ババ様からアイツらが恐らく死んだだろうと聞かされた時のことは今でも覚えている。
世界がメチャクチャになってアタシ達が根に隠れ住まないといけなくなったあの日よりもずっと鮮明に。
泣きじゃくるマリーとカイル。シャオやヴァンですら少なからずショックを受けているようだった。
アタシだって驚いていた。アイツが死んだと聞いて涙を流している自分自身に。
アイツが居なくなって初めて、アタシは自分の本当の気持ちを知った。
だからババ様からアイツらがこの世界に居るのが視えたって聞いた時は嬉しかった。
アイツにアタシの進化したパイロクイーンの力を見せ付けて、マリーみたいに凄いって褒めてもらおうと思ったのに。
マリー達がどうしてもって言うからアイツを助けるのは仕方なく譲ってあげたけど。
根に戻ってやっと話し掛けられたと思ったら、アタシの、む、胸のことをからかって!
だいたい、マリーの方が異常なのよ! アタシの大きさぐらいが標準的よ!
…せっかく、あの頃着てたような耳付きのフードの服をわざわざ引っ張り出してきたのに。
でも、「相変わらず」ってアイツに言われたのは、ちょっと嬉しかったかな。
変わってないよ、アタシの気持ち。
ババ様の話が終わって、そんなことを考えていたアタシのところにアゲハがやって来た。
「何よ」
不機嫌そうに答えるアタシに気まずそうな顔でアゲハが謝った。
「あー、その、なんだ。さっきは悪かった。
っていうか、俺からするとお前達には子供だった時のイメージしかなくてだな。それで…」
後ろの方で眼鏡の女が睨んでいる。この謝罪はあの女の強制なのだろう。
あの女の言うことは何でも聞くんだ、気に入らない。
「誠意が感じられないわ」
アタシがピシャリと告げるとアゲハは半眼になって文句を言った。
「じゃあどうすれば満足するんだよ」
どうすればって…。その時アタシの頭に良いアイデアが閃いた。
思わずにまりと笑みが出る。
「そうねぇ、根には男手が足りてないからアンタにはちょっと仕事を頼もうかしら?」
アタシの笑みを見て何かとんでもない事を要求されるのではと身構えていたアゲハはホッとして答えた。
「なんだ、力仕事なら任せてくれよ。なんたってお前らは俺の命の恩人なんだからな!」
ふふ、分かってるじゃない。命の恩人の言うことは絶対よ?
ここは根の中でも普段人が立ち入らない区画。ていうかアタシのパイロクイーン専用トレーニングスペース。
迂濶に近付けば簡単に死ねるから人払いをするにはうってつけの場所だ。
「なあ、こんなところに連れてきて何をさせるつもりだ?なんかあっちこっち焦げてるし。
って何してんだ、お前!」
するすると服を脱ぎ始めたアタシに気付いて、アゲハは大慌てで体ごとアタシから視線を背けた。
「何って…男手が足りてないってさっき言ったじゃない」
「それとお前が裸になるのとどう関係があるんだよ!」
耳の先まで真っ赤になってる。女の子の裸を見るのは初めてなのかな?
「今根には32人しか居ないの。カイルから聞いてるでしょ。
このままじゃ例えW.I.S.Eから世界を取り戻したとしても近い未来に人類は滅亡しちゃうわ。
ここまではOK?」
「お、おーけー」
「だからぁ、アタシ達はそれを防ぐために繁殖しなくちゃいけないわけ。
このフレデリカ様の相手に選ばれたのよ、光栄に思いなさい」
そのまま押し倒そうとするアタシに、アゲハは必死に反論してきた。
「だからちょっと待てって! お前もバァさんの話を聞いてただろ? 俺達はお前達からすると過去からやって来てるんだ。
俺達が頑張ってこんな世界になるのを阻止するから、お前もそんな無理しなくていいんだ」
アタシだってアンタがこんな世界になるのを変えてくれるって信じてるわよ。
でも。
「それで世界が平和になった時、この世界はどうなるの?
平行世界として独立して存在し続けるの? それとも改変された歴史に上書きされて消えて無くなるの?
どっちにしたって、今のアタシがアンタに会える回数は限られてるじゃない!
…好きやのに、ずっと一緒に居られんやなんてっ!」
「フレ、デリカ?」
アタシは座り込んで泣き出してしまった。突然の告白に困惑した顔のアゲハ。
あーあ、そんな顔が見たかったわけじゃないのにな。
「と、とりあえず、服着ようぜ。な? そんな格好じゃ風邪ひいちまうぞ?」
めのやり場に困りながらもアゲハは優しく声をかけてくる。
「じゃあ、暖めて」
「暖めてって何言い出してるんだ、子供じゃあるまいし」
「アンタさっきアタシ達には子供だった時のイメージしかないって言ったじゃない」
「それとこれとは話が別だろ…」
「同じ話よ」
アタシはすっと立ち上がる。アゲハはまた慌てて目を逸らした。
「アンタにとって子供だった頃からアタシはアンタが好きだった。
ねぇ、アゲハ。アンタアタシのこと嫌い?」
「そりゃ、嫌いじゃねえけど…」
アタシはその返事に満足して微笑んだ。
そのままゆっくりとアゲハに近付いていく。アゲハは後退りしようとするも右足がうまく動かせないようだ。
アタシは身動きの取れないアゲハを押し倒していった。
「嫌いじゃないなら、良いじゃない」
アタシはアゲハに唇を重ねる。アゲハは抵抗の意思としてか頑に口を閉ざしていた。
「ちょっと、口開けなさいよ。舌が入れられないじゃない」
「絶対嫌だ!」
むう。アタシは別の方向から攻めることにする。
「そんなこと言って、このかちこちに固くなってるモノはなんなのかなー?」
「それは、男としての生理的な現象で、決してやましい気持ちがあるわけじゃなくてだな!」
「へぇー」
アタシは上半身に体重をかけ、アゲハの動きを封じつつベルトを外すミッションに取り掛かった。
アゲハが何か言ってるが、無視無視。
「ふうん、なかなか立派じゃないの」
アタシがそう言うとアゲハは顔を両手で覆っていた。何してるのコイツ?
「フレデリカさん、そろそろやめにしませんか?」
「こっちの方はそう言ってないみたいだけど?」
アタシはアゲハのペニスに手を這わせた。びくびくと脈打ってて凄く熱い。
反射的にアゲハが声を上げたので、心配になってアタシは尋ねた。
「ごめん、痛かった?」
「い、いや。そういうわけじゃないんだが」
気持ち良かったんだ。
嬉しくなってアタシはそのまま手を上下に動かして扱き始める。
先端から透明な液が出てきて手に絡み付く。ぬるぬるして気持ち良い。
「フレデリカっ! ちょ、 やばいっ!」
ペニスの脈動が激しくなる。
射精を察知したアタシは手の動きを止めた。
ホッとしたような、残念そうな顔のアゲハ。
そんな顔しなくても、今からもっと気持ち良くしてあげるわよ。
アタシは中腰になってアゲハのペニスを自分の性器にあてがった。
「お、おい。もうこれ以上はシャレにならないって」
口ではそう言っているが、すでに抵抗の意思はなさそうだった。
アタシは特にアゲハの身体を押さえ付けてはいないから、逃げ出そうとすれば簡単なはず。
ゆっくりと腰を落としていく。アタシの中にアゲハが少しずつ入ってくる。
みり、みりみり。
肉が割けていく感覚。構わずアタシはアゲハを体内に納めていく。
途中、アタシの中の何かがぶつかった。意を決して下半身に力を込める。
アゲハがアタシの純潔を破り、一番奥まで到達する。
…入った。
痛みに耐えつつも、アタシはアゲハとひとつになれたことに喜びを感じていた。
アタシから一筋の血が流れ出るのに気付いて、アゲハが声をかけてくる。
「お前、初めてなのか? 痛いんじゃないのか?」
「めっちゃ痛い」
「お、俺になんか出来ることないか?」
「じゃあ、キスして」
う、と言葉に詰まるアゲハ。
分かった、と言ってアゲハはアタシに唇を重ねた。
お互いの舌が絡み合って、唾液を交換する。
始めはおずおずとした動きのアゲハの舌だったが、アタシがアゲハの口内を蹂躙するとお返しとばかりにアタシの口内を舐め回した。
二人の息遣いと口の中を吸い合う音だけが聞こえる。
アタシ達は、高ぶる感情を止められなくなっていた。
「フレデリカ、そろそろ…」
辛そうな顔のアゲハ。アタシは大分痛みが和らいでいたのでアゲハの要求に応じた。
「んっ…」
アタシはゆっくりと腰を上げて、また下ろしていく。
痛みが消えたわけじゃなかったけど、悦びの方が勝っていた。
アゲハをもっと味わいたくて抽挿のリズムが少しずつ早くなる。アゲハもアタシの腰の動きに合わせて激しく突き上げてきた。
「あかん! 良え、気持ち良え!」
初めてにも関わらずアタシははしたなく快楽を貪っていた。
アゲハが奥に届くたび、アタシは声を上げて悦んだ。
でも、そろそろ。
「イク、アゲハ! アタシ、イッちゃう!」
掻き回されて高まった快感はもう限界で。
そのまま数回腰を振った後、アタシは身体を痙攣させて絶頂に達した。
次の瞬間、アタシの中に熱い塊が勢いよく吐き出される。
お互いが絶頂に達し、しばらく身動きが取れずにいた。
荒い息遣いが少しずつ治まっていく。
ずっと、こうしていたかったけど。
アタシの方から身体を離した。アタシから溢れ出る純潔と欲望の証。
堪忍してな、マリー。違う未来ではアンタに譲ってあげるから…。
「お前、俺のこと嫌ってるんだと思ってたよ」
二人で並んで歩きながら、アゲハがアタシに聞いてきた。
「あら、アタシに興味津々なわけ? アンタも今頃になってやっとフレデリカ様の魅力に気付いたのね」
「お前なあ…」
軽口を叩きながら歩いているだけでとても幸せな気分だった。
世界が崩壊してなかったら、もっといろんな所に行って、いろんなことがしたかったな。
そろそろみんなの居る区画に近付いてきた。アタシはアゲハに向き合う。
「ねぇ、アゲハ。アタシのこと好き?」
「な、何だよ急に」
さっきとは違う反応。アタシはアゲハに少し照れている素振りがあるのを確認して嬉しくなった。
「でもねえ、いくらアンタが過去の人間だからって9歳のアタシに手を出したら犯罪だからね?」
「おいっ!」
うまく動かない右足を引きずりながらアゲハが追い掛けてくる。笑いながら逃げるアタシ。
…こんな世界でも、少しは悪くないかなって、思ったり。