「キスしよ。ぴちゃぴちゃ音立てて、やらしく、だらしないえっちな顔で♪」
雨宮の言葉に、アゲハは言葉を失った。正確にはもう一人の雨宮−アビスと呼
ばれる別人格が挑発的にねだって来ている。
「アゲハにだったら、何でも出来ちゃうよ?フェラだってしてあげるし、いく
らでも中に出して良いよ」
「あ、雨宮に…」
「んも〜何度説明したら良いの?あの子はアタシ。アタシはあの子。アタシが
考える全てはあの子が考える事よ?」
「んな…!」
「だ・か・ら。いくらでもしていいの♪あの子ね〜アゲハにお姫様抱っこして
貰ったのが忘れられないの♪アゲハ…アタシ達を貴方のお姫様にしてよ…」
毒だ。甘く、抜け出せなくなる毒だ。アゲハは後ずさろうとしたが、後ろはベ
ット、お誂え向きだ。恐らく部屋に上がった時から位置取りを計算していたの
だろう。
「あぁもう!うるさいなぁ…!!アゲハが大好き!!ずっと好き!!抱いて欲しい。アゲ
ハだけのものになりたい!!アゲハは私だけ男に!!は〜い、替わってあげる♪」
アビスは恥ずかしげもなく全てを吐露すると、『桜子』を表に出してその強烈
な性を隠した。
「あ、あの子なんてタイミングで…!!」
「あ…雨宮。本当…なのか?」
嘘は言えない。アゲハを思って自分を慰めた夜もあった。必死になって隠して
きた好意を全て見られてしまった今、言い逃れをすることは無意味であるし、
そんな事を考える余裕はない。
「…うん。ゴメン…引くよね」
「そんなことない!」
力強い反論に桜子は思わず震えた。
「俺も雨宮で…」
「夜科…」
『いっても良い』ではない。『いかなくてはならない』だ。アゲハは雨宮の小
さな肩を強く掴んだ。