二度目の「根」来訪。夜科アゲハが前回と同じ部屋で眠りにつこうとすると、突然ドアがノックされた。  
ドアを開けてみるとそこにいたのはマリーだった。立ち話もなんだからと部屋に入れる。ドアを閉めた途端に、アゲハはマリーに抱きつかれ、そのままキスされる。アゲハは驚きのあまり固まってしまった。  
「マ、マリー!?」  
口を離されてアゲハはようやく我に返った。  
「アゲハさぁん」  
マリーは抱きついたまま顔を上げる。彼女の上気した顔と上目遣いはかなり危険な光景だった。  
「アゲハさん、今日も、その・・・抱いてください」  
「・・・え?」  
あまりの展開の速さにかなり混乱していたアゲハだったが、混乱していた故に彼女に「抱いて欲しい」などという普通の男なら理性が吹き飛ぶような台詞に流される事なく、その違和感に気付く事が出来た。  
「今日も?」  
アゲハにはマリーと交わった記憶など無い。にもかかわらず、マリーはアゲハと関係した事があるような口ぶりで話している。  
「・・・?嫌、ですか?」  
不安そうなマリーの声を聞いてアゲハは千切れんばかりに首を振った。  
「ごめん、いきなりすぎてぼーっとしちゃった。」  
マリーのこんな申し出を断る男なんて女がいる奴か特殊な性癖の持ち主だけだろう。とアゲハは思った。  
「初めての時も同じような反応してましたよね。アゲハさんが未来を変えたらもう会えなくなるかもしれないって話を聞いて、それでフブキさんとイアンさんみたいにアゲハさんとの子供が欲しいって言ったら、今みたいにぼーっとして」  
(姉貴か!姉貴の影響か!!)  
マリーはどうやら子供を作る事を前提にそういった行為をした経験があるらしく、しかも、その相手が童貞であるはずの自分であるというひたすらにおかしい状況に、アゲハの頭はすっかり麻痺してしまっていた。  
(どういう事だ?なんか既成事実みたいに言われてるけど俺知らないうちに童貞卒業してた?えっと本当にヤルの?いやマリーなら大歓迎だけど・・・あれ?)  
気が付くとアゲハはベッドに押し倒されていた。  
「なんか逆じゃない?」  
「いいじゃないですか・・・ん」  
再びキスされる。それも今度は舌を口に入れる激しいキス。口が離れたとき銀色の糸が二人の間を伝った。  
「大好きです。アゲハさん」その台詞とマリーのとろけるような表情を見てアゲハは浮かんだ疑問全てがどうでも良くなってしまった。  
 
アゲハはマリーの上着を脱がし、むき出しになった胸を見遣る。予想より大きくなりすぎて服をくり抜くことになったという、見事な胸。  
「触る・・・ぞ?」  
アゲハの声に向き合う形になったマリーがこくりと頷く。  
ベッドに座ったアゲハの足の上にマリーが腰掛ける体勢。  
ももの上に少しマリーの体重を感じるが、さして重くはない。  
手を伸ばして双丘に手を這わせると、ただでさえ赤い頬を更に赤くしてマリーが俯いた。  
マリーの乳房は手の動きに合わせてじゃれつく小動物のように見えた。アゲハはその運動の弾力のある柔らかさに感動した。  
脇腹に手を這わせるとくすぐったげにマリーが身体をよじった。  
「私も・・・アゲハさんを・・・」  
す、と伸びたマリーの手がアゲハのズボンの上から強張りに触れる。  
撫でる指が快感を生んで、ぞくりとアゲハの背筋に走る。  
最初はなぞるだけだったマリーの手は、次第に確かにさすりあげていく。  
どこか執拗なまでに先端に刺激を与えられ、アゲハが腰を浮かせて制止した。  
「ま、待て待てマリー!一端ストップ!」  
「あ、はい・・・気持ちよく・・・なかったです・・・か?」  
失敗しただろうか、という表情をして上目遣いに見遣るマリーから、アゲハは目を逸らす。  
恥ずかしさにアゲハの口元が歪んだ。  
「いや、その・・・良かったんだけどさ、出ちゃうから。」  
口の端を歪め、人差し指で頬を掻いた。  
そのアゲハの表情にマリーは一瞬ああ、という納得の表情をして、即座に顔を真っ赤にした。  
「んじゃ、えっとまぁ、その・・・そろそろ、な。」  
アゲハの意を悟って、はい・・・とマリーが腰を浮かした。  
 
眼前の服にアゲハが手を伸ばし、ズボンを抜き取るとそこには白く、しなやかな脚が伸びる。  
露出したショーツに指を伸ばすと、そこはじっとりと湿り気を帯びていた。  
布越しの曖昧な快感にマリーが身体を震わせる。  
「んっ・・・!」  
人差し指を引っ掛け、布をずらして直接触れる。  
暗い室内にくちゅ、と小さな水音が響いた。  
「マリー・・・すげぇ濡れてる・・・」  
頭の片隅で月並みな台詞だなぁ、と思うものの、痺れたかのように思考が働かない。  
熱く濡れた襞をなぞるようにかき回すとくちくちと水音がする。  
「ア、アゲハさん・・・っ、私だけじゃ、恥ずかしいです・・・っ」  
恥ずかしさに耐えられなくなったか、今ではマリーは両手で顔を覆う。  
その表情を伺い知る事はできないが、恐らく恥じらいに染まっているのだろう。  
「あ、ああっ・・・そうだよなっ・・・」  
思わず上ずった声を出し、アゲハも手早く自らの下半身をさらけ出す。  
既にアゲハのものは興奮に反り返り、切れ目に露すら浮かんでいる。  
「マリー、下着・・・脱がすぞ。」  
そう声をかけるアゲハの声にもマリーはもはや反応すらできない。  
拒まないのならいいのだろう、とアゲハは思って、下着の淵に手をかけた。  
薄闇の中、下げられたほの白く見えるマリーのショーツとマリーの間に透明な糸が伸びる。  
隠すべき場所を既に隠す術もなく、マリーは一糸纏わぬ姿になってしまう。  
腰を抱き寄せ、マリーの秘部にあてがうと触れ合った粘膜同士がまたくちゅ、と音を立てた。  
マリー自身の体重で身体は徐々に下がり、広がる粘膜がアゲハを受け入れる。  
埋まるのは一瞬だ。躊躇う間もなく、ずぶり、と全て埋まってしまう。  
 
「うあっ・・・マリーの中、すげぇ熱ぃ・・・」  
きゅ、と熱く締め付ける感触にぞくりとアゲハが腰を震わせた。  
きつく、だが柔らかい表現のしようもない感触がゆるゆると締め付けてアゲハが眉を寄せる。  
するとぎゅう、と再びマリーに抱きしめられる。  
耳元で僅かに聞こえるマリーの声。  
「今日も私の事・・・愛して下さい」  
「マリー・・・」  
ちゅ、と再び口付けられる。  
そんなマリーがたまらなく愛おしくなって、今度はアゲハから口付けた。  
唇を離すとマリーが ん、と目を細めた。  
「アゲハさん、今私の中で大きくなった・・・」  
ふふ、と嬉しげに笑って、愛おしげに自らの腹部に手を添えた。  
胎内のアゲハを慈しむかのように、撫で、ゆるゆるとマリーが腰を揺らす。  
激しい動きではない。だがきゅうきゅうと抱擁するかのようなマリーの胎内にアゲハがうぐ、と呻いた。  
既にアゲハは先程、マリーの手で達する寸前まで導かれている。  
限界を感じて、アゲハが歯を食いしばり、言う。  
「マリー、俺・・・もう・・・限界・・・」  
「ん・・・そのまま、・・・中に・・・」  
言葉の間にもマリーは腰の動きを止めない。  
必死の形相のアゲハをマリーが抱く。  
「アゲハさんのを・・・私に・・・!」  
「マリー、マリー、くぅっ・・・!」  
びくり、と一瞬アゲハが背筋を硬直させた。  
一瞬後にマリーは自らの中に広がる暖かな感触を感じた。  
「アゲハさ・・・ん・・・!」  
 
行為のあと、二人はしばらくぼんやりとしていた。  
「アゲハさん」  
ふとマリーが思い出したように訪ねる。  
「赤ちゃん・・・名前考えてくれました?」  
「え?」  
それはアゲハにとっては初耳の約束。  
「ご、ごめん」  
ひとまず謝ると、  
「なら、前に言った通り『アゲハ』にしますよ?」  
恐らくアゲハがいつかいなくなることを想定した取り決めだろう。アゲハがこの世界にいた証を残すための。  
思わぬ台詞にアゲハは思い切りうろたえた後、自分の子の名前をあれこれと考えることになった。  
考えながらも、アゲハはこの崩壊した世界に新たな命がマリーに宿ることを心から願った。  
 
 

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