テーブルの上に置いてある何枚かのチラシ。ドラコはそれをぼんやりと見ていた。
(う~ん、う~ん。どうしよっかなあ)
チラシをペンでつついてみたり、テーブルにぺたんと突っ伏してみたり。しっぽを振ったり。
要するに彼女は本当にただただぼんやりとしているのであった。
かららん、からん
そんなとき、玄関のドアベルが鳴った。
(あっ、ラグナスだっ)
ぼんやりしきっていた彼女もぴょんと起立する。ベルの鳴り方でラグナスだと分かる。
「いらっしゃぁい」
「うん。おじゃまします」
片手に買い物袋を抱えたラグナスをお出迎えする。
「ねえ、今日も泊まってってくれるんでしょ」
「もちろん」
「えへへ…」
ラグナスは空いているほうの手でドラコを抱き寄せて、一瞬軽いキスをする。
「んっ」
いらっしゃいとおじゃましますのキスだけど、本当はおかえりなさいとただいまのキスに近い。
彼らは週末はお互いの家に泊まることが普通になっていた。
二人は”こういう関係”であることを周囲に極秘にしているわけではないけど、
真面目なラグナスは普段から公然とべたべたするなんてことは決してしない。
そのかわりに週末に二人きりになったら、いつも心行くまで愛してくれていた。
優しくて意地悪なラグナスは今日はどんな風に愛してくれるんだろう。
ドラコは少し思っただけで、これから始まる週末への期待に体の奥がかすかに疼いた。
ラグナスはドラコの微笑みに愛護欲とほんの少しの嗜虐欲を同時にかき立てられながらも
そんなことはおくびにも出さずに、とりあえず話し出す。
「とりあえず夕飯どうする?またいっしょに作ろうよ」
「あ、え~っと。うん。作ろー」
「…?」
なんだかぼんやりとした返事だ。よく見るとドラコ自身もぼんやりしているような気がした。
でもとりあえずそれは置いといて、ラグナスは買い物袋の中の食材を整理する。
週末を二人きりで過ごすための分だ。
ちなみに半同棲を始めたら食費が少し安く済むようになったことも二人は助かっている…。
「カレーもいいけど今日はパスタとかどうかなって思うんだけど」
ラグナスは勝手知ったる彼女の家の、テーブルの上に食材を出した。
と。そのテーブルにチラシがあるのを発見する。
アルバイト募集 ウェイトレス若干名
「ん。ドラコアルバイトするの?」
「あ、うん。しようかなあって考え中なんだけど…」
「へえ~、ウェイトレスかあ。かわいいだろうなあ」
「ッ…もう!ラグナスってばいつも真顔でそんなこと言う。恥ずかしいよ…」
「だって本心だよ…。………あ、でもウェイトレスって、ナンパとかされないの?」
「されるかもね」
「え、だったら心配だよ」
「なんで?あなた以外に何言われたって絶対何とも思わないから、お断りするだけだよ?」
「うッ」
「ん?」
ドラコのほうこそ真顔で恥ずかしいことを言う。しかもその自覚が全くなしに言っている。
「と、とにかく、アルバイト始めるのはどうしてなの?買いたいものでもあるの?」
「ふぇッ?………うん、まあね。いや、そんなでもないからまだ考え中なんだけど」
またしても妙に歯切れの悪い返事。
とはいえ実はこんな風なドラコをラグナスは初めて見るわけでもなかった。
周囲に雑と思われがちなドラコも本当は繊細な少女だということを彼はよく知っている。
でも得てしてこんな時の彼女の悩みは、彼に言わせれば、かわいい悩みであることが多い。
前に聞き出した時は、あたしは淫乱な女の子なったのかもしれないという悩みだった。
その時はもちろん俺の前ではいくらでも淫乱になっていいよと頭とカラダに教えてあげた。
でもそんなかわいい悩みでなくとも、もし深刻な問題でも彼はドラコの力になってあげたい。
どっちにしろ気になるので、ラグナスはちょっと探ってみることにした。
「ねえ、ドラコどうかした?なんか悩んでるとか困ってるとかしたの?」
「えっ、えっ。ううん。全然そういうんじゃないの。なんでもないよう」
今の反応の仕方で直感的に”かわいい悩み”のほうだと察知するラグナス。
深刻な悩みでなさそうで安心すると同時に、あとで聞き出す楽しみが出来たような気がした。
と、何やらお互い内心に思うところを持ちながら、夕食作りにとりかかる二人。
二人がこういう生活を始めてから、ドラコは驚くほど料理を上達させていた。
それに、かわいらしいエプロン姿で嬉しそうに料理をする彼女を見るのも楽しい。
今日はピンクのセーター、クリーム色のミニスカートとニーソックスにエプロン。
ラグナスはつい何度かじゃれついてしまって、彼女に邪魔だよって怒られてしまった。
それでも料理はうまく出来た。なんでもない食事も彼女といっしょなら御馳走に感じた。
ただ、そこでもちょっと気になることがあった。
「あ、あたしは、あんまり食欲ないから少なめでいいよ」
「そう?じゃあ………………このくらい?」
「う、うん」
食欲はないと言うから、ドラコのぶんはやや少なめに取り分けたのだが、
結局彼女は何やら迷いつつも、自分のぶんはとてもおいしそうにたいらげた。
ダイエットでもしてるのだろうか?
ともあれ食事の時間が終わった。おしゃべりも一息ついて、一瞬間があく。
「………え、えっと、じゃあ、ごはんも食べたし!…シャワー浴びてくるね………」
「うん」
いつものコースで二人の夜が始まる。
ドラコのこの時のシャワーは汗を流すだけなのでさほど時間はかからない。
その間にラグナスは彼女の(二人の)寝室で服を脱いで支度を整える。
ベッドに腰掛けてほんの少しそわそわと待つうちにドラコがあがってくる。
バスタオルだけを体に巻いて、それがずり落ちないように両手でしっかり抑えて、
髪は毛先が少し濡れていて、羽やしっぽはつやつやさせて。
「ああ、ドラコ……、おいで……」
「…うんっ」
ドラコは真っ赤になってはにかみながら幼妻のようにラグナスに寄り添う。
「ラグナス……、きょ、今日もたくさん、貰ってね」
ドラコはいつもラグナスに抱かれる時に貰ってと言う。
彼女にとってはセックスは彼に自分を捧げるための行為だかららしい。
「うん、たくさん貰うね………」
「うん、んっ…んんぅ」
二人は熱いキスを交わす。敏感なドラコはキスだけでももうくらくらになる。
しなだれてラグナスに体をもたげて、さっそく彼の虜となった。
ラグナスはキスして抱き寄せたまま、自分からベッドに倒れる。
ドラコを上に抱きかかえた格好だ。
そして彼女の体を唯一覆うバスタオルをはだけさせた。
「やぁん…………」
彼女は何度も抱かれてセックスにも慣れても彼の前で裸になる瞬間は強く恥じらう。
だからラグナスはこの瞬間をとても気にいっている。
「ドラコ、かわいい……、大好きだよ…」
ラグナスは下からすくいあげるように彼女の乳房を掴む。
すると、それまでうっとりと身を任せていたドラコは急に彼の手に戸惑いを見せた。
「あぁッ………ラ、ラグナス……胸は、あんまり…さわらないで……」
「え、どうして?………もしかして、痛むとか?」
「そ、そうじゃないけど…………あの、あの…えっと」
また”ぼんやり”になるドラコ。少しじれったくなってくる。
でもラグナスにとってはちょうど聞き出す頃合だった。
そろそろ尋問を始めることにしよう、と。
「ねえドラコ、今日はほんとにどうしたの?変だよ?」
「ええっ、ほ、ほんとになんでもないんだよ…。その、たいしたことじゃないの」
「なら、言って欲しいな………。ね、お願い………………」
「え、でもぉ………………」
言い渋るドラコに、ラグナスは殊更にねちっこい調子で呟いた。
「ふう~~~~ん。そーお…………」
すると彼はドラコの体をぐいと後ろ向けにさせ、羽交い締めの姿勢になった。
「きゃあっ……」
一瞬にして手の自由を奪われ、足も絡み取られて大きく開脚して固定させられた。
羽もしっぽも器用に圧迫されている。痛くはないけど完全に動かせなくなった。
背面座位のポーズだがまだ繋がってなく、彼のペニスは彼女の真下で構えている状態だ。
この格好にドラコはいやいやともがいたが、力が抜けていてまともに抵抗できない。
ましてや、彼女の本能は、ラグナスに強く支配されることは、決して嫌がってはいないのだ。
「やあぁ……………」
「ほら、言ってくれないと、ずっとこのままだよ」
ラグナスは腰を卑猥に動かせて、彼女の陰唇をペニスで擦って素股で責めた。
彼女のそこはすでに濡れているのでスムーズに擦れたが、ラグナスは全く力を入れない。
ゆっくりと、触れるか触れないかくらいのただ表面を撫でるだけの力加減だ。
「ひゃあぁ………こ、こんなの、いやあ、ん…………」
ドラコも腰を振って強い刺激を欲しがるが、彼は無下にあしらう。
彼女は優しく触れてもらうのは好きだけど、それが続くともどかしくなる。
男を知った彼女は少しじらされただけで、とろとろと愛液を垂らして求めてしまう。
「やだやだっ。はやく…い、入れてぇ。ラグナス欲しいよぉ………」
「じゃあ、言う?」
「うんっ、言うから。お願い、おねがい…………」
あっけなく屈服するドラコ。彼女は性的快感にはとことん弱くなってしまっていた。
「じゃあ、言って」
「ね、ラグナスゥ、もう…欲しいのお………」
はしたないおねだりをするドラコに、ラグナスはくすりと笑ってしまう。
「もう、仕方ないなあ……じゃあ一回ちゃんといかせてあげるね」
ドラコのおねだりに応えてラグナスは一気に彼女の中に突き立てる。
じらされて彼のものを待ち構えていた彼女のそこはなんなく受け入れた。
「うああぁッ!ああぁん!」
抱きかかえた彼女をゆさぶって彼自身もずんずんと腰を打ちつける。
開発され尽くした膣内がかき回され、一気に快感を彼女の脳髄に伝えた。
「んあぁっ、…んーッ!ラグナス、ああうぅ、ラグナスッ、ラグ……」
鍛え上げられたラグナスはちょっとやそっとでは射精せずに長く楽しむことができるが、
それに反してドラコは彼に抱かれるとたやすく何度も何度もいかされるカラダになっていた。
さっそく今夜一回目の絶頂が近付く。
「やあああ!だめッ…いくっ!ラグナス!もういっちゃうよぉ!!」
ドラコはいくときにはラグナスの名と”いく”という言葉を声に出すように教え込まれている。
「ラグナスゥゥッ!うぁああぁあぁぁーっ!!」
よだれをこぼして彼女が叫ぶ。抱き締められたまま全身の筋と、膣壁が大きく痙攣した。
「ふやあぁ………はああ」
ラグナスがようやく抱擁を解くと、ドラコは彼にもたれたまま手足をくてんと解放させた。
「………………ほら、ドラコ。いかせてあげたんだから」
いかされて間もないのにラグナスに約束を促される。
「ふぁ…………あ、えっと………………」
性的な羞恥とはまた違う恥じらいが頬を熱くする。小さな告白の時間だ。
「……………あ、あの、その、ね………た、体重が…す、少し!増えちゃったの………」
「………………ああ、ふ~ん。あ、でもドラコは全然重くもないし太くもないよ?」
ラグナスはなんだそんなことかといった調子でフォローしてくれるが………。
「ち、違うの……。あたし、それで、太ったなって思って、カラダ、測ってみたら、
ウエストは、逆に………前より2センチも…、細くなってたんだよ?
………む、む…胸だけが、お、大きく…なっちゃった、みたいで………」
「え………………………………。あ、言われてみれば…………」
ラグナスが後ろから彼女の乳房を鷲掴みにしてふにふにと豊かさを確かめる。
「んあぁッ!…………だ、だから触っちゃだめだってばぁ………」
「………あなたのせいだよ。あなたがたくさん触ってくるから…………。
女の子らしいカラダになるのは嬉しい……けど、た、体重が増えるのはやっぱり嫌だし、
触られるたびに大きくなるなら……このまま大きくなりすぎたら…こわいし」
「そっか………………ごめんね」
「複雑なんだよ……。…し、下着も、ひとつサイズ増えたから、ほとんどきつくなって、
もう着れなくなったのもあるし、新しいの買い揃えなくちゃいけないかなあ、って………。
体重が増えたのなら、…ダイエットする必要もあるのかなあ、って……」
なるほど、アルバイトを検討してるのも、食事に躊躇したのも、乳房への愛撫を拒んだのも、
ラグナスは今日の彼女のぼんやりした態度にようやく全て納得がいった気がした。
「そっかあぁ。ドラコはほんとに悩んでたんだね。ごめんね」
ラグナスは彼女の腰に優しく手を回して、頬擦りして謝る。
「じゃあドラコはどうしたい?俺もきみの思うようにする。
胸触られるの嫌ならもう触らないし、その、回数が減っても、我慢できるよ。
アルバイトしたいなら応援するし、いや、新しいのなら全部俺が買ってあげる。
ダイエットも応援するよ……。ドラコはどうしたい?」
「あ………えっと………ラグナス…」
「……でもね、俺はどんなドラコでも大好き。まだ16歳なんだから、これからだよ。
きっとどんどんきれいになっていくんだよ。それに、もしきみが太っちゃっても、
俺、絶対きみのこと愛してるって誓えるよ。………それだけは覚えといてね」
そう言うと彼は、彼女の中に挿入されたままで、でもまだ射精してないペニスを引き抜く。
「んんぅッ!………………ま、待って、ラグナス!ん!」
にゅるんと引き抜かれる感触に、ドラコは慌てて、それを征して自分から再び挿入させた。
「ラ、ラグナス、まだ…いって、ない、よ…?」
「あ、ああ。それは、まあ、平気だから」
「………………あの、ラ、ラグナス、あのね………………。
ラグナス、ほんとに、あたしがどんなになっても、あ、愛してくれる………?」
「…………うん」
「デブになっても、歳とって、若くなくなっても………?」
「うん」
ドラコはラグナスの手をとってぎゅっと握る。
「だ、だ、だったら、ね。……あたし、もう、気にするのやめる。
自分のことで、不満になったら、自分でがんばって解決させるよ…………。
だからね、ラグナスは、やっぱりあたしに遠慮しなくても、いいよ。
だから、だから……、ラ、ラグナスも、もっと気持ちよくなって欲しい……。
胸も…たくさん、さわって。あたしも、もっと………して……欲しい………」
そして彼女は真っ赤っかになった顔を彼に見せないように、自分から四つんばいになった。
「…………ほんとにいいの?ドラコ?」
ラグナスも彼女を貫いたままで、覆い被さって乳房に触れる。
「うん……。あ、あたしも、あなたのこと…あ、愛してるもん」
「ドラコ、ありがとう…。じゃあ………続けていい?」
ラグナスが、姿勢を直して動こうとした……ら、その直前。
「あ、あ、ラグナスもうちょっと待って、さっきの話だけど」
ドラコがいきなり出鼻をくじく。がくっと拍子抜けするラグナス。
「な、なに」
「買ってくれるっていったけど、それはいらない。いるものは自分で買うよ」
「なんで?」
「………だって、理由もないのにあなたから物とか貰うの、なんか嫌だもん」
「ん~。いや、やっぱり買ってあげたいな。だってきみの下着って地味なの多いし」
「……え!?な、なにそれー!もう、いらないったらいらない!」
「えー…。あ、じゃあプレゼント!ドラコのおっぱいが大きくなった記念日」
「や、やだ!何言ってんの!調子のいいこと言わな………ああッ!」
ラグナスは彼女の言葉を却下して、腰の運動を開始させた。
「あれ、知らなかったの?俺、調子いいんだよ」
「んあぁッ!ラ、ラグナスの…ばかあッ!」
それがその夜、ドラコがまともな精神状態で言った最後の言葉だった。
その後彼女はいつもの週末と同じように気絶するまでラグナスに犯され続けたという。
おわり
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