手をくじいた  
士官の手足となるのは、下士官の務めだ  
   
「歩くのに支障ないのでは」  
「何を言う。私は怪我人だぞ」  
伍長が生意気にも上申するが、即座に却下して搬送を命じる  
俗に言うお姫様だっこだ  
メイド達の好奇の視線の中、部屋まで運ばせる  
部屋着に着替える  
むろん伍長の手で  
真っ赤になりながらも、胸や腰のあたりに視線を送る伍長を楽しむ  
食事をする  
伍長の厳つい指で慎重に運ばれる、一匙一匙が妙に美味しい  
食事を終え、伍長に抱かれて部屋へ戻る途中、思い出した  
「伍長、ちょっと先に行っててくれ」  
「トイレですか?」  
 
ブンッ  
ヒョイ  
気の利かない(あるいは利いた)発言に、思わず出てしまったビンタをかわした伍長が怖い声で言った  
「手を動かすな」  
地の底から響くような恐ろしい声に怯んだ私を、軽やかに運んで行く  
気を取り直す頃にはトイレについていた  
「我慢はよくないです」  
伍長がいつもの優しい声で話し掛けながら、ベルトを外す。  
ちょっとまて  
「なっ、何をしている」  
「ズボンを脱がしています」  
「じっ、自分でやる」  
「いけません、少尉は負傷中です」  
アレヨアレヨのうちに脱がされてしまった  
とりあえず便座に座るが  
「出ませんか?」  
 
「出るわけないだろう」  
女性に何と言う事をきくのだ  
思わず、手を振り上げたが  
ギラッ  
伍長の眼光に圧されて止める  
なんなのだ。どう考えても、悪いのは伍長だ  
さっきから何を怒っているのだ  
「我慢は身体に悪いです」混乱する私を尻目に、伍長がごつい手を両膝にかけ、割り開いた  
「なっ、何をする伍長!」  
「子猫がオシッコ出来ない時、母猫はこうするんです」  
ペロッ  
「ひいっ」  
伍長が顔を近づけて嘗め始めた  
「やっ、やめろバカもの」股間に埋められた、大きな頭を押し戻そうと手をかけたとたん  
「手を動かすなと言った」  
 
低い声で制する  
ズルイ。私の手なのに、使うと怒られる  
混乱の中、伍長は私の股間を舐め続ける  
「気持ちいいですか」  
とんでもない事を聞いてくる伍長に、顔を真っ赤にして答える  
「気持ちいいわけないだろう」  
と、嘘をつく  
気持ちいいに決まっている  
大体、伍長に抱きしめられただけでいってしまうほど、愛してるのだ  
そのうえ、奴は私の身体を知り抜いている  
状況に混乱しきっている状態で無ければ、何度気をやっているか…  
「では、気持ち良くしますね。そうしないと、何時までたっても出ませんから」  
とんでもない事を吐かす  
 
伍長が本腰を入れ始めた  
入れてるのは舌だがな  
指もか  
いつもガチガチに硬い指が、なんでこんなに優しく動くのだろう  
大体、排尿を促す為の刺激の筈を、何故、隠核や膣こうに与える必要があるのだ  
まあ、尿道もタップリ弄られてるが…  
ムリヤリ馬鹿な事を考えて気をそらすが、無駄なことは分かっている  
先程から、自分の口からは、意味のある言葉は出ていない  
「イイッ、ソコッ、イヤッヒイッ、モット」  
我ながら浅ましいのではないかと思うが、悪いのは伍長だ  
なにもかも奴が悪い  
こんな奴はこうしてやる  
「アアッー」  
   
ショ〜〜〜〜  
 
エグッ、ヒグッ…  
涙が止まらない私に、オロオロしている伍長を見ていると、少しだけ気持ちが落ち着いてきた  
「すみません。やり過ぎました。調子に乗りすぎました」  
土下座する伍長の頭がびしょ濡れなのが、恥ずかしく腹立たしい  
「何故こんなことを」  
声を搾り出すように詰問する  
すぐに後悔した  
今日伍長は、なんだか怒っていた  
もし、私の事を嫌いになっていたとしたら  
付き合いきれないと別れようと思っていたとしたら  
ボロボロッ  
「少尉っ」  
「捨てないでくれ」  
泣きながら伍長にすがりついた  
   
   
「駄目です」  
 
 
縋り付く私の手を押さえながら、奴は言った  
「手を動かしてはいけません」  
「いい加減にしろっ」  
激昂した  
人を心底凍りつかせておいて、何と言う言い草だ  
「怪我なんてどうでもいいだろう」  
「わっ我々は軍人です。体調管理も仕事の…」  
「うるさい、うるさい、うるさい!」  
耐え切れず泣き出す  
もう何だかわからなくなった  
とりあえず現実逃避のように泣いていると、伍長が抱きしめてくれた  
いつものように  
それだけで、何だか落ち着いてしまったのがくやしいが、とりあえず確認する勇気はわいた  
「伍長は私が嫌いになったのか?」  
 
「ハアッ」  
奴はかなりのマヌケ顔になった  
「なんでそんなことを?」  
「だって、何だか怒っていたし…」  
ムリヤリオシッコさせるし、とはさすがに口に出せない  
「嫌いになんてなるわけないです。ただ少しだけ怒ってます」  
身体を強張らせた私を、安心させるように、もう一度抱きしめてから、ちょっと怖い声をだす  
「少尉は怪我をしては駄目です。ましてやその状態を楽しむなど」  
本気の怒りが滲む声に怯えながら、少し反発も感じる  
そんなことで怒ってたのか  
「怪我だったら、伍長のほうがよっぽど多いではないか」  
「俺はいいんです」  
「でも少尉は駄目です」  
言い切った  
何の説明にもなってないのに、当然のようにいいきりおった  
幸福感に包まれてしまうのが悔しい  
よって出来るだけ強い声でいう  
「伍長、上官に命令する気か!」  
「すみません、少尉」  
反射で詫びるが、なにかいいたげな彼の耳元に口を寄せる  
「今後、気をつけます。ランデル」  
   
真っ赤になった彼を見て、とりあえず勝った気がした   
   
終  
   

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