ランデル・オーランド伍長は困っていた  
「らりを、こある。ごひょう」  
『ええかげんにして下さい、少尉』  
酔っ払いに説教、馬の耳に念仏より意味のない行為  
新たな諺を見出だした気分で自制  
まあ、少尉は未成年であり、アルコールに弱いのはしかたがない  
しかたないのだが、どうも酒自体は嫌いではないようだ  
前回は、ブランデー(一匙)入りの紅茶で人事不省に陥った  
今回は、リキュール入りのクッキーだった  
確かに、お菓子で酔っ払う人は滅多にいない  
しかし、滅多にであって、例外である自分を自覚し、アルコールには、近付かないで欲しい  
 
滔々と心の中で説教をかます伍長だったが、今回は酔っ払いのカンは働かなかったようだ  
それどころではない  
なんと、軍服のボタンを外し始めた  
…伍長のを  
「なにしてますか、少尉」余りのことに、逆に冷静に尋ねる伍長  
「あふいの」  
顔をほてらしている  
確かに、暑そうだ。しかし…  
「俺の服を脱がしても、仕方ないでしょう」  
ため息混じりに答える  
まあ、酔っ払いに理屈は通じないと、分かってはいるのだが…  
通じてしまった  
あっという間に、上着を脱ぎ綺麗に畳む  
流石、軍人である  
しかし、上着を脱がれると、豊満かつ生意気な物が…  
 
普段は上着で目立たないが、さすがは姉妹である  
思わず、目が吸い寄せられる  
「ごひょう、ほひいか?(欲しいか)」  
ばれる  
「はい、いい「そうか、ほひいか」え」  
軍人ですから、上官の問いには、頭に「はい」がつくだけです  
ですから止めてください  
服を脱ぐのは  
必死で止める  
こころの中で  
体は、全神経を視覚が支配し、声帯も手も稼働しない  
軍人なので、着替えは早い  
少尉は、あっという間に、服を脱ぎ終えた  
真っ白い肌が桃色に染まっている  
己の身体を、一切隠すことなく、伍長に晒していた  
「すきにひろ(しろ)」  
少尉は言った  
 
伍長は、自分の聴覚を呪った  
命令は下されたのだ  
責任は少尉に移り、伍長には、自由に行動をする義務が生じた  
生じてしまった  
伍長は、ボタンの外れた上着を脱ぐ  
ここまでは、迷う必要もない  
少尉の肩に手を回す  
……  
   
持っていた自分の上着を、少尉にかけた  
全身全霊の力を込めて、己を制御した  
『すきにした』のだ  
一番やりたいようにしたのだ  
酔っている少尉を汚したりしない  
これこそが俺のしたいことだ  
呪文のように繰り替えしていた  
自分に勝ったのか、それとも、負けただろうかのか  
少尉は、やや俯いていて、表情が見えない  
 
次の瞬間、少尉の手が動いた  
『平手打ちが来る』  
一瞬、身構えた伍長の口に、甘いものが飛び込んできた  
少尉が鷲掴みにしたクッキーだった  
ほんの少し、リキュールの香りがする  
少尉は一言呟く  
「酔え」  
伍長の総てが切れた  
後の記憶ははっきりしていないが、全身キスマークと歯型と白濁液にまみれ、意識を無くした少尉に、朝方まで腰を使っていたことは、かすかに覚えている  
……いや、覚えていない  
覚えている訳ないのだ  
泥酔していたのだから  
目が覚めたら、いつも通り少尉と伍長だ  
戦災復興に励む少尉と、それに従う伍長だ  
 
 
我々は、帝国陸軍情報部第三課  
パンプキン・シザーズ  
それでいい  
朝露と共に消え失せる記憶を抱え、伍長は眠りに就いた  
   
   
終  
   
   

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