「いや、俺達は・・・・・・」
「少尉だけで見舞ってあげた方が・・・・・・」
一体何を遠慮しているのか。オレルドもマーチスも仲間を思う気持ちが欠けているとしか思えん。
これは全くけしからん! そうだ、ここは私がびしっと言ってやらねばなるまい!
「何を言う! 皆で仲間を見舞う、これはとても大事だぞ。
仕方無い。上官である私が先陣を切ろうではないか。さあ、私に続け!」
私は踵を返すと病室の扉を思い切り開いた。そう、何事も勢いが肝心なのだ。
「伍長っ! 見舞いに来たぞ!」
私の声だけが空しく響く。まさか! 最悪の事態・・・・・・っていやいや何を考えているんだ私は。
全快した直後に再入院する羽目になった事情は知らぬが伍長はそんなにヤワなやつだとは思えん。
しかし万が一の事も・・・・・・う、うむ。気になるのは事実。ベッドに近付いて伍長の様子を確めよう。
「伍長? ・・・・・・なんだ、寝ているのか」
間の抜けた寝顔にほっと息をついた自分に驚く。いや、違うぞ。私は心配などしておらん。
ってどうして私は自分に言い訳をしておるのか。全く、伍長が来てからというもの・・・・・・ん?
「う・・・・・・」
伍長?
「ううっ・・・・・・うあっ・・・・・・」
突然、伍長の息が荒くなった。うなされている。嫌な夢でも見ているのだろうか?
「ご、伍長! どうした! しっかり、しっかりしろっ!」
声をかけることくらいしか出来ない自分がもどかしい。
そのとき、なぜか以前空腹で倒れてしまった時の事が私の脳裏に浮かんだ。
「伍長・・・・・・伍長ッ!」
「う・・・・・・?」
「あ・・・・・・よかった。目が覚めたか! 私が分かるか? 伍長」
「うっ・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ――――――ッ!」
目の前で・・・・・・目の前で。耳をつんざくような。絶叫。
「きゃあああぁ―――っ!」
パーン!
「少尉!?」
「どうかしましたか! ・・・・・・って」
扉がバンと開く音と同時に、後ろからオレルドとマーチスの声がした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・あのう、これってどういう状況で?」
「わ、私の顔を見るなり突然叫んだりする伍長が悪いのだ!」
「・・・・・・すみません」
何の警告もなしに・・・・・・心の準備も出来やしない。まだ耳の中が響いている。
「・・・・・・だ、だが、いきなり頬を叩いたことは謝る。すまなかった」
「いえ・・・・・・」
ううむ、失礼にもほどがあるではないか! だが伍長は一体どんな悪夢を見たというのか。
それにさっきから私が目を合わせようとするとすぐ目をそらすのもおかしい。
「まあ、いい。それは今は置いておこう。それよりも・・・・・・」
「?」
「オレルド、マーチス。お前達、私が病室に入る時に共に来なかったな」
「げっ」
「うっ」
「この・・・・・・大馬鹿者ぉっ!」
逃げようとする二人を追いかけつつ、今回の事は退院してから伍長にみ〜〜〜っちり!
問い詰めてやろうと固く誓いながら何度も深く深く頷くのだった。