荒廃した地球。味気も無い空気と砂埃と化した建築物。  
見渡す限り一面砂漠の地域のその中に、少年少女は居た。正確には人間二人とバケモノが一体。  
とても常人には真似の出来ない動きで化け物を翻弄し、敵の後ろに回りこむ少女。  
少女の鎌から放たれる鋭い一閃は、化け物の身体を綺麗に引き裂いた。  
 
「はぁ……はぁ……はぁ……。夜科は、大丈夫……?」  
 
苦しそうに息を吐きながら、近くの少年、夜科アゲハに話しかける少女。  
全身ぼろぼろで、化け物との戦闘で負傷した身体の傷。  
 
「俺のことなんてどうでもいいんだ……! なんで戦った雨宮が戦っていない俺を心配するんだよ……!」  
 
対するアゲハは少女、雨宮と比べると傷も少なく、まだ動くことの出来る状態だった。  
アゲハは先日ここ『サイレン』に連れてこられたばかりのいわゆる新顔で、サイレンドリフトとしては先輩に当たる雨宮桜子に  
超能力『PSI』を先日教えてもらったばかりだった。  
そんなアゲハに化け物『禁人種』との戦闘を強いるわけにもいかない。  
雨宮はこれで3体の禁人種を己の身一つで倒したが、PSIの多用は身体に悪影響を及ぼす。  
実際、今の雨宮の身体にはPSIの反動と思われる痛みが全身で発生していた。  
「がっ……! っぁ…………!」  
「おい雨宮! 大丈夫かよ!? 少し何所かで休もうぜ!」  
 
アゲハとしても気が気でならない。自分よりか弱い存在である雨宮にこれ以上の戦闘は控えさせるべきだと  
本能が語りかけていた。確かに、今は自分の方が弱いかもしれない。でもそれは女の子に戦わせる理由にはなりえない。  
幸い、近くには比較的大きめで頑丈そうな作りの建物がある。  
あの中で少しでも雨宮の身体を癒さなければ、雨宮の身体は後に悲鳴を上げてしまうだろう。  
 
「雨宮。あそこの建物で今日は休む。嫌だと言っても無理矢理連れて行くからな」  
「はぁ、はぁ、……全く……強引なのね……」  
 
拒否しなかった雨宮を背負って、たどたどしい足取りで建物に向かっていく。  
背中の雨宮の身体は羽のように軽く、儚かった。  
アゲハは自分の無力を噛み締める  
。  
――俺は、こんな華奢な女の子を戦わせていたのか。  
もっと力が欲しい。俺のこの手で女の子一人だけでも救える力が――  
 
無力を恨むよりも、強さを求める。  
女の子に、命懸けの死闘の日々など似合わない。  
人間には誰しも幸せに生きる権利がある。  
雨宮も年相応にお洒落して、年相応に恋愛すべきだとアゲハは思った。  
きっと彼女は幾人もの人の死を見せ付けられて生きてきたのだろう。  
雨宮に刻み付けられた傷は決して浅いものではないはずだが、少しでも彼女の負担が軽くなるのなら自分は何でもするだろう。  
その傷を埋めるためならいつでも側に居てあげる。長い月日がかかっても、きっと。  
 
建物の中にアゲハと雨宮以外の気配は感じられない。  
おそらくは安全地帯なのだろう。アゲハは安堵し、背中に背負っていた雨宮を降ろす。  
壁に寄りかかり、力なく崩れ落ちる雨宮。  
「ねぇ、少し……寝てもいい……? 必ず1時間後には起きるから」  
「一時間と言わず、一日寝てても良いんだぜ?」  
「そんなことしないわよ。早く現実世界に帰りたいしね」  
 
――お前に帰る場所はあるのか?  
 
アゲハはそう聞こうとして、喉までつっかえたところでなんとか言葉を飲み込む。  
彼女の両親は別居状態で、雨宮は孤独に日々を過ごしていた。  
雨宮には身体を伸ばす場所など無かった。たとえそれが現実であっても、サイレンであっても。  
彼女はきっと怒りや悲しみなどと言った、感情全てを抑圧して生きてきたに違いない。  
 
雨宮はいつの間にか瞳を閉じて、眠っていた。  
その姿は、ぼろぼろの天使のようで、同時にかよわい女の子そのもの。  
強く抱きしめたら壊れてしまうのではないかと思えるくらい、彼女は儚かった。  
でも同時にその光景は異性であるアゲハには耐え難いモノだった。  
先程までの戦闘で火照った顔。呼吸に合わせ、微かに動く唇。上下する胸。スカートからはみ出した彼女の太腿。  
それら全てがアゲハの視線を釘付けにした。  
アゲハも思春期真っ盛りの少年。そういう物に欲情を抱くのも、有り得る話だった。  
ゆっくりと雨宮の身体に、アゲハの手が近付いていき――――途中で引き戻した。  
雨宮は自分を信用しているからこそ、こんな無用心な姿を晒せるんだ。  
その自分が雨宮の信用に答えなくてどうする。  
アゲハは自分の非を恥じ、自分に強く言い聞かせる。  
こんな状況なのだから雨宮を頼りには出来ない。禁人種の来襲は一人で片付けたい。  
 
そんなことを考えていると、壁に寄りかかったまま眠る雨宮の身体がずるずると斜めになっていき  
床に横になって眠る体勢となった。それでも当の本人は気付かずに、可愛い寝息を立てている。  
こうしてみるとただの女の子なんだな、とアゲハが思ったその時、雨宮の口から言葉が紡がれるのを聞いた。  
それは――――  
 
「……夜科……夜科ぁ……! 行かないで……。何所にも……行かないで……!」  
「雨宮……お前…………」  
 
彼女は確かに眠っていた。無意識の呼びかけ。  
にも関わらずというべきなのか、『だから』というべきなのかは、分からない。  
アゲハの思考は、雨宮の言葉という魔法に掛けられたように石化した。  
足のつま先から徐々に、なんて程度ではなく、身体全体が一瞬にしてフリーズさせられた。  
 
雨宮は俺に悪いイメージを持っていないどころか、今のは告白とも取れる言葉だった。  
 
そうアゲハが考えた瞬間、ここは廃墟の建物の中という密室だと唐突に意識した。  
周りには禁人種も見当たらないなければ人の影すら見つからない。  
 
ごくり、と唾を飲み込む音が鮮明に聞こえる。  
自分の心臓の音がうるさいくらいに聞こえる。  
その空間に、雨宮の息遣いが僅かに聞こえる。  
 
アゲハの心の中が二分化され、不毛な争いを始めだした。  
『雨宮は俺を信頼しているからこそ、こんな無防備な姿を見せるんだ。お前は雨宮の信頼を裏切るのか?』  
と、いう意見と  
『雨宮はきっと寝たふりをして俺を誘っているに違いない。きっと俺に滅茶苦茶にされて欲しいんだ』  
という意見。  
二つの意見はいつまでたっても結論が付かない。何所までも平行線。何所までいっても決して交わる事は無い。  
 
結局、アゲハは彼女が起きるまで何も手を出さない事にした。  
 
「ん……? ふぁぁぁ…………!」  
これまた可愛らしい声をあげながら、雨宮は目を醒ます。  
一時間前までの彼女の疲弊しきった顔が嘘のよう。今ではすっかり元気を取り戻している。  
一方のアゲハは眠たげに目を擦っていた。禁人種の見張りのために見張りをしなければばらなかったせいだ。  
本来なら一時間といえども休憩したかったのだが仕方無かった。  
「見張りありがと。きつかったよね?」  
「い、嫌。そんなことないぜ。たった一時間だもんな」  
さっきの雨宮の寝言が気になって目を合わせることが出来ない。慌てて目をそらしているとそれに雨宮が気付いた。  
「どうしたの? なんでこっちを見てくれないの?」  
「何でもないよ。頼むからちょっと向こうに行っててくれないか?しばらくしたら何でも無くなると思うから」  
必死に目を合わせまいとしていたアゲハは、しばらくしてから雨宮の異変に気付く。  
 
雨宮は目尻に涙を溜めて、悲しそうな瞳でアゲハを見つめていた。  
アゲハにはそれが何故か分からない。それが余計に雨宮の感情を揺さぶった。  
「ねぇ……。私ってやっぱり……嫌われてるよね……」  
「はぁ? 何を言い出すんだよ雨宮。誰もお前を嫌ってなんかいない」  
「嘘だよ。その証拠に……ヒック……夜科も……私と目を合わせてくれないじゃない……!」  
声は段々悲痛なものになって行き、嗚咽が途切れ途切れに入る。雨宮は、溢れ出る涙を止めようともしなかった。  
今までのストレスなのか、堰を切ったように雨宮から言葉が投げかけられる。  
「分かってる! 私はクラスの皆にも嫌われてて、親にも見捨てられて……神様にも見放された!  
誰も私の存在なんか気にも掛けないし、優しかった人たちはみんな禁人種に無残に殺された!  
夜科だってそうなんでしょ!? 私なんかウザいだけで、ただ役に立つから一緒に行動しているんでしょう!?」  
 
アゲハは驚きながら雨宮の言葉を聞いた。  
初めてぶつけられる雨宮の心の闇。外界の光から遮断された雨宮の心はヒビの入ったガラスのように磨り減っていたのだ。  
それを察してあげられず、勘違いとはいえ傷つけてしまったのは他ならぬ自分。  
 
「すまない。俺はそんなつもりじゃなかったんだ。ただ……」  
「ただ、何よ!? そんなつもりでないなら何で目を逸らしたの? ねぇ何で!?」  
涙を溢して詰め寄ってくる雨宮を。  
アゲハは正面から抱きしめた。  
「何よ、離してよ! 離して!」  
アゲハの腕の中から抜け出そうと画策する雨宮を逃がさないように、アゲハは力強く抱きしめた。  
「なぁ、俺は一回しかいわないから聞いてくれないか?」  
「何をよ…………!?」  
 
「俺は、雨宮のことが好きだ」  
 
「なっ……!?」  
カァァァァ、と雨宮の顔が紅潮していく。  
「さっきはごめん。なんか女の子と二人きりっていうのが、初めてだったから緊張したんだ」  
「あ……ぅ……こっちこそ、ごめん……」  
俯きながらぼそぼそと謝る雨宮。  
アゲハはいまだに雨宮をその胸に抱いていた。密接に合わさる二人の身体は、お互いの心臓の活動を把握できている。  
「それで、雨宮の答えを聞かせてもらっていいか?」  
耳まで真っ赤にしながら、雨宮はアゲハの胸の中で返答する。  
「…………私も……夜科のことが……好き……だよ……」  
 
雨宮の熱っぽい視線とアゲハの視線が交わり、どちらとも無しに唇を重ねる。  
「ん……」  
アゲハは雨宮を床に押し倒し、雨宮の後ろに手を回して、優しく抱いてやる。  
最初はお互いに啄ばむようなキス。しばらくすると、雨宮の口にアゲハの舌が入り込んできた。  
雨宮はそれを拒絶せずに受け入れる。  
「んちゅ……んふぅ……」  
淫猥な音が室内に響き渡り、それがアゲハの感覚を麻痺させる。  
雨宮の上唇と下唇を吸い上げ、舌の裏にも這わせる。  
乱れた雨宮の髪と衣服が、彼女の存在が幻でないことを証明する。  
今、生きているという、生の充足。  
お互いのキスはお互いの存在をより確固としたものとしていく。  
舌を絡め、雨宮の口内を蹂躙し、舌の裏にまで這わせるアゲハになすがままにされる雨宮。  
キスをはじめたときのようにどちらともなく顔を離し、互いが顔を見つめる。  
無言のまま、アゲハの手が雨宮の服にかかった。  
恥ずかしげに顔を逸らす雨宮を尻目に、アゲハの手は雨宮の上着にかかり、ゆっくりと脱がせていく。  
次に、ついていたリボンを取り外し、高校指定の制服をボタン一つずつ、丁寧に外していく。  
透き通った白い鎖骨がアゲハの視界に入った。  
次に、白のブラジャーの庇護に包まれた形のいい胸があらわになった。  
「あまり見ないでよっ……!」  
恥ずかしさに負けたのか、雨宮が抗議の声を上げる。  
「綺麗だぜ雨宮。あまり隠すなよ」  
 
全てのボタンを外し終わり、スカートも摺り下ろすとそこからもまた白色のショーツが出てくる。  
全体的に小柄な体格だが、スタイルは良いほうである。  
「これは……ガマンできそうにないぜ、俺」  
手のひらで雨宮の胸のふくらみを触り、ブラの上からその感触を楽しむ。  
ブラの下の乳房は形を変え、アゲハの視覚を楽しませた。  
「んっ……はぁ……ぁ……」  
後ろのホックに手を掛け、外そうとする。  
前にアゲハは、ホックを外すにはそれなりのテクニックがいると聞いた事があったが  
以外にもすんなりと外れてくれた。慎重に胸の上から剥ぎ取っていくと、遂に雨宮の胸が完全に外気に晒された。  
小柄な乳輪の中央で硬くなっている乳首。  
その桃色の突起に手を掛け、押したり弾いたりを繰り返すと、明らかにさっきまでと違う反応が雨宮に顕れる。  
「あ、はぁぁ……! ああっ……!」  
胸だけでもここまで感じるものなのか、とアゲハは感慨深く感じながらも、手を休めようとはしない。  
雨宮の首筋に軽く吸い付きながら、両手で胸をいじくる。  
「はぁっ! っあ! あぅう……あぁぁ!」  
雨宮はアゲハに吸い付かれた首筋とは正反対に顔を背け、アゲハの責めに耐える。  
左手の人差し指を咥えてガマンするが、アゲハは耳たぶを甘噛みし、舌を這わせていく。  
アゲハの舌は徐々に下降していき、雨宮の鎖骨も舐め回し、乳首までたどり着いた。  
乳輪の周りをなぞるように舌を回し、突起を吸引する。  
「ああっ! んああっ!」  
トドメといわんばかりにアゲハは突起を軽く噛むと、雨宮は甲高い嬌声をだした。  
その反応がアゲハには嬉しい。聞きかじり程度の自分の性の知識が正常に働いていることに安心した。  
 
アゲハの舌はさらに下降していき、円形のシミが出来ているショーツに辿り着く。  
その生地の上から強く舌を這わせると、雨宮の肢体が悦びの声をあげるように震えた。  
アゲハは舐めるのをやめ、雨宮の愛液で濡れたショーツを脱がす。  
最早、雨宮を隠す物は全て取り外されてしまった。  
 
――雨宮はまだ誰にも見られたことのない裸体を晒すことを、俺だけに許可したんだ。  
 
その思いがアゲハの欲情を更に駆り立てる。  
昂る興奮は熱い吐息に変換されて、大気中に充満した。  
アゲハの吐息が雨宮に感染したかのように、雨宮もまた荒い息をついていた。  
雨宮の秘裂を上下にさすり、アゲハの指がクリトリスを弾く。  
「っああぁぁ!」  
今までで一番高い反応。その真新しい反応が楽しくて、アゲハは何度もその行為を繰り返した。  
建物に何度も反響する雨宮の声。  
雨宮の瞳は閉じられ、アゲハにその全てを委ねていた。  
限界が近いのかもしれない。  
アゲハは結論に辿り着き、一本の指を雨宮のナカに挿れることを決定した。  
いまだ誰も受け入れた事の無いソコは、侵入者を拒もうと強く締め付ける。  
さらにアゲハは2本目の指をも追加し、雨宮の蕩け切ったソコを何度もかき混ぜる。  
「ああっ! 夜科ぁ! 駄目! 駄目なの! ソコ……駄目ぇ!」  
拒絶の言葉を吐きながらも、アゲハの指によって作られる刺激に喜ぶ雨宮。  
中身が伴わない言葉とはこういう事を言うんだろうな、とアゲハは思う。  
何度も何度も雨宮のソコを責め、最後に陰核を摘んだとき、雨宮の身体に変化が訪れた。  
「ふぁぁ! ああ……ああ……っああああぁぁぁ!」  
弓のようにしなる雨宮の身体。ピン、とつま先まで伸ばし、その後雨宮の身体が萎縮した。  
口をだらしなく開け、唾液が雨宮の顔を伝う。  
百聞は一見にしかず。  
アゲハはしばらくして、これが絶頂だということに気が付く。  
雨宮を満足させられたという達成感。  
当の雨宮は、視線が虚空に泳ぎ、まともな思考もままならない様子だった。  
 
アゲハは前から保っていた理性が、少しずつ削られていくのを感じていた。  
壊滅状態の理性を最大に稼動させ、アゲハは己の剛直を取り出す。  
雨宮の痴態によって出来上がった分身は、既にかなりの硬度だ。  
「雨宮。挿れてもいいか?」  
形式だけの言葉。もしここで断られてもアゲハは躊躇なく、彼女を犯しただろう。  
こくん、と雨宮の顔が縦に揺れる。  
もう喋る余裕もないのか、雨宮は無言でアゲハのペニスを待ち受ける。  
「痛いらしいから一気にいくぞ、いいな?」  
ペニスを秘部にあてがい、挿入を開始すると、入り口から締め出されるようにアゲハの分身は圧迫された。  
固い何かにぶつかり、それを勢いのまま破る。  
「あぐぅぅぅ! 嫌、痛いよ夜科ぁ!」  
身体の外からではなく内側から広がる痛みに、雨宮が悲鳴をあげる。  
必死に痛みに耐える雨宮と、このまま欲情に身を委ねて果てたいと思うアゲハ。  
しかしアゲハは、腰を少しずつ動かし、痛みが無くなるまで続けるのが良いということを知識で知っていた。  
本当にゆっくりとアゲハの腰がグラインドしていく。そして腰が打ち付けられるたびに、雨宮は痛みを訴える。  
痛みを塗りつぶす目的でアゲハは、雨宮の胸を揉んでやる。  
しばらく同じ事を繰り返すと、雨宮の顔から苦痛の表情は消えていた。  
「もういいよアゲハ。ありがとう。あとはアゲハの好きなように、この身体を使っていいんだよ?」  
その雨宮の扇情的な言葉に、アゲハの中で何かが爆ぜた。  
アゲハの理性が決壊し、今まで蓄積されていた欲望が頭に澄み渡る。  
最初は遠慮がちだった腰使いがだんだんと荒くなる。  
肌と肌がぶつかりあう音も、その際に生じる音も、雨宮の甘い喘ぎ声も。  
その全てがアゲハの起爆剤だった。  
 
淫らな音が響かせる雨宮の膣は、アゲハの全てを搾り取ろうとするように強く押してくる。  
「ああんっ! あぁぁんっ! んあぁ、ああっ、やぁ……ぁぁぁぁ!」  
はしたなく開かれた雨宮の口の中で銀色の糸が紡がれているのをアゲハは見る。  
アゲハは己の欲望がそろそろ限界に近い事を悟っていた。  
雨宮の愛液も尻を伝い、床に小さな水溜りを作っている。  
ガンガンと奥まで突き上げるたびに、雨宮は女の悦びに打ちひしがれていた。  
あと少し、もう少し……!  
アゲハは雨宮と一緒にイこうと先程から襲う射精感に耐えていた。出来る事なら彼女と共にイキたい。  
雨宮の様子も限界らしい。一突き毎に身体を大きく跳ねさせ、かつて無い快楽から逃亡しようと腰を動かしていた。  
だが、がっちりとアゲハの手によって固定された腰は動く事もままならない。  
むしろ、腰を動かす雨宮はアゲハを誘惑しているかのように感じられた。  
「俺、もうガマンできない……!」  
「いいよ、来てぇ! 私も、もう、限界、だからぁ!」  
アゲハは腰を今までにないくらい速くさせ、雨宮と一緒に果てようとする。  
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あぁぁっ!」  
雨宮がオーガズムに上り詰めていることを意識しながら、アゲハはその全てを網膜に焼き付けた。  
 
『現実』と『未来』。いつか世界の何所かでどちらかが死のうとも、『現在』繋がっているこの瞬間だけは本物。  
決して消し去れない二人だけの記憶。それを糧に、俺はこれからも生き続けよう。  
 
「イ、イク……! 雨宮! 雨宮ぁ!」  
「アゲハ、アゲハぁ!!……っああああぁぁぁぁ!!」  
そのとき雨宮のナカが今まで以上に強く締まるのをアゲハは感じた。  
雨宮の強い締め付けに耐え切れず、アゲハも果てる。何度も射精し、雨宮の膣を満たす。  
最後に、絶頂の余韻が取れない雨宮ともう一度キスをした。  
雨宮の身体から自分の臭いが漂ってくるのを、鼻腔で感じながらアゲハは彼女を抱いたのだった――  
 
 
「ねぇ、本当に私なんかでよかったの?」  
服を着ながら不安げに尋ねてくる雨宮。その雨宮の額をアゲハはデコピンしてやる。  
「いたっ!」  
「そうに決まってるだろ。今更何を言ってるんだ雨宮は……」  
「そうなんだよね……そうなんだよね……。私ね、今まで自分を必要としてくれる人間なんか誰も居ないんだって卑屈になってた。  
親だって別々だし、サイレンにまで飛ばされるし……。私に存在意義なんか無いと思った。サイレンに来ても、それは同じ。  
どうして自分一人だけ生き残ったんだろう? 私もあの化け物に殺されて死ねればよかったのに、ってそう思った」  
 
雨宮の告白をアゲハは黙って聞いていた。彼女がアゲハを信頼するに足る人物だと認識を改めたからこそ聞ける話。  
それは雨宮の過去への思いだった。まだ少女である彼女がたった一人でサイレンに飛ばされたとき、  
彼女は自分一人だけ生き残って『しまった』ことへの後悔と死んでしまった人たちへの懺悔で胸を満たされたのだろう。  
 
「現実に帰っても、私には居場所が無かった。サイレンにも居場所は無かった。  
だから私は一度、禁人種に殺されようかと考えたよ。でもやっぱり駄目だった。いざ死にに行こうとすると足が竦むの。  
足が震えて思うように動かなくて。……笑っちゃうよね」  
 
自嘲気味に笑う雨宮にくすりとも笑えないアゲハ。でも――  
 
「でも、今は居場所があるだろ。ここにさ」  
嘘偽りなく、まっすぐな瞳でアゲハは雨宮を見つめた。  
雨宮もアゲハが何を言いたいのか分かったようだった。  
「……ええ、ありがとうアゲハ。貴方に会えなかったらきっと私は死んでいた。  
生きていて欲しいと思う人が居るだけで、人って簡単に生きられるんだね」  
「ああ、だからさ。絶対に生き残ろうな。俺たちは生き残る。俺たちは絶対に殺されない」  
「そうよね……。絶対に生き残る……」  
 
二人の決意は静寂に包まれた建物の中で小さく木霊する。  
だが、二人の決意は声の大きさで測れるものではない。  
 
何もかもが無くなったと思われたこのサイレン世界で、彼らは得たものがあったようだった――  
 

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