深夜、アゲハは部屋を出た。  
トイレに行くため、ではない。  
アゲハの足が向かったのは、「彼女」のところだ。  
ネメシスQの主。  
このサイレンというゲームを企んだ奴をぶっ飛ばす、それがアゲハの願いだった。  
サイレンに関わったたくさんの人達が死んだ。杉田。蝉谷のおっさん。アゲハが名前も知らない連中。  
だが、このゲームが自分達が化け物に殺されていく様を楽しむために作られたものではないと知り。  
実際にこのゲームのおかげで助かったエルモアの婆さんや子供達。  
そして、殴りつけるのも躊躇われるほど衰弱しきったネメシスQの主。  
その事実が絡まりあって、アゲハは自分の中の感情を整理出来ずにいた。  
だから、「彼女」の顔をもう一度見れば、何らかの答えが得られるかもしれない。  
自分がやるべきことの答えが。  
 
「彼女」は起きていた。というより眠ることが出来ないのだ。  
意識を断てばプログラムが消滅する。  
一体どれくらいの間、「彼女」は眠っていないのだろうか?  
アゲハに気付いた「彼女」が、テレパスを使って語りかけてきた。  
――何しに来た、この童貞が。  
これだ。  
会話にならない。  
そもそも「彼女」にはアゲハ達サイレンドリフトに申し開きする気はまったくないようだ。  
会話の主導権を握るため、アゲハは少し「彼女」を脅かしてみる。  
「ちょっとお前に一発ぶち込んでやろうと思ってな」  
――…身動きのとれない私で童貞卒業しようとするのか? この鬼畜が。  
「一発ぶち込むってそういう意味じゃねえよ!」  
顔を赤くしながら弁明するアゲハを、ニヤニヤと眺める「彼女」。  
回りくどいことはやめて、アゲハはストレートに尋ねることにした。  
「お前、今まで自分の能力でこの世界に送り込んできた人達に対して、何か言うことはあるか?」  
「彼女」の心情。  
未来に必要以上の影響を与えないためとはいえ、初回参加者にはルールすら確認出来ない不利な条件。  
死者の中にはネメシスQ自体が直接手を下した者も少なくないだろう。  
自分の能力によって命を落とした者達への罪悪感、謝罪の意思。  
それらが「彼女」にあるのを確認して、単にアゲハは安心したかっただけかもしれない。  
目の前の女が、自分のしでかしたことに心を痛める実はいい奴だったと。  
振り上げた拳を下ろす、理由を得るために。  
 
そんなアゲハの気持ちを知ってか知らずか、あるいは察していてあえて逆撫でするためにか。  
どちらにせよ「彼女」の紡いだテレパスはアゲハの期待を裏切るものだった。  
――無い。そもそも転生の日とその後のW.I.S.Eの人間狩りで大半の人間が死んでいる。  
元々死ぬ運命の人間達、その死期が多少前後したというだけの話だ。  
こう答えるのではないかとも予想はしていた。だがそれを期待していた訳ではない。  
ほんの少しの理性が、アゲハをその場に押しとどめる。  
怒りに震えるアゲハに「彼女」の挑発的なテレパスが響く。  
――どうした、怒っているのか?  
だがその怒りは私ではなくW.I.S.Eに向けるんだな。私を責めるのはお門違いだ。  
まるで自分は悪くない、それどころか正しいことをしているのだというその態度。  
殴りかかりこそしなかったが、さすがに我慢の限界だった。  
アゲハの右手が「彼女」の乳房を掴んだ。  
――……!  
「彼女」は声を出さなかった。いや、出せなかったのだ。  
何年もカプセルの中で過ごして、「彼女」の喉は非常に繊細になっていた。  
全身の筋力も大幅に低下しているため、「彼女」の身体は拘束すらされていない。  
ヴァンもあえて全快させなかったのだろう。無論彼の能力でも簡単に回復出来る状態ではなかったが。  
テレパスとは、言葉を用いずに自分の思考や感情を相手に伝えることが出来る能力。  
他者とのコミュニケーションに有用なPSIだが、人間には知られたくないこともある。  
嫉妬、羨望、憎悪。それら醜いココロも包み隠さず相手に伝わるのだ。  
PSIは脳を酷使するためヒトがリミッターをかけて封印した能力。  
だがテレパスに関して言えば、社会という枠組みを構築するために人類からあえて忘れられた能力なのかもしれない。  
ともあれ、声を出せない「彼女」が意思を伝える方法はテレパスによってのみであり。  
それによってアゲハは「彼女」が驚き、また僅かな恐怖を抱いたことを知ることが出来た。  
自然、笑みが浮かんだ。  
「彼女」の抱いた驚きと恐怖、そして――。  
「なんだ、お前強引にされるのが良いのか?」  
乱暴に乳房を揉みしだく。  
その都度「彼女」は身をよじって痛がる。  
――やめろ! そんな風にして悦ぶと思っているのか!  
これだから女を知らない童貞は!  
 
なら今からご教授願おうか。  
そうアゲハが口にしようとした瞬間。  
「随分楽しそうね、夜科」  
雨宮が、声をかけた。  
 
「彼女」の乳房から手を離し、大慌てで誤魔化そうとするアゲハ。  
にこやかな笑みを浮かべながら雨宮が近付いていく。  
「私も混ぜてもらっていいかしら?」  
「ま、混ぜって、え?」  
アゲハは状況が理解出来ず、ただ慌てるだけだった。  
「今から『彼女』を犯すんでしょ?  
それに協力させてもらおうかと思って」  
――ふふ。  
自分の男が盗られると思って慌てて出てきたのか? 処女め。  
このような状況でも減らず口を叩く「彼女」。 しかし雨宮は冷静に対応する。  
「確かに私は処女だけど、何か勘違いしているんじゃないかしら?  
そもそも私の純潔はマツリ先生に捧げるために守ってるんだから、そう呼ばれるのはむしろ誇らしいことだわ」  
「…え?」  
雨宮の言葉に思わず声が出たアゲハ。  
だが、静かにこちらを見つめ返す雨宮の視線に有無を言わさぬ圧力を感じ、それ以上口を開くことが出来なかった。  
「私もね、あなたに聞きたかったの。このゲームに参加した、あるいは参加させられた人達に対してどう思っているのかって。  
あなたのさっきの答えは許せないものだったわ」  
許せない、と口にしながらも雨宮からはさほど怒気を感じない。  
物音ひとつしない室内で、雨宮は更に言葉を継ぐ。  
「あなたのおかげで私はマツリ先生と出会うことが出来たし、夜科と昔みたいに話せるようになった。  
それには感謝してるわ。でも、それとこれとは話が別よ  
私の目の前で死んでいった、私が救うことの出来なかった命の無念を少しでも晴らさせてもらうわ」  
雨宮は微かに笑みを浮かべていた。それに気付いたのは「彼女」だけだったが。  
その笑みが何を意味しているのか、想像してさすがに顔がひきつる「彼女」。  
そんな「彼女」を安心させるように雨宮は優しく声をかける。  
「怖がらなくてもいいわ。今からあなたを待ってるのは目くるめくような快楽なんだから」  
おもむろに、雨宮の手が「彼女」の下腹部に伸びる。  
びくりと、「彼女」が反応した。  
――…触れるな。  
ふふっと声を漏らし、上機嫌な雨宮。  
「彼女」の言葉にはお構いなしに、愛撫を続ける。  
勝手知ったる同性の身体、雨宮は巧みに「彼女」の快楽を引き出す。  
――…! ……!  
 
必死にテレパスを抑える「彼女」だが、感情の機微は余すところなく周囲に漏れていた。  
PSIの使用を中断することは出来ない。現在走らせているプログラム、ネメシスQも消してしまうことになるからだ。  
「彼女」に出来ることは、何も考えず、無感情を保つだけ。  
しかし、雨宮の愛撫は「彼女」の努力を容易く崩していく。  
「さすがね、そろそろおねだりしだしてもいい頃かと思ったけど。  
…でも、こんなのはどうかしら?」  
ぬるぬるとした愛液をたっぷりとクリトリスにまぶして、キュッと指で摘む。  
弓なりに身体を反らしながら、「彼女」は口をパクパクとさせる。  
――……っ!  
言葉にならない。だが全身を駆け巡る快楽に対する悦びは隠すことが出来ずにテレパスとなって伝わる。  
そんな二人の様子と、脳に響くほどの「彼女」の悦びで、アゲハの股間はがちがちに勃起していた。  
少し前屈みになりながらやることもなく立ち尽くしているアゲハに、雨宮は声をかける。  
「あんたもこっちに来て弄ってみなさいよ、面白いわよ。  
ほら、ひくひく動いてる」  
この場にはそぐわない公園で遊ぶしょうじょのような笑顔と、行為とのギャップにアゲハは頭がくらくらした。  
誘われるがままに、アゲハも「彼女」に手を伸ばす。  
――この、私で欲情するのは、やっ、めろ…っ!  
ど…ていが!  
途切れ途切れでテレパスを継ぐ「彼女」。そんな態度はアゲハの嗜虐心を大いに刺激した。  
雨宮から指導されながら、「彼女」の女性器を愛撫する。  
「そう、それがクリトリス。そこを摘めばさっきみたいに弓なりになるわよ。ほらっ。  
下の方に指が入るところがあるでしょ。そこにペニスを挿れるのよ」  
「こ、ここか?」  
言われるがまま、そして自分の興味の赴くままに指を這わす。  
その都度身体を反応させ、悦びをテレパスで撒き散らす「彼女」。  
悦びに混ざる、悔しいという感情。  
それを感じ、アゲハは言葉でも責める。  
「へへ、ダメQさえ起きてれば俺達に好き勝手させねえんだろうな。  
脳の負担を軽減させるために夜中は休眠状態になるか、大したプログラムだぜ」  
ネメシスQと、普段の生活を補佐するダメQ(仮)。  
ネメシスQは厳格に構築されたプログラムに基づいてのみ行動する。アゲハ達に助けを呼んだのもその一端である。  
 
つまり、今「彼女」が使用可能なPSIは意思疎通のためのテレパスのみ。  
テレキネシスでも使おうとしたならば、あっという間にブレーカーが落ちるだろう。  
意識の断絶。  
それだけは避けなければ。  
では、このままされるがままでいろというのか?  
だが、何を抵抗する必要がある? 快楽に抗う必要が何処にある?  
溺れて、しまえばいいのではないか?  
「もう少し、ね」  
口の端に笑みを浮かべ、雨宮が呟く。  
雨宮の言わんとしていることは、アゲハにも理解出来ていた。  
これだけ思考がだだ漏れになっているのだ。  
すでに「彼女」の理性は働いていないも同然だった。  
唐突に、雨宮がアゲハの手を掴んだ。  
送り込まれていた快楽が、ぴたりと止む。  
――…え?  
驚いて、雨宮の顔を見る「彼女」。  
嬉しそうに、雨宮は口を開いた。  
「さて、私たちはそろそろお暇しましょうか? 『彼女』も長旅で疲れているでしょうし」  
信じられない、といった顔の「彼女」。  
待って、と声も出せず。  
自分に背中を向けて去っていく二人の姿を見ながら。  
これは罠だ、と考えもしたが。  
欲しいという感情がまさった。  
――待って、お願い! 私に、…頂戴!  
雨宮が振り返る。  
「何が、欲しいのかしら? はっきり言ってくれないと、あげられないわ」  
わざとらしく、困ったような顔をする。  
――…っ! その、男のっ、…おちんちんが、欲しい!  
「そう、夜科のが。それで、どこに欲しいのかしら?  
私は処女だからよく分からなくて」  
「彼女」は躊躇うことなく欲求を口にした。  
――おまんこ! おまんこに頂戴!  
「よく言えました」  
 
「彼女」は自力でうつ伏せになり尻を高く上げた。そして両手で秘部周辺の肉を大きく開く。  
――私のおまんこにどうかおちんちんを挿れてください。  
「あら、ちゃんとおねだりが出来るのね  
さあ夜科。『彼女』にご褒美をあげて」  
「お、おう」  
アゲハはおずおずと「彼女」に近寄る。  
雨宮の前で裸になるのは恥ずかしかったが、とても拒絶出来る空気ではなかった。  
何より、アゲハ自身が性交を楽しみにしていた。  
勃起したペニスが、ゆっくりと挿入されていく。  
――…あぁっ!  
「彼女」の身体が悦びで震える。  
初めての膣の感触にアゲハは夢中になって腰を降った。  
雨宮はその光景を静かに観察する。  
 
ここまでは計画通り。だが妙だ。  
「彼女」はあまりにも快楽に恭順すぎる。  
そもそも「彼女」はいつ処女を喪失したのか?  
雨宮はある結論に達し、笑みを浮かべる。  
トランスを発動させ、2本の精神端子を「彼女」とアゲハに接続する。  
それに気付いたアゲハに雨宮は嬉しそうに答えた。  
「いいからあんたは腰振ってなさい。ひょっとしたら面白いものを見せてあげられるかもしれないわよ?」  
そう言うやいなや雨宮は「彼女」の意識に潜行する。  
記憶。  
確かに6歳以降の「彼女」は人としての権利を失ったも同然だった。  
くる日もくる日もPSIの開発、強化のためのカリキュラム。  
雨宮の目から見ても効果の高そうなものから無意味としか思えないものまで、ありとあらゆる実験。  
だがこれはどうでもいい。  
見たいのはこんな記憶ではない。  
そして、「用済み」扱いとなり研究所から夢喰島に移送される。  
ここから「彼女」の生活がさらに一変する。  
連日のように職員から行われる凌辱、性的調教。  
なるほど。  
既にしつけられていたのか。  
雨宮の見た映像は精神端子で接続されたアゲハの脳内にもリアルタイムで流れている。  
がむしゃらに振っていた腰の動きが変わる。  
「いいもん見せてもらったよ。サンキュ、雨宮。  
さて、お前はこうされるのが好きなんだよな?」  
深く突き挿したまま、アゲハは腰をグラインドさせる。  
――! はい、これが好きなんです!  
膣内を大きくかき混ぜつつ、最奥をこつこつとノックする。  
乱暴なピストン運動でも悦んでいたが、流れ込んだ記憶に従った動きに対する悦びようは尋常ではなかった。  
――もっと! もっといっぱい突いて! いっぱいかき回してください!  
膣壁がうねり、アゲハに絡み付いてくる。  
アゲハの限界も近い。  
ラストスパートとばかりに激しいピストン運動に戻る。「彼女」もそれに合わせて腰を振る。  
お互いの肉がぱんぱんとぶつかり合う音が響く。  
雨宮は二人をうっとりと眺めていた。自らも股間に手を伸ばし慰めている。  
「んっ、いいわよ夜科。もっと、犯してあげなさい」  
背後に立っているためアゲハは痴態に気付いていない。そのことも雨宮を昂らせた。  
「もう、出る!」  
きゅうぅっ、と膣内が収縮する。  
次の瞬間、「彼女」の胎内に精液が吐き出された。  
 
――あぁっ! 熱い! 熱いぃっ!  
身体を痙攣させ、「彼女」は絶頂に達した。  
雨宮もほぼ同時に絶頂に達し、快楽に身体を震わせながら呟いた。  
「…まだこんなものじゃないわ。あなたにはもっと楽しんでもらうわよ」  
 
――もう終わりか、早漏め。気が済んだなら私の身体を拭いてさっさとここから出ていけ。  
お前の精液が身体中にまとわり付いて臭いんだよ。  
「ぐっ、こいつ!」  
その後もアゲハは「彼女」を犯し続け、三度ほど射精した。  
事が済むと「彼女」は最中の乱れ狂った様子が嘘のように平静を取り戻した。  
減らず口を黙らせてやりたかったが、さすがにアゲハの体力も限界だった。  
雨宮は二人のやりとりを静かに見ていた。そんな雨宮を「彼女」がテレパスで挑発する。  
――どうした。お前の恨みはこの程度なのか?  
雨宮は「彼女」を相手にせず、入り口に向かって声をかけた。  
「そろそろ入って来てもいいわよ」  
誰かいるのかとアゲハは入り口を見る。  
雨宮から声をかけられ、ヴァンがひょっこりと顔を出した。  
「お前、いつから!」  
「いつからっていうか、アゲハさんがこの部屋に入ったのを雨宮さんに知らせたのは僕ですし」  
「何だと!?」  
アゲハとのやりとりもそこそこに、ヴァンはアゲハにキュアをかける。  
「アゲハさん、僕のキュアは心臓と脳以外なら元通りに再生することが出来るんです。  
つまり、射精した精液も再生させることが出来ますよ!」  
「おお、しわしわだった金玉がずっしりと重く!」  
「彼女」の顔が青ざめる。  
カプセルの中の生活によって低下した筋力に加え、常時使用し続けたPSI。  
アゲハ達を挑発してはいたものの、「彼女」の体力は既に限界だった。  
スタミナが切れれば、気力も切れる。  
「彼女」は雨宮の方を見る。  
「彼女」と目が合った雨宮は、視線を合わせたままヴァンに声をかけた。  
「ヴァン君も見てるだけじゃつまらないでしょう? 穴は空いてるんだから夜科と一緒に楽しんでいったらどう?」  
「そうですね。たまにはこんな役得があってもいいでしょうし」  
「お、なら前使ってみろよ。俺はアナルセックスに興味があるんだ」  
 
「えー、アゲハさんの精液でどろどろの穴に突っ込むのはなんか嫌だなぁ」  
「…てめえ、誰のお陰で生きてられると思ってるんだ」  
「それはこっちのセリフですよ」  
――…して。  
「…ぁ、…うぁ…」  
喉から声を絞り出し感情を発露させる。  
ぽろぽろと涙をこぼし、首をいやいやと振る「彼女」。  
テレパスを紡いで雨宮に懇願する。  
――許して。お願い、もう許して!  
雨宮は困ったように苦笑する。  
「私に謝られても、二人はもうやる気満々みたいだし。  
まあ、キュア使いがいるんだから死ぬことはないでしょう?」  
「…ぁあ…、うぁあ…」  
泣きじゃくる「彼女」に二人が近付いていく。  
雨宮の苦笑が純粋な笑みに変わっていくのを「彼女」は呆然と眺めていた。  
そんな「彼女」の表情を見て雨宮は嬉しそうに呟く。  
「そうよ。その顔が見たかったの」  
悲鳴とも嬌声とも取れるテレパスが、部屋に響いた。  
 

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