「あの、ね…。シャオ君…」  
「…何だ?」  
 
ベッドの上に座り込み、上目遣いでシャオを見つめるマリー。  
不安げに自分の胸元を掴む仕種や、赤く染まった顔と潤んだ瞳にどきりとさせられる。  
マリーは悩んだ様子で、視線を左右へと彷徨わせていた。  
 
「それだけ…なの、かな?」  
「それだけ?」  
「だっ、だからっ。…キス以外は…して、ないの…?」  
「そ、それ…は…」  
 
マリーの質問に、思わず口ごもるシャオ。マリーは今にも泣き出しそうな顔で、シャオを見つめていた。  
二人の間にはぎこちない空気が漂う。ドキドキという自分の鼓動が、耳鳴りのように響いていた。  
 
 
(『やだやだっ、私、なんてこと聞いてるんだろう!?』)  
 
(『でも、朝起きたら私もシャオ君も…裸、だったし…!』)  
 
(『ま、まままさか、や、やっぱり…!しちゃったのかな!?ど、どどど、どうしよう!!?』)  
(…成程な。そういうことか)  
 
 
年頃の乙女としては、非常に重要な問題であるのだろう。  
記憶もなく、自分からキスを迫ったと言われた揚句に目覚めたら全裸だったとあっては  
そう推察するのはむしろ当然の流れである。  
マリーはあぁ、とかうぅ、とか呻き声を上げながら、耳まで真っ赤にしては頭を抱え込んでいた。  
 
「マリー、あのな」  
「…ううぅ…」  
「多分マリーが思ってるようなことは、なかったから」  
「え…!?」  
 
がば、とマリーは勢い良く顔を上げる。  
驚きと安堵に満ちた表情を前に、シャオは内心複雑な想いを抱いていた。  
 
確かに、最後の一線だけは越えていない。  
しかし、それ以外の一線は大体全部越えているのだ。  
目覚めたら全裸だっただけではなく、シャオは床に放置されていたのだ。  
それでいて「何事もなかった」などということは、当然ある訳がない。  
 
押し倒されたり剥かれたり縛られたり引っ掻かれたりは序の口で、  
踏まれたり股間の大蛇を手や足であれこれされた結果、当然のことながらおっきくなってきちゃって  
くやしいけど感じちゃう!ビクッビクッでバーストがストリームしちゃって  
それを見たマリー(仮)に蔑むような目で見られた揚句に罵詈雑言を浴びせ掛けられて  
でも最終的には何かそれすらも気持ち良くなってきちゃって  
危うく別の世界の扉を開きそうになってしまっただけである。  
つまり要約すれば『アッー!』という話であった。  
 
「……………。」  
 
勿論、シャオ自身にとっては要約で済まされる問題ではない。  
只でさえ性的嗜好は普通とは言い難いのに、これ以上マニアックになって一体どうしろというのか。  
もうそろそろ、普通の男の子には戻れなくなりつつある気がする。  
とりあえずこの性的なもやもやは、今晩セルフでバーストをストリームすることで処理するとして。  
シャオは再び、眼前のマリーへと意識を集中させていた。  
 
 
(『ああ、良かったぁ…』)  
(…そんなに嫌なのか…?)  
 
「最後の一線は越えていない」という事実を知り、全力で安堵した表情を浮かべているマリー。  
そのお陰で他に何があったかという点から注意を逸らせたのは良かったが、  
シャオとしては複雑以外の何物でもない。  
例え、相手が自分であることが嫌という訳でなく「していない」ことに安堵していると分かっていても。  
 
(『あっ、でも…。キスは、してるんだよ…ね…?』)  
 
(『そう…しちゃったんだよね、シャオ君と…。どんな…感じ、だったんだろ…』)  
(…まあ、常に舌は挿れられてた気がするな)  
 
恐らく、現実はマリーの想像しているものとは大いに掛け離れているに違いなかった。  
本当のことを話せば、落ち込むどころではなくなってしまうであろうことは容易に想像がつく。  
しかし何も知らないマリーは、再びドキドキと高鳴る胸を押さえて俯いていた。  
 
「あ…、シャオ…君…」  
「何だ?」  
 
マリーは頬を染め、上目遣いにシャオを見上げている。  
先程と同じように視線を左右に彷徨わせた後、意を決した様子で小さく深呼吸をしていた。  
 
「あ、その…。ごめんなさい…!いきなり、そんなこと…しちゃって…!」  
「いや…」  
「私、何も覚えてないけど、でも…っ!そんなの…、誰だって、嫌だと思うし…!」  
「……」  
「だから…、その、あの…っ。本当に…、ごめん…な、さ…」  
 
瞳の端に滲んだ涙は、今にも溢れて流れ落ちそうだった。  
混乱して、自分で何を言っているのかも分からなくなっているらしい。  
そんなマリーを前に、シャオは思わず溜息を吐く。  
そしてマリーはそんなシャオを見て、涙目のまま身体を強張らせていた。  
 
「…一つ、言ってもいいか?」  
「あ…、うん、はい…」  
「俺は、嫌じゃなかったから」  
「え…っ」  
 
嫌じゃないどころか、本来ならば有り得ない事態に対して、感謝以外に何をしろと言うのか。  
例え首をへし折られかけたとはいえ『マリーとキスをした』という事実に変わりはない。  
おまけに「涙目でしおらしいところもまた可愛いマリー」が目の前に居るとなれば、  
パンツも全裸も昨晩の性的暴行の数々も、喜んで水に流そうというものである。  
そんなシャオの胸の内を知ることもなく、マリーは顔を真っ赤に染め上げてシャオを見つめていた。  
 
「そ、そんな、あの…!?」  
(『え、えっと!それって…、それって!?』)  
 
ドキドキ、ドキドキと、うるさく鳴り響く自分の鼓動。  
それが先程よりも大きく、早まっていることをマリーは知覚する。  
自分を見つめ返すシャオの目から、視線を逸らすことも出来ない。  
 
「マリーだから、嫌じゃなかったよ」  
「………!!!」  
 
ドクン、と一際大きな鼓動が響き、マリーは反射的に自分の胸元を掴んでいた。  
顔どころか、耳まで真っ赤にして俯くマリー。  
ベッドの上に座り込んだまま、シーツを握り締めては離しを繰り返している。  
時折シャオを見上げては、すぐさま俯いてシーツを弄んでいた。  
 
「あの、それ、どういう…!?」  
「…分からないか?」  
「う…、あぅ…」  
 
(『それって…、まさか、でも…、嘘…!?』)  
 
(『やだ…もう、何で私、何も覚えてないんだろう…!?』)  
 
「あ、あああ、あのっ…!私、本当に何も、覚えてなくてっ、だから…!」  
「だから、気になるんだろ?」  
「べ、別に…っ、そういう、訳じゃ…」  
「…嘘だな。顔に出てるよ」  
「あ…」  
「マリーが覚えてなくても、俺は覚えてる」  
「そ、その…」  
「だから今度は、俺が…教えてやるよ」  
 
そう言って、身を乗り出したシャオにシーツを握り締めていた手を取られる。  
シャオの顔が近付き、マリーは咄嗟に身を引こうとした。  
しかし取られた手はしっかりと掴まれており、マリーをその場から逃すまいとしていた。  
 
「え、あの…シャオ君?」  
 
手を取られ、マリーは身を引くことも出来ずにシャオを見上げていた。  
赤く染まった顔は、どこか不安げな表情を浮かべている。  
そしてベッドの上にぺたりと座り込み、ショートパンツから覗く白い脚をシャオの眼前に晒していた。  
仲間ゆえの気安さ、そしてシャオのことを微塵も『男』だと意識していないがゆえの無防備な姿。  
そんなマリーを前にして、シャオは無意識の内に握った手に力を込めていた。  
 
「シャオ君、手…離して…?」  
「………」  
 
無言のまま自分を見据えているシャオに、マリーは不安を募らせる。  
先程からドキドキと鳴り響く鼓動が、シャオにも伝わってはいないだろうか。  
そんなことばかりが気になり、マリーは思わずシャオから視線を逸らしていた。  
 
(『どうしよう…。シャオ君、何で…?』)  
 
不安げに潤んだ瞳が、再びシャオを上目遣いに見つめている。  
マリーに自覚ならばないのだろうが、その仕種はシャオを煽るには充分過ぎるものだった。  
ぎしり、とベッドが音を立てて軋む。  
シャオが再び身を乗り出して、間合いを詰めていた。  
 
間近で瞳を覗き込まれ、マリーは咄嗟に身を引こうとする。  
しかしシャオに肩を掴まれ、逃れることは出来なかった。  
反射的に顔を上げ、シャオの顔が近いことに驚き慌てて俯いてしまう。  
びくりと跳ねた肩を強引に引き寄せられ、身を捩って抵抗してはみたものの、力で敵う訳もない。  
握られた指先と、掴まれた肩から伝わるシャオの体温はやけに熱かった。  
 
「や…ッ…!」  
 
顔を上げずとも、シャオが目前に居ることは嫌でも分かる。  
上げたが最後、マリーにはシャオを拒むことが出来ないであろうことも。  
自分の顔は、それこそ耳まで真っ赤になっているのだろう。  
先程よりも一層激しくなった鼓動をどうにか鎮めようと、マリーはきつく胸元を握り締めていた。  
 
俯いた視線の先にはタンクトップ姿のシャオの上半身があった。  
見慣れているはずのその姿を、今のマリーは過剰に意識してしまう。  
普段はフレデリカから「何でいつも中はタンクトップなのか」だの  
「タンクトップだけはない」だの「三割増で老けて見える」だのと散々な言われようで  
マリーもその意見には概ね同意していたのだが、今はそれが違って見えた。  
 
(いつもカイル君達と修業してるよね…。やっぱりシャオ君も…男の人、なんだ…)  
 
自分とは明らかに違う、日々の修業で鍛えられた身体。そして自分の指や肩を掴む手の力強さ。  
普段のシャオからは考えられない強引さに、マリーの鼓動も三割増で激しくなっていた。  
 
「…マリー」  
「あ…っ、う、うん…」  
 
耳元とまではいかずとも、至近距離で囁かれて背筋にぞくりとしたものが走る。  
どうしても顔を上げることが出来ず、マリーは更に深く俯いてしまっていた。  
 
「…そんなに嫌か?」  
「そっ、そういう訳じゃないんだけど…っ」  
 
(『やだ私、何言ってるんだろう…!?』)  
 
この場から逃れたいのなら、嫌だと言い切ってしまえば良かったのに。  
何故かマリーは、そう言って拒むことが出来なかった。  
 
「だって…。こういうのは、違うと…思う、の…」  
「違う?」  
「あの、その、好きな人と…するものじゃ、ない…かな」  
「……………。」  
 
それは要するに自分のことは好きではないと言っているのかと。  
というか人の首をへし折ろうとした揚句にキスしてきた人間の言い草なのかと。  
二重の意味でツッコミたくなったが、それも出来ずに沈黙していると再びマリーの思念が飛び込んできた。  
 
(『あ…、でも私、シャオ君とキスしたんだ…よね?』)  
 
(『ということは…、私、もしかして、シャオ君のこと…!?』)  
 
実際のところは、酔った勢いによるものである。  
そして現在の「ドキドキ」の正体も、動揺と吊橋効果による勘違いが大半であった。  
しかし元来思い込みの激しいマリーは、それを違った方向に解釈してしまったりしく。  
 
(『シャオ君のこと、好きだったの…!?どうしよう、全然気付かなかった…!!』)  
 
全く違う方向から、見当違いな結論を導き出していたのだった。  
勿論のことながら、そもそもそんな感情はなかったのだから気付かなくて当然である。  
しかし思い込みの激しい乙女という生物は、一度結論を出してしまうとそうとしか考えられなくなってしまうのであった。  
 
(規制引っ掛かってるみたいなんで途切れたらすいませんorz)  
 
 
 
「………………。」  
 
そしてこれまた当然のことながら、マリーがシャオのことを微塵も意識していなかったことについては  
これまでの10年間の経験と思念から、シャオは身をもって思い知らされていた。  
いくら誤解とはいえ、こんな好機は二度と訪れはしないだろう。  
どう活用したものかとシャオが考えあぐねていると、マリーは伏せていた顔をゆっくりと上げていた。  
 
「シャオ君…」  
「あ、ああ」  
 
先程とは違い、やけに艶を帯びた瞳がシャオを見上げている。  
そんな蠱惑的な表情をしたマリーに、シャオは思わずどきりとさせられていた。  
そしてまた、マリーの思念が飛び込んでくる。  
 
 
(『シャオ君となら…いい、かな…』)  
(…!!!)  
 
 
ドキドキ。  
ドキドキ。  
ドルキドルキ。  
ドキドキ。  
 
室内に、響くわけもない二人の鼓動が響き渡っているかのような錯覚さえ覚える。  
いつの間にか二人は互いのことしか考えられなくなっていた。  
今の二人には、言葉など不要なものだった。  
 
シャオが再びマリーの肩を引き寄せると、マリーはそっと目を閉じる。  
顔を寄せ、唇が触れ合いそうになったところで。  
シャオは扉の方向から、異様なプレッシャーを感じ取っていた。  
 
「むがーーーッ!!!」  
 
 
−ドゴッ!!  
 
 
耳慣れた声と、その主による耳慣れた鈍い音が響き渡る。  
シャオが音のする方向を振り向くと、そこにはカイル達の姿があった。  
 
「離しなさいよバカ!!」  
「あっ、コラ!暴れんなよ!!」  
「もー、何やってるんですかカイル君!ちゃんと押さえてて下さいよー」  
「悪りぃ悪りぃ。ほら、暴れたら駄目だろフー?いいところで邪魔すんなよな」  
 
真っ赤な顔をしてじたばたと暴れようとしているフレデリカ。  
そんなフレデリカを押さえ込んでいるカイル。  
そして、何故かほっかむりをして陰からこちらを覗いているヴァン。  
フレデリカが蹴飛ばした拍子にドアが開いてしまったらしいのだが、  
カイルとヴァンはそれを気にする様子もなく、平然としていた。  
 
「それよりっ!アンタさっきからどこ触ってんのよぉっ!」  
「へ?」  
 
きょとんとした顔をしたまま、視線を下げるカイル。  
カイルの腕は、しっかりとフレデリカの身体を胸ごと押さえ込んでいた。  
 
「どうかしたか?」  
「どうかした、じゃないわよッ!胸、触らないで!!」  
「はぁ?胸??この平たいのが?」  
「な…ッ!?」  
「残念だなァ、オレの定義じゃこれは胸とは言えねぇな。『胸のような残念な板』だろ」  
「い、板ですって…!?」  
「せめて挟めるようになってから出直してくるんだな」  
「挟むって一体何をよ!!?」  
「そんなもん言わなくたって分かるだろ?…何なら、オレが面倒見てやろうか?」  
「あ…、やだッ、ちょっと…!?…ん…ッ、揉まないで…よぉ…!」  
 
「もー、こんなところで公開セクハラは止めて下さいよカイル君。フレデリカさんもその気にならないで下さいね」  
「なッ、なってないわよ!ただちょっと、カイルの触り方が…!」  
「しっかし本当に揉み甲斐のねぇ胸してんなぁ」  
「…やッ…、そこ、いじっちゃ、ダメ…!」  
「はいはい、続きは別の機会にお願いします」  
「えー、オレちょっとノッてきたんだけどなぁ」  
「スレ違いならぬレス違いですよ。今はこちらに集中しましょう」  
 
そして改めてシャオ達の方へと向き直るヴァン。  
呆然としているシャオに向かって、ほっかむりは平然とこう言い放つ。  
 
 
「そういう訳なので、ボク達のことは気にせず続きをどうぞ」  
「出来るかーーーッ!!!」  
 
シャオの怒号は、廊下にまで響き渡っていた。  
息を荒げるシャオに対して、平然としているヴァン。  
そんなヴァンに対し、シャオは怒りを抑え切れなくなっていた。  
 
「大体、何でここに居るんだ!」  
「俗世間で言うところの出歯亀というものでしょうか」  
「そして何でそんなものを被ってるんだ!!」  
「出歯亀といえばほっかむりが基本じゃないですか。ボクは形から入るタイプなんです」  
「その悪趣味な柄は何だ!!!」  
「出来れば唐草模様が良かったんですけれど、生憎手持ちがなくて。仕方がないので師匠に借りました」  
「あー、それでそんな不気味な柄だったのか。イアンさん趣味悪りぃもんなぁ」  
「そうですね、服の趣味だけはボクにも理解し難いです」  
「フブキもとうとう諦めたわよね。いくら言っても直らないからって」  
「そんなことは聞いてない!!」  
 
シャオのツッコミに動じることもなく、呑気な会話を繰り広げている3人。  
ふとカイルがシャオを見て、呆れたように盛大な溜息を吐いていた。  
 
「しっかしまぁ…、何やってんだよ本当に。ヘタレはどこまで行ってもヘタレなんだなぁ」  
「何だと!?」  
「だってそうだろ?これだけ時間使ってまだキスすらしてねぇじゃんかよ」  
「いつ押し倒すかと楽しみにしていましたけど、いつまでもしなかったですしね」  
「そうそう。オレなら今の間に押し倒して脱がせて挿れ」  
「アンタの場合は手が早過ぎるのよッ!!」  
「とりあえず一回は相手をイカせてるかなァ」  
「そんなことも聞いてないわ!!」  
「まあ、こんな感じでな?」  
「…だからッ、ん、やぁ…!」  
 
再び無遠慮にフレデリカの胸元へと手を伸ばすカイル。  
フレデリカは拒むような素振りを見せつつ、カイルの指の動きに合わせて声を上げていた。  
 
「ところで、さっきからずっと気になってたんですけど」  
「ん?」  
「どうしてフレデリカさんは、カイル君に胸を触らせても怒らないんですか?」  
「そ、それは…」  
「実はオレ達、そういう関係だからなァ」  
「違うわよ馬鹿ッ!だ、だって『男の人に揉まれたら大きくなる』っていうし  
誰でもなんて絶対ヤだけど、カイルなら大丈夫だからっ、それで…」  
「それで、無駄な努力をしている訳ですか」  
「無駄じゃないわよッ!!」  
「そうそう、無駄だと分かってても大胸筋矯正サポーター着けてんだよな?」  
「大胸筋矯正サポーターじゃないわ!!ブラよッ!!!」  
 
 
そして怒り狂いながら、カイルの手を押し退けて前へと出てくるフレデリカ。  
あまりの事態に硬直したままのマリーを見据えると、指を突き付けて声高に叫んでいた。  
 
「大体マリーもねぇっ、流されてんじゃないわよ!!」  
「え、え…!?」  
「だってそうでしょ!?途中から完全に『シャオ君ならいいかな…』ってカオしてたんだからッ!!」  
「そ、そそそ、そんなことないよっ!!」  
「してたの、完ッ全にしてたのよ!アタシ達が居なかったら、アンタ今頃処女奪われてたっておかしかないわよッ!!」  
 
「…それは、どうだろうなァ?」  
「ええ、何せシャオ君ですからねぇ?」  
「どういう意味だよ!」  
「そんなことはどうでもいいのッ!!」  
 
フレデリカのあまりの剣幕に、全員が口をつぐんだ。  
フレデリカは荒い息を吐きながら、意を決したかのように絶叫する。  
 
 
「アタシとキスしたくせに、シャオなんかがいいっていうのー!!?」  
「え」  
「な」  
「オイ、マジかよ!?」  
「マリーさんってば、やりますねぇ♪」  
 
「え、えええ、そんな…!?」  
「何よ、アタシとのことは遊びだったっていうの!?アタシのこと、好きだって言ってたのに!!」  
「そ、そういう意味じゃ…!しかもそれ、前に私が酔い潰れた時の話じゃないの!?」  
「それだけじゃないのよ、それだけじゃないんだからッ!」  
 
「指まで挿れたくせにーッ!!!」  
 
涙目になり、ぜぇはぁと肩で息をしているフレデリカの放った一言に、その場に居た全員が硬直していた。  
答えは間違っていないだろうと思いつつも「どこに!?」と言いたげな視線だけが交錯する。  
そんな中、マリーが顔を青くしたり赤くしたりしながら肩を震わせていた。  
 
「マリー?どうし」  
「いやああああああああああああっ!!!」  
 
 
−ぼきっ。  
 
 
マリーの絶叫と共に、通算三度目の「嫌な音」が響き渡った。  
フレデリカの爆弾発言により錯乱状態にあったマリーは「とにかくこの場から逃げたい」と思っていた。  
そしてその結果、目前にあった「もの」を思い切り突き飛ばしていたのだった。  
よりにもよって、絶対安静であるはずのシャオの首を。これ以上ないくらいに全力で。  
テレキネシスを暴走させていなかったことだけが、せめてもの救いだろう。  
 
 
「…ぅ…ぐぁ…」  
「きゃあああああああ!!シャオ君ーッ!!!」  
「駄目ですマリーさん!!動かさないで下さい!!」  
「アタシ、弄ばれてたんだわーッ!!」  
「フー、お前も落ち着けよ!!」  
 
事情は違えど泣き喚く乙女二人の叫びがこだまする中、シャオは朦朧としていた。  
首を襲う激痛に加えて、顔面を柔らかい何かで塞がれる。  
それが自分を抱きかかえたマリーのおっぱいだとは気付かぬまま、シャオは完全に意識を失っていた。  
 

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