うっすらと、室内を覆う湯気。  
自分の動きに合わせて、ちゃぽん、という水音が響いた。  
 
「…ふぅ」  
 
浴槽には、一人で入浴しているマリーの姿があった。  
誰も居ないのをいいことに、はしたないとは思いつつも浴槽の淵に頭を預けて伸びをする。  
一糸纏わぬ姿で、かつ他に誰も居ないことが、マリーに開放感を与えていた。  
 
「あぁ…。気持ちいいなぁ…」  
 
思わず本音が出る。  
マリーは再び伸びをすると、ゆったりと湯舟に身を預けた。  
豊かな胸が、湯の浮力でぷかりと浮かぶ。  
普段なら慌てて隠すところだったが、今日のマリーは特に気にも留めなかった。  
 
 
(フーちゃんが居たら何か言われそうだけど…。今は、いいよね?)  
 
 
フレデリカと共に入浴することも少なくはないのだが。  
その際は、決まってマリーはバスタオルを纏っていた。  
必要以上に露出することで、フレデリカに弄ばれることを防ぐ為である。  
マリーにその気はなくとも、ついうっかり胸元を露出しただけで。  
 
「何よそのおっぱい…!こんなものがあるから悪いのよ!!」  
 
などと、良く分からない因縁を付けられて弄ばれてしまうのである。  
確かに、自分の胸は「人並以上」だという自覚はある。  
そしてフレデリカの胸が「はるか人並以下」であるという事も。  
それをフレデリカがコンプレックスにしているように、自分だってコンプレックスとしているのだが。  
その辺りの機微は、どうしても理解して貰えないようで。  
マリーにとっての最善策は「フレデリカの目に付かないようにすること」であった。  
 
ふと、浴槽に視線を落とす。  
流れてきたらしいアヒルの玩具が、目の前に浮かんでいた。  
 
「あ…、アヒル隊長…」  
 
無意識のうちに、手を伸ばす。  
きらきらとしたつぶらな瞳は、ただマリーを見据えていた。  
 
アヒル隊長。  
元はフレデリカの私物であったそれは、いつの間にか女湯のマスコットと化していた。  
ちなみに正式名称は「紅蓮の隊長 アヒル殿」である。  
フレデリカと、その時一緒に入浴していた子供によって名付けられたものだった。  
一見すると、ただのアヒルの玩具。  
しかし彼の存在は大変偉大なものであり、特に子供たちには非常に慕われていた。  
「ちゃんと肩まで浸かって100数えないとアヒル隊長に怒られるわよ」と言えば、  
子供たちは素直に、母親の言うことに従う程である。  
子育てにも尽力している、母親にとっても非常にありがたい存在であった。  
 
「誰か、忘れていったのかな?」  
 
手に取ったアヒル隊長を、まじまじと眺めるマリー。  
普段は脱衣所で丁重に保管されている為、子供かフレデリカが居ない時は浴室には無い。  
しかもフレデリカと一緒に入浴すると、フレデリカは片時も手放さない為、  
マリーはアヒル隊長に触れたことが無かった。  
色鮮やかな黄色のボディを、指で押してみる。  
ぺこりとした玩具特有の感触に、マリーは懐かしさを覚えていた。  
 
(そういえばフーちゃんって、昔からお風呂に玩具を持ち込んでたっけ…)  
 
幼い頃を思い出し、思わず頬が緩む。  
単純な造形。  
つぶらな瞳。  
けれど、それがとても愛おしく見える。  
 
目の前のアヒル隊長を眺めていると、幼い頃お気に入りだったぬいぐるみを思い出した。  
いつも寝る時は一緒だったあの子も、こんなつぶらな瞳をしていたっけ。  
アヒル隊長がぬいぐるみの姿と重なり、マリーは思わずアヒル隊長を抱きしめていた。  
 
(…何でだろう。すごく懐かしい気分…)  
 
感触も大きさも全然違うのに、マリーは思い出のぬいぐるみを抱きしめたような気持ちになっていた。  
少しでもその感触を思い出したくて、更にしっかりとアヒル隊長を抱き寄せる。  
懐かしくて幸せな記憶を呼び起こしたくて、無意識の内に目を閉じていた。  
湯舟に浸かっている身体も、優しくて温かい思い出に包まれていく。  
 
 
 
「…何、してんのよ?」  
 
 
突然響いた声に気付き、顔を上げる。  
するとそこには、入口で怪訝そうな表情をしてマリーを眺めるフレデリカの姿があった。  
両手を腰に当て、首を傾げているフレデリカ。  
一糸纏わぬ、仁王立ちである。  
 
「………?」  
 
フレデリカの視線は、マリーの胸元へと注がれていた。  
視線を追って、自分の胸元へと視線を落とす。  
 
「………!!」  
 
するとそこには、マリーの胸に挟まれているアヒル隊長の姿があった。  
小さい隊長を、無理に抱きしめようとしたことが災いしたのか、  
アヒル隊長の頭は、マリーの胸の谷間にしっかりと埋まっていた。  
マリー本人としては、童心に還ってぬいぐるみを抱きしめるような気持ちでいたのだが。  
傍目には、どう見ても「いかがわしいこと」を連想させるものでしか無かった。  
 
 
「………」  
「………」  
 
気まずい沈黙が、二人を包む。  
マリーの腕と谷間から開放されたアヒル隊長は、ぷかぷかと湯舟に浮かんでいた。  
 
 
「あっ、あの、あのねっ」  
 
真っ赤な顔で、慌てふためくマリー。  
湯舟でばたばたと手を振ったせいで、更に流されていくアヒル隊長。  
その後姿を目で追うと、フレデリカは大きな溜息を吐いた。  
 
「…胸で挟む練習?」  
「……?」  
「アタシの隊長じゃ、練習にならないんじゃない?」  
「え…?」  
「まあ、アンタは挟めるみたいだけど。普通はもっと、細長いモノ使うと思うわよ」  
「……!!」  
 
ようやく、フレデリカの言わんとすることを理解したマリー。  
フレデリカの冷たい視線を一身に浴びて、今度は真っ青な顔をしていた。  
ジト目のままマリーの胸を見据えるフレデリカ。  
その顔には、はっきりとこう書いてあったのだ。  
 
 
『まあ、私 は 何 も 挟 め な い ん だ け ど 。』  
 
 
咄嗟に、自分の両腕で胸をかばうマリー。  
腕で挟まれ、ぎゅっと寄せられた豊かなふくらみ。  
水に濡れた肌は艶めかしく、当社比1.25倍くらいには情欲をそそられる眺めだった。  
その深い谷間は、何でもナニでも思う存分挟めそうである。  
 
 
「……………。」  
 
フレデリカの眉間に皺が寄っていた。  
それを見て、無意識の内に身体を強張らせるマリー。  
今日に限って、誰も居ないからとバスタオルを用意していない。  
 
 
(ど、どうしようどうしよう!!?)  
 
 
機嫌を損ねたフレデリカなら、浴槽に飛び込んで来て自分の胸を揉みしだくくらいのことはやってのける。  
それが嫌だから、普段はバスタオルで身体を隠すようにしているのに。  
隠していても理不尽に揉まれる時だってあるのに。  
今のこの状況は、マリーにとって正に絶体絶命であった。  
救いを求めるように、周囲に視線を走らせる。  
アヒル隊長は波に揺られてぷりぷりとお尻を振りながら、遥か遠方まで流されていた。  
 
「あの、えっと!」  
「…ま、いいわ」  
 
「………え?」  
 
余りに予想外の言葉に、呆然とするマリー。  
腕に寄せられた胸は、まだ激しい鼓動を響かせていた。  
 
そんなマリーの様子に構うことなく、フレデリカはくるりと背を向けて洗い場へと向かう。  
椅子にどかりと座り込むと、勢い良く噴き出すシャワーの湯を頭から被っていた。  
シャンプーのポンプをばしばしと2回叩くと、そのまま頭を洗い始める。  
いつも以上に豪胆な様子を、マリーはぽかんとした表情で眺めていた。  
 
 
「あーもうッ、今日はさっさと上がらなきゃいけないのよー!」  
「何か、あったの?」  
「千架よ、千架!洗濯物持ってかないといけないの!」  
「千架さんが?」  
「そーよッ!『今日持って来なかったらバイクで轢くからね』なんて言われちゃったのよ!」  
「…何日溜めてたの?」  
「えーと、10日くらい?」  
「…それは当然だと思うなぁ」  
 
家事全般が不得手、というよりもやろうともしないフレデリカ。  
マリーや千架などが面倒を見てはいたが、それでも尚惨憺たる状況となっていた。  
散らかり放題の部屋に、溜まり続ける洗濯物。  
それがとうとう、千架の怒りに触れてしまったらしかった。  
 
「…そういえば、晴彦さんは?」  
「この間轢いたって。二週間溜めてたらしいわよ」  
「そうなんだ……」  
 
はぁぁ、と小さな溜息を吐くマリー。  
ちなみに晴彦も、フレデリカに匹敵するほどに身の回りには無頓着であった。  
 
「それなら、先に持って行ってからお風呂入れば良かったのに」  
「イヤよ面倒臭い。先に身体洗っとけば一回分増やせるじゃない」  
「…小まめにお洗濯すればいいのに」  
「えッ?何か言ったー!?」  
「…ううん、何でも」  
 
身体中を泡まみれにして、身体を洗うフレデリカ。  
マリーの呟きは聞こえなかったらしかった。  
シャワーで泡を洗い流すと、勢い良く立ち上がるフレデリカ。  
そのまま浴室を後にしようとしていた。  
 
「フーちゃん、お風呂は?」  
「いーらない!早く行かないと大変なんだから!」  
 
「あ、そうだ」  
「?」  
 
長い髪から水滴が垂れ、フレデリカの裸身を流れる。  
入口で振り返ると、マリーの方を向いていた。  
 
「アンタの分の洗濯物も、持ってってあげようか?」  
「うーん、じゃあ、お願いしようかな…」  
「分かったわ。じゃあね」  
「千架さんに叱られないようにねー」  
 
フレデリカの姿を見送ると、マリーは浴槽に腕を預けた。  
自分の身は守れたことに、安堵の溜息を吐く。  
 
 
(良かった…、今日は揉まれなかったぁ…)  
 
 
 
 
 
 
 
「………え?」  
 
浴室から出たマリーは、脱衣所で硬直していた。  
ショックのあまり、綺麗に水滴を拭ったアヒル隊長を取り落としてしまう。  
鈍い音と共に、アヒル隊長は床へと転がっていた。  
 
「嘘…。全部、無い…」  
 
脱衣カゴを確認するが、マリーの衣類は何一つとして残っていない。  
慌てていたフレデリカが、着替えも一緒くたにして持っていったらしかった。  
 
脱衣所中を見回すが、衣類らしきものは何一つとして無い。  
強いて言うなら、今巻いているバスタオルくらいのものだ。  
 
「…や、やだやだ、どうしよう…!?」  
 
深夜に近いこの時間に、浴室に来る人間はほとんど居ない。  
しかも、浴室は居住区とは離れている為、誰かを呼ぶことも難しい。  
仮に大声を上げて誰かを呼んだとして、着替えを持って来させるなんてことはしたくない。  
わざわざ皆に、自分の災難を知らせて回るようなものだからだ。  
 
「うぅ…、困ったなぁ…」  
 
おろおろしながらも、床に転がったままのアヒル隊長を拾い上げる。  
縋るようにしてアヒル隊長を抱き寄せると、マリーは困り果てた様子で呟いた。  
 
(…もう、仕方ないよね)  
 
 
悩みに悩み抜いた結果、マリーはバスタオル一枚だけ纏った姿で廊下を歩いていた。  
自分の胸の中で、つぶらな瞳をしたアヒル隊長はこう言ったのだ。  
 
 
『バスタオルもまた衣類である。急いで部屋まで戻れば問題無いであろう』  
 
 
勿論マリーの捏造なのだが、そんな形でも誰かに後押しされなければ踏み切れなかった。  
意を決して、バスタオル姿で浴室を出る。  
せめてもの気休めに、巻き込んだバスタオルの端にテレキネシスを掛けておく。  
これで、多少のことでは外れないはずだった。  
 
 
(…やだなぁ、やっぱりスースーして落ち着かない…)  
 
ひんやりした廊下の空気は、湯上がりの火照った身体には冷たく感じられる。  
また、背の高いマリーの身体を覆うにはバスタオルの丈が足りず、  
胸元もお尻も、半ば見えているような状態だった。  
 
(…下着を着けてないだけで、こんなに落ち着かないなんてぇ…)  
 
そんな状態で歩くのだから、脚を動かす度にひんやりとした感触に襲われる。  
慣れない不快な感覚にそわそわしながらも、マリーはゆっくりと廊下を歩いていた。  
いつもは歩いて2〜3分の距離が、途方もなく長く感じられた。  
 
 
(良かったぁ…、誰にも会わなかった…!)  
 
 
目の前の角を曲がれば、部屋のある廊下に辿り着く。  
自分の部屋が一番奥というのが恨めしかったが、そこまで来れば走ってしまえばいい。  
そんなことを考えながら、急いで曲がり角へと向かった矢先。  
 
 
「きゃあッ!?」  
「うわあッ!?」  
 
どしん、という衝撃と共に、誰かにぶつかっていた。  
目を白黒させながらも、目の前の人物を認識しようとする。  
 
「マ、マリー!?」  
「…シャオ君!?」  
 
寝る前だったのか、上着は着ておらずタンクトップ姿のシャオ。  
持っていたらしい本が、広がったまま廊下に転がっていた。  
シャオは、バスタオル姿のマリーを見て顔を真っ赤にしている。  
 
かなり低い位置で巻かれたバスタオル。  
きつく巻かれたタオルが谷間に食い込んでいて、その豊かさを過剰に強調していた。  
太ももの方も丈が足りないのか、見えそうで見えない際どい位置までしか覆われていない。  
今までに何度も想像したことのある、あられもないマリーの姿。  
それが、何故かこんな廊下で「本物」を目にしている。  
予想を遥かに上回る事態に、シャオは混乱しながらもマリーの肢体から視線を外せずにいた。  
 
「な…っ、何でそんな格好を…!?」  
「あ、あああああの、こ、ここ、これはねッ!?」  
 
シャオと鉢合わせしてしまったことと、その視線が明らかに自分の胸元や太ももに向いていることに気付くマリー。  
シャオ以上に顔を真っ赤に染めて、両腕で胸元を隠そうとしていた。  
しかし隠そうとすればするほど、豊かな胸は腕に押し潰されてその質感を強調させてしまう。  
 
「………」  
 
マリーの胸元を凝視したまま、思わず生唾を飲み込んでしまうシャオ。  
その様子を見て、マリーは目に涙を浮かべていた。  
 
「…いやあぁぁッ!!ごめんなさいぃーー!!!」  
 
「うわあぁッ!!?」  
「きゃああッ!!?」  
 
走って逃げようとしたのは良かったが、シャオを避けずに正面から激突したマリー。  
ぶつかった拍子に足を滑らせ、背後へと倒れ込む。  
シャオもまたバランスを崩し、マリーの上に重なるように倒れ込んでいた。  
 
 
 
「うぅ…」  
「だ、大丈夫かマリー!?」  
 
マリーの上から覆い被さるようにして倒れ込んだシャオ。  
マリーの呻き声に気付き、慌てて身体を起こした。  
 
「大丈夫…だから。手、どけてぇ…!!」  
「あ、ああ、うわあっ!?」  
 
右手に、弾力のある柔らかい感触。  
シャオは、マリーの胸を鷲掴みにしていた。  
バスタオル越しのマリーの胸は、とても柔らかい。  
薄い布地の向こうにある、豊かな胸とその頂の感触。  
今までに何度も、マリーの胸を鷲掴みにする光景を想像したことがある。  
しかし実物は、想像を遥かに凌ぐ柔らかさと質感を誇っていた。  
 
そして問題は、それだけではない。  
倒れた拍子に巻き込んでいたバスタオルが外れ、マリーの裸身をシャオの前に曝け出していた。  
とはいっても、テレキネシスのお陰で身体を覆うタオルは守られていた。  
巻き込んでいた方の端が外れたことで、脇腹や腰、そして横乳などが露出している。  
見えそうで見えないその姿は、かえって劣情を催す光景となっていた。  
 
「シャオ君…!お願いだから離してぇ…!」  
「あ、あああ、済まない!!」  
 
慌てて手をどけようとするシャオ。  
しかし本能が邪魔して、手が言うことを聞いてくれない。  
どうにか手をマリーの胸から離そうと、懸命に指を動かす。  
しかしやっぱり本能が邪魔をして、掌はマリーの胸を鷲掴みにしたまま離れようとはしない。  
その結果−  
 
 
「あっあっ、やだあぁ!揉まないでぇぇッ!!」  
 
 
鷲掴みにしたまま指を動かした為、結果的にシャオはマリーの胸を揉みしだいていた。  
自分の掌の中で、まるで生き物のように形を変えるマリーの胸。  
むにゅもにゅ、という素晴らしいとしか表現の出来ない感触。  
 
 
(何故なんだ…。手が、離れない!!)  
 
 
さながら、自分がマリーを押し倒しているかのような体勢。  
床に広がったマリーの髪が、やけに煽情的だった。  
加えて、顔を真っ赤にして涙目になりながら懸命にいやいやをするように首を振るマリー。  
想像を絶する刺激的なものを一度に叩き付けられ、シャオの理性は既に崩壊寸前となっていた。  
 
「シャオ君…ッ!離してぇぇ!!」  
「わ、分かってる!!」  
「分かってないよぉ!…もう、揉まないでぇぇ!!」  
 
 
廊下にマリーの叫びがこだましたのと同時刻。  
フレデリカは、自分の部屋で洗濯物の整理をしていた。  
 
「あーあもう、千架ったらあんなに怒らなくてもいいじゃない!」  
 
ぶちぶちと文句を零しながら、汚れ物と引き換えに渡された洗濯物をしまっていく。  
ふと、見慣れない下着が目に飛び込んできた。  
疑問に思いながらも、眼前に広げてみる。  
 
「でかい…」  
 
紛れも無くそれは、マリーの下着であった。  
小ぶりなメロンでも収めるのか、と思わずツッコミたくなるほどに巨大なカップ。  
こんな巨大なものでないと収まりきれないのであろう、マリーの胸。  
しばらくまじまじと眺めた後、フレデリカは思わずそれを投げ捨てていた。  
 
「…フン!」  
 
自分の下着と見比べて、フレデリカはそっぽを向いていた。  
落ち着いてから、改めて洗濯物の山に視線を落とす。  
明らかにフレデリカのものではない洗濯物。  
かき集めてみると、ちょうどマリーの下着と寝間着が一揃いになっていた。  
 
「…何で、マリーの服がここに?」  
 
 
千架の元に、マリーの洗濯物も一緒に持って行ったことを思い出す。  
ひとしきりガッツリと叱られた後、確かこんなことを言っていた。  
 
「マリーの分、洗濯された物も混じってたよ。後で返してあげてね」  
 
その時は聞き流していたが、ようやくその意味を理解した。  
 
「やば…ッ。マリーが!!」  
 
自分が、着替えまで持ち去ってしまったことに気付いたフレデリカ。  
まだ浴室に居るかもしれない。  
大慌てでマリーの衣類をかき集めると、フレデリカは勢い良くドアを開けて廊下へと飛び出した。  
浴室へ向かおうと方向転換したところで、フレデリカはとんでもない光景を目にしていた。  
 
「シャオに…、マリー…?」  
 
シャオの身体の下に組み敷かれたマリーの身体。  
シャオの足の間から覗くマリーの足がじたばたと暴れていた。  
上の方へと視線を送ると、廊下に押し倒されて顔を真っ赤にして涙を浮かべるマリーの顔。  
そして、とどめの一言。  
 
 
「いやぁ…!お願い、もう止めてぇぇ…!」  
 
 
ブ チ ッ 。  
 
 
フレデリカの中で、何かが切れる音がした。  
わなわなと震える手で、マリーの衣類を握り締める。  
 
 
「なぁにをしくさッとんねんワレェェェッ!!!」  
 
 
雄叫びを上げ、全速力で駆け出すフレデリカ。  
シャオが振り返るよりも早く、シャオの後頭部に飛び蹴りを放っていた。  
 
 
(…あ、白だ)  
 
鬼のような形相のフレデリカ。  
飛び込んでくる、白い足。  
ネグリジェの奥から覗く、下着の色も白かった。  
全てが、マリーの目にはスローモーションのように見えていた。  
 
 
−ガスッ!!  
 
 
「うぐあッ!!」  
 
フレデリカの一撃が決まるのと同時に、飛び散った衣類が宙を舞った。  
 
「きゃあッ!?」  
 
フレデリカの容赦ない一撃をモロに喰らったシャオは、その場に倒れ伏した。  
倒れた先には、マリーの胸があった。  
 
 
「おいッ!どーした!?」  
「一体何なんですかぁ〜?」  
 
騒ぎを聞き付け、部屋から出てくるカイルとヴァン。  
あまりにもとんでもない光景に、二人して言葉を失っていた。  
 
 
肩で息をしながら、鬼のような形相でシャオを睨み付けているフレデリカ。  
廊下中に散らばっている、洋服や下着や本。  
あられもない格好で、廊下に倒れているマリー。  
 
「シャオー!?」  
「シャオ君!?」  
 
…そして、マリーの胸に顔を埋めて気絶しているシャオ。  
意識を失う直前、少なくとも彼は幸福であったと言えるかもしれない。  
何故なら、その後の惨劇をまだ知ることもないのだから。  
 
シャオが意識を取り戻した後に繰り広げられる、仁義なき戦いはまた別の話である。  
 

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