それはとても気持ちのよい所だった  
「少尉」  
暖かく落ち着ける所だった  
「少尉、少尉」  
安心できる音、匂い、全身に感じる肌触り…んっ、肌触りっ!  
何も着ていない自分に気付いた私は、とりあえず目の前の伍長の顔をひっぱたいた  
「なっ、なんだこの状態は!伍長!」  
一瞬ポカンと口を開けた伍長が、次の瞬間私に抱き着いてきた  
「少尉!」  
「こっ、こら伍長」  
「…った、よかった、気が付いて、少尉…」  
搾り出すように、よかったを繰替えす伍長の顔は見えなかったが、襟首に落ちる水滴を感じた  
どうやらまた泣かしてしまったようだな…  
 
とりあえず、現状を確認する  
ここは避難小屋のようだ  
わりと暖かい  
伍長の他に、人気は感じない  
さらに、私はどうも服を着ていないようだ  
ようだというのは体が見えてないからで、じつは伍長の服の中にすっぽり入り込んでいる  
いつになく、しっかりと抱きしめてくれているので、とても気持ち良いが、伍長が泣いているのは落ち着かない  
「どうした、伍長  
なにか哀しいことでもあったか?」  
手を出して、伍長の大きな頭を撫でながら尋ねる  
「少尉、覚えてないのですか?」  
やっと体をはなした伍長がびっくりした顔をしている  
妙に可愛い  
 
 
「いいぞ!デカブツ」  
「少尉は!」  
「伍長、早く引き上げて」  
雪山での輸送任務を終え、一息ついた帰路の最中だった  
雪庇を踏み抜いた少尉が崖から転落した  
追って飛び下りようとする伍長を引き止め、オレルドがロープで降り捜索する  
積もった雪のお陰で怪我はないようだが、崖下の川にはまり、びしょ濡れで気を失っていた  
「まずい、このままじゃ低体温症で死んじまう」  
冷静に症状を診ながらオレルドは判断した  
「少尉、少尉!!」  
狂ったように呼び掛ける伍長に目をやり  
バキッ  
とりあえず殴って落ち付かせる  
「伍長、服を脱げ」  
 
「はっ?」  
「おめぇの身体で少尉を暖めるんだ!早くしろっ」  
確かに、とんでもないスピードで、二人を引っ張り上げた伍長の身体は、湯気が出る程暖まっていた  
「ハイッ」  
服を脱ぎ始める伍長を尻目に、鮮やかな手並みで少尉の服を剥いでいく  
「マーチス、飲ませろ」  
オロオロと立ち尽くしていたマーチスに、隠し持っていた酒のボトルを投げる  
慌てて蓋を開け口元に運ぶが、寒さに食いしばった口から飲ますことが出来ない  
「オレルド!ダメだ、飲んでくれない」  
「貸せっ」  
ボトルを奪い取り、煽る  
そのまま口移しで流し込んだ  
 
なぜか、上半身裸になったまま立ち尽くしていた伍長からシャツを奪い、少尉の手早く身体を拭う  
「よし、抱えろ」  
指示に従い、裸の少尉を抱き上げた伍長にセーターとコートを少尉ごと無理矢理着せる  
「いくぞ」  
とりあえず、途中にあった避難小屋に退避する  
「余り、動かさないほうがいいだろう  
俺達は医者を呼んで来る  
デカブツは少尉を看ててくれ」  
二人の準尉は町に向かった   
「、…と言うわけです」  
伍長の詳しい報告を受けたが、正直私には足元が崩れたところまでしか記憶になかった  
「そうか、世話をかけたな」  
 
「いえ、俺なんて何も出来なくて…」  
ん、なにか落ち込んでいるような?  
「どうした伍長、転落は私の過失だ。それを皆で助けてくれたのだ。気に病むことなどないのだぞ」  
話し掛けてみたが…  
ふむ、『皆が』のところで反応したな  
「準尉たちがどうかしたのか?」  
「いっ、いえ。そんなことは…」  
わかりやすい  
ごまかそうとする伍長を睨みつける  
「伍長」  
「はい」  
「…伍長」  
「はっ、はい」  
「伍長っ!!」  
「すみません少尉」  
観念したようにうなだれる伍長  
「卑しい考えが頭から離れなくて」  
伍長は酷く辛らそうな顔で呟やいた  
 
「卑しい?」  
伍長の口から意外な言葉がでた  
いまいち、理解出来ずにいると  
「オレルド準尉に銃を向けるところでした」  
益々混乱する  
伍長は苦しそうに、告白した  
「少尉の服を脱がしたから  
少尉の肌に触れたから  
少尉に口移しで酒を飲ませたから」  
…  
……  
………ポッ  
「バッ、馬鹿者」  
「そうです。俺は大馬鹿です。  
一生懸命少尉を助けようとしているオレルド準尉を見ながら俺は、何も出来ないくせに、卑しい考えに取り付かれてい…」  
チュッ  
話すのが辛そうなので、伍長の口を唇で塞いだ  
「それならば私も大馬鹿だな」  
 
「私はステッキン曹長を斬ったことがあるぞ」  
「えっ?」  
「伍長が曹長の煎れた茶をおいしそうに飲んでいたからな」  
「お茶…ですか?」  
「伍長の猫達を蹴散らした事もある。  
まあ、みな夢の中でだがな」  
伍長がびっくりした顔で覗き込む  
近い  
思い出すのも恥ずかしい話をしているのだ  
少しは遠慮しろ  
「本当にやりたいと思ったことは間違いないのだ  
流石に、自分でもどうかしていると悩み、姉上にそれとなく相談してみた  
『アリスちゃん、嫉妬は愛が深い証拠なの。たくさん愛して貰うのが唯一のお薬よ』  
、と教えてくれた」  
 
「さて、私は伍長の薬になれるのかな?」  
ボッ  
瞬時に伍長が顔を真っ赤にした  
わかりやすいヤツめ  
「先ずは飲み薬だ」  
伍長の頭を押さえ、唇を奪う  
たっぷりと舌を絡め唾液を飲ませる  
姉上から愛し方、愛され方の講義を受けたのだ  
啄むように軽いキスを混ぜたり、上あごを舌でくすぐる  
いちいち反応する伍長をみて、効果を確認  
戦果を拡大するため、戦線を展開する  
『殿方にも敏感な所はたくさんあるの  
傷痕とかも優しくすれば喜ばれるわ』  
姉上の講義を頭の中で復習する  
はて?  
ひょっとして、相手は伍長とバレていたんじゃ  
 
まあよい  
別に恥じる所はない  
伍長の攻略を続ける  
唇を顔のサンマ傷に移す  
ゆっくりと舌を滑らすと、確かに感じているようだ  
少しでも傷が癒えればと、いつもふれていたが、これからも続けよう  
耳元にたどり着く  
ここも敏感らしい  
伍長の場合、特にであろう  
傷だらけだからな  
ムカッ  
いくら言っても無茶をして、傷ついて帰ってくる  
ムカムカッ  
お仕置きだ  
耳のふちを撫でるように舐め廻し、耳たぶをくわえる  
時々、耳の後ろからうなじにかけて舌を這わす  
逆の耳も、常に指で愛撫しながらじっくりと高めていく  
そろそろ頃合いか  
 
「しょうい、しょういぃ…」  
うわごとのように私を呼ぶ伍長にとどめを刺すべく、熱い吐息と共に、耳穴に吹き込む  
「伍長、愛している」  
「ああっ、少尉っ」  
ビクビクッ  
雷に撃たれたように痙攣する伍長  
、と同時に私も達っしていた  
冷静に責められる筈などない  
ほとんど伍長とシンクロしていた  
『身体を合わせると心も合わせられるのですよ』  
ソリス姉上の言葉は本当だった  
もっと欲しい  
伍長の唇にしばし別れのキスをして、セーターの中に潜り込む  
むろん、唇と舌は離さず首筋から鎖骨を通り逞しい胸を辿る  
途中の傷痕に寄り道しながら  
 
「ヒウッ」  
さて、このまま乳首を攻めようか、それともお臍へ…  
等と悠長に考えていたのがまずかった  
伍長の反攻を許してしまった  
今までは伍長のセーターの中にいたが、頭を下げれば尻がでる  
ほてりきった身体は、下半身が外に出ていても気付かなかった  
伍長の長い手は、楽に私の臀部まで届く  
あのごつい指でどうやって?と思うほど繊細な責めが始まった  
「ごっ、伍長っ」  
グローブのような左手が尻を押さえるとともに、やわやわと動めき刺激を与える  
右手は自由に動き回る  
ふとももの内側をヌルリと撫であげた  
「ビショビショです」  
 
カァー  
責めてた時の余裕など一瞬で吹き飛んだ  
こんなはしたない娘、きらわれたりしないだろうか  
悩む私の気持ちを知ってか知らずか、伍長は責め続ける  
必死で声を押さえる  
伍長の指が私の膣に届く  
ゆるゆるとほぐすように掻き回される  
痺れるような快感が突き上げる  
「…ンッ」  
いけない、声を出しては伍長に嫌われる  
いけないのに伍長は手を止めてくれない  
いや、寧ろ激しく…  
伍長は私が嫌いなのか?  
思考のループに入ってしまった  
「「…ひっく」」  
思わずしゃくり上げてしまった私の耳に同じ響きが聞こえた  
「伍長」「少尉」  
 
一緒に着て、もはやデレデレに伸びきったセーターを引きはがす  
「伍長、何故泣いている」  
「えっ、いえ」  
「伍長」  
隠し事など十年早い  
伍長は、少しためらった後、口をわった  
「少尉の声がなくなったので、不安になりまして…」  
はぁ?  
「感じ無くなったのか、それともスケベな俺に呆れたのかなんて考えが、頭をグルグル廻って…」  
ク、クッ  
「少尉に嫌われたら俺…」も、もうだめだ  
「アハハハハ…」  
なんと馬鹿馬鹿しい  
お互い遠慮しあって、お互い苦しんでいたとは  
伍長が、いきなり笑い出した私を、驚いた顔でみている  
ああ愛しい  
 
こやつめ  
頭を抱え込みキスの雨を降らせた  
「お互い薬が足りんようだな」  
どんなに愛し合っていても、いや愛し合っているからこそ、ちょっとのズレで悲しい思いをするのだ  
ズレは修正されねばならん  
カチャカチャ  
「しょ、少尉」  
伍長のズボンのベルトを外し、巨大な陰茎を引きだす  
「なんだ、伍長とてビショビショではないか」  
さっきのお返しに言い放ち、伍長を確認  
うむ、大丈夫だ  
恥ずかしがってはいるが、傷ついてはいない  
目視は重要だな  
「私にも薬が必要だ」  
チロッ  
薬の飲用を始めた  
「あうっ、少尉」  
伍長が淫声をあげた  
 
薬をあらかた舐めとるころには、サイズも変わって口ではきつくなっていた  
あの戦法を試そう  
乳房を両手で支え、伍長の陰茎を挟む  
これで擦るのだったな  
ムニムニと動かしてみる  
むうっ  
何だか自分のほうが、その、気持ちよくなってしまった  
伍長はどうだろう  
見たところ、たいそう良さそうだ  
安心して責めていると、伍長が手をのばしてきた  
一緒に乳房を支える  
いや、少し違う  
乳房をこね回したり、乳首を微妙に擦ったり…  
こちらが責めてるはずが、逆に乳房を犯されているような気がする  
アアッ  
伍長、腰まで使って…  
「イクッ」  
 
私がイクと同時に伍長も達した  
伍長の熱い分身が、私の顔に降り注ぐ  
何だかうれしい  
「ああっ少尉すみません」慌てた伍長が顔を近づけ  
ペロッ  
自分のものを舐め取り始めた  
「ごっ、伍長なにを…」  
「少尉を汚したままにしておけません」  
汚れたとは思わないが、ペロペロと舐めてくれるのは、大変気持ちいいのでまかせる  
あらかた舐め取られたが、口写しで奪い取る  
コクッ  
「この薬は私のものだ」  
真っ赤になる伍長を楽しんだ  
「では、俺も薬を分けて貰います」  
かぷっ  
言うやいなや私の乳房を食わえ込む  
一口で半分ほど食べられる  
 
伍長はモゴモゴとくわえたまま、舌で乳首を転がす  
「れまへんれ」  
「出るわけないだろう」  
何故か判読できてしまった言葉に律義に答える  
胸に食らいつかれていると、反撃は難しい  
しかし、弱点は下から伸びてきた  
伍長の陰茎を捕まえ、ゆっくり膣口に押し込む  
「「アウッ」」  
当然、全部は入らないが、半分は飲み込む  
我ながら不思議だ  
自分の指だと、二本でもいっぱいなのに、伍長の太い指が三本、四本入る  
それよりもっと太い陰茎も、ちゃんと納まるのだから…  
私は、伍長のために、生まれたのかもしれんな  
願わくばこのままずっと…  
 
 
翌朝、目覚めたときには、伍長は後始末を終えていた  
窓から見える青空は、まばゆいまでの冬晴れだった  
「お〜い!無事か〜?」  
遠くから准尉達の声が聞こえて来た  
「遅れてすみません少尉」  
マーチスがあやまる  
「昨夜の大吹雪で動きがとれなくなって」  
「病み上がりの連中がヤバイってんで、医者も動けない所か、俺達までかりだされたんスよ」  
オレルドも、悪びれず詫びる  
「ああ、問題ない  
准尉達にも世話をかけたな」  
ブルッ  
ちょっと冷えてきた  
「では行くか。服をくれ」「はっ?」  
「私の服だ」  
准尉達が顔を見合わせる  
 
おい、こら  
「マーチス、お前確保してなかったのかよ」  
「服を脱がしたのはオレルドじゃないか」  
ギャアギャアと口喧嘩を始める准尉達  
こいつら〜  
今の私はデレデレに伸びきったセーター一枚の姿なんだぞ  
「この格好で帰れというのか」  
際限なく続く、醜い責任のなすりつけあいに割り込み、ちょっと手を広げ姿を強調する  
スルッ  
えっ?  
のびきった首周りは、摩擦抵抗から開放され、セーターは重力に支配された  
時が一瞬止まる  
「キャッ」  
准尉達が目を反らしたのは、間違いなく私が屈み込んだ後だった  
ううっ、伍長以外に見られた  
 
落ち込みかけたその時、異変が起きた  
首の後ろがムズッと…  
ヂキキキ…  
不吉な音に振り返ると、青いランタン光が  
マズイッ  
「お前達、逃げろっ!」  
指示に反応したオレルドが、硬直していたマーチスを引っ張り飛び出していく  
私は必死で伍長を止めながら考えていた  
『まだ薬が足りなかったか』  
   
   
終  
   

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