−リリリリリ…
「……ん…」
鳴り響く目覚ましのアラームを止めようと、シャオは手を伸ばす。
改めて時計を見て、今日が日曜日であることに気付く。
こんな環境下では、曜日の概念にさほど意味は無い。
しかしエルモアの「人間らしい生活を」という方針に従い
根の中では、昔と変わらず曜日に従って過ごす習慣があった。
いつ戦闘があるか分からないとはいえ、エルモアの予知である程度は予測が出来る。
久々に戦闘の心配のない休日ということもあり、誰もが思いのままに過ごしていた。
「マリー…?」
ベッドの違和感に気付き、マリーの名を呼ぶ。
しかしマリーの返事はなく、ベッドは空だった。
(変だな…。確か昨日は一緒に居たはずなのに)
昨晩は、シャオの部屋で二人で過ごしていた。
名実共に「恋人同士」という関係になってからは、活動に差し支えのない範囲で
二人で過ごすことが多くなっていた。
昨日も同様で、やけに乱れたシーツや、衣類を身につけていない自分自身が
マリーが居たという事実を証明していた。
(…ぁ、やぁ…っ、シャオ君…!!)
ふと、昨日のマリーとの行為を思い出す。
既にマリーとは幾度となく行為を重ねていたが、昨晩も良かったなと改めて考えていた。
自分の腕の中で快楽に身を任せ、徐々に乱れていく様。
滑らかな肌の感触や、柔らかな肢体。全身から漂うような、甘い香りに豊満な胸。
そして、行為の最中に見せる笑顔。
マリー本人はいつもと変わらない笑顔を見せているつもりのようだが、
この時ばかりは、欲情していてある種の妖艶さを帯びた瞳を見せる。
そんな「誰も知らないマリー」の姿が、シャオは何より好きだった。
そして、それを知っているのが自分だけであるという事実に、密かな優越感を覚えていた。
ついつい昨晩の行為を思い返してしまい、溜息を吐いて首を振る。
再び熱を帯びつつあった下半身を紛らせるように、シャオはベッドから身を起こした。
着替えを済ませ、改めて時計に目をやる。
時計は、10時を指し示していた。
(とりあえず、マリーを探してみるか)
確かに普段より遅い目覚めだが、休日は二人でベッドの中で過ごす方が圧倒的に多い。
ともすれば、自分の腕の中で無防備な寝顔を見せるマリーの身体を堪能し、
「刺激」で目覚めたマリーと、3回戦あるいは4回戦に突入する。
…という展開がほぼ毎回である為、今日のような事態は珍しいことだった。
部屋を見て、居なければ食堂に向かってみよう。
そんなことを考えながら、シャオは一冊の本を手にして部屋を出た。
(部屋には居ないか…。ならやっぱり食堂なのか…?)
部屋をノックするが、返事はない。
今日の食事当番はマリーだったろうかと考えながら、シャオは食堂へと向かった。
食堂のドアを開けると、中では軽快な包丁の音が響いていた。
キッチンを覗くと、エプロン姿のマリーが鍋の前に立っていた。
休日ということもあり、長袖のシャツにショートパンツの上からエプロンを着けている。
マリー自身は鍋で肉を炒めていたが、それとは別に包丁だけが宙に浮いていた。
テレキネシスによって操作された包丁は、まな板の上で野菜を一口大に切っていく。
あらかた切り終えられた野菜が空中に浮かぶと、同じく浮かんだままの包丁によって
一つ一つが丁寧に、面取りされ始めていた。
「マリー、おはよう」
「おはよう、シャオ君。」
そう言って振り返ると、マリーは微笑んだ。
すぐに鍋に向き直ると、再び手を動かし始める。
「…今朝はごめんね?勝手に出ていっちゃって」
「いや、それは別に構わないけど…。どうかしたのか?」
「うん、シチューを作ろうと思ってたから」
「…そうか。それは楽しみだな」
基本的に、マリーの料理はどれも美味しいが、中でもシチューは絶品だった。
時間をかけて煮込むのはもちろん、調理方法も手が込んでいる。
面取りなどの一手間も惜しまないため、丁寧に調理されたそれは仲間内でも好評だった。
「けど、何で今日なんだ?昨日はそんなこと言ってなかっただろ」
「フーちゃんが、次のお休みの日はシチューがいいって言ってたの」
ふと疑問を抱き、貼り出された当番表に目をやる。
「…今日の当番は、フレデリカじゃないのか」
「うん、フーちゃんがね、どうしてもシチューがいいって言ってたから」
「………そうか。」
あまりに噛み合わない会話に、マリーが調理に夢中であることを察すると。
シャオはそのまま、戻ってソファへと腰掛けた。
持っていた本のページをめくりつつ、キッチンに立つマリーを眺める。
面取りを終えた野菜が、宙に浮いたままマリーの前にある鍋の中へと入っていく。
鍋に入った野菜を、マリーは肉と一緒に炒め始めていた。
あまりにも平和な光景に、思わず現状を忘れそうになる。
エプロン姿で手際良く調理を続けるマリーの後姿に、シャオは小さな幸福感を見出だしていた。
「…はい、どうぞ」
「………?」
しばらくの間ページに視線を落としていると、不意にマリーの声が間近に聞こえた。
顔を上げると、マリーがテーブルにマグカップを置いていた。
淹れたてのコーヒーの香りが、周囲に漂う。
「…ああ、ありがとう」
「すぐに淹れたかったんだけど、遅くなっちゃった」
「いや、いいさ。…もう済んだのか?」
「ううん、もう少しかな」
エプロンを着けたまま、調理の途中でシャオの為にコーヒーを淹れたらしい。
しかしシチューの調理は終わったようで、大鍋が小さく湯気を立てている。
もうじき、部屋中にシチューの良い匂いが漂い始めるはずだった。
「あっちはもう、煮込むだけなんだけど。サラダも作るから」
「………」
「フーちゃんがね、サラダも食べたいって言ってたから」
「……………そう、か」
そう言ってシャオは、目の前のマグカップへと手を伸ばす。
マリーは少しだけ困ったような、はにかんだ笑みを見せた。
シャオとマリーが現在の関係、いわゆる恋人になって以来、
フレデリカはシャオへの対抗心からか、マリーへの我がままが目に見えて増加していた。
シャオに対して矛先が向くよりは、とマリーはフレデリカのわがままを殆ど聞いていたが。
まんざらでもなさそうな様子のマリーを見るたび、シャオは複雑な想いを抱いていた。
「………」
「………」
気まずい沈黙が、二人の間に不穏な空気を漂わせる。
淹れたてのコーヒーの香りがかえって苦味を強調させ、シャオは僅かに眉をしかめた。
「…えっと、じゃあ私、続き…やってるね?」
持っていたトレイを胸元に抱き、マリーは慌てたように少し早口になっている。
そんなマリーの姿を見て、シャオはマグカップをテーブルへと戻した。
「…オレも手伝おうか」
「うっ、ううん!大丈夫だから」
「……そうか、分かった」
「うん…、ありがとう…」
シャオのようにPSIで心は読めなくとも、やけに無表情なシャオの心情は察しがついた。
少しだけ泣きそうな顔を見せて、マリーはキッチンへと戻っていった。
(『シャオ君…、怒ったかな…。どうしよう……』)
マリーの様子が気になり、ついPSIを使って考えを読み取る。
キッチンに目をやると、マリーは俯いたままで冷蔵庫の野菜室を開けていた。
(『……あれ?おかしいなぁ…、何で無いの…?』)
本を読むフリをして様子を伺っていると、マリーは野菜室で何かを探しているようだった。
困った様子で、奥までごそごそと手を伸ばしては首を傾げている。
声をかけようか逡巡しつつ、再びコーヒーに口を付けていると。
マリーが恐る恐るといった様子で、キッチンの奥からシャオに声をかけてきた。
「ねぇ、シャオ君…」
「…どうかしたのか?」
「きゅうり…見なかった?」
突然の言葉に、シャオは飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「い、いや、見てないけど…」
「そうよね?おかしいなぁ…。一昨日収穫してもらって、昨日までは確かにあったのに…」
「誰か食べたんじゃないのか?」
「…うーん。でも、3本くらいはあったんだけど…」
「…別に、きゅうりにこだわる必要はないだろ」
「うん、でもね…」
そこまで言いかけて、マリーは口をつぐんだ。
「そ、そうよね!うん、何か違うので作ろう…かな…」
そう言いながら、ばたばたと音を立ててキッチンの奥へと戻っていく。
しばらくして、水音と同時に再びマリーの思念が流れ込んできた。
(『フーちゃんがきゅうりのサラダがいいって言ってたから、
なんて言ったら、また怒らせちゃうところだったな…』)
(…やっぱり、フレデリカか)
シャオは軽く溜息を吐きながら、開いたページへと視線を落とす。
しかし本の内容は全く頭に入らず、マリーの思念へと意識を集中していた。
(『サラダにきゅうりを入れなさいよ!絶対よ!って言ってたのになぁ…』)
(『最近怒られてばっかりだし、今度こそアレされちゃうのかな…』)
(…アレ?)
(『…嫌だなぁ。「おっぱいの刑」…』)
(…なッ!!?)
野菜を洗っているのか、キッチンからは水音だけが響き渡る。
あまりに唐突なマリーの思念に、シャオは持っていた本を取り落としていた。
(何だ…。何なんだ…!?)
(『どうしてフーちゃんは、お仕置きって言いながら私の胸を揉むんだろう…』)
(『嫌だなぁ…。これ以上大きくなったら、どうしよう…』)
(『…そういえば、シャオ君も…』)
(オレ…?)
(『する時は…、いつも私の胸ばかり触ってる…よね』)
(…いや、そんなつもりは無いけどな)
「そんなつもり」は無くとも、目の前に白くて柔らかいマリーの胸があれば、揉みたくない訳が無い。
赤裸々なマリーの思念に対し、聞こえない反論と言い訳をシャオは心の中で続けていた。
(『やっぱり男の人って…、大きいのが好きなのかな』)
(『シャオ君も…。私じゃなくって、私の胸が…好きなのかな…』)
(違う…。オレは、マリーだから好きなんだ…!)
勢い余って、その場から立ち上がるシャオ。
思わず叫びそうになった言葉を慌てて飲み込む。
時折PSIで思念を読んでいることを、マリーはまだ知らなかった。
それでも、マリーの誤解はどうにかして解きたい。
そう考えながら、シャオは再びキッチンへと向かっていた。
「マリー…」
「………」
シンクでは、トマトが宙に浮いて水で洗われていた。
マリーは鍋の前に立ち、シチューをかき混ぜている。
水音でシャオの声が聞こえない様で、振り向く気配は無い。
再び声を掛けようとした所で、マリーの思念がまた聞こえてきた。
(『大体、私だって好きでこうなった訳じゃないのに…』)
(『フーちゃんったら、いつもいつも揉むんだから…!』)
(『「何よ、こんな胸!所詮は脂肪の塊じゃない!!」なんて言わなくてもいいじゃない…』)
(『誰のせいでこんなになっちゃったと思ってるのよ…、フーちゃんのバカぁ!』)
(……………。)
シャオは、マリーの思念に軽い眩暈を覚えていた。
マリーは、少し苛立った様子で鍋の中身をかき混ぜている。
火を弱火にすると、軽い溜息を吐きながらシンクへと向かっていく。
(『大体、いつもあんなに激しく揉まなくてもいいじゃない…』)
(『シャオ君にだって…、あんなことされたことないのに…』)
シンクの前に立ち、まな板に乗った野菜に向かって再び溜息を吐く。
シャオはそんなマリーの背後に立つと、いきなりマリーを抱きすくめていた。
「きゃあッ!!」
突然のことに、悲鳴を上げるマリー。
ごろん、と音を立ててまな板からトマトが転げ落ちた。
そんなマリーには構わず、シャオはマリーの身体に手を回し強く抱きしめる。
「…シャ、シャオ君!?」
「………」
返事の代わりに、腕に力が込められる。
シャオはマリーの首筋に顔を埋めていた。
マリーの肌や髪の匂い。
今は自分の手の内にあるその存在。
それら全てが、自分の理性を少しずつ突き崩していった。
シャオは、嫉妬していた。
自分以上にマリーの身体、もとい胸を弄んでいるフレデリカ。
そして、自身に依存していることを理解しているからこそ、
その行動を受け入れているマリーに。
有り体に言えば、男としてのプライドを傷付けられていた。
下らない感情。
そう割り切ってしまうことが、どうしても出来なかった。
「シャオ君…」
密着した身体から、互いの鼓動が伝わって来る。
まるで怯えるかのような、か細く震えているマリーの声。
その声が、匂いが、温もりが、シャオを狂わせていた。
「………」
シャオは、腕の力を緩めてマリーから僅かに身体を離す。
そしてマリーのエプロンの隙間へと、おもむろに両手を差し入れた。
「…ッ!」
びくん、とマリーの肩が震える。
シャオはマリーの着ているシャツの中まで腕を潜り込ませると。
そのまま、マリーの胸元へと手を伸ばす。
「…ゃ、嫌ぁ……」
ぷち、という小さな音を立てて、下着を外す。
シャツごと胸の上までたくし上げると、荒い手つきで乳房を揉みしだいていた。
「…っく…、ん……!!」
シャオの手の中で、形を変えるマリーの乳房。
その先端とエプロンの生地がこすれ合い、予想外の刺激に押し殺せない声が漏れた。
しばらく愛撫を続けていると、デニム地のエプロンで擦られた先端は硬く尖り、
表からでもその存在が分かる程になっていた。
必死で声を抑えようと快楽に耐えるマリーの耳元で、シャオは囁く。
「…しないか」
「…!?」
「マリー…」
「…い、いやっ、駄目…っ!」
「…どうして」
「…って、こんな…、所で…!」
そう言って、せめてもの抵抗にと身を捻らせるマリー。
互いの顔は見えない。
しかし耳元で囁かれるたびに、マリーの背筋はぞくぞくと震えた。
いつもと違う、低く掠れた声。
愛撫を止めようとしない両手。
そして、先程からマリーの白い太股へと。
擦りつけるような動きを繰り返すシャオ自身。
布越しであるにも関わらず、充分過ぎるほどの質感と熱量をマリーに伝えていた。
「…大丈夫だ。誰も、来ない…から」
「でっ、でも…っ!」
「いい、だろ…?」
荒い息を吐きながら、エプロンの内でマリーの肌を撫で回すシャオ。
シャオが言うのであれば、この付近に人の近付く気配は無いのだろう。
(『こんな所で、する、なんて…』)
突然の愛撫に、これまで散々開発されてきた身体はシャオを欲し始めていた。
少しずつ、理性が焼き切れていくような感覚を覚える。
流されてはいけない。欲求に身を任せてはいけない。
マリーは、襲い来る快感をやり過ごそうとしていた。
「…そう、か」
思念を読み取り、マリーが行為を望んでいないことを察する。
普段のシャオならば、ここで手を止めていたはずだった。
しかし、脳裏にフレデリカの影がちらついて離れない。
マリーを渡したくはない。
そんな想いから、シャオは行為を止めることも出来なくなっていた。
不意に、エプロンの内で静止していたはずの手が動き出す。
乳房にしか触れていなかった指を、その先端に触れさせる。
「……ッ!!」
マリーの息を呑む声が聞こえる。
それに構わず、シャオは先端を二本の指で摘み上げた。
「や…ッ、ああ…ッ!!」
途端に、身体を震わせて嬌声を上げるマリー。
シャオはそのまま、指に力を込めて先端を責め立てる。
「…触っても無いのに、硬くなってたな」
「やだ…、言わないで…っ」
確かに触れてはいなかったが、エプロンの布地で刺激されていた。
そのことに、マリーは気付いていないようだった。
待ち望んだ刺激を受けた先端は、はっきりと勃ち上がっている。
シャオは僅かに笑みを浮かべると、片手は乳房を責め立てたまま、
もう一方の手を、ショートパンツへと伸ばす。
「あ…!」
マリーが気付くより早く留め金を外すと。
そのまま手を、下着の内へと滑り込ませていた。
茂みを掻き分け、その奥にあるマリーの秘唇に指が触れる。
既に充分過ぎる程の愛液を溢れさせたそこは、触れただけで指に粘液を絡み付かせる程だった。
シャオが指を動かす度に、卑猥でくぐもった水音がショートパンツの中で響く。
たちまちの内に、シャオの指はマリーの愛液にまみれていた。
「…マリー、もうこんなに濡れてる」
「ん…っ、やぁぁ…」
言葉にもならない声を発しながら、首を横に振る。
結い上げられたポニーテールが小さく揺れ、シャオの頭をくすぐった。
(『やだ…。私、どうし…て…?』)
嬌声に混じって、混乱しきったマリーの思念が響く。
密着したマリーの身体を更に抱き寄せると、シャオは再びマリーの耳元に唇を寄せた。
「いやらしいんだな、マリーは」
「………!!」
(『違う…、違う…の…』)
冷たく、低く掠れたシャオの声。
耳元で囁かれただけなのに、それすらも快感に摺り変わってしまう。
与えられる全ての刺激から、快感に身体を震わせる。
マリーの意識は、徐々に快楽に支配されつつあった。
−ぱさり。
ショートパンツのジッパーを下げる音。
それに続いて、引き下げられて足元に落ちる音がした。
そして、下着もシャオの手で引き下げられる。
染み出し、溢れた愛液をたっぷりと含んだそれは、既に用を為さなくなっていた。
(『あ……』)
外気に晒され、ひんやりとした感触でようやく脱がされたことを知る。
しかし力の入らなくなった身体は、されるがままにシャオの行為を受け入れることしか出来なかった。
ショートパンツと下着を足首から引き抜かれ、シャオに向かって尻を突き出すような体勢を取らされる。
転倒しないようにと、マリーは無意識にシンクに両手を着く。
それと同時に、熱を持ったシャオ自身がマリーの秘唇に触れた。
次の瞬間には、内部を押し拡げられるような感覚と共に、
シャオ自身が胎内へと侵入して来た。
「ん…ぁ、…はぁ…っ!」
背後からの挿入に、反射的に背をのけ反らせる。
今までに体験したことの無かった体勢からの挿入は、胎内をえぐるような刺激をマリーに与えていた。
「…っ、んっ、…あぁ…」
溢れる愛液のお陰で、痛みもなくシャオ自身を全て受け入れたマリーの秘唇。
ゆっくりした抽走が繰り返される度、マリーの背筋を快感が駆け抜ける。
シャオの動きに合わせて、マリーの唇からは切なげな吐息が零れた。
不意に、シャオの両手がマリーの腰を掴む。
そして深々と、シャオの肉棒に最奥を貫かれていた。
「や…!ああぁ……ッ!!」
突然の激しい挿入に、マリーは身体を震わせて悲鳴のような声を上げる。
しかしシャオは、そんなマリーの様子に構うことなく、黙って腰を打ち付けていた。
(『やだ…、やだ…っ、こんなの…っ』)
突き上げられる度、目の端からは生理的な涙が溢れ、流れ落ちる。
シャオの律動に合わせて、結い上げたポニーテールと腰で結ばれたエプロンの紐が揺れていた。
「…………」
荒い息を吐きながら、ひたすらにマリーを貫くシャオ。
腰を掴み、抽走を繰り返す度に自身の肉棒がマリーの秘唇を出入りする。
その上、脱がせたとはいえマリーはエプロンを身に着けたままだった。
キッチンで、エプロン姿のマリーを背後から貫く。
まるでマリーを犯しているかのようなこの倒錯した行為に、シャオは没頭していた。
−じゅぷ、ずっ、ずぷっ…。
「…っふ、あっ、やぁぁ……っ!!」
激しい律動に堪え切れず、一際高い嬌声を上げるマリー。
抽走に合わせて、結合部からは愛液が溢れる。
響き渡る卑猥な水音が、マリーの意識までも侵食していた。
(『やだ…、何で…っ』)
キッチンには二人の息遣いだけが響く。
(『どう、して…。こんなに…』)
不意に律動が止まり、腰を掴んでいた手が離れる。
離れていた身体を密着させ、シャオはマリーの乳房に手を伸ばした。
「………ッ!」
(『気持ち…いい、の…!?』)
「…感じて、るんだな」
「…っん、…うぅ…っ!」
乳房と先端を片手で責められ、下半身も繋がったまま。
シャオの指が、マリーの口内へと侵入していった。
「…んぅ、む…」
朦朧とした意識の中で、マリーはシャオの指を口に含む。
丁寧に舌を絡め、指を吸い上げる。
一心不乱に指に奉仕する様が、シャオを一層興奮させていた。
「…っは、…ぁ、ん…」
指が口腔から引き抜かれ、マリーは名残惜しそうな表情を浮かべる。
シャオの方を振り向くと、情欲に溺れた瞳を見せた。
「…シャオ…く…ん」
「…どうした?」
「…もっと、…欲しい…の」
息も絶え絶えに、哀願するような表情を浮かべるマリー。
マリー自身に自覚は無かったが、快感を欲して自ら腰を動かしていた。
「…ああ、分かった」
振り向いたマリーに顔を寄せ、触れるだけの口付けを交わす。
身体を離し、再び抽走を始めた。
「…んんっ、はっ、…ふぁ…っ!!」
最奥まで突き上げるような腰の動きに合わせて、肌と肌のぶつかる音が響く。
マリーは自分の欲望のままに腰を振り、シャオの肉棒を受け入れていた。
息を乱し、吐息混じりの嬌声を漏らす。
シンクを掴んだ両手は、力がこもって指先が白くなっていた。
爪先立ちになった脚は、絶頂が近いのか小刻みに震えている。
「…シャオ、君…!私っ、もう…!」
限界の近付いたマリーを、シャオは一際強く突き上げた。
「………ッ、やあああ…!!」
マリーが背を反らし、絶頂に達する。
少し遅れて、シャオもマリーの胎内に欲望を吐き出していた。
「…はぁ、はぁ…っ」
互いに荒い呼吸を繰り返す。
シャオがマリーの内から自身を引き抜くと、マリーは小さく肩を震わせた。
「…んっ…」
シンクに手を着いたままのマリーの秘唇から、愛液に混じってシャオの精液が溢れ出す。
白濁液が、マリーの太股を伝って床を汚した。
「…マリー」
今にもその場に崩れ落ちそうな、マリーの身体を支えて抱き寄せる。
行為の余韻に浸ろうとした、その時−
「…きゃあああああっ!!」
シャオは、慌てふためくマリーに突き飛ばされていた。