収穫祭中の王国の姿が以前どおりにあった。  
城も家も木々も何もかも以前のままだった。  
唯一の例外を除いて。  
 
「国王陛下ご無事でございますか?」  
勇者が珍しく口を開いた。  
光の世界での衝撃で呆然としていた国王と将軍が我に帰り勇者の方を向く。  
「だいじょ…ゆ、勇者殿ぉ?そ、その格好は…?」  
勇者は全裸で腕を組みをして慄然と立っていた。  
股間の一物は『馬並み』ではなく『馬以上』であった。  
 
「この姿、陛下や国を助ける為、致し方なき次第。御許しを」  
「勇者殿、まずはこれを」  
自分のマントを差し出すクルーガー将軍。  
「将軍殿、感謝仕る。」  
マントを羽織ながら勇者は闘技場を指差す。  
「我が娘の失態で、危うく王国をこのような灰燼にするところでござった」  
 
国王と将軍が闘技場を見る。  
闘技場の地面が無かった。  
観客席を残して地面が奇麗な四角に20m近く陥没していた。  
まるで断層のように観客席下の地面が露出している。  
陥没した底には灰より細かい粒子となった白い砂が堆積していた。  
 
そこには3人の人間がいた。  
全裸で倒れているアニータ・カサンドラ。  
巻き添えを食らった審判の騎士も全裸でのびている。  
しかし二人とも傷一つない。  
 
そして1人だけ立っている勇者の娘。  
彼女と父の視線が交わる。  
「ごめんなさい、お父様……」  
少女の涙腺が決壊してとめどなく涙が溢れ出た。  
「ごめんなさい。ごめんなさい。お父様。ごめんなさい。お父様。お父様……  
泣き崩れる勇者の娘。  
キューブが自慢の翼で飛び降りてマントをそっとかける。  
「お父様。ごめんなさい。お父様。おとうさま。おとうさま。ごめんなさい……  
それでも少女は泣くことをやめない。  
 
我に返った観客達もこの状況に戸惑っている。  
 
「諸君。今年は凄まじい試合の連続であった。これより表彰式を行う。国王陛下」  
不意にクルーガー将軍が声を高らかにあげた。  
状況を収束させるべくの一声だ。  
ここで混乱が起きては王国の沽券に関わる。  
 
「勇者の娘よ。まことにあっぱれであった。褒美をとらすぞよ」  
国王陛下もそれに合わせ観客が騒然とする中、この大会の幕を強引に下ろした。  
 
 
「ごめんなさい。お父様…」  
 
父親と共に家路へと急ぐ少女。  
二人ともマントを羽織っている。  
少女は未だに顔を泣き腫らしたままだ。  
 
「…あの程度の攻撃で我を失うなど未熟」  
父親が重い口を開き叱責する。  
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」  
まだ泣き続ける少女。  
「わたし……お父様が止めてくれなければ……この国を滅ぼすところだった……」  
無言のままの父親。  
「ごめんなさい。お父様。ごめんなさい」  
 
「修行が足らん」  
父親が再び口を開いた。  
「帰ったら前よりもっと激しい修行だ。覚悟するがいい」  
 
「お父様……許してくれるの?」  
立ち止まり父親の顔を見る。  
「修行で力の制御が出来ねば滅びる。ただそれだけだ」  
振り返る勇者。  
いつものポーカーフェイス。  
しかし娘である彼女だけにはそれが笑顔であることが分った。  
 
「お父様!大好き!!」  
父親に力いっぱい抱きつく少女。  
マントが落ちて全裸になったが気にするそぶりすらない。  
「皆が見ている。続きは家でだ」  
「はい。お父様!」  
先ほどまでの泣き顔は消え去り、太陽のような笑顔がよみがえった。  
 
「お嬢様」  
後ろをついてきたキューブが落ちたマントを手渡す。  
「ありがとうキューブ。先に帰って地下室の準備をして」  
「えっ、地下室ですか?わ、わかりました」  
 
仲睦まじく連れ添って歩く二人を置いてキューブは家路を急ぐ。  
「……本当に魔族でもここまでとんでもないのは居ないよなぁ……」  
 
彼が今から行うのは地下拷問室の整備。  
あまりも残忍なので拷問の詳細は割愛する。  
 
が、四肢をもがれ、どんなに激しく肉片と化しても、  
少女の『マディ・ベホマ』は自身の全ての傷を回復させる。  
 
そう、どんな傷でも。  
 
そして父親の『カドルト・ザオリク』の魔法は死者をも復活させる。  
 
たとえ娘が灰になっていたとしても。  
 
決して解けることが無い歪んだ真の愛の形。  
 
キューブは観察を続ける。  
天が彼に与えたもうた使命なのだから。  
 
 
 
                     おわり  
 

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