「ひッ、あぁああ…ッ!!」  
 
ずぶり、という音と共に、一際大きなフレデリカの悲鳴が上がっていた。  
カイルはそんなフレデリカに構わず、腰を打ち付ける。  
肌のぶつかり合う音が響き渡っていた。  
 
 
「あッ、ああッ、い、いやァッッ!!!」  
「嫌じゃなくて、イイんだろ」  
「んッ、あ、ちが…ッ!!…あぁあッ!!」  
 
ギシギシと、激しい動きに合わせて軋むベット。  
その上では、カイルがフレデリカの腰を掴み、後背位でフレデリカを犯していた。  
 
カイルは上半身裸のまま。  
そしてフレデリカは、はだけた服を纏ったまま。  
ベットの軋む音と、激しい水音だけが響く。  
唯一脱がされたフレデリカの下着だけがベットの脇に放り投げられていた。  
様々な体液にまみれたそれは、既に用を為さなくなっていた。  
 
 
−ずっ、ぬぷ、ずぷっ…  
 
カイルの抽送に合わせて、フレデリカのスカートの裾がひらひらと揺れる。  
そしてフレデリカの喉からは、屈辱に耐えるかのようにくぐもった声が漏れていた。  
 
 
「…だ、大体…っ!なんで、服…着たまま、なのよぉ…!」  
「んー?…別に、後で脱がせばいいだろ?何か、我慢出来なかったんだよ」  
 
着衣のまま、下着だけ脱がされて後背位で犯される。  
その行為がフレデリカにとって、どれだけ屈辱的であるかは充分理解していた。  
 
 
(言えるかよ…。一回はこういう事やってみたかった、なんてさ)  
 
 
だからこそ、偶然を装ってこんな状況に持ち込めた事は幸運だった。  
もしこれが意図的な行為であると知れれば、何を言われるか分かったものではない。  
 
(…オレ、こういう趣味はないと思ってたんだけどなァ)  
 
「やッ、あ、んうぅ…ッ!!」  
 
フレデリカは、責め立てるようなカイルの動きに耐え兼ねて頭をベットに埋めていた。  
声を殺そうとしても、少し奥を突かれただけで零れる嬌声。  
シーツを握り締めた指先は、痛々しい程に白くなっていた。  
行為が激しくなるにつれ、部屋中を支配しそうな勢いで響く卑猥な水音。  
それを耳にすることすら耐えられないのか、  
 
「…ぁ、やだ…!いや…ぁ…ッ!!」  
 
涙混じりの叫び声を上げながら、ベットに伏せたまま全てを拒むように頭を振る。  
そのたびに、シーツの上を長い金髪が乱れて舞う。  
余程弱いところでも突いてしまったのかと思いたくなる程に、時折身体をびくりと震わせていた。  
 
 
(…何がイヤだってんだよ)  
 
ち、と小さく舌打ちをして、フレデリカの腰を掴む手を離す。  
先程までは、フレデリカの弱い箇所を探るように手前だけを責めたり、  
引き抜いては奥まで挿れたり、角度を変えてみたりと様々な方法を試していた。  
しかし少しずつ、カイルからもそんな余裕が失われていく。  
息が上がり、動きを止めて流れ落ちる汗を手の甲で拭った。  
 
 
以前興味本位でこの体位を試した時にも思ったのだが、とにかくヤバい。  
余程「感じてしまう」のか、嫌がりながらも狂ったような嬌声を上げるフレデリカ。  
頭を伏せるという事は、必然的に腰を高く上げる格好になる。  
そんな体勢になれば、勿論必然的に繋がっている箇所は嫌でも全部見えてしまう。  
でも服は着たまま、なのに見えている、という背徳的な姿はとてつもなく卑猥だった。  
そんな格好で、ほとんど泣き叫ぶような嬌声を上げられる。  
おまけにフレデリカの「中」がきつく締め付けてきたり、  
引き抜こうとすれば絡み付くようにして離そうとしない。  
 
(イヤだとか言っときながら、めちゃくちゃ感じまくってんじゃねーかよ…)  
 
視覚的にも、感覚的にも、カイルにとって非常に刺激的なものであることは言うまでもない。  
既に一度は放ったからか、これだけの快感であってもまだ絶頂には遠いようだった。  
それでも、休みなく責め立てる事は流石に限界のようで。  
カイルは再び汗を拭うと、軽く息を吐いてからフレデリカの内にある自身を引き抜いた。  
 
「やっ…、あ、はぁ…ッ」  
 
引き抜かれただけで、がくがくと身体を震わせるフレデリカ。  
責められている間は呼吸すら忘れていたのかと疑う程、激しい呼吸を繰り返していた。  
 
「…は…ぁ、…うぅ…っ」  
 
自分の吐き出す吐息にすら快感を覚えてしまっているのか、  
伏せたままの身体は、時折震えながらもその顔を上げることすらしない。  
漏れ聞こえる声に合わせ、背中が激しく上下を繰り返していた。  
 
 
「…ッ、…ん…ッ!!」  
 
 
伏せたままのフレデリカの肩が、ぴくりと震える。  
突然何事なのかと動揺したカイルの目の前で、  
 
−くぷ…っ  
 
「ふぁあ…ッ!!」  
 
フレデリカの声と共に、秘唇から愛液が溢れた。  
 
 
「……ッ!!」  
 
思わず、自分の口元を手で覆うカイル。  
これまで散々責め立てたのだから、ぐちゃぐちゃに掻き回されて中から溢れた愛液が  
秘唇から吐き出されても、別に不自然な事はない。  
 
(…うわ、やべぇ…!)  
 
しかし中から溢れ出した愛液は、白く濁っていた。  
否が応でも、精液を連想せずにはいられない。  
連鎖的に、先程嫌がるフレデリカの中に出した事を思い出す。  
溢れ出した白濁液は、フレデリカの太ももを伝っていた。  
フレデリカの滑らかで白い肌を、どろりとした白濁が汚す。  
これまでで一番刺激的な光景に、カイルは思わず息を呑んだ。  
 
 
「………!」  
 
ようやく腰を落とし、僅かに顔を上げたフレデリカ。  
ゆっくりと振り返った顔は紅潮しており、瞳は涙で濡れていた。  
 
「…だ、大丈夫か?」  
「………」  
「…フー?」  
 
その様子に、思わず言葉をかけるカイル。  
しかしフレデリカは黙ったまま、恨めしげな視線をカイルへと向けていた。  
一際きつい視線を送り、吐き捨てるように呟く。  
 
「カイルの…馬鹿ぁ…!」  
 
 
 
 
 
 
「へーえ」  
 
それに応えたカイルの声は、驚くほど冷たかった。  
反射的に、フレデリカの肩が竦む。  
 
フレデリカを見下ろし、薄く笑うカイル。  
先程の言葉に怒りを覚えたのか、それともフレデリカの表情が劣情を誘ったのか。  
どちらかは分からなかったが、何かが引き金を引いたことだけは間違いなかった。  
 
ぎしり、とベットが小さく音を立てて軋む。  
カイルが、フレデリカの身体に覆い被さるようにして腕を着いた音だった。  
カイルの身体で、光を遮られる。  
フレデリカの瞳が一際動揺したように、揺れていた。  
 
 
「…ッ、……ん!」  
「…声、出さねぇの?」  
「…だっ、誰が…ッ!!」  
「出せよ。…さっきまであれだけ大声出してたんだぜ?」  
「……ぁ、…やだ、やぁ…!」  
 
薄い胸を撫で、固く尖った乳首を弄ばれる。  
そんなカイルの指の動きに合わせ、フレデリカの身体が小刻みに震えていた。  
 
「…本当は、後ろからされるの好きなんだろ?」  
「んっ、…はぁ…ッ、違う…わよ…!」  
「そっかぁ?あんな声出すくらいだから、好きだと思ってたけどな?」  
「あ…ッ、あ、やぁあ…ッ!!」  
 
四つん這いにさせられ、その背中にカイルが覆い被さっている。  
まるで、獣の交尾を連想させるような姿。  
けど自分達は人間で、服を着たままで。  
密着した身体から伝わる体温や、息の上がった身体から滲む汗が衣服に纏わり付いて気持ちが悪い。  
欲望のままに続くこの行為は、さながら獣以下だとフレデリカは内心吐き捨てたい衝動に駆られていた。  
 
そして、そんな思いとは裏腹に身体は獣のように浅ましくカイルを求めている。  
後背位で犯されて、狂ったように嬌声を上げる身体。  
この体勢で互いの身体が触れ合う程に深く貫かれると、普段の行為では届かないところを刺激される。  
「そこ」をもっと責めて欲しい。  
そんなことを望む自分自身にも、フレデリカのプライドは傷付けられていた。  
 
 
「フー…」  
「…っん…!」  
 
小さく軋むベット。  
衣擦れの音。  
首筋や耳元を這う舌。  
形が変わる程、乱暴に乳房を揉みしだく両手。  
 
首筋や項を這う、生暖かいカイルの舌。  
這うというより、舐め回されて舌ですらも犯されているような感覚に襲われる。  
深々と貫かれ、胸を責め立てられ、耳を甘噛みされる。  
律動はなく、自分の身体の奥深くで脈打つカイル自身。  
そのあまりの熱さに、フレデリカは理性すら溶かされてしまいそうだった。  
 
「…なぁ、フー」  
 
耳元で囁かれ、びくりと背筋が震える。  
僅かに愉悦の混じったカイルの低い声が、フレデリカに不安を抱かせる。  
 
「そんなに、我慢出来ねぇのか?」  
「…?何、言って…」  
「…気付いてないのか?」  
「え…?」  
 
「さっきからずっと、自分で腰振ってんだぜ」  
「……ッ!!」  
 
指摘されて、ようやく気付く。  
カイルは全く動いてくれないから。  
他のところばかり責めてくるから。  
無意識のうちに、自らカイルを欲して、求めていることに。  
気が付いてみれば、結合部はフレデリカが腰を振るたびに水音を立てていた。  
 
 
−ずぷ、じゅぷっ、…ぐちゅ…  
 
耳をも犯すような淫靡な水音が響くたび、フレデリカの口元からは吐息が零れる。  
羞恥心よりも快楽を求める気持ちが強くて、腰の動きは止まるどころか激しくなっていく。  
それでも自分で得られる刺激の物足りなさに、不満げな声を漏らしていた。  
 
「ん…っ、く、はぁ…ッ…!!」  
「…止めないのか?」  
「んぁ…、く…ぅッ!!」  
 
驚いたようなカイルの声は、もう耳には入っていなかった。  
とにかく気持ち良くなりたくて、繋がっているモノを求めて一心不乱に腰を振る。  
相手が誰だとかなんてことは、もうどうでも良かった。  
狂うほど与えられ続けた快感に、フレデリカの理性は完全に失われていた。  
 
「やだぁ…、いや、あ…!」  
 
言葉とは裏腹に、腰の動きは止まらない。  
カイルは呆れたように溜息を吐くと、フレデリカの頭をべち、と叩いていた。  
 
「こら、勝手に一人でイこうとすんなっての」  
「…え、…な…?」  
 
突然のことに、振り向いてカイルを見上げるフレデリカ。  
熱に浮かされた瞳は潤んでおり、惑うような視線をカイルに送っていた。  
そんなフレデリカを見て、カイルは小さく笑う。  
 
「焦らし過ぎたみたいだな。ごめんな」  
「…ん、…あぁ…!?」  
「もう、我慢しなくていいんだぜ?」  
 
そう言って、フレデリカの右腕を掴んで引き寄せる。  
細い手首を掴み上げると、フレデリカはバランスを崩して顔を枕に埋めてしまう。  
そんな事態に声を上げるよりも先に、カイルがフレデリカを突き上げていた。  
 
 
「…あ、はあっ、ああああッ!!」  
 
ぐちゅぐちゅと、先程よりも一際大きな水音が響き渡る。  
ベットの激しく軋む音に混じって、カイルの荒い呼吸が聞こえた。  
手首を掴む手すらも熱い。  
腕を引っ張られた状態で突き上げられるせいか、最奥まで貫かれる。  
カイルの責めから逃れることも出来ず、顔を枕に埋めたまま甲高い悲鳴を上げていた。  
 
「やぁ、んッ!いやあああぁッ…!!」  
 
とろけるような熱と共に、カイル自身を呑み込んで締め付けるフレデリカの秘唇。  
絡み付く感触と熱に、カイルは思わず歯を食いしばる。  
電流が走るような感覚と共に、腰が浮きそうになっていた。  
額を流れる汗もそのままに、ひたすら腰を打ち付ける。  
不意に襲い掛かった駆け上がる快感に、カイルは荒い息を吐いていた。  
 
 
「フー…!オレ、そろそろ…ッ!!」  
「あ、ああッ、やだ、アタシ、アタシも…!!」  
「…なァ。また、中で出して…いいか…?」  
 
「……して…!」  
「…何だ、って…?」  
 
「……出して…!全部、欲しい…のよぉ…ッ!!!」  
 
 
どくどくと、フレデリカの奥深くに精を吐き出す。  
 
「や…、あぁ…!あああああああッ!!」  
 
出された熱を受け止め、フレデリカは身体を震わせて絶頂に達する。  
激し過ぎる快感に、視界は真っ白に塗り潰された。  
そして、掴まれた手首を離されるのと同時に意識を失っていた。  
 
 
 
「う……?」  
 
唐突に目を覚ましたフレデリカ。  
身体が、泥のように重かった。  
 
 
(確か…昨日は…)  
 
 
そこまで思い出したところで、ようやく意識が明瞭になる。  
昨日の行為の激しさを思い出し、思わず顔を真っ赤に染めていた。  
動揺を誤魔化すように、身体を起こそうとする。  
 
「…!?」  
 
身体が、動かない。  
そこでようやく、フレデリカはカイルの腕に抱かれている事に気付いた。  
 
「な…ッ」  
 
背後から、自分の胸元にしっかりと回された両腕。  
おまけに、右手はフレデリカの控え目な膨らみを鷲掴みにしている。  
首筋を、カイルの規則正しい寝息が撫でていた。  
 
「ぐぅ…」  
「………」  
 
熟睡しているのか、少し身じろぎをするだけで簡単に離れるカイルの腕。  
腕を払って身体を起こし、背後で眠るカイルを見下ろした。  
どうやら今度は、自分が先に目覚めたらしい。  
 
「何なのよ、もう…」  
「ん…、むにゃ…」  
 
腕を伸ばしたまま、熟睡しているカイル。  
その表情はどこか嬉しそうで、フレデリカは何故か動揺してしまう。  
確か昨日は、自分が意識を失った後。  
カイルに服を脱がされ、そのままベットに寝かされていた筈だった。  
 
 
(…そうよ。カイルってば、いきなりとんでもないコト言い出したんだったわ…)  
 
 
 
 
 
『オレ、フーのこと好きなんだぜ』  
 
「………!!!」  
 
思わず、包まっていたシーツを引っ張って顔を隠す。  
そうだ。確かそんなことを言っていた。  
だからもう勝負は嫌だとか、好きだからお前としたいんだとか、そんなことも。  
 
 
『…でも、今までそんなこと、一言も…!』  
『言わなかっただけだよ』  
『そんな、いきなり言われたって…!』  
『だって、フーはオレのこと練習相手だって言い張ってただろ』  
『………う』  
『最初はそれでもいいかと思ってたけどさ、やっぱオレは嫌だ』  
『じゃ、じゃあどうしろってんのよ!?』  
『何もしなくていーよ』  
『はァ?』  
 
『オレが、これからフーに、オレのこと好きにさせてみせるからさ』  
 
『…アンタ、馬鹿じゃないの?燃やされたい?』  
『やってみろよ。どうせ無理だろうけどな』  
『何ですってぇ…!?……あッ、やだ、ちょっと!?』  
『ん?どうした?』  
『…ッは、んん…ッ!!やだ、卑怯じゃないの…!!』  
『何で?オレはちょっと触ってるだけだぜ?』  
『触ってる…トコが…!あ、いやぁ…ッ!?』  
『挿れても大丈夫そうだったから、指挿れただけなんだけどな?』  
『あ、あっ、やああ…ッ!!』  
『な、大丈夫だろ』  
『…このッ、ド変態…!…やっ、やだぁ…!!』  
 
『…前から思ってたんだけどさ。フー、こういう勝負には向いてないぜ』  
『どういう…こと、よ…!』  
『すっげえ感じやすいし、すぐイクから』  
『な……ッ!!!』  
『あー、後は我慢出来ねぇし、ちょっと激しくしただけですぐ泣くし』  
『…………』  
『それから…』  
『…それ以上言うんじゃないわよーッ!!』  
 
 
『…まあ、そういう訳でだな。さっきフーの服を脱がせてる間に、オレも色々考えたんだ』  
『色々って…なに、よ』  
『オレには、シャオみたいに回りくどい真似は無理だなあ、って』  
『……?』  
『んー、だからさ。…好きにさせる方法にも、色々あるだろ?』  
『…なッ、ちょっと…!?』  
 
『例えば、身体に直接教え込むとかな?』  
 
『…あ、アンタ、馬鹿じゃないの!?な、ななな、何よそれ!!!』  
『心外だな。オレなりに冷静に分析した上で出した結論なんだぜ?』  
『やーだー!もう、重いッ!上に乗らないでよー!!』  
『…オレ、フーの身体のことならフーより良く知ってるしさ』  
『あ…ッ、やだ…ぁ…』  
『フーのことなら、誰よりも気持ち良くしてやれる自信あるし』  
『…はぁ…あッ、ん…!』  
『フーも、オレとするの気持ちいいんだろ?』  
『う…、それは…!』  
 
『…ま、いいや。今から確認すれば済むことだしな』  
『え』  
『しようぜ』  
『イヤよ!!何言ってんのよ!!』  
『…ひとつ、いいコト教えてやろうか?』  
『何よ!!』  
『本当に嫌がってる女は、そんな物欲しそうな顔しねぇよ』  
『〜〜〜!!!』  
 
『ほら、足開けって』  
『え…?ちょっと、まさか…!?』  
『その、まさかだよ』  
『…ぁ、…はぁ、ああああッ!!』  
『…こんな、ぐちゃぐちゃになるくらい濡らしてれば、いきなり挿れても結構平気だろ?』  
『や…ッ、やだ…!馬鹿ぁ…!!んうう…ッ!!』  
『あんまり暴れんなよ?でないともっと酷いコトするからな?』  
『…んッ、あ、やあああ…ッ!!!』  
 
 
 
 
「……………。」  
 
(…そうよ。あれから、また、したんだわ…)  
 
シーツに顔を埋め、耳まで赤くなった顔を隠そうとするフレデリカ。  
覚醒した頭は、必要以上に記憶を呼び覚ましていた。  
 
(…いくら寝たからって、あの短時間に、さ、三回もする!?)  
 
いつも以上に、恥ずかしいことばかりされたような気がする。  
思い出したくないのに、頭は勝手にこれまでの行為を思い返してしまう。  
 
(イヤぁ…!もう、もう、信じらんない…!!)  
 
頭を抱え込み、その場で身体を縮こませるフレデリカ。  
さっきは聞き流していたが、改めてカイルの「一言」の強烈さを思い知らされていた。  
 
 
(好きだなんて言われたって…!どうすればいいのよ!!知らないわよそんなの!!!)  
 
 
出来るものなら、今この場で大声で怒鳴り散らしてしまいたかった。  
混乱しきったまま、シーツで隠していた顔をちらりと覗かせる。  
 
「…ぐぅ…」  
 
(…無理。ぜーったい、無理!!)  
 
もしも今、怒鳴って起こしてしまったら。  
それこそナニをされるか分かったものではない。  
言いたいことを言ってしまったからなのか。  
やけにスッキリした、嬉しそうな顔をして眠り続けるカイル。  
自分の方に投げ出されたカイルの腕を、フレデリカはまじまじと見つめていた。  
 
子供の頃とは全然違う、鍛えられて筋肉のついた腕。  
この腕に抱かれていたことを思い出し、フレデリカは火を噴きそうな程に顔を赤く染めていた。  
 
 
「フー…」  
「!!?」  
 
いきなり名前を呼ばれ、びくりと反応してしまう。  
しかし、カイルは目覚める気配がない。  
激しい鼓動を鎮めるように、胸元のシーツを握り締めた。  
 
「…な、何よ。寝言…?」  
「…んん…」  
 
 
(…考えたって、仕方ないわよね。…うん、そうよ!)  
 
完全に現実逃避を決め込むことにしたフレデリカ。  
もしかしたら、全部気のせいかもしれない。きっとそうに違いない。  
そうして無理矢理自分を納得させると、フレデリカは改めてシーツをめくる。  
 
正直なところ、気怠い身体はまだまだ睡眠を欲していた。  
カイルの腕を払い、隙間に身体を潜り込ませる。  
カイルと向き合うようにして寝るのは気に入らなかったが、それよりも眠気が勝った。  
枕に頭を預けると、そのまま引きずられるように眠りに落ちて行く。  
 
 
沈みゆく意識の向こう側で、カイルの腕に身体を抱き寄せられた。  
「これから」のことはともかくとして、その温もりはそう悪いものではない。  
今だけはただ、その心地良さに溺れていたかった。  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!