ありすは、ていこくりくぐんじょうほうさんかの、たいちょうさんです。  
いえは13きぞくにかぞえられ、むげにはできないそんざいです。  
でも、ありすはあるひ、あくにんにとらえられ むりやりくすりをのまされました。  
くすりのききめははやく、ありすはとてもねむくなってしまい、そのばでねてしまいました。  
めがさめると、ありすはちっさくなっていました。  
ごちょうのてにのるくらいに、ちっさくなってしまいました。  
 
「じじょうはわかりましたが……」  
ありすをりょうてのうえにのせ、ささげもつようにしていたごちょうはふしぎそうに、くびをかしげました。  
どうしてこんなにちっさくなってしまったのか、わけがわからないのです。  
ごちょうには、すいりするしか、ありませんでした。  
「まるう"ぃんけに、うらみをもつものの、はんこうでしょうか……」  
「……そんなこと、わたしにわかるものか」  
はきすてると、ありすはためいきをつきました。  
めがさめると、あいぼりーいろのおおきなぬのと、かーきいろのごわごわとしたぬのにおおわれていたのです。  
ひっしでぬけだしてみあげると、おおきなぬのは、なんと、じぶんのふくだったのです。  
どれだけおどろいたか、ごちょうにせつめいしても「はぁ」とか「そうですか」といったこたえしか  
かえってこないでしょう。  
たとえどんなにふあんでも、からだにまきつけるはんかちをとりだすのにどれだけくろうしたかなんて、  
ごちょうにはなさなくてもいいことです。  
「……でも、しょういはすごいです」  
ありすはのかいきゅうはしょういでした。ごちょうはいつもありすをしょういとよぶのです。  
「そんなときでも、しょういはあきらめないでいたんです。こんなちいさなからだで。……すごいです」  
ありすのかおがかーっとあかくなりましたが、ごちょうはそうとはきづきませんでした。  
ぷいっとかおをそむけるのがかわいくて、ごちょうはおもわずにっこりとわらってしまいました。  
とうぜんありすもそれにきづきます。  
「なにをにやにやとしている?」  
「いえ。ねこみたいでかわいいなぁとおもいまして」  
「……ごちょう。かお」  
ふしぎにおもいかおをちかづけると、ありすはこんしんのちからでもって、ぱーん!!! と  
ごちょうをたたきました。ありすはそのまま、きばこのうえにとびおりました。  
ほんとうはほおをたたきたかったけど、てがみじかくて、はなさきにしかあたらなかったのが、くやしいです。  
 
ところで、いまありすがみにつけているのは、はんかちです。  
はんかちのさきをかたのうえにだし、ぐるりとからだをひとまきしてから、さきにだしておいたぶぶんと  
くろすさせてこていし、くびのうしろでしばった、ほるたーねっくすがたです。おおきなむねはしっかりと  
はんかちでまもられていますが、ゆだんするとひざばかりかふとももまでもがでてしまいます。  
じゅうようなのは、ありすがしたぎをつけていないことでした。  
「さむいし、にんぎょうのふくをかいにいくしかないか……」  
ごちょうはたちあがりかけましたが、ふいにうごきをとめました。  
このすがたのありすを、どうやってつれていけばいいのでしょう。  
「どうした?」  
ありすにみあげられ、ごちょうはしゃがみこんだまま、つい、てをのばしてしまいました。ありすがその  
うえにのります。  
ごちょうはすっかりこまってしまいました。  
 
ありすはごちょうのきずだらけのてのうえにすわりました。てはざらざらで、ごつごつしていて、おまけに  
けがでそぎとられたにくのぶぶんがだんのようになっているのです。  
「おまえはたくさんたたかったんだな……」  
ありすはちいさなてでごちょうのきずぐちをなでました。  
ふいに、ごちょうのむねがときめきます。  
こんなにやさしくなでられたのははじめてです。  
それに、ありすはごちょうのてのうえにすわっているのです。やわらかいおしりも、ふとももも、ごちょう  
のてのうえなのです。  
ごちょうはだんりょくとあたたかさにゆうわくされましたが、もうひとつのもんだいをおもいだしました。  
「どうした? はやくしゅっぱつしろ」  
いつまでもあるきださないごちょうをふしんにおもい、ありすがみあげます。  
ごちょうはどきりとしてしまい、めをそらせました。  
「なんだ。はっきりともうせ」  
「その……おとこのおれが、にんぎょうのふくをかうのは、その……」  
きくとありすはふむとかんがえ、よこめでごちょうをみました。  
「わかった。おれるどのところへあんないしろ。あいつのほうがやくだちそうだ」  
「いえ! おれがいきます!」  
ごちょうはさいふをぽけっとにつめこむと、かんねんしてたちあがりました。  
たちあがるときのふうあつにまけ、ありすはごちょうのてのひらにたおれてしまいました。  
「だ、だいじょうぶですか?!」  
「へいきだ」  
ありすはかみをととのえると、ごちょうのおやゆびにしっかりとつかまりました。  
てはとてもおおきくて、そして、たよりがいがあります。  
ありすは、ふふふ、とわらうとごちょうのきずだらけのはだにほおをよせました。  
そのとてもあたたかくあんしんなことといったら、たとえようがありません。  
ありすのちいさくなったからだのなかにうずまくふあんがきえていくようでした。  
あんどでなみだがながれおちたしゅんかん、ごちょうははしをでて、ちじょうにのぼるかいだんのいちだんめに  
あしをかけました。つづいてにだんめ。  
ふわりとかぜがおきて、ありすのみにまとったはんかちをたかくあげ、しろいふとももがあらわになりました。  
「なっ――」  
ありすはあわててはんかちをおさえました。でもひょっとすると、おしりがみえてしまったかもしれません。  
はんかちをしっかりと、あしのしたにおさえこんでから、ありすはそっと、うしろをふりむきました。  
ごちょうはたちどまって、かおを90どよこにむけ、めもうえにむけて、あおいそらをながめています。  
ほおはまっかです。  
でも、ありすはごちょうをたたこうとかんがえましたが、やめました。  
ちちでもなく、あねでもなく。ましてやじょうしの、はんくすたいいでもなく。  
ごちょうをたよったりゆうをきづいてもらえるひまで、ほおをたたくのは、やめるつもりです。  
 

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