「……シャオ、悪いがよく聞こえなかったようだ。もう一度はっきりと言ってもらえないか?」  
「ですから! 嵐さんのトリックルームでマリーの服だけを脱がして下さい! みんなの目の前で!」  
 
 俺の記憶が確かなら「根」においてシャオは誰よりも真面目で常識を持っている、そのはずだった。  
 しかし俺の目の前にいるシャオは血涙を流しながら何のためらいもなく土下座をするという、まるで箍の外れた晴彦がするような行動に出ている。  
 今すぐエルモアかフレデリカか千架に突き出してやろうかと思ったが、とりあえず理由だけは聞くことにした。  
 
「どうして俺にそんなことを頼む? そもそもトリックルームで服だけを転送することなんてやったことは無いし、おそらく出来ないぞ」  
「よくぞ聞いてくれました! これは僕がマリーのハートをゲットする為にどうしても必要なことなんです!」  
「マリーのハートをゲット、か。どうしてそうなるのか聞かせてもらおうか」  
 
 シャオの考えていた作戦、というにはあまりにも卑劣な計画をかいつまんで言うとこうだ。  
 外の探索から帰って来たマリーをトリックルームで転送→その際、マリーの服を別のボックスに転送→マリー、裸で「根」に転送→突然のことに慌てふためくマリー。  
 そんなマリーに自分のマントを使い、みんなの目からマリーを守るシャオ→そんな男らしいシャオにマリーが惚れる→その日にベッドイン&膣内射精→出来ちゃった婚、となるらしい。  
 
「色々とツッコミどころが多いが聞いておきたいことがある。この場合、俺は後で皆から間違いなく半殺しにされるわけだが、それを回避する案は考えてあるんだろうな?」  
「いいですか嵐さん、恋愛に犠牲はつきものです。あなたの貴い犠牲は無駄にならないように幸せな家庭を築いてみせます!」  
「分かった、最後に一つだけ言わせろ。お前の言うとおりにマリーが惚れなかった場合のことは考えてあるのか?」  
「いいえ何も。でも僕はそれでもいいんですよ。マリーのオ○ンコがパイパンなのか、乳輪の大きさとかを確認し、それを糧として至高のおかずにしますから!」  
 
 ああ、もうシャオは手遅れだと確信すると同時に俺はトリックルームでシャオを閉じ込めた。  
 シャオが陰陽新羅でトリックルームを打ち消しに来るかと思ったがシャオは微動だにせず、それどころか期待を込めた眼差しを俺に向けていた。  
 
「嵐さん! 今から僕をどこに転送するんですか? 出来ればマリーが入浴中の大浴場でお願いします!」  
「良かったなシャオ。お前の希望通り、ちゃんと大浴場に転送してやる。ただしマリーだけじゃなく、千架やフレデリカもいるからな」  
「え……? キャンセル! キャンセルお願いします! マリーの裸が見られるのは大歓迎ですけどあの二人が一緒だと……!」  
「覚えておくといいシャオ。恋愛だけじゃなく、何事にも犠牲はつきものだ。じゃあな」  
 
 そして俺はシャオを女性陣が入浴中の大浴場へと転送してやった。  
 程なくして遠くの方からシャオの断末魔が聞こえてきたような気がしたが、これも全てはシャオの為だ。  
 これでシャオが正気を取り戻してくれることを願いながら、俺はヴァンを伴ってシャオを回収しに行くのだった。  
 

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