しまった。そう思った時にはもう遅かった。  
「いい加減、部屋を、片づけろぉっ!!」  
そう怒鳴って夕也が部屋を出て行ってから数十分。  
たまには言うことを聞いてやるかと、新木陣は気まぐれに部屋の整頓をしていたのだが……。  
ボワン、と音を立てて紫色の煙が立つ。案の定、そこに座堂シエラの姿が現れた。  
つい、指輪を持ったままランプに触れてしまったのだ。  
いつも通りのメイド服を身にまとったシエラの姿は、やはり可愛い。  
不覚にもその美貌に目を奪われてしまった陣は、すぐに頭をブンブン振り回してから身構える。  
座堂のことだ、急に呼び出したりしたものだから、どんな罵声を浴びせてくるか分かったものじゃない。  
「……あれ?」  
既に目を閉じ、両手を両耳にあててシエラの怒鳴り声に備えていた陣は、  
いつまで経ってもそれが聞こえないので、不思議になってそろそろと閉じた目を開く。  
「しょ、庶民……」  
目の前に現れたシエラの様子が、どこかおかしい。  
普段(他の人の目がない時に限る)の高圧的な雰囲気がなく、かといって、学校での猫を被った様子でもない。  
「ど、どうしたんだ、座堂。どこか悪いのか?」  
陣は割と本気で心配になってしまった。  
あのシエラが、突然呼び出されたのにもかかわらず、全く怒り出さないなんて。  
それどころか、床に座り込んで陣の目をまっすぐに見つめている。その瞳は妙に潤んでいて、それがまた色っぽい。  
「あ、あのね、庶民……」  
「あ、あぁ……」  
神妙な顔をして、にじり寄ってくるシエラに、再び陣は目を奪われる。  
ちょっと、これは魅力的すぎる。陣は自分の心がいつの間にか鷲掴みにされているのに気がついた。  
 
「こんなこと言うの、ものすごく恥ずかしいんだけど……」  
シエラの顔が、もう陣のすぐそばにまで迫っている。  
陣は恥ずかしくて目を逸らしたかったが、同時に、いつまでも見ていたい感情も生まれていた。  
結局、どっちつかずにフラフラと視線を彷徨わせている。  
「んむっ!?」  
突然、シエラが陣に抱きついてきた。  
急なことで、シエラの身体を支えきれず、陣はシエラに押し倒されてしまう。  
それどころか、事もあろうにシエラの唇が陣の唇に重ねられていた。  
「む、ちょ、ちょっと待て、座堂!!」  
陣は完全に上に乗っかっているシエラの肩を持ち、引き離した。シエラの口元から垂れた唾液が胸の辺りに落ちる。  
「何考えてるんだ!?気が動転してるのか!?」  
そう言っている陣も相当に動揺していた。  
陣の腰辺りに馬乗りになった姿勢のシエラも、戸惑っている表情で、潤んだ大きな瞳からは涙が零れ落ちている。  
「わ、分からないのよっ、自分でも!!でも、どうしてか身体が熱くて……」  
「お、おいっ!!こら、やめろって!!」  
再びくちづけようと屈むシエラを、陣は必死で押さえる。  
「一体なんなんだ!?……まさか!!」  
思い当たる事が1つだけある。  
陣とシエラは、つい先日、姦淫をつかさどるアークダイモン、マジュヌーンを撃破したところだった。  
その時、シエラはマジュヌーンの触手に身体を捕らえられている。  
「もしかして、あいつになんか影響されてるのか!?」  
「そんなの、どうだっていいじゃないのよっ!もう訳わからないわっ!とにかく、この熱いのをどうにかしたいの!!」  
シエラは妙に強い力で、陣の手を横に払いのけた。そして、またくちづける。  
 
「ん……、ちゅっ、んむっ、ぷぁっ!」  
シエラは今までキスなどしたことがなかった。  
だから、こういう時にどのようなキスをすればいいのか分からず、必死で陣の唇を求め、吸いついた。  
鼻で呼吸すればいいことも忘れ、息苦しくなるごとに一瞬口を離して息継ぎを挟む。  
「ちょ、ざど……、むううっ!」  
その短い隙を見計らって、なんとかシエラを説得しようとする陣だが、すぐに口を塞がれてしまう。  
(やばい……これは本当にやばい!)  
陣は本気で焦っていた。  
猫っかぶりなところや、あまりに人を見下した態度を見ていると、どうしても素直になれないが、やはりシエラはかわいい。  
その姿はあまりに魅力的で、いくら陣が他の男子に比べて女子生徒への興味が薄いとはいえ、  
こんなに積極的にキスなどされては、こみ上げる衝動を抑えきれない。  
「ぷふぁあっ!!!あれ、庶民?なにか、硬いものが……」  
「うわああああっっ!!!!」  
馬乗りになった尻の辺りに硬い感触を覚えたシエラは、不思議に思って動きを止める。  
陣は慌ててシエラを突き飛ばしてしまい、そのまま起き上がってシエラと距離を取った。  
「い、痛いわねっ!!なにするのよ!?レディーに対する扱いってものがあるでしょ!!」  
シエラは突き飛ばされた怒りで、束の間だけ普段の態度を取り戻す。  
「しょ、庶民、それって……」  
だが、すぐに熱に浮かされた潤んだ瞳に戻って、陣の身体の一部分を見つめる。  
入口の辺りに積まれた本の山を背にした陣は、股間の部分が不自然に盛り上がっていた。  
それに気づいて、陣は隠すようにその場にしゃがみ込む。  
「それ……お、おち、おち……」  
シエラはその言葉を恥ずかしくて口にできない。  
性的な知識に乏しいシエラでも、男子のその部分に付いているものが何か、ぐらいは当然知っている。  
 
「見せてっ!!」  
シエラはそれに食いついた。瞳も、足で隠された陣の股間を一直線に見つめている。  
「何言ってるんだ、馬鹿っ!!」  
陣は焦って怒鳴った。  
「お前、仮にもお嬢様なんだろ!?はしたないこと言うなっ!!」  
「仕方ないじゃないのっ!!だって、気になるんだもの!!」  
シエラは一歩も引かない。それどころか、陣を追い詰めるようにその距離を縮めていく。  
身体の火照りを抑えきれないシエラは、陣の勃起した性器を本能的に欲していた。  
動物的な欲求に突き動かされているシエラは、か細い身体付きをして、意外にも強い力を発揮している。  
まるで猫のように陣に飛びかかると、陣のズボンのベルトをカチャカチャいわせて外した。  
「おいっ!!やめ、やめろってっ!!!」  
陣は必死で抵抗するが、シエラは止まらない。  
いや、陣もあまり本気では抵抗できていなかったかもしれない。  
やはり、シエラはあまりにも魅力的だ。男としての本能があるなら、いつまでも拒みきれるものではない。  
それを証明するかのように、雄々しく勃起したペニスが、ずり降ろされたトランクスから顔をのぞかせた。  
「こ、これ……?」  
シエラはそれを目にして、戸惑いながらも瞳を輝かせている。  
「なんで?なんで、こんなになってるの?だって、パパのはこんなじゃなかったわよっ!?」  
勃起したペニスを見たことがなかったシエラは、頭がクエスチョンマークでいっぱいになる。  
「な、なんでって……。こういうものなんだよっ!」  
どう説明していいのかも分からず、陣は訳のわからない返事をしてしまった。  
「さ、触るわよ……」  
シエラがビクビクしながら、陣のペニスに手を伸ばす。  
陣はそれを止めなかった。もう、抵抗することに疲れてしまった。  
それは自分に対する言い訳だった。理性的なつもりではいても、やはり本能には逆らえない。  
(俺、こんなに意志の弱い男だったっけ?)  
そう疑問に思いながらも、陣は諦めて、現状を受け入れた。  
もしかしたら、陣もマジュヌーンの術中にはまってしまったのかもしれない。  
 
「うわ、あ、熱い……」  
シエラは恐る恐る小さな手を伸ばし、陣のペニスに触れた。  
勃起してそりあがったペニスは、確かに熱を持っている。  
「う……」  
「うひゃあっ!!」  
ペニスは触られた刺激でビクンと脈打つ。  
シエラの手はとても柔らかい。その感触は、思ったよりも激しい快感を陣に与えた。  
「大丈夫なの、庶民?痛くない……?」  
シエラはペニスを両手で包むようにして触れながら、上目づかいに陣の顔色をうかがう。  
「あ、ああ……、大丈夫だ」  
「ちょ、ちょっとっ!!また動いたわよっ!!」  
シエラの仕草に、陣は思わず興奮してしまった。  
再び脈打ったペニスに、シエラは驚く。  
「これ、どうすればいいの……?」  
シエラは陣を見上げたまま、首を傾げる。その仕草がまた陣の心を打った。  
(もう、どうとでもなれっ!)  
やけくそになった陣は、もう流れに任せることにした。  
「手で擦るか、舐めたり、口に含んだりするんじゃないか……?」  
控え目にそう口にする。  
「えええええええっっ!!?」  
シエラは大声を上げて驚く。  
「お、おいっ!!!いくらなんでも、声がでかいっ!!!」  
あまり大声を上げてばかりいると、また寮長の右京の耳に入ってしまうかもしれない。  
仮に耳に入っても、扉の前には荷物が山積みで入れない状態なのが救いか。  
「こ、こうするの……?」  
シエラは少し声のトーンを落として、そろそろとペニスを握る両手を上下に動かした。  
「う……ああ、そんな感じだ……」  
シエラの柔らかい指先が、ペニスの竿の部分の皮を撫でるように擦る。  
敏感になったペニスからは、その十本の指遣いが全て伝わってくるようだ。  
「うぅっ!!」  
「ほ、本当に、大丈夫なの!?」  
両方の親指がカリの裏筋に触れ、こみ上げる快感で陣は少し大きく呻いてしまった。  
「大丈夫だって、気にするな」  
陣は、何故かいつもよりもすんなりと優しい言葉が出てくる自分に気がついて、複雑な気持ちになる。  
「き、気持ちいいの、これ?」  
シエラが不安そうに訊ねた。  
「ああ、気持ち、いいぞ……」  
陣は正直に答えてしまう。  
「そ、そうなのね……」  
シエラは困惑しながら、手を動かし、ペニスの細かな反応をジッと見つめている。  
やはり時折脈打っているペニスは、心なしか、最初よりも少し硬くなっている気がした。  
(こ、これを舐めたり、咥えたりするの……!?)  
それを考えると、頭がクラクラするような思いがした。しかし、同時に股間の辺りが熱く疼くのを感じる。  
突き上げるような衝動に押されて、シエラは屈みこんで、口をペニスに近付けた。  
 
「おい、座堂っ!!」  
陣が反射的に止めるのも聞かず、シエラはカリに舌を這わせる。  
「んっ……!!」  
舌が触れた奇妙な感触と、少し塩っぽい味と独特の匂いに、シエラは眉を潜ませる。  
しばらく裏筋をなぞるように舐めていたシエラは、意を決したように、カリの部分を口に含んだ。  
「んむ……、れろっ」  
「ざ、座堂、無理にすることないんだぞ……?」  
陣は口ではそういうものの、かなりの気持ちよさを感じている。  
シエラの小さな口は、思い切りペニスを咥え込むのではなく、先端の3分の1ぐらいを食むように含んでいた。  
「れろっ、んちゅ、ちゅぱっ」  
シエラは口の中で舌を動かし、ペニスの先端の裂け目の辺りを何度も舐める。  
陣はその姿を見て、性感以上に胸を弾ませてしまった。  
これまでシエラは、陣の召使いといった立場の割に、奉仕するという感じはあまりなかった。  
そのシエラが、異常な性的衝動に駆られているとはいえ、一生懸命にペニスを咥えて奉仕している。  
(か、かわいいな……)  
陣は素直にそう思ってしまった。自分にはあまりないと思っていた支配欲のようなものが満たされていくのを感じる。  
シエラも、何故だか自然に召使いらしい振る舞いをしている自分を不思議に思っていた。  
もちろん、この奉仕は自分の欲求を満たすためなのだが、それなら、自分の方に触れてもらえばいいはずなのだ。  
(どうしてかしら……?もしかして、これが素直な気持ちなの?)  
本能的な欲求に突き動かされ、普段のような意地を張っている余裕がなくなったから見えた、本当の自分の心なんだろうか。  
そんな考え、いつもだったらすぐに否定していたのに違いない。それなのに、そういう気にはならなかった。  
これも、マジュヌーンのせいなんだろうか?いや、そもそも、マジュヌーンのせいと決まったわけでもないのだが。  
 
「はむっ!んじゅっ、ちゅぷっ、ぷぁっ!あむ、ふむぅっ、えふっ!えふっ!」  
頭が混乱してきたので、シエラは何も考えないことにして、ペニスをもっと奥深くまで咥え込む。  
カリ全体を口に含み、竿の半分ぐらいまで咥えると、喉の辺りに当たって少しむせた。  
「だ、大丈夫か?」  
「らいりょぶよっ!」  
気遣う陣に、シエラはペニスを咥えながら答える。その口の動きと息遣いが、またペニスを刺激する。  
「う、く……っ!」  
「ひょみんっ?らいりょうぶっ!?」  
込み上げてくるものに、陣が小さく呻くと、シエラはまたペニスを咥えたまま、舌足らずに訊ねる。  
それがトドメとなって、陣は射精を迎える。  
「座堂、出るぞっ!!」  
「ふぇ?でうっへ!?んむっ!!?」  
ペニスの先端から飛び出した精液が、シエラの口内で迸った。  
「むううううっ!!?」  
思いがけない出来事に、シエラは酷く取り乱す。精液はシエラの上あごの辺りにぶつかり、垂れ落ちて舌に絡んでいた。  
「ひょみんっっ!!!こえっ、どうひたらいいのひょっ!!!」  
精液を口の中に残したまま、シエラは半分怒鳴りながら陣に訊ねる。  
「え……?なんだ、の、飲み込む……とか?」  
陣は射精の余韻を感じながら、上の空で答えてしまった。口から出されても、それを拭き取るティッシュが手元にないと思ったのだ。  
「へえええっ!?わ、わかっはわ。ん、ん……こくっ、……こくんっ」  
シエラは驚いたが、どうしたらいいのか本当に分からなかったので、言われた通りに飲み干す。  
思った以上に飲み込みづらく、喉や口のあちこちに絡みつく精液を、舐め取るようにして、全て飲み込んだ。  
「けほっ!けほっ!!なんなのよ、これっ!!なんか、気持ち悪いわよ……」  
そう言いつつも、シエラには妙な達成感があった。  
「庶民っ!!」  
「な、なんだよ!」  
突然大声を出したシエラに驚きながら、陣は聞き返した。  
「続きは?この後はどうするのっ!?」  
シエラは瞳を輝かせている。まだ、身体の疼きは治まっていない。  
未知の体験を前にして、シエラは子供のように小さな胸を弾ませていた。  
 

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