『身体が動かない!』  
エリスは一瞬パニックに陥りかけた。  
しかし  
「お目覚めね。エリスちゃん」  
耳元で囁かれた、姉の優しい声で、落ち着きを取り戻す  
「フガフガ!」  
とにかく姉を呼んでみて、さるぐつわまでかまされていることに気付く  
「慌てないで、エリスちゃん  
貴女は、悪人に捕まったの  
後は、タップリ調教されるだけだから」  
「フガッ?」  
穏やかな姉の声と、全く安心出来ない内容に、エリスはむしろ毒気を抜かれた  
唯一動く首を廻らせ、周りを確認する  
そこは、小さな物置のような、薄暗い部屋だった  
目の前には大きな鏡が…  
 
エリスは、鏡に反射した自分の姿を見た  
右手と右足、左手と左足をそれぞれ繋がれ、さらに棒状の物で、膝を閉じられないよう固定されている  
その状態でソファーのような、柔らかい椅子に、深く腰掛けていた  
全く動けない  
着ているものは下着のみ  
貴族の娘として、貞節の観念が強く染み付いたエリスには、耐えられない姿だった  
「…!」  
必死で身をよじるエリスの肩を、ソリスは後から優しく押さえた  
「静かになさい、エリスちゃん  
これからお勉強の時間よ」いつもの穏やかな姉の声  
「お仕置きの時間でもありますけどね」  
穏やかなまま告げる  
 
眉ひとつ動かさず宣言するソリスに、エリスの顔は恐怖に歪んだ  
母を亡くしてのち、母のように優しく、母以上に厳しく育ててくれた姉だ  
お仕置きとまで言うのなら、一体どんな目に…  
怯えるエリス  
「大丈夫よ、痛くしたりしないから  
もっとも、こころはどうか知らないけど」  
スッ  
部屋の明かりが消されると、正面の鏡が素通しになった  
「特殊な鏡でね。あちらからは見えないけど、こちらからは…」  
姉の説明など一切聞こえなかった  
見えていたのは、最愛の妹アリスが、下司な大男に襲われている姿だった  
「…!!」  
 
男は、横着にもベッドに座ったまま、アリスの細い身体を抱き寄せ、唇を奪う  
舌をこじいれ口腔を犯した  
アリスは呼吸もままならず、顔を真っ赤にしている  
卑しくも、長々と重ねた唇を、よだれの糸を引きながら放した男は、ケダモノのように、アリスの美しい顔を舐める  
アリスな嫌がって、首を振り、逃れようとするが男は許さない  
アリスを、ベッドに引き倒し、押さえ込む  
嫌らしく首筋を舐めながら、空いた手でアリスの夜着をはいだ  
形の良い胸が、まろびでる  
下司は、当然の権利のように、白い乳房を掴み、桜色の乳首に喰らいついた  
 
アリスは、男の頭をつかみ、引きはがそうとするが、力を出せずに、抱えるような形になっている  
『ヒドイ』  
かわいい妹が犯される姿に耐え切れなくなり、目を逸らす  
『何故こんなことを』  
アリスを、宝物のように可愛がっている姉さんが、何故…  
固く目を閉じたエリスの耳に甘い淫声が響いた  
「伍長、伍長!」  
『えっ』  
間違いなくアリスの声だ  
でも、あんな声聞いたことがない  
なんて幸せそうな…  
「わかる、エリスちゃん」伝声管をエリスの耳に当てながら、ソリスは言った  
「あれは自然な姿なの」  
カチャ  
さるぐつわが外された  
 
エリスは、口中の異物から開放されたが、衝撃で言葉が出なかった  
貴族の娘としては、自由に育ったエリスだが、性的なことだけは、異常に奥手、かつ潔癖な所があった  
駆け落ち同然に家を出て、愛する夫と暮らしながらも、未だに性交はおろか、キスさえしていない  
それなのに、自分よりもっと子供だと思っていたアリスがあんな…  
しかし、目の前で繰り広げられる、男女の睦みあう姿は、とても綺麗に見えた  
「可愛いらしいわね、二人とも」  
ソリスが意見を述べる  
「お互い、相手しか見えないって感じで…」  
「でも!」  
エリスが堪らず口を挟む  
 
「あんな奴、アリスには相応しくないわ」  
エリスは、吐き捨てるようにいった  
「あんな図体ばかりデカい、鈍そうな奴なんて  
おまけにただの伍長よ  
部下じゃないの  
士官学校も出ていない、どこの馬の骨とも知れない  
あんな奴が、アリスを守るなんて出来っこないわ」  
「そう言って伍長さんを虐めたのね」  
ソリスは、困った顔で溜め息をついた  
「なっ、なんで姉さんが、しっているの」  
「偶然、橋の下で黄昏れてる、伍長さんをみつけて尋問したの」  
サッー  
青ざめるエリス  
その脳裏に、幼き頃からの恐怖が蘇る  
それがソリスの尋問だ  
 
「貴女のことは、どうしても口をわらなかったけど、やはりね」  
俺は少尉に相応しくないと、辛そうに話していた  
あの娘が貴方を欲していないと思うなら、いくらでもお逃げなさいと答えた  
それだけだった  
結果、彼は踏み止まり、アリスは今も幸せそうだ  
後は、彼等次第  
問題は、私の可愛い、もう一人の妹だ  
「ご覧なさい、目の前の二人を」  
チラチラと横目で見ているエリス  
肩越しに顔を突き出し、頬擦りするように正面に向かせた  
「アリスちゃん、とっても幸せそう」  
私達の妹は、自分から男に跨がっていた  
自ら腰を振り、男に唇を与える  
 
男の手をとり、指をしゃぶり、甘噛みをする  
その手を、自らの乳房に誘導し、愛撫を求める  
その間も、腰をゆったりと、時に激しく動かす  
そんな姿に魅入っていた、エリスの目からは、果てしなく涙が流れていた  
何故だろう  
アリスは、あんなに幸せそうなのに  
なんで、こんなにこころが寒いのだろう  
「辛い?」  
ソリスは、後ろから抱き着くようにして言った  
「姉さんはちょっと辛いわ」  
ソリスとエリスは、同じものを見ている  
「いまのアリスちゃんは、私たちなんて、全く必要としていない」  
ソリスは呟く  
「あの人だけで満ち足りている」  
 
「仕方ないの、見つけてしまったんだから  
身もこころも委ねられる相手を」  
ソリスは嬉しそうに、寂しそうに、エリスに告げる  
自分を納得させるためにも  
そう、私には落ち込んでいる暇はないもの  
決意とともに、行動を起こす為、エリスを後ろから抱きしめる  
「姉さん?」  
不意の行動に、エリスは少し驚いた声を出した  
「私は大丈夫、今夜旦那様に慰めて貰えるから…」  
「なっ」  
直接的なソリスの言葉に、絶句するエリス  
その隙に、後ろから回した手で、エリスの大きな乳房を、下から掬い上げるように揉み始めた  
「ねっ、姉さん」  
 
「ほら、よそ見しない」  
混乱しているエリスの顎を押さえ、前を向かせる  
アリスの胸は、男に揉みしだかれていた  
決して小さくはない乳房を、すっぽり覆う巨大な手  
嬉しそうに、自分の手を重ねるアリス  
さっきまでのエリスなら、汚らわしいと思うことが出来たかも知れない  
でも、伝声管から聞こえる、アリスの幸せに満ちた淫声が、そんな逃避を許さなかった  
そして、自らの身体に感じる刺激も、好ましいものと認めざるを得ない  
ソリスは、男と手の動きを合わせ、エリスを責め立てていく  
アリスは、エリスと同じ所で感じ、同じように声をあげる  
 
いつしか、エリスの感覚は、アリスのそれに、同調していった  
もはや、ソリスの愛撫に関係なく、アリスと共に昇りつめていく  
男の最後の一突きで、アリスと共に、達した  
しかし、かわいい妹とひとつになれたのは、そこまでだった  
快楽の波が去ると、こころも身体も、大きな穴があいたような、静寂感に襲われた  
今は遠くなった、鏡の向こう側には、さっきまでは一緒だった、幸福に満ちた妹がいる  
でも、この寂しさは、妹が原因ではないと分かっていた  
「エリスちゃん」  
ソリスは、優しく尋ねる  
「私が、黒い服しか着ない理由は、知ってるわね」  
 
「軍人の妻になった時から、夫と自分の喪に服している」  
いつか、姉さんの言葉を、聞いたことがある  
余りに、厳しい覚悟に驚きはしたが、正直、理解してはいなかったと思う  
「軍人だけじゃないわ  
人は何時いなくなるか、わからないの」  
ソリスは続ける  
「だから、時を惜しんで、愛し合うのよ」  
「…」  
何も言えないエリスに、ソリスは告げる  
「姉として命じます  
今後、二人の仲に干渉しないように」  
ビクッ  
姉の強い語気に、体を強張らせるエリス  
その肩に、ソリスはそっと手をおいた  
「大丈夫、私達のアリスちゃんが選んだ殿方だもの」  
 
「万が一、アリスちゃんを泣かせたりしたら、その時は思い知らせてやっていいから」  
姉の言葉に、エリスは泣き笑いを浮かべた  
「それと、姉さんの忠告」  
ソリスは、エリスの耳元に口を寄せる  
「後は、ロジャーさんに慰めて貰いなさい」  
「ロッ、ロジャーは…」  
いきなり、夫の名を出され、慌てるエリス  
「今のあなたの寂しさは、アリスちゃんを取られただけじゃないの」  
ソリスは諭すように話す  
「自分のかけらを欲しているのよ」  
ソリスには、エリスの潔癖な部分が何処からきているか解っていた  
母以外の女に、子供を生ませた父への反感だ  
 
それが、妹への溺愛や、過剰なまでの羞恥心に歪んで現れた  
自由奔放に振る舞っているように見えて、愛する事にとても臆病  
愛した者のために、家を捨てる覚悟まで見せるのに、羞恥心という心の壁を作り、今だに触れ合えない  
そんなエリスを、ロジャーさんなら、ゆっくり癒してくれるかもしれない  
でも、私はそんな余裕はなかった  
私も歪んでいるのだ  
軍人であるあの人の、妻になったその時から、私に時間はない  
あの人を亡くせば、私も私で無くなるのだ  
やるべきことは、常に一刻を争う  
幸い、アリスちゃんには、託せる人が出来たようだ  
 
後は、エリスをロジャーさんに託せれば、姉としての義務はひとまず終わる  
お母様に顔向け出来る  
安心して、旦那様の子を妊むことも出来るだろう  
これが、私が強引に事を進めた理由だ  
『酷い女ね』  
自嘲しながらも、妹を追い詰める  
「幸せになれるのは、あなただけじゃないの  
ロジャーさんを幸せに出来るのよ」  
夫のことを思い浮かべ、一層赤くなるエリス  
しかし、その表情には、何かを期待する色が混じっていた  
『これでよし』  
ソリスは作戦の終了を心の中で宣言した  
   
終  
   

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