グラスを持った腕が力無く垂れ下がる。そのままぐらりと上体が傾き……
「おっと、危ないですよ姫君――」
その体は彼に支えられた。
「アルコールには本当に弱いのですね」
半ば呆れたように、感心したように呟く。
そもそも、彼が彼女のジュースのグラスに垂らしたのはほんの少しの葡萄酒だったのだ。
これくらいならすこしふらつくくらいかと思っていたのだが――
結果はこのとおり、あっというまの昏睡状態である。
「まあ、少しばかり抵抗してくれないのは残念だけど。
姫君が他の男の話をするからいけないのですよ」
彼にとって退屈でしかないどこぞの貴族のパーティに彼女が参加していたのは意外だった。
軽食を手に取り、雑談に花を咲かす。
帝国陸軍情報部第三課。そこで起きた様々な話を、彼女は怒りを込め、悲しみを滲ませ、
それでもなお――自分や部下たちの行いを誇らしげに語っていた。
「この前姫君が言ったばかりでしょうに、『雑談上の男にさえ勝者でなければ気がすまない』
それが私だ、と。みごとに当たっていますよ」
自分の胸にもたせかけるかのように彼女の体を引き寄せ、「酔い覚ましに行ってくる」などと
適当な口実で会場のホールから抜け出した。
「他の雄を駆逐して若獅子は王となる……やはり自分だけのモノにしなければ勝者とはいえない。
ボクの姫君――雌獅子には雄獅子がふさわしい」
来賓者用の部屋に意識の無い彼女を連れて入り、ベッドに優しく横たえ――
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