ミュゼが3課にやって来て、少尉が焼き餅という小ネタ  
 
オーランド伍長がやって来て以来、「平和でお気楽」などではなくなってしまった3課だが  
今日は出張査察もなくメンバーは揃って、先の出張の書類整理を行っている。  
珍しく怪我もなく出張を終えたオーランドもまた巨体を縮めて報告書を作成していた。大きな  
手で存外器用にペンを使っていたオーランドだが、不意にドアをノックする音に気づいて顔を  
そちらに向ける。  
「はーい」  
ステッキン曹長が向かうより早く、無遠慮にドアが開いた。おおっ、とオレルドが目を見張る。  
しなやかな肢体に白衣をまとい、知性と冷たさが先立つ美貌。オーランドは思わず席から立ち  
上がった。  
「お前……」  
「いいかしら?」  
そう言いながら、すでにづかづかとミュゼ・カウプランは室内に足を踏み入れていた。  
「どなただ?ここは関係者以外……」  
アリス少尉が制そうとするより早く、オーランドが声をかけていた。  
「何しに来た?」  
「伍長?」  
訝しげな声を出すアリスになど目もくれず、ミュゼは言葉を返した。  
「貴方が来なかったからよ」  
「この前行ったばかりだろ」  
(……この前?)  
 ぴくりと耳を動かすアリス。  
「任務の後には必ず来て、って言ってあるでしょう?」  
「怪我はしなかった」  
「それでも来てちょうだい。貴方の体は貴方だけのものじゃないのよ」  
(貴方の体!?)  
「わざわざ3課に来る事はないだろう」  
「職場の貴方の様子も見ておきたくてね。あと、お仲間の顔も」  
部屋の中に眼鏡の奥からミュゼは視線を走らす。急に二枚目顔を作るオレルド、どことなく  
警戒した様子のマーチス、何もわかってないステッキン、広げて読んでいる新聞の奥からじっと  
ミュゼを見据えるハンクス。そして、「二人の会話に興味なんてありません」という態度で書類  
に向かいながら、全身を耳にしてるアリス。  
それを見てミュゼはそういう事かと片頬を歪めた。  
「じゃあね、ランデル。今晩ちゃんと来て頂戴。待ってるから」  
「ランデル?」  
初めて名前で呼ばれて面食らっているオーランドを残して、ミュゼはさっと背を向けた。  
(ランデル?今晩?待ってるから?)  
不幸な事にオーランドは、わなわなと肩を震わせているアリスに気づいていなかった。  
ミュゼが3課のドアを閉めた瞬間、バンッと机を叩く音が響き渡った。  
「伍長!そこに直れ!」  
「は、はいっ!?」  
思わず直立不動のオーランドに、アリスは拝領の宝剣を抜き放った。  
「勤務外に何をしようとお前の勝手だが、神聖なる3課の中で逢引の相談とは何事かぁっ!」  
「ええっ!?あ、逢引ってそんな……」  
「弁解無用!大体お前は……ッ!」  
この後、剣で切りかかりそうになるほどエキサイトしたアリスのおよそ論理性を欠いた説教が  
延々二時間も続き、オーランドはげっそりと痩せた状態でミュゼ・カウプランの元を訪れる事に  
なったのだった。  
 
 
「だいぶあの子に絞られたみたいね」  
 くすくすと笑いながら、採血を終えて、ミュゼはオーランドから注射器を抜き取った。  
「笑い事じゃない。何であんな事言った?」  
 心底うんざりした様子でオーランドは問う。全裸になって屈強な体を晒し、心拍、血液、皮膚、髪、  
爪のサンプルを取られるいつもの作業だけでも愉快とはいえないが今日はおまけつきだ。  
「あんな事って?」  
「わざわざ少尉を怒らせるような事だ。いつも俺の事をマルタとしか呼ばないくせにいきなり『ランデル』  
って」  
 医療機器を鞄に片付けながら、ミュゼは赤い唇を歪めた。  
「貴方、あの子が眩しい?」  
「……何が言いたい?」  
「眩しいわよね。恵まれた環境で真っ直ぐに育ち、自分の理想にひたむきで、困難な現実に直面しても決して  
諦めない。ねえ、ランデル」  
 再び名前で呼び、ミュゼはそっとオーランドの胸板を指でさすった。オーランドは無言でベッドに腰を落とす。  
拒絶がない事を悟り、体を寄せながらミュゼは冷たく微笑んだ。  
「そういう子って、穢してやりたくならない?」  
 両肩に手をついて押すと、オーランドの巨体が抵抗なくベッドに仰向けになった。その目は、いつの間にか  
ミュゼに劣らないほど冷たく乾いていた。  
「こんな事に何か意味があるのか?」  
「時には無意味な事もやりたくなるのよ」  
「……やれよ」  
「いいの?」  
「今更お前に見られて恥じるようなところなんて残ってない」  
「それもそうね」  
 ミュゼは唇から赤い舌を覗かせ、軽くオーランドの胸板を舐めた。一つ一つの傷を丹念になぞっていく。  
オーランドはミュゼを見ずに天井を見ている。実験の最中と何も変わらぬ感情のない目。アリス・L・マルヴィン  
が決して見る事のないであろう目だ。  
 ミュゼは上着を脱ぎ、白い肌を晒した。日の当たらぬところで育ったようなどこか病的な白さだ。豊満な乳房  
を晒し、オーランドのごつい手を導く。  
 傷にまみれた手が、機械的に乳房を揉みしだく。愛撫とは呼べぬ愛撫。それでも体は反応する。ミュゼも、オー  
ランドもだ。  
「いつ見ても……凄いわ」  
 人のものとは思えぬほどに大きく硬い、オーランドの剛根を手に取り、ミュゼは喘いだ。下着をずらし、いつ  
しか熱く潤んだ秘部に導く。  
 
「ああッ……!」  
 ミュゼは熱い吐息を漏らした。体の中心に杭でも打ち込まれたような苦痛と同時にやって来る快楽。肌が汗ばむ  
のを意識しながら、ミュゼはオーランドの上で体を上下させ始める。  
 オーランドの瞳には相変わらず感情がない。ただ機械的に力強くピストンし、ミュゼの体に己を打ち込んで行く。  
 ミュゼはオーランドとアリスが結ばれる場面を想像して、笑みを浮かべた。裸になりながらお互い意識して、  
なかなか先へ進めない二人。真っ赤になりながら口付けを交わす二人。そして、その時を迎え、ぎこちなく愛し合う  
二人。映像が鮮明に浮かび上がる。  
 今、自分を下から突き上げるオーランドの瞳を冷たく、無情で、愛情のかけらも見せない。これもまたオーランド  
だ。アリスが知る事のないランデル・オーランド。  
 図抜けた巨体を持ちながら、温厚で戦いを好まず、臆病でさえある。それは確かにオーランドの本質だ。  
 だが、戦場を生き抜き、901で在り続けるためにオーランドがまとった外皮。無感動に人を撃ち、突き、抉り、  
時に暴力的でさえあるその姿もまた、オーランドの一部であるのだ。  
(あの子は知らない、知るはずもない)  
 笑みを浮かべながらミュゼは快楽を貪る。アリスの凛とした顔が脳裏に弾けて消える。この姿を見せたらどんな  
顔をするだろう?  
「くっ……」  
 どれほど無感動でも生理的な限界は来る。オーランドが眉をひそめたのを見て、ミュゼはその顔を覗き込んだ。  
「限界?いいわよ、出して」  
「……いいのか、中で」  
「ふふ、バカね。外に出しても避妊なんて出来ないわよ。ちゃんと……避妊薬は飲んでるから、あっ」  
 痙攣してミュゼはのけぞる。白い喉をオーランドに晒しながら、ミュゼはくすくすと笑う。  
「でも……私と貴方でどんな子供が生まれるか……実験してもいいかもしれないわ、ね……ひうっ!」  
 急に激しく突き上げられて、ミュゼは悲鳴を上げた。「実験」という言葉が癇に障ったようだ。上体を起こし、  
オーランドはミュゼの唇を貪る。愛情などない、口を封じるためだけの口付け。  
 それが引き金となって、二人とも限界に達する。  
「くっ!」  
「ッッ!」  
 オーランドは短く呻き、ミュゼは唇を噛んで悲鳴を殺して絶頂を迎えた。尋常ではない量の精を流し込まれるのを  
感じながら、ミュゼはどさりとオーランドの胸板に倒れこんだ。  
 
『博士、見ていただきましたか。私の研究レポート』  
『保護液かね』  
『はい、これがあれば908の安全な実戦投入も……』  
『処分したまえ』  
『え……?』  
『カウプランはこんなものを必要としない』  
 
目を覚ますとランデル・オーランドの大きな背中が視界に入った。下着をつけ、服を着始めている。  
「……泊まっていったら?橋の下だと寒いでしょ?」  
「帰る。あそこは……ここよりは寒くない」  
 振り向かずにオーランドは答えた。ミュゼは気だるさを感じながら、それ以上引き止めず、ぼんやりとオーランド  
の背中を眺め、そしてふとアリスの事を思った。  
 真っ直ぐでひたむきで理想に忠実で決して諦めない。だが、彼女は闇がどれだけの深さにまで存在するのか知らない。  
オーランドもまたその闇の一部である事も。いずれ知る時が来るだろう。その時彼女は何を感じるのか。  
 寒気にも似たものが背筋を走る。喜悦か恐怖か。判別がつかないまま、ミュゼはオーランドに声をかけた。  
「また今度ね……マルタ」  
 バタン、とドアが開き、オーランドは去っていった。  
 
 翌日の3課。  
「よーう、デカブツ!昨日はお楽しみだったようだなぁ」  
「いっ!?」  
「伍長さんに、あんな美人のカノジョがいたなんて知りませんでした」  
「いや、彼女なんかじゃ!」  
「クールビューティーって感じだったね」  
「冷たいだけですよ、あいつは!」  
「……何をやってるんだ、お前たち?」  
「しょ、少尉!?」  
「朝っぱらから女の話とは、風紀が乱れてるにもほどがある!そこに直れ、伍長ぉっ!」  
 
 
 

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