庶民には想像もつかない程の贅を尽くした部屋の中、  
伍長は大きな体を小さくまるめてちょこんと座っていた。  
この屋敷に来るたびに身分の差を痛感する。  
「もっと堂々としていいんだぞ?ここは私の屋敷だしお前は私の客なんだから。」  
アリスはそういって笑うけれど、それで「はい、そうですか」と納得できるわけがない。  
おまけに今日の少尉はなんだか様子がおかしい。  
うまく説明できないがなんというか・・・ピリピリしている。  
伍長はどうにもいたたまれなかった。  
「今日はどうしたんですか?」  
伍長はおずおずと問いかけてみる。  
「伍長」  
アリスは少し言いよどんで、それから一息に言い切った。  
「この前の続きをしたい!」  
伍長の顔が見る間にかーーっと真っ赤になった。  
持っていたティーカップを取り落としそうになるのを見て  
アリスは慌てて手を差し出す。  
 
話は数週間前に遡る。  
その日二人は何度目かの情交を重ねていた。  
少尉の胸は結構大きい。  
初めて見たときは目のやり場に困ったくらいだ。  
伍長はその豊かな胸を遠慮がちに手の中に包み込んでそっと揉む。  
こうしていると少尉の鼓動や息遣いが直に伝わってきてこちらの心臓まで高鳴ってくる。  
触ってるだけじゃ・・嫌だ・・・  
どうにも抑えがたい欲望のままに伍長は少尉の胸に顔をうずめてしまった。  
しきりに舌を這わせては乳首を口に含んで何度も吸い上げる。  
自分が今ものすごくみっともないところを見せているとわかっていても愛しさが先に立つ。  
「子供みたいだぞ、伍長」  
アリスが赤い顔で少し笑った。  
 
熱く湿った所に触れてみると、難なくぬるっと指が入り込んでしまった。  
「ん・・んんっ」  
アリスは小さく声を上げる。  
初めてしたときは痛いのかと動揺したが今では感じているんだなとわかる。  
「こういうときは・・・」  
伍長は思った。  
「少尉なのに少尉じゃないみたいだ。」  
目がぼんやりと開かれて、顔が真っ赤で、呼吸が乱れて、  
それから口が切なげに動いて・・・  
「なあ・・伍長、どうして・・いつも・・指でしかしてくれないんだ?」  
伍長の動きが止まる。  
「自分のは・・お・・大き過ぎて、多分少尉に痛い思いをさせますから。  
「そうなのか?でもそれじゃ私は良くない・・・良くないぞ!」  
アリスは伍長の手に触れて慎重に指を引き抜かせる。  
それから本当に思い切って伍長の下半分の洋服に手をかけするっと引き下ろした。  
 
伍長の物は張り詰めて痛々しいほどに上を向いていた。  
アリスは一瞬息を呑む。  
確かに大きい。入るかどうか自信がない、というか怖い。  
まさかこんなに大きいなんて予想もしていなかった。  
どうしよう。  
二人ともしばし呆然としていた。  
伍長の物が見る間に萎えていく。  
「いいんです、もうよしましょう、少尉。」  
伍長は申し訳なさそうにうつむいて言った。  
アリスは自分がしくじったことに気がついてはっとした。  
これじゃ傷つくに決まってるじゃないか・・・  
かといって口でしてあげるというのも無理な注文だ。  
思い切り口を開けてみてもこれではとても入らない。  
仕方がないのでアリスは手をそっと添えて優しく撫で上げ始めた。  
 
アリスを制止しようと伍長の手が何度もシーツの上でもがいて、  
でも結局そうはしなかった。熱い唇がが音を立てて刺激を与えている。  
「少尉・・」  
「気持ちいいか?伍長」  
「・・・・・・・・・はい。」  
アリスの手の中でまた元の大きさと硬さが戻ってきた。  
「できる・・かな?うん、大丈夫だ。」  
アリスは怯える心を押し殺して自分に言い聞かせる。  
組み合わさるように男女の体はできているんだから。  
それから伍長の上になって少しづつ腰を落としていった。  
恥ずかしい姿勢だけどこれだと自分のペースで進められるはずだ・・・。  
それでも・・・痛い、すごく痛い、痛い。  
やっぱり無理だ、と思った。  
でもここまでしておいて相手を拒絶するのはひどすぎる。  
アリスはぎゅっと歯を食いしばって耐えた。  
伍長がかわいそうじゃないか・・・だから  
 
「もう・・やめてください。」  
伍長の悲しげな声にアリスははっとした。  
「うん・・・ご・・めん」  
「抜きますよ。」  
「うん・・・」  
アリスがあまりにも苦しそうで見るに耐えない。  
伍長は極力痛みが増さないようにそっとアリスの体に手を当てて腰を引いていった。  
そうやってしぼんだ状態で本当にゆっくりと引き抜いているのに  
アリスは苦痛に耐えかねて声を上げてしまう。  
とてもかわいそうだった。  
意地を張って無理に押し込んでいたせいで血がシーツを汚している。  
それを見た伍長はとうとうぽろぽろ涙をこぼして泣き出した。  
「ごめん、私が悪かったんだ。ごめんよ伍長・・・」  
アリスが自分を抱きしめるのを感じて伍長はますます激しく嗚咽した。  
 
これまでにもたくさん悲しい思いはしてきたけれど  
こんなに情けなくてこんなに惨めだったのは生まれて初めてだった。  
 
それから二人はずっと気まずくなってしまっていたのだった。  
 
床に落ちかけたカップをテーブルの上に置いてからアリスは向き直った。  
「できると思うんだ。だから来い!」  
どこから来るのかわからない元気の良さで微笑みかけてくる。  
「そんな無茶な」と伍長は思った。  
「嫌なのか?」  
「少尉が痛がるのは嫌です。」  
「そうか。」  
アリスはちょっと悲しそうな顔をした。  
それから母親が子供にするように伍長をぎゅっと抱きしめた。  
「大丈夫だよ、伍長」耳元で囁きかける。。  
そうして伍長の頭を何度も繰り返し撫でていた。  
伍長はどうにも思い切りがつかなかった。  
少尉のことは大好きだ。自分に優しくしてくれる人を傷つけたいなんて誰も思わない。  
「どうしてもどうしても嫌か」アリスが静かに問いかける。  
それでも伍長はふるふるとうなずくしかなかった。  
ごめんなさい、少尉。  
 
アリスはしばらくじっと黙り込んで  
それからとても言いにくそうにポツリと言った。  
「自分でしてみたんだ」  
伍長は一瞬意味を取りかねて呆然とした。  
なんだろう、それは。じぶんでする?  
「好きな人の体を受け入れられなかったのは私だってすごくさみしかったんだ。それで・・・」  
自分の手をじっと見つめながらアリスは続けた。  
「・・・指が全部入れられて。」  
貴族のお姫様の口から発されるにはあまりにもあんまりな告白に思わず伍長はあたりを見回した。  
こんなことは絶対に自分以外の誰の耳にも入れたくない。  
「お前のことを思いながらしたときに、だぞ?」  
あっけにとられて返事ができない。  
「ほら、たしかお前のってこれくらいだろ!」  
アリスが手で形作ってみせるの見て伍長の困惑は最高潮に達した。  
アリスもふと自分がとんでもなくはしたない動きをしたことに気付いて思わず  
顔を赤らめる。  
「だからな、大丈夫だよ伍長。」  
二人はじっと見つめあった。  
 
アリスが伍長の手を取って穏やかに口づけた。  
それから指の一本一本を飴を舐めるように丁寧に口に含んでいく。  
「いつも」アリスがゆっくり呟いた。  
「この指が・・入ってくると・・・嬉しくて気持ちよくて・・・たまらないんだ。」  
伍長はくすぐったいような照れ臭いような感覚に襲われる。  
胸をさすられるのがとても心地よくて思わず長く息を吐いた。  
「伍長」  
「何・・・ですか?」  
「・・嫌じゃないか?」  
「はい・・・。」  
アリスは切なげな眼差しを向けてくる。  
「はい、じゃなくてしたい、っていってくれ。」  
「少尉の・・体・・が・・・もっと欲しい・・です。」  
伍長を抱きしめるアリスの手にぎゅっと力がこもった。  
そのまま襟元を緩めながら思い切りキスをする。  
赤い跡がいくつもついた。  
もっと距離を縮めたい。  
二人はもどかしげに服を脱いで夢中で抱き合った。  
 
数え切れないほどキスを交わし、肌を擦り付けあい、指を絡めあって  
伍長は収まりが付かないほどの高ぶりを感じた。  
アリスは嬌声をじっとこらえそれでも我慢しきれずに絶え間なく声を上げる。  
呼吸を激しく弾ませながら涙を流していた。  
「もう・・・入れてほしい。」  
「本当に・・・平気・・です・・か?」  
自分の太ももの辺りがアリスの愛液で濡れているのがわかっているけれど  
とにかく確認してみる。  
「これじゃ・・焦らされてるのと変わらない。お願い・・・。」  
先端部をあてがってみてももうアリスは痛がらなかった。  
力をこめてみると流石に少し抵抗を感じたけれど、  
それでも初めて試みたときよりはずっとスムーズに入っていく。  
アリスの体はゆっくりと伍長の体を受け入れていった。  
 
「これで・・・全部です・・。」  
伍長が発した声を聞いてアリスは思わず自分の局部に目をやってしまった。  
あんなに大きかった物が確かにきっちりと根元まで収まっている。  
敏感な場所が驚くほどの柔軟さでぎりぎりまで押し広げられていた。  
目を疑うような光景を目の当たりにして、アリスはこれまで一度も経験したことのない激しい感覚が  
急速に湧き上がってくるのを感じた。驚きやかすかな恐怖感、そして愛しさや喜びがないまぜになって  
感情を滅茶苦茶に揺り動かしていく。膣壁がひくひくと震えた。  
一方伍長の方は伍長の方で、生まれて初めて自分の全てが押し包まれた感触に我を失いかけていた。  
膣の内部がぬるぬるとこすれて今にも射精しそうになる。  
「入れた直後に出すなんてみっともない・・・!」  
伍長は必死で思考を飛ばし、達さないようにこらえることしかできない。  
 
二人とも身動きが取れなかった。  
息を吸い、吐き、そんななんでもない振動が今のお互いにとっては強すぎる刺激だった。  
しばらくしてからやっと口を開いたのはアリスの方だった。  
「いいぞ・・伍長・動いても。」  
息も絶え絶えになりながらも懸命に優しい表情をつくろうとしている。  
額には汗がにじんでいた。  
「じゃあ・・い・・痛かったらすぐに、俺、すぐに止めますから言って下さい。・・・!」  
伍長は本当にゆっくりと抜き出して、それからまたじわじわと挿入を始める。  
アリスが唇をぎゅっと噛み締めてこらえるのがわかった。  
「痛く・・ない・・ですか?」  
「大丈夫・・それより」  
そこから後は言葉にならなかった。  
アリスの中で微かな痛みのように思えた感覚が快感に変わっていく。  
「あっ・・ひゃっ・・あっ・・あぁっ!」  
ほとんど悲鳴に近い声が上がるのに驚いて伍長は腰の動きを緩めた。  
「やめるなっ・・・やめないでっ・・ああっ」  
アリスは伍長の肩にぎゅうっと額を押し付けて懇願した。  
これは・・・つまり・・感じている?少尉が?自分の物で?  
アリスの体の奥から絶え間なく熱い液体が溢れて自分の物をしとどに濡らしているのを感じる。  
いつもは凛々しい少尉が、女性としての喜びに打ち震えているのを目の当たりにして心が渦巻いた。  
少尉をこんなにも乱れさせているのは他ならぬ自分なのだ。  
 
アリスは与えられる快感のあまりの激しさに  
自分が自分でなくなっていくようような気がした。  
子宮口を突き上げられのが痛いほど苦しいはずなのに  
腰を動かして求めるのを止められない。  
陰核が伍長の指で刺激されるのを感じてアリスは体を震わせた。  
「やっ、だめっ」  
アリスは懇願するように切ない声をあげる。  
「いっちゃうからっ・・・!」  
囁く様にかすれた声で吐き出された言葉は伍長の興奮をいっそう激しくした。  
堰を切ったように、何度も何度もアリスの奥深くに衝動を叩きつける。  
もう限界に近かった。  
「そんなにっ・・激しくしないでぇっ・・おかしくなっちゃうっ・・・!」  
伍長が突き上げるのに合わせてアリスの体が痛々しいほどびくんびくんと激しく震えている。  
それを見た伍長は思わずアリスをぎゅっと抱きしめてしまった。  
「やぁっ・・ひゃっあああんっ」  
逃げ場をなくした体に、苦しくなるほど熱く激しい快楽が押し寄せてくる。  
「あっ伍長・・伍長っ・・あぁんっ!!!」  
アリスは繰り返し伍長の名前を呼びながら絶頂に達した。  
膣壁が激しく脈打ち伍長の物を断続的に締め付けた。  
それからスルスルと全身の力が抜け落ちていく。  
伍長はそんなアリスの体を慌てて支える。  
そうして、そっと相手を刺し貫いていたものを抜き取りにかかった。  
 
「んっ・・んんっ・・・」  
アリスが声を上げるので伍長はてっきり少尉が苦痛を感じているのかと思った。  
動きを止めてそっと表情をうかがってみて・・・実はそうではないとわかる。  
アリスはただただ熱い快楽の余韻に浸っていた。  
自分自身の体をぎゅうっと抱きしめて、津波のように断続的に押し寄せてくる悦楽の名残に必死に耐えている。  
「あ・・あ・・・あん・・あ・・・・」  
熱い吐息に切なげな嬌声がかすかに混じる。  
アリスが普段よりもっともっと小さく儚い女の子に見えた。  
「大丈夫ですか・・少尉?」  
「ん・・・」  
アリスはまだぼうっとしている。一度高ぶった体はなかなか簡単には冷めてくれない。  
はあはあと乱れる呼吸を整えながら、やっとのことで自分をじっと見つめる伍長の眼差しを認識した。  
「私っ・・・私・・こんなに・・・」  
急に恥ずかしそうな泣きそうな表情をしたかと思うと、アリスは両手で顔を覆ってしまった。  
「少尉・・」  
 
アリスは泣いているように見える。  
痛くしてしまったのだろうか、おびえさせてしまったのだろうか。  
普段は絶対に見せることのない表情ばかりを浮かべるアリスに  
伍長はどう接してしていいのかわからなくなる。  
「こういうときは、なぐさめて・・あげる・・のかな?」  
おずおずと手を伸ばして頭をそっと撫でてみた。  
アリスはまるでそれを合図としたように伍長の体にぎゅっとしがみついてくる。  
「!」  
「気持ちよかったか?伍長」  
「え・・!?・・は・・・は・・い・・良かった・・です。」  
「私も・・すごく嬉しかった・・ちゃんと全部入ってきたって・・」  
声が震えている。  
「でもこんなに乱れてしまうとは思わなかった。お前のが大きすぎるんだ・・反則だ・・・。」  
そんながアリスあまりにも愛しくて体中で包み込んであげたいと思った。  
こういうときにはいつもは大きすぎるこの体がちょうどいい。  
「今この人は自分だけのものだ。」  
そんな愛情がじんわりと伍長の心を満たしていた。  
 
ふと気が付くとアリスの呼吸はゆるやかに落ち着いていた。  
伍長はそっと声をかけてみる。  
「お風呂に入りましょうか?」  
確かに二人とも汗やその他の体液で、全身がじっとりと濡れていた。  
これでは体がべたついてあまり良い夢は見られまい。  
アリスもうなずいた。  
「うん、このままじゃちょっと寝られないな。」  
アリスは伍長の腕の中から抜け出して起き上がろうとする。  
自分で声をかけておきながら、少尉が離れていってしまうのがなんだか惜しかった。  
アリスは握られた手を見てすこしはにかんだ。  
「一緒に行こうか」二人はベッドから起き上がった。  
それから風呂場に着いて「背中を流してやろう。せっかくふたりなんだからな。」と  
屈託なく笑った表情はもういつもの少尉だった。  
 
バスタブに二人で入るととんでもなく狭い。それでも標準的な大きさのものなら  
一緒に入ることもできないだろう。何もかも伍長の体格のせいだ。  
「狭いな。」  
「すいません。」  
「謝ることはない。いつものことだ。」  
アリスは石鹸とタオルを手にとってさっさと伍長の体を洗い始める。  
くしゃくしゃと頭をこすり洗う手付きがとても丁寧だ。  
橋の下でホームレスも同然の暮らしをしている自分は普段ろくにシャワーも浴びない。  
髪がもつれてブラシが通るかも結構怪しいものだというのに少尉は石鹸を盛大に泡立てて  
嬉しそうに自分の体を洗っている。  
「伍長は大人しくっていいな。この間マーキュリー号を洗ってやろうとしたら、あいつ水を  
嫌がって大暴れしたんだ。おかげで私もステッキン曹長もずぶ濡れになって大変だったんだぞ。」  
自分はマーキュリー号と同じ箱の中なのかとなんだか複雑な思いに駆られたが、そうじゃないなと思い返した。  
少尉はみんなに優しい人なんだ。  
とりわけ自分には優しいけれど・・と心の中で付け足してみる。  
温かいお湯をざっとかけられると全身がさっぱりしてとても心地よかった。  
なんだか母親と暮らしていたときのことを思い出す。  
自分がまだ本当に幼なかったとき母親とこうして風呂に入った。  
そのときの優しい安心した気持ちがこみ上げてくる。  
 
「ん、これでよし!」  
一仕事終えてすっかり満足気なアリスに伍長は声をかけてみた。  
「少尉、洗ってあげましょうか?」  
アリスは思いもよらなかったという感じに激しく驚いている。  
「えぇっ!いいよ!自分でできるから。」  
「俺の体は洗っても自分の体は洗わせてくれないんですか?」  
伍長は残念そうに訴える。それを聞いたアリスは恥ずかしそうにちょっとうつむき  
しばらく考え込んでいるような様子だった。  
「う・・うん、じゃあ、たま・・には・・甘えてみようかな。」  
そわそわと落ち着かない様子ながらもアリスは承諾の意思を伝えた。  
そうやって呟く声から、先程快楽の中で上げた声と同じ響きを微かに感じ取って  
伍長は心臓を高鳴らせた。アリスは少しだけ緊張して、小さな体を無防備にさらけ出してくる。  
こうやって改めて見てみるとアリスの体は傷だらけの自分の体とは違ってまぶしいほどに真っ白だった。  
髪も金色に輝くブロンドだ。とってもきれいなのに短く切ってしまうのがもったいないといつも思っていた。  
お姉さん達のように長く伸ばせばいいのに、と。  
でもそうやって短い髪をして自分の信じる正義にまっすぐに走っていくのが少尉らしさなんだということも  
自分は心のどこかで既に納得している気がした。  
 
少尉から甘い匂いがする。  
どうしてもこらえきれず、うなじに吸い寄せられるように口付ける。  
肩から両腕を回し包み込むように抱き寄せた。  
「しばらくこうしていてもいいですか?」  
「うん・・」  
答えるアリスの声は切なく愛しげだった。  
鼓動が溶け合ってしまうまでふたりでこうして体を預けあっていたかった。  
 
しかしそんなセンチメンタルな感情とは裏腹に、少しばかり大きすぎの分身が言うことを聞かず、またしても元気に立ち上がってきた。  
慌てて体を引いたが少尉の腰の辺りに無遠慮に当たってしまう。  
「こら、あれだけしておいてまだ足りないのか?」  
「す・・・すみません。ごめんなさい。」  
「いいよ・・もう一回・・・ベッドに戻ったら・・」  
はにかみながら微笑むのを見つめながら、伍長はアリスへの思いが募っていくのを感じた。  
ランタンの力なんか借りなくてもこの人を守れるくらい強い自分になりたいと心の底から思った。  
俺はこの人の思いに報いよう。  
戦災復興っていう少尉の夢を俺は一緒に追いかけていくんだ。  
伍長は改めて心に誓った。  
 
 
 
 
 
おしまい。  
 

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