腹が立つ…心配した私が馬鹿だった。  
全ての仕事を放り出したのは、行方不明になった馬鹿がいたからで…  
その捜索に乗り出した、私の可愛い桜子のお気に入り(?)が連絡を忘れていたからでもある。  
結果的には、急いで帰って来た私が馬鹿を見たのだ。  
 
私は今、束縛怪獣菊池により囚われの姫君が如くホテルに幽閉されている。  
原因は勿論、仕事放棄+α(飲酒やら酒乱やら脱走やら…)だ。  
やろうと思えばできる脱走劇は、ホテル最上階でムッキムキの金剛力士像のような集団相手では  
できた方がおかしいだろう。(これでも私は一般人を装っているのだ。)  
 
それにしても、暇だ…  
 
呑んだくれようにも、酒がない…  
菊池に「酒がないと暴れるぞッ!!」と脅しても、「呑んだらあんた、もっと暴れるでしょうが!!!」と返された。  
何か…お母さんみたいだったな、あいつ……  
まぁ、それは置いといて…とにかく、私は暇なのだ。  
埋もれるようにソファーに腰掛ける私の眼に入るのは、ただっ広い豪華なルーム…これまたでっかく薄いハイビジョン…  
気まぐれに電源入れるも…チャンネル替えるも…お、コレ有料チャンネ……  
 
………エロいの流れてた。  
 
はッ…今、私どっか行ってた…危ない、危ないぞ。  
ホテルだもんな、そういうのも流れることあるさ…  
世界のニーズだよな…うん…そうだ、ニーズだ!!  
 
「うっわ、激しいの見てるんスね…姐さん。」  
 
落ち着こうとコップに注いであった水を飲み干そうとすれば、聞き覚えのある声に驚いて噴き出した。  
 
「あーぁ、何やってんスか…」  
 
盛大に水を吹き出し、咽かえる私の背中を擦る馬鹿もとい影虎。  
いつものいかにも裏稼業な格好に、黒眼鏡…よくみりゃ包帯も…  
空いてる手で、水浸しになった絨毯を拭く姿はお母さんだ。  
 
「お前、いつの間に!!」  
「つい先程…」  
「どうやって入った!?」  
「表の見張りは、元舎て…顔見知りでして…」  
 
あぁ、思い返せばそっち系統の顔もチラホラ…  
 
「最中有難う御座いやした。何か蛍光色で怖かっ…綺麗でした。」  
「あぁ、うん適当に選んだやつで悪かったな。」  
「………」  
「………」  
 
気まずいッ!!「お前の為に急いで帰ってきたんだぞッ!!!」って怒鳴ってやりたいが…  
コイツ、絶対調子に乗るから言いたくない。  
とりあえず、無事なら良いが…怪我がなぁ……  
 
「あの…」  
「なぁ…ん、何だ?」  
「姐さんから、どうぞ」  
「いんや、一呼吸お前が早かった。」  
「いや、でも…」  
 
このままだったら、「どーぞ、どーぞ」のネタになるぞ…  
眼で訴えかけて、言葉の先を急かす。  
 
「あの…たまってんですか?」  
「…何がだ?」  
「いや、だから…」  
 
視線だけ動かしただけで、意味は伝わった。  
視線の先は、アダルティな画面…ヤバイ、完璧に忘れてた。  
違う、これは色々あったんだ。  
 
「三大欲求の一つですし、普通のことですから大丈夫ですよ姐さん。」  
「俺がガキの頃には、これぐらいの見てましたし」  
「恥ずかしがってますけど、姐さんだって処女じゃないでしょ?」  
 
いや、何言ってんだテメェ…そんなこと秘密だ、ゴラァッ!!  
拳の一発や二発入れてやろうかと思ったが、影虎の表情がいきなり真剣なものになって止まった。  
 
「俺じゃ…駄目ですかね?」  
 
黒眼鏡を外し、私の耳に直接声が届くようにと唇を近付け、彼は言葉を繰り返す。  
 
「俺じゃ駄目ですか?」  
「影虎…?」  
 
私が返事をするのを拒むように、ソファーに押し倒される。  
あぁ、天井が高い…なんて変な感想を持ちつつ、両肩が押し付けられる痛みを感じる。  
 
「吹っ飛ばすぞ?」  
「覚悟の上でやってます。」  
 
不快さを隠すことなく、声色に乗せて警告してやってるのに…なんて馬鹿野郎だ。  
ため息をつけば、すいませんとはにかむ。  
くっそ…お前、その意外に好青年みたいなギャップで何人おとしたんだ。  
何だか少し腹立だしくて、自由の利かない腕を懸命に動かして、影虎のシャツを伸びろとばかりに引っ張ってやる。  
 
「大丈夫ですって、満足してもらえるように俺、頑張りますから。」  
 
そういうことじゃねぇんだよ、バカ虎めが…  
 
 
 
互いが了承ということで、先程の犯される形では嫌なので移動した。  
移動先は、寝室のドデカいベッド。体勢としては、向かい合って正座。  
 
「商売道具なんで、手には極力触れないようにします。」  
「はい、じゃあバンザーイ。」  
 
え、何?バンザーイ…?  
 
「バンザーイ」  
 
バンザーイ…両手を挙げた瞬間に上着が剥ぎ取られた…  
めでたくブラな上半身…ロマンティックもムードもクソもない。  
唖然としている私を気遣うわけもなく、影虎はポンっと肩を軽く押しきた。  
何も抵抗せずに、私は仰向けに倒れ、再び天井とこんにちは  
腹部を軽く触れられ、ベルトとボトムのホックを外し、チャックも降ろされ…  
一旦、距離を置かれたので何事かと思って起き上がろうとすれば…  
 
「よいしょっと…」  
「うわっ!?」  
 
軽い掛け声が聞こえたと思ったら、一気にボトムを脚から引き脱がした。  
お前、テーブルクロス引き抜くのできるだろ!?  
手をパンパンと叩き、え…何ですか?みたいな顔してるのが憎い。  
 
「ってか、お前は何で脱がないんだッ!!」  
「いや、姐さんを満足させるのに脱ぐ理由が無いんで。」  
「何で自分に目隠ししてんだ、お前ッ!?」  
「前回の水着の時だけでも鼻血が出て、止まらなかったんで対策ですね。」  
「止めろッ何か変なプレイみたいだからな!!」  
 

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