自室のしとねに身を投げ、少尉は深く息をつく。  
「少尉」と呼ばれることの無いマルヴィン家の中でも、彼女はその階級の通りに  
誇らしい人だった。食事を終え、風呂も済まし、大祖父が生前書いた本も読み終  
えた今、することは何も無い。後は明かりを落とし、眠って、明日の任務に備え  
るだけだ。  
少尉の唇がわずかに動いた。  
口腔に唇を引き入れ、また押し出す。そのしぐさはどこか色事を想像させる。  
実際に、少尉は欲情していた。たった今、自分が行った唇の遊戯にも息を熱くさ  
せるほどだった。  
「それもこれも、伍長のせいだ……」  
頬を紅く染めたまま、今はここにいない伍長に責任を転嫁する。  
そのみっともなさにさらに顔を紅くし、少尉はしとねの上で、指をぴくりと動か  
す。迷いは一瞬だった。  
少尉はそっと、キャミソールの上から自分の体を撫でる。  
『あいつは、いつもこうして…』  
思い返しながら自分の胸に触れてみる。少尉はブラジャーをつけていなかった。  
手に胸のやわらかさが伝わる。  
それを掴む自分の手は、伍長の手と比べるとかなり小さい。それでも自身の体に  
熱を帯びさせるには充分だった。  
服の上から大きな胸をもみしだく。自然と声が出そうになり、少尉は慌てて唇を  
引き結んだ。  
手を止めずにいるとさらに息が上がる。たまらず少尉は熱く息を吐き出した。  
目をきつくつむりながらキャミソールの中に手を入れ、素肌に触れた。固くなっ  
た乳首は指先に触れ、ぴくりと反応する自分の体に抗えず、少尉は反対の手をペ  
チコートの中に入れた。  
ペチコートの奥のショーツは、自分でもわかるほどに湿っていた。  
『これほどに…』  
自覚した思いに蓋をして、ショーツの中に指を滑らせる。かすかな恥毛の向こう  
にまで指先を伸ばす。  
そこは、熱く濡れていた。  
たまらず中指で入り口をいじると、くちゅ、といやらしい音がした。  
目を固くつぶり、一気に挿れる。指にまとわりつくぬめりと熱と圧力、それに異  
物の挿入感、それらを同時に感じ、少尉はぞくぞくと体を震わせた。  
伍長の優しい指使いを思い出し、少尉はゆっくりと指を出し入れする。爪が引っ  
かかるのを恐れたのと裏腹に、指はスムーズに動いた。  
「あっ…ん、伍長……」  
頬に朱を上らせながら少尉は指の出し入れを繰り返す。きもちがいい。たかが指  
を動かしているだけなのにこれほどまでに感じるとは。少尉は呆れ半分に笑いな  
がら、指を2本に増やした。その分、穴は狭苦しくなり痛みが増す。しかし少尉  
は熱く息を吐き、その痛みに耐えた。  
「んっ…」  
こらえると同時に体に電気が走った――ような気がした。  
不思議に思い原因を探る。それには同じ動作を繰り返すのが早い。そう少尉は考  
え、行為を行った。  
「あっ…!」  
自然と手のひらが動き、陰核に当たった。  
少尉は目を見開く。  
 
少尉は唇を引き結び、手を止める。息は荒く、目は潤み、頬の熱が引かない。  
指を挿れたままの歪んだ姿勢のまま、少尉は思い切って、目をつむった。  
脳裏に映るのは男の胸だった。傷だらけで、熱く汗ばんでいる。  
そして、少尉を突き上げるときの動きそのままに揺れていた。いつか快楽に溺れ  
キスを求めて目を開けたときの映像に違いなかった。  
結局そのとき、キスは出来なかった。だが汗ばむ胸を見て、伍長もきもちいいの  
だと感じ胸を高鳴らせたのを、少尉は覚えていた。  
耳に鮮明に伍長の声が蘇る。いつもどおりに自分を階級で呼びながらも、快楽を  
こらえきれないうわずった声が。  
少尉は思わずそれに答える。  
「伍長…!」  
少尉は指を3本に増やし、狭苦しい穴からダイレクトに伝わる息苦しさに喘いだ。  
脳裏の伍長を求め、激しく指を出し入れすると快楽が増した。  
「伍長、伍長…ああ……」  
弾む息の合間で喘ぐ。淫水の立てるぐちゅぐちゅという音が少尉の耳に響き自身  
を狂わせる。手のひらが陰核に当たる感触は男の下腹部のようだった。  
少尉は手を飲めず、目を固くつむった。今は暗闇が支配する中、触覚が伍長を求  
めて全身に鳥肌を立てる。片手に触れたままの乳首は固さを増す。それにも少尉  
は溺れた。  
「あっ…あっ…伍長……あんっ!!」  
指の出し入れは止まらず少尉の胸の深いところを侵す。いとしさと切なさときもち  
よさ、それらがないまぜになり、少尉はひときわ高く叫ぶ。  
「伍長、伍ちょ…あああっ!!」  
少尉の背が弓なりにしなる。絶頂を迎え、びくびくと少尉の全身が震えた。  
本能的に小さく喘ぎ息を整えながら、少尉はベッドに全身を預ける。体が熱く動  
悸が激しい。  
しかし全身を包む倦怠感と快楽に少尉は溺れ――指を抜いた。  
「んっ」  
わずかな淫水の音と抜く反動が再び少尉に快楽を覚えさせた。息を整え、ショー  
ツとペチコートの隙間から手を引き抜く。  
指や手にはねっとりと粘度の高い淫水がまとわりついていた。淫水は少尉の手を  
濡らし、指を開くとその間を縫うように糸を引かせる。  
いやらしい糸を見て、少尉は突然我に返った。  
『わ、私はいったい、何を!』  
淫水にまみれた手をなるべく遠くに離し、少尉は寝返りを打つ。  
こんなことをするつもりは無かったのに、いつのまにか、夢の中でいとしい男を  
呼んでしまった。  
少尉は羞恥で頬が熱くなるのを感じた。  
そして、それは伍長のせいだと確信し、責任転嫁する自分を醜くみっともないと  
思った。  
「くそっ!」  
少尉は唇を噛んだ。しかしいくら目を逸らしても、事実は曲げられない。  
『これほどまでに、私は、伍長を……!!!』  
無性に腹が立ってきた。  
少尉は素早くベッドの上に起き上がる。  
 
夜が更け、食事を終えた猫たちも帰っていった。  
伍長は寝袋に入りながら、今日1日を思い返す。今日の仕事は書類整理。どこかに  
行くわけでもなく、事件が起きたわけでもない、平和な1日だった。  
昼に少尉と2人でとった食事はおいしかった。たとえその場所が食堂で、しかも肉  
を食べろと叱られるのを「また3課が騒いでるぜ」と周囲にニヤニヤと笑われても、  
伍長は少尉と一緒にいられる、それだけで嬉しく楽しく、満たされた。  
「――ああ。眠いときに、少尉を思い出すもんじゃなかったな……」  
伍長はひとりごとを言うとはいているズボンを緩め、下着の中に手を入れた。わず  
かに反応しているものがそこにあった。  
このままでいては、少尉に会ったときに気まずいだろう。  
「少尉で抜くなんて……ああ、俺はなんて卑しいんだろう……」  
決してそうは思っていない口調だった。暗い笑いを浮かべる伍長の背中にいきなり  
蹴りが入る。  
驚き振り向いた伍長の目には、まるで走ってきたかのように息を切らせた少尉がい  
た。背後では手綱の先を手すりに繋がれたピーロがいなないている。  
「しょ、しょしょしょしょしょしょ、少尉????」  
わけがわからず伍長はずるずると後ろに下がる。少尉はコートの下から綺麗な脚を  
出し腰に手を当てて怒っている。  
「脚?」  
何故素足なのかわからない伍長に怒号が落ちた。  
「この、大馬鹿者! お前のせいだぞ?! お前のせいで私は、あんな破廉恥な…!!!」  
「少尉、どうしたんですか。なんで俺のせいなんですか?」  
「見ろ!」  
言うなり少尉はコートの前をばっと開けた。  
「!!!」  
少尉はコートに下に何も着ていなかった。全裸だった。  
伍長は慌てて鼻をおさえるが間に合わず、止められなかった鼻血がたらりとあごの  
下まで伝った。  
「お前のせいで私はあんなふしだらなことをしてしまったんだ!!」  
「ふしだらって、何を……あ」  
少尉の恥毛と太腿に、乾いた液体がわずかにこびりついている。  
自慰の痕跡に気付いた伍長はいきなり平手ではたかれ地面に転がる。頬をおさえて  
見上げるのもわずかな間だった。少尉がコートの前もそのままに伍長に飛びかかった。  
また叩かれる――きつく目をつぶった伍長を襲ったのはやわらかな唇だった。いきな  
りキスをされ、伍長は目を丸くする。やわらかくぬめる舌が伍長の舌を蹂躙し、伍長  
はそれでようやく、我に返った。  
伍長は少尉の背中を抱きすくめると逆に舌を差し込んだ。互いの口腔に舌が入り込み、  
求め、絡まりあう。  
まるで深海から水面に戻ったかのように息をつくと、伍長は改めて少尉の体を見た。  
この白く美しい体が自分を求めていたのか。そう思うと体の中心がビン! と音を立  
てて卑しく勃つ――ように感した。  
「伍長」  
少尉に呼ばれ顔を見る。少尉は下を見ていた。視線の先は伍長のズボンの端から覗い  
ている亀頭にあった。  
「――したい、のか?」  
潤んだ瞳に見上げられ、伍長に否定できるはずがない。  
 
伍長は少尉の手を引く。地面に貴族を寝かせるわけに行かず、また見通しのいい橋の  
下でコートを脱がせ他の男の視線に美しい裸体を晒す訳にいかない。  
それで、伍長は月の光が入りにくい橋の中央の壁沿いに少尉を立たせた。足元には  
一抱えほどの木箱が転がっている。  
伍長は少尉を木箱を2つ重ねた上に立たせる。それでだいぶ顔の位置が近くなった。  
キスは少尉に唇の痛さを覚えさせた。唇を強く押し付け、舌が奥深くまで絡む。快楽  
というより蹂躙を覚えさせられる。離れた唇からは、銀色の糸が長く伝った。  
「少尉」  
愛情を込めて呼ぶと、少尉は気まずそうに目をそらせた。  
一瞬だけの、しかし吸い付くようなキスを送ると、伍長は少尉の胸に触れた。ふくら  
みの大きさ、やわらかさに圧倒された。  
手を滑らせ、掴む。すさまじい弾力に指先からも掴み取れない肉感が溢れる。乳首も  
自然と固くなり、少尉の思いをダイレクトに伍長に伝えた。  
伍長はわずかに息をつき、いちど手を離す。  
「ん……」  
少尉は不満そうに鼻にかかる声を出した。  
途端に伍長がうつむき、深い、ため息をついた。  
「おい、ちょっと待て伍長」  
「……なんですか?」  
「そのため息はなんだ?」  
視線が一瞬泳いだが、伍長は素直に答えた。  
「いえ、その。――かわいいなぁ……って、思いまして……」  
「はっ?」  
少尉は目を見開く。  
今まで少尉は武門の誉れたるマルヴィン家の第3公女としての鍛錬を常に忘れなかった。  
学友にも人気が高く、常に周囲には人がいたが、「かわいい」と賞賛されることなど一  
度も無かった。たいていは「凛々しい」と目されていた。  
そんな自分が今、生まれて初めて「かわいい」と言われた。  
言葉の正しい意味がわからず、少尉は伍長を見下ろす。  
伍長は少尉の咽喉元に唇を這わせた。顔は見えないがいつものようにほほ笑んでいるに  
違いないと少尉は確信した。少尉の気持ちに気付いたか、伍長は言葉を紡ぐ。  
「我慢、できないんでしょう?」  
「なっ…」  
「それなのに我慢しようとして……そう気付いたら、すごくかわいくってかわいくって  
仕方なくなって……」  
幸せそうに伍長は笑う。  
「少尉がこんなにかわいい人だったなんて知らなくて、嬉しくて、ため息が出てしまいました……」  
と。伍長は姿勢をなおすと、首を伸ばしアリスの唇を奪う。  
「勘違いさせて、ごめんなさい」  
少尉は慌てて姿勢を正した。  
「いや。私こそ早とちりしてすまなかった」  
謝罪を受けると伍長のほほ笑みがさらに深くなった。もういちど唇を奪い、伍長はほほ笑む。  
「少尉。大好きですよ」  
少尉はあまりの恥ずかしさに絶句する。気付いているのかいないのか、目には見えない  
尻尾をちぎれんばかりに振りながら、伍長は繰り返した。  
「大好きです」  
「やめんか!恥ずかしい」  
「じゃあ、好きです」  
ランクを下げられると途端にどこから突っ込めばいいのかわからなくなり、言うべき言  
葉を失う。  
――本当は、もっと言って欲しいのを、少尉は我慢した。  
 
伍長は突然少尉の桜色の乳首に吸い付いた。  
「あっ――ん……」  
自然に溢れてしまう声を少尉はこらえた。  
伍長は豊かな乳房に吸い付いたまま、舌で桜色の乳首に巻きつけるかのように舐めた。  
ひと舐めするたびに少尉の声があがり、びくびくと震える。  
それがまた格別にかわいくて、伍長はさらに乳首を舌で転がすかのように舐めまくった。  
頭上に聞こえる声に苦しげな艶が乗る。伍長は指先をするりと少尉の腹に這わせた。や  
わらかな体がダイレクトに反応することに満足しながら、指先を恥毛の奥に滑り込ませた。  
「ああっ!」  
そこは既に洪水となっていた。伍長の指はすぐにあたたかな液体にまみれ滑りを良くする。  
ためしに指を一本入れてみると、すんなりと受け入れた。調子に乗って2本、今度はきつい。  
「痛くないですか」  
聞くと少尉はふるふると首を振る。  
「じゃあ、気持ちいいですか」  
少尉は答えなかった。仕方なく伍長は指をゆっくりと前後させる。  
「黙ってたら、わからないじゃないですか……」  
「あっ、ん……」  
「やっぱり痛いですか?」  
指の動きを止めない伍長に、少尉はやはり首を振る。伍長はとぼけ、見上げる。  
少尉の瞳には、期待の詰まった涙が浮かんでいた。  
「じらすな、馬鹿!」  
「ご、ごめんなさい!」  
とっさに謝ると伍長は少尉の唇をキスで塞ぐ。たまらず少尉は笑い出した。唇ごしに  
笑いが伝播し、伍長も笑った。  
「後ろを向いて、壁に手をついてください」  
言われたとおりにすると、伍長の手が誘導し腰が後ろに突き出された。コートの裾が  
そっと捲り上げられ、白いおしりがぷるりと現れる。  
いつ出したのか、伍長の大きなものがぴたりと少尉の入り口にあてがわれた。  
熱く固くなっているのがすぐにわかる。  
「少尉……」  
静かな声と、わずかなため息が少尉の耳に届く。  
その直後、伍長のものが少尉の中に入りこんだ。  
 
「あ……あぁん……!」  
挿入に対応し艶の乗る声があふれ出る。痛いけれど、それ以上にきもちいい。  
いつしか心の一部が埋められない穴となっていた。それが伍長のもので、埋められるよ  
うな気がする。  
正直に言えば、待ち望んだ。  
その感触。痛み。熱。違和感。  
それらが全てない交ぜとなり、少尉の中で、快楽に変化する。  
「ああっ!!」  
少尉の全身がびくりとはねた。全身を駆け巡る快楽に耐え切れず声があふれ、うわずり、かすれる。  
「ああぁ…あ、あぁ、んん!!!」  
がたん、と音を立てて足元の木箱が揺れる。不安定さに少尉は本能的に壁にすがりつい  
た。今自分を支えるのは壁と不安定な木箱だけ。それに頼れるのは背後の男だけなのだ  
と考えると、繋がりあった部分が熱をもったように感じた。  
「少尉……!」  
少尉の背中を追うように、伍長が覆い被さった。  
その声は、どこかせつない。  
熱くやわらかく、しっかりと繋がり合う。それでどうして我慢していられるのか、伍長は  
自分でも不思議だった。少尉の中に突き込んだ体の一部だけが、震えを誘うほどに快楽を  
覚えさせた。  
こんなにも求めていた。それが切なく、同時に、互いに求めていたと知り、嬉しい。  
「いきますよ……」  
宣言どおりに伍長は腰を前後させる。  
繰り返されると少尉の唇から勝手に声があふれた。それにわずかな羞恥を覚えながら、少  
尉は突き上げられるままに声を張り上げ続けた。  
「あっあっ、あん、伍長、伍ちょおお…!」  
女のやわらかな部分を穿たれ、愛液がときおり音を立てる。その音にも少尉は酔い、伍長  
はさらに強く酔い、手を伸ばした。突き上げるたびにたぷんと揺れるおっぱいを掴み、も  
みしだく。柔軟に向きを変えるそれは伍長の手にあまるほどだった。  
「あああ、少尉、少尉……!」  
「伍ちょ、おぉ……」  
伍長は精いっぱい背中を丸め、後ろから少尉の前髪にキスをする。気付き顔をあげた少尉  
が答え、唇が重なった。  
「ん!」  
アリスは快楽に酔いしれた。知らず知らずのうちに腰が男を求め放さないよう締め付ける。  
「んんん……ん、あぁん!!」  
伍長のものが大きくなったように感じた少尉がびくりと大きく震えひときわ大きな嬌声が立つ。  
「ん――あ、あああああああん!!!!」  
途端に少尉の体が小刻みに震え立っていられなくなった。  
慌てて体を抱き寄せた瞬間に締め付けられ、伍長は限界を迎える。  
「あああ、いく、少尉、俺、少尉の、中に……!!!」  
ためらいを上回る快楽に負け、伍長は少尉の中に全てを注ぎ込む。  
少尉のか細い喘ぎは止まらない。その声は伍長の精を全て搾り取るかのようだった。  
 
ようやく収まった息の隙間で、伍長は少尉の白いおしりに手を当てる。  
「あの……少尉……」  
抜かないまま聞くと壁にすがったままの少尉がわずかに振り返った。  
「あの……イっちゃいました?」  
自分の中で萎えないものの感触を覚えながら、少尉は不思議そうに眉間に皺を寄せた。  
「いくとはなんだ?私ならどこにも行かないぞ?お前のそばから離れるものか」  
「ああいえそのイクってそういう意味じゃなくて」  
こんなに求められていたかと知ると途端に頬が熱くなる。伍長は意味もなく白い尻を撫でた。  
「その――ですね、気持ちよく、なりすぎちゃって、頭が真っ白になっちゃう状態、という  
か……そういう状態でして……。男はわかりやすいんですけど、女の人はそうじゃないんで  
……その……」  
説明を聞く少尉の顔が見る間に赤くなっていく。  
「それで……ですね」  
気付かず伍長は続けた。  
「少尉が……イっちゃった……んですよね?と、とにかく、それで、その、俺もイっちゃっ  
たんですけど……その――」  
「……なんだ……」  
「も……もう1回、いいですか……?」  
ねだる仕草と視線は子供のようだった。  
少尉は反射的に笑った。  
この男、人をかわいいという割には、自分のかわいらしさに気付いていないのではないだろうか。  
かわいくてかわいくて仕方がなくて、少尉は微笑んだ。  
「……いや、待て」  
少尉は自分から腰を動かす。ぷるん、と音を立てて伍長のものが抜けた。抜く感触に震え、  
それでもままだだ元気をなくさないものにごくわずかな驚きを覚えながら、少尉は今度は壁  
に背中をつけて、置いていかれた子犬のような目をする伍長に両手を差し伸べた。  
「来い」  
喜んで近付く伍長の姿に、少尉は『男をほんの数秒待つのも結構恥ずかしいものだな』と認  
識を新たにした。  
 
――その後、幾度となく体位を変え何度となくイキまくった少尉は満足して、その場に倒れ  
るように眠ったそうだ。  
 
 

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