今、まちがいなく俺は人生の分かれ道に立っている。  
進むべきか、引くべきか。  
 
進めば、間違いなく、俺は人の道を外れてしまうだろう。  
だけど、  
だけど、引いてしまったら、俺は二度と元の俺には戻れない……  
 
「くそ、俺は、俺は――ッ」  
 
 
 
きっかけは些細なことだった。自分が食後に日課の稽古を行っている時だ。  
ドアのところでマリーがちょいちょいと手を振っていた。  
思わず顔がにやけそうになるのを堪えながら、いいよ、と手招きをした。  
 
「あ、シャオ君、ちょっと探しものしたいんだけど――、  
……お願いできたりする?」  
「いいよ、何を探すの?」  
 
そう答えた僕にマリーがちょっと、逡巡する。んーと、と一呼吸間をおき、  
 
「えっとね、できればその白蛇(ふーち)君だけ貸してもらえないかなって」  
 
と、申し訳なさそうに切り出した。  
え、と僕が口から出す前にマリーが口早にフォローしてきた。  
 
「ち、ちがうの、そのシャオ君がいやとか、信用してないとかそういうんじゃなくて、あの、ちょっと恥ずかしいもので、でも、でもでも!! どうしても必要なの、見つけたいの!!」  
 
顔を、赤らめながら矢継ぎ早に捲くし立てるマリー。  
なんというか、とても可愛い。おまけに、お願いっと組まれた両の手でぎゅっと腕にしがみつかれて、胸の感触に俺のフーチがエレクチオン。思わず白蛇《ホワイト・フーチ》がびょん、と飛び出した。  
 
「あ、ありがと。んー? でもなんか、いつもよりちょっとおっきいね?」  
 
おっぱい効果だなんて言えない。  
 
「ああ、うん気のせいじゃないかな? ある程度の自意識もプログラムしておいたからそのせいかもね。」  
 
「へー、そうなの?」  
 
うん、ごめんなさい、嘘です。  
 
「こっちへの思考は切っておくから、探し物が見つかったらまた来て」  
 
そう、マリーにいって白蛇をひょいとマリーの腕に絡みつかせた。  
 
「えへへ、ありがと!! シャオ君。またねっ」  
 
そういって、マリーが白蛇を抱えて走っていった。  
むにゅんという間隔がこちらへ伝わり、思わずびくっとする。  
 
「か、感覚も切っとかないとな……」  
 
むにゅん。  
 
「でも、もう少し。いやいや、だがしかし……」  
 
むにゅり  
 
「くっ、これはけしからん、けしからんぞ!!」  
 
むぎゅ  
 
「だ、だめだ、だめだ、でもこれすごい。でもだめ、だめなんだ」  
 
む  
 
「か、カットーぉおおおおおおおおおお!!」  
あぶないところだった。  
すんでの所で白蛇からの間隔をカットする。  
恐るべし、マリーの胸。まさに天国にいってしまうところだった。  
 
「俺も、まだまだ未熟だな」  
 
そして、俺は心を落ち着けるため、座禅を組み、瞑想することにした。  
 
 
2時間後。  
 
「できない」  
 
そう、そうなのだ。  
瞑想など、出来るわけがないのだ。  
 
目をつぶると、マリーのおっぱいが、むにゅんが!! ぽよんぽよんが!  
俺を淫靡に惑わせる。だってしょうがないじゃない。やわからいんだもん!!  
 
「くそ、なんて罪作りな子なんだっ」  
 
既に2時間を過ぎるが、まだマリーは戻ってこない。  
よほど難航しているのだろう。  
 
「まて、2時間、だと?」  
 
2時間過ぎた。この意味に俺は重大なことに気づいてしまう。  
 
なんということだ。なんたることだ。  
2時間だと、120分だと、7,200秒もだと?  
 
既に2時間もっ  
白蛇は、あの白蛇はっ、  
 
白蛇はもう2時間もアレを堪能しているというのかぁあああああああああああああ!!  
あの、ぽよんぽよんにぃいい。  
挟まれたり、埋もれたり、すりすりし放題というわけかぁあああ!!  
 
「ちくしょぉおおおおおおおおおおおお!!」  
 
俺は血の涙を流していた、と思う。  
 
「ゆるさん、ゆるさんぞぉ!! 白蛇、独り占めはずるいぞ、  
パパにも、パパにもお裾分けしろぉお!!」  
 
唸れ、俺のバーストストリーム。(ババっと構えをとる)  
燃え尽きろ、俺の脳細胞!!(ザシュっとスタンスを広げる)  
 
これがっ、渾身のっ、白蛇《ホワイト・フーチ》感覚・視覚・思考同期!!  
 
俺の全PSYをかけた感覚同期。  
と、同時に俺の全身に電撃走る……ッ!!  
 
「こ、この感覚は……、ま、まさか、そうなのか、そうなのか? 白蛇!!」  
「おちつけ、落ち着くんだ俺。まずは状況を詳しく把握せねば!!」  
 
まずは、角度。地に対して0度。つまり寝そべっている。よし、把握。  
次に、感覚、下方、つまり下側の温度が高い、鼓動もする。つまり、何かの上にフーチはのっている。把握。  
そして、視界、目の前に、マリーの寝顔がある。え、まじで? これ録画できないの? やった、神様ありがとうと感謝しながら把握。  
さらに感覚を突き詰める。尻尾辺りに圧迫感、何かに挟まれているようだ。把握。  
次に上半身、にも圧迫。何かに挟まれているようだ、なるほど、身動きが取れないのはこういうことか。把握。  
 
「ふむ」  
 
俺は得られた情報を統合し、結論をだし、  
 
「ぶはっ」  
 
盛大に鼻血を噴出した。  
なんだ、これは、ここが理想郷か。  
そうだ、そうなのだ。何故かわからないがマリーは寝ていた。  
そう、白蛇を抱くようにして。胸と、ふとももで挟んで、抱き枕のようにして。  
 
「う〜ん」  
 
マリーがそういって寝返りをうつ、自然と向きが横向きになり、上半身の圧迫が弱くなる。  
白の首を伸ばして、視点を下げた。その時、俺はそこに神をみた。  
 
目の前にそびえる双丘の頂点にそびえる、桃色の果実。  
 
「ま、まっぱですかーーーーーーーーーーーーーー!?」  
 
どくん、と俺の鼓動が激しくなる。  
 
そう。今、まちがいなく俺は人生の分かれ道に立っている。  
進むべきか、引くべきか。  
 
進めば、間違いなく、俺は人の道を外れてしまうだろう。  
だけど、  
だけど、引いてしまったら、俺はもう二度と元の俺には戻れない……  
 
「くそ、俺は、俺は――ッ」  
 
むにゅん  
 
圧迫が強まった。  
 
「後退? なにそれおいしいの?」  
 
据え膳食わねば男の恥、自重の何が美徳だ。  
後悔の味だと?それ目の前の乳首よりも美味しいの?  
 
ここから俺は本能に従おう。  
つーか、ぶっちゃけ我慢できません。  
 
そこで俺は気づく、もはや衣服など不要であると。  
そう、全身全霊をかけて、俺はこの状況を楽しむことに決めたのだ。  
 
「はっ」  
 
気合で衣服が弾けとぶ、今の俺にはこの程度など朝飯前だ。  
 
「《黒蛇》!!」  
 
そして現れる俺のもう一対。  
 
「マリーのエプロンを持て!!」  
 
ものすごいスピードで、飛んでいって戻ってくる黒蛇。  
その口にはマリーが先ほどの調理で使用したエプロンが銜えられている。  
 
「装着!!」  
 
すさまじい一体感、そして股間にかぶさるマリーの匂い。これぞ、これぞ究極の自慰プログラム!!」  
 
「では、いくぞ……!!」  
 
白蛇の感覚を俺のエレクトフーチに同期!!(ずさっと構えながら)  
さらに黒蛇は見下ろし視点の視界を確保!!(ざざっとスタンスを広げながら)  
 
「ま、まずは、だ」  
 
目をつぶる、目の前にあるマリーの寝顔。  
すーすーと、静かな寝息を立てているあの唇。  
柔らかそうなあの唇を。お口を、舌を。  
白蛇のちょっと長めの舌で、ぺろんぺろんしてからだな、  
次は、おっぱいをまたその長い舌でぺろんぺろんしてだな、  
そして、いつもよりおっきい白蛇で下から上から―  
 
 
 
 
 
 
 
「あんた、なにしてんの?」  
 
後ろを見た。  
 
フレデリカと、カイルがいた。  
二人が、俺を見ていた。  
 
「なんで、いるんだ?」  
 
俺は聞いた。  
 
「ドア開けっ放し」  
とフレデリカ。  
 
「小腹へって食堂いたら黒蛇とんできたからさ、なにかと思って」  
とカイル。  
 
「お、俺の」  
 
俺はかろうじて声を絞り出す。  
 
「お、俺の見ている景色は、他人にはわからないさ」  
 
ってあれ、目の前に炎が。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「おわああああああああああああああ!!!」  
 
目が覚めた。  
 
「だ、大丈夫? シャオ君」  
「おほうッ!!」  
 
真後ろにマリーがいた。  
フーチを抱えている。  
 
「う、うなされてから、大丈夫かなって、驚かせちゃったかな、ごめんね?」  
 
まさか  
 
「うん、いや、大丈夫、なんでもないよ」  
 
夢なのか、  
 
「はい、白蛇君ありがと!!」  
 
そういってマリーの腕からしゅるんと俺へと戻ってくる。  
 
「じゃ、あとでね!」  
 
そういって何事も無かったようにマリーは部屋を出て行った。  
 
「そうか、夢か」  
 
 
うん、夢でよかった。ほんとに。よか・・・ざざ  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんだ、このノイ…ざざざざ  
ざ  
ざ  
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざ――  
 
ぶつんと、脳髄からジャックが抜かれる。  
 
 
「ふふ、あなた、犬の素質があるわ……」  
 
俺の目の前には、雨宮がいた。  
 
 

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