薄暗い寝室の中、淡いまどろみから目覚めた  
少し硬いが、私にとって最上級の枕がしてある  
ごつく、傷だらけの…  
「起きましたか、少尉」  
耳元に囁くような低い声が聞こえる  
伍長は、枕にした腕でしっかりと私の肩を抱いたまま、優しい目で私を見詰めていた  
「ああ、眠ってしまったか」  
コホッ  
やや声が掠れているようだ  
伍長のせいで、昨夜はずっと叫びっぱなしだった  
疲れきって、頭を上げる気力も出ない  
伍長が枕元の水差しに手を伸ばし口に含む  
「ンッ」  
コクッコクッ  
口移しに優しく流しこまれる水は甘く、体に染み込んでいった  
 
「お疲れでしょう、休んで下さい」  
『誰か疲れさせたのだ、まったく』  
昨夜のことを思いだし、顔が朱くなるのを感じた  
   
寝室に入るやいなや、伍長は唇を求めた  
片膝をついてなお上にある伍長の口に、唇を完全に塞がれた私は、呼吸すら難しい  
酸素が不足したせいか、頭がクラクラしてくる  
ふらつく身体を伍長がしっかりと支える  
唇は離さずに…  
舌が口を侵す  
深く押し込み、私の舌に絡める  
搦め捕り、自分の口に引き込む  
吸い上げる、歯で軽く挟む、舌先をくすぐるように動かす  
舌を開放すると、唇や歯にまで愛撫を加える  
強く優しく…  
 
「…ンンッ」  
ビクビクッ…  
キスだけで、いかされてしまった  
伍長は、ぐったりと力の抜けた私の身体を抱き、ベッドに運ぶ  
壊れ物のように慎重に横たえ、また軽くキスをしてくれた  
優しく髪をなで、首筋や耳元を緩く愛撫しながら…  
首から上に神経が集中しているスキに、私の服のボタンを外していく伍長  
大きな手が器用に動く  
身体を撫でるように服を取り去る  
気が付くと、下着まで全て脱がされていた  
『どんな魔法を使ったのだ』  
異性に肌をさらすことなど、想像したこともなかった  
私の身体は、伍長の眼にはどう写っているのだろう  
 
闇の中、私を凝視している伍長を感じる  
見ないで欲しい  
恥ずかしいから  
見て欲しい  
愛してるから  
しっかりと組んで、胸を隠していた両手を解く  
姉上達ほど育ってないが、そこそこ大きいと思う  
今まで邪魔にしか思えなかったものだが、伍長に気に入って貰えるだろうか  
ジャッジを待つ罪人のように小刻みに震える  
羞恥と緊張でおかしくなりそうになった時、伍長は言ってくれた  
「キレイです」  
一番欲しかった言葉  
朴訥だが、誠意に溢れた伍長の言葉が心に染みた  
恥ずかしいから、誇らしいに変わった  
体と心の強張りが抜けていく  
 
極度の緊張が解けたせいか、涙が溢れ出てきた  
困ったことに、まったく止まる気配がない  
『伍長に嫌がっていると思われたら…』  
一人あせっていると  
ペロッ  
顔を寄せてきた伍長が、舐めとる  
『マーキュリー号のようだな』  
何となく可笑しくなる  
少しだけ余裕もでた  
「うまいか?伍長」  
おどけて聞いてみる  
「はい、俺にとって天上の美味です、少尉」  
カッと頬が朱くなった  
狡いぞ  
そんなに真剣に  
冗談のつもりが真面目に返され、うろたえる  
「だから全部いただきます」  
頬から耳元に、さらに首筋を経由、鎖骨を通って胸にたどり着く  
 
各所各所で淫声をあげさせられた私を、伍長はさらに責めあげる  
伍長の大きな手が合流して、乳房をすっぽりと掴まれた  
強く弱く、微妙な力加減で揉み上げながら、飛び出ている乳首を口に含む  
やわやわと唇で挟みながら、先端を舌で微かに触り、刺激を与える  
あまりの切なさに、伍長の首を抱え込む  
力が入らない  
自分でも、止めているのか、催促しているのかわからない  
ただただ快楽に流されるのを怯えるように、伍長にしがみついた  
伍長もまた、愛撫を止めようとはしなかった  
私が、二度目の快楽の波に押し流されるまで…  
 
荒い息をつき、呼吸を整える  
余韻で、ビクビクと震える体  
伍長の頭を抱えていた腕から力が抜け、自然と滑り落ちた  
伍長はその手を両手で握り、厳かにキスをしてくれた  
『まるで物語の騎士のようだな』  
子供の頃、好んで読んだ絵本を思い出す  
もっとも、自分が憧れたのは、騎士のほうだったが…  
初めて姫の立場も悪くないと思う  
ぼんやりする頭が、取り留めのない過去を思い出している間にも状況は変わる  
伍長は、大きな両手で包み込んだ掌を、マッサージするように揉みながら、指を口に含んだ  
『なんでこんな事が気持ちいいのだ』  
 
指をくわえられているだけで、とろけそうな快感が走った  
いや、実際にはくわえられているだけではない  
唇でしごかれ、舌で絡め取られる  
たまに、伍長の、その、大きなモノを口でしてしまうこともあるのだが、こんな感じなんだろうか  
いや、私はこんなに上手に出来ない  
これだけで、またも達してしまいそうになっている  
「伍長、お願いだ  
もう、止めてくれ」  
息も絶え絶えに哀願する  
「気に入りませんか」  
伍長は、分かりきっている癖に問い返す  
付き合っている余裕など全くない私は  
「お願いだ、許してくれ」懇願を繰り返すのみだった  
 
伍長が放してくれるまで、必死で堪え抜いた私は、声も出せなかった  
ジンジンと快楽に疼く身体と、それに流されることを恐怖する心、二つの私がせめぎあう  
身体を胎児のように丸め、目をつむる  
何もない世界に逃避する  
何もなく穏やかな  
伍長もいない…  
『そんなの嫌だ』  
ガバッ  
跳び起きると、心配そうに見つめている伍長と目が合った  
必死でしがみつく  
「私の伍長だ!」  
叫んでしまう  
『何を口走っているのだ、私は』  
訳の分からないことを言われ、伍長も戸惑って…  
「はい、俺は少尉の伍長です」  
迷いもせずに言い切った  
 
もう良い  
落ちても  
流されても  
こやつと共にならどうなっても  
しがみついたまま、伍長を感じる  
鋼のように逞しく、岩のように大きな体  
しかし、無数の傷痕を晒している  
心にはもっと…  
依存心と保護欲  
合反する、どちらの気持ちも伍長を欲した  
抱き返してくれた伍長の逞しい腕を感じながら、またも落ちていった  
   
   
その後のことは余り覚えていない  
伍長が欲するまま身体を開き、臆することもなく達した  
伍長は巧みに、執拗に私のを貧る  
髪一本から爪先まで、伍長の触れないところはなかったし、私の総ての隙間は彼に征服された  
 
月光と伍長に包まれ、私は一つの決心をした  
前から気になっていた  
伍長は上手すぎる  
とてもとても慣れている  
聞いてみたい  
聞きたくない  
知りたい  
知りたくない  
でも今なら…  
総てを捧げた今なら聞けるかも  
勇気を振り絞った  
「伍長」  
「はっ、はい」  
私の気配の変化を伺うようにしていた伍長に、思い切って問う  
「女性経験はどれくらいあるのだ」  
「!」  
「伍長は優しいからな  
さぞかしモテたのであろう」  
クチガ  
「まだ若いのだ」  
カッテニ  
「他にも何人もいるのではないか」  
ウゴク  
辛いのをごまかそうと、余計なことまで…  
 
「そうですね、売春宿では人気がありましたよ」  
私の不躾な問いに、伍長は平然と答えた  
「そうか」  
声が震えないよう、必死に押さえる  
「部隊の皆に付き合わされて、よくそういうところにも行きました」  
「仲間は大事だからな」  
意味のない受け答え  
「宿でモテる方法を知ってますか?」  
「どうするのだ」  
そんなこと知るか  
「寝てしまうんです、なにもせず」  
えっ  
「俺のサイズだと壊してしまいそうなんで  
店の姉さん達は、いつも寝不足なんで、喜んでくれます」  
いたずら小僧の表情で、伍長は言った  
 
「失礼ですが手を出してしまったのは少尉だけです」「バカモノ」  
パンッ  
思わず手を上げてしまった「バカモノ!バカモノ!バカモノ!人をからかうのがそんなに楽しいか!」  
悔しくて  
嬉しくて  
憎たらしくて  
愛しくて  
感情を爆発させてしまった私は、伍長を叩き続けた  
腕が上がらなくなるまで…  
肩で息をする私に、伍長が詫びてきた  
「ごめんなさい  
少し浮かれ過ぎました」  
伍長はほとんど堪えた様子も見せず、穏やかに微笑んでいた  
さぞ面白かったであろう  
馬鹿な私は  
怒りを込めて、睨み付ける  
「少尉が嫉妬してくれたから」  
 
本当に嬉しそうに伍長がぬかした  
ずるい  
私は怒っているのだぞ  
怒っているのに…  
心が喜んでしまう  
顔が緩んでしまう  
伍長を見ることが出来ない  
本当にヒドイ奴だ  
憤慨しながら、伍長に背を向ける  
抱きしめてくれるのを期待しながら…  
   
終  
   

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