翌朝。アルルは遅めに目を覚ました。気分はずいぶんいい。  
見回すとシェゾとカーバンクルは…………部屋にいない。  
「シェゾー、カーくーん」  
「…………ぐー!」  
「あー!?」  
キッチンのほうから声が返ってきた。アルルも起き上がってキッチンに向かう。  
一応、髪の毛とか、ちゃんと整えてから。  
 
「おはよー」  
「ぐう」  
「おう、快調そうだな」  
「うん。ふたりとも早いね」  
「おまえが遅いんだ。……と。もちろん遅くて全く構わないがな」  
「ぐぐー」  
「朝ごはん?」  
「ああ。こいつがうるさいんだ。俺はこいつのためにここにいる訳じゃないんだがな」  
「あはは」  
 
ちょっとして朝食をとった。アルルの食欲もかなり回復した。  
食べながらシェゾが話す。  
「これを食ったら、俺は帰る」  
「えっ」  
「かなり回復した。自分の面倒ももう見れるだろう」  
朝食も楽しかったのに、なんだか風船がしぼむような感じがした。  
「あ、そっか………………」  
看病というお泊まり会のような蜜月のような一日はもう終わる。  
「こう言ったら変だが、とても有意義だった。お前を少しでも知ることが、できて」  
「あ………………うん。ボ、ボクも………ありがと」  
 
「あの、シェゾ、これから今日予定があるの?」  
「ああ、仕事だ。数日かかるし、日程は外せなくて、な」  
「そっか…」  
「まだ完治はしてないんだから病人の自覚ある行動をとれよ」  
「うん。ありがと。それにお仕事あるのに、ボクのこと看てくれて、ごめんね」  
「構わないさ。俺とお前の仲じゃないか」  
「あはは…。もう、合言葉だね」  
 
シェゾが帰ろうとする。  
「じゃあな」  
「待って」  
アルルは背伸びして彼の肩をつかんで、彼にキスした。  
昨日のファーストキスから何度も交わしたけど、今のは自分からする初めてのキス。  
カーバンクルが見てるけど、気にせずした。  
「ありがとう。じゃあ、また、ね」  
「ああ、また」  
 
彼が去って、急に家が寂しくなったように感じたが、アルルはひとつ強く決心した。  
この一日はシェゾと初めて心が通じ合ったと感じられた日だった。  
それはたぶん恋をした一日だからで、それを一日だけで終わらせたくない。  
だからちゃんと、あいつに恋の告白をしてちゃんと恋人同士になろう。  
もし上手くいかなかったとしても、ちょっとやそっとじゃ諦めない。  
あいつみたいにしつこくなってやろう。絶対あいつを自分のものにしてやろう。  
それで、えっちももっとしてもらおう。彼に処女をもらって欲しい。  
すでにちょっとだけ手をつけられちゃったんだし、最後まで責任を取ってもらおう。  
「カーくん、ボク、決めたよ」  
「…ぐーぐぐー」  
カーバンクルは、風邪を治してからね。と言ったようだ。  
 
 
「あ〜、だるいな〜。ねえ、街まで行ってみようか」  
「ぐーぐ?」  
「いや、別に用はないけど」  
「ぐぐーぐ!」  
シェゾが帰ってからこの日は安静に、というかゴロゴロすることにしたけどやっぱり退屈。  
「ちぇ…。そうだ。お洗濯しなきゃ。でも今は水仕事しないほうがいいかなあ」  
退屈しのぎに服をぴらぴらと整理する。これくらいなら問題なさそうだし。  
その中にパジャマがあった。昨日脱いだ自分のパジャマに、シェゾが贈ってくれた2着は、  
ピンクのほうは新品のままあって、ブルーのほうは今、着ている。  
(はあ、シェゾ…)  
普通男がパジャマと下着を贈って女がそれを着れば、そのふたりは親密な関係だろう。  
でも彼はそんな微妙な趣きなんて理解してないのかも。  
(…ボクの気持ち、気付いてくれてるのかなあ)  
カラン!カラン!  
そんな時。ドアベルがいきなり景気よく鳴った。  
 
びく!  
誰か来客だ。ひょっとしてシェゾ?  
「お〜い、アルル〜」  
と思ったら、玄関口からドラコ達の声がした。ひそかに拍子抜けしつつ出る。  
「はあい」  
ドラコと、ルルー、ウィッチ、ラグナス、ミノタウロスといったいつもの仲間たち。  
「どしたの?」  
「どしたのじゃないよ。大丈夫?ゾア風邪かかったんだって?」  
「ああ、それならだいぶ良くなったよ…ってなんで知ってんの?」  
「シェゾから聞いたのよ。あたしらが集まってるとこに来て、様子見てやってくれって」  
ドラコはシェゾから聞いたことをなんだか愉快そうに話した。  
「え、シェゾが…」  
彼は帰ってからも自分のことを気に掛けてくれていたみたいだ。  
 
「言っとくけどお見舞いはないわよ。あたくしは退屈紛れに来ただけだから」  
「あはは。それでもいいよ。ボクも退屈だったから」  
「意外と平気そうでよかったね。なんかして欲しいことあったら、やったげてもいいよ」  
「あ…………だったら、お洗濯、お願いしてもいいかな」  
「んー。いいよ」  
「ありがと、ドラコ。今度なんか埋め合わせするからね」  
そんな感じで、みんなでちょっと雑談した。  
 
「あの、アルルさん。どうしてシェゾさんがあなたが病気だってことを知ってましたの?」  
途中ウィッチが何気なく質問してきた。でもたぶん重要な質問だ。だから正直に答える。  
「………………うん。ボクね、シェゾに昨日ずっと看病してもらってたんだ……」  
…。一瞬、全員が軽く驚いた。ドラコはそうでもなかったけど。  
「ちょっと。じゃあもしかして二人っきりで一緒にいたってわけ?」  
「…それは、そういうことかい?いいの?」  
ルルーやラグナスが心配する。  
「うん、いいの。あっ、そういうことが(最後の一線までは)あったわけじゃないけど」  
アルルの周囲では、彼女とシェゾは追いかけっこの微妙な関係という暗黙の了解があった。  
それを今破ることになる。どきどきしたが、彼女は一歩ずつ前進していくと決意していた。  
「ボク、あいつのこと、好きだから」  
 
最も唖然としたのはルルーだ。  
「は!?あんなヘンタイが!?そもそもヘンタイって言い始めたのもアンタでしょ!」  
「それは、ほんとだけど、うそ。そうやって言うのが好きだから言ってる気がする。  
 でもボクはきっと、あいつのことがずっと前から好きだったって、気付いたんだ」  
「………………」  
「みんながあいつのことどう思ってるかはなんとなく知ってる。  
 ボクがこんなこと言ったらイヤな気持ちになる人だっているかもしれない。  
 でもボクは自分の心に嘘はつけないし、みんなのこと、ほんとに友だちだと思ってる。  
 だからちゃんと正直に言わなきゃいけないと思ったの。……ボクは、シェゾが好き」  
「ア、アルルさん……」  
 
ラグナスが理解をしめしてくれた。  
「……俺達も薄々知ってたような気がするけど………はっきり心に決めたみたいだね」  
「うん」  
「うん、分かったよ。………ただ、相手がシェゾだけにちょっと心配だから。  
 なにかあったらすぐ言ってよ。もしあいつが君を傷つけたりしたら許さないから」  
「ありがと」  
アルルはじっとラグナスと見つめ合う。大切な数少ない男の子の親友だ。  
「大事な告白をしてくれたのはいいけど!」  
ドラコが急に場をとりしきる。  
「アルルは今病人って事忘れちゃだめよ。用のない奴は長居したら迷惑になるんじゃない?」  
「そ、そうだね。このことはまた落ち着いたときに。今は迷惑かけちゃ悪いし」  
「わたくしも失礼いたしますわ」  
「ミノ、あんたも先に帰りなさい。あたくしはもう少し話をしていきますから」  
「はっ」  
ラグナスとウィッチとミノタウロスが先に帰った。ドラコはいいフォローをしてくれたかも。  
 
ルルーとドラコと、3人で話す。  
「驚いたわね………」  
「あ、うん。…………その、いきなりだった、かな」  
「……ま、あんたがスットンキョーなのはいつものことだから」  
「いいじゃん。あんたはシェゾが嫌いかもしれないけど、あたしは賛成するよ」  
「あたくしはなにも反対してるんじゃなくてよ。ええ、反対はしてないわ…」  
ルルーは落ち着いた調子で話す。時に頼れて時に厄介なアルルのお姉さん。  
「サタンさま。あんた、サタンさまのことは、諦めるわけね」  
ニュアンスが的外れだが、ルルーの性格はよく知ってるので、要点だけ答える。  
「うん。ボクはサタンとは、おつきあいも結婚も、しない」  
「そう………」  
ルルーはサタンの話が絡んでもいつものように平静を乱したりしない。  
シェゾとの昨日でなにかが変わったアルルにつられて、ルルーも少し様子が変化したようだ。  
 
「じゃあ、あんたはどうなろうとも自分の思った通りにやりなさいな。  
 あたくしには障害がなくなって都合がいい……いえ、そうじゃないわ。  
 そういう思いがあるのは事実だけど。ただ、あたくしだって自分の道を進むだけ。  
 あんたも自分の道を進めばいいわ。大層な決意があるならどうにかなるんじゃなくて。  
 あんたのほんとの友だちとやらのことも含めてね」  
これってつまり、ルルーはアルルに、どんな結果になろうと常に自分にまっすぐでいれば、  
きっとウィッチ達ともずっと友だちでいられる…と励ましてくれてるのだろうか?  
詳しくは語らずに、ルルーも帰ってしまった。  
 
「………ルルーってさ、なんかすごい女だよね」  
「うん。ボク、ルルーのそういうとこ、好き。みんな好きだ」  
最後にドラコが残った。さっき洗濯とか面倒を見てくれるって約束したから。  
「よかったね、アルル。幸せになってね」  
「でも、よく考えたらうまくいくって保証があるわけでもないんだよね」  
「んなことないよ。前言ったじゃん。きっとシェゾもあんたが好きだって」  
「そうかな」  
「そうだよ。ね!」  
「ありがとう。……………ドラコってすごく優しいよね。それにとってもかわいいし。  
 ボクもキミみたいにかわいくなれたら、自信が持てるのにな」  
「んなッ。ア、アルルだって充分かわいいよ。あたしなんてガサツだしひねくれてるし」  
「ううん。ドラコはいつも輝いてるよ。ボクもそんな風な女の子になりたいな」  
「えっと………………」  
「………………なんか、ボクたち普段と逆のこと言ってるね」  
「うん………………。普段は”美少女コンテスト!”とか言って争ってるのにね」  
「あははっ」  
 
それから2、3日して、アルルは風邪が完全に治った。  
 
風邪が完治しても、アルルはずっとシェゾのことを想いっぱなしだ。  
彼は数日仕事だって言ってたから、ちょうど完治した今くらいにまた会えると期待した。  
………………が、なかなか会えない。  
 
仕事って意外と長いのかもしれないし、それにアルルは彼の家を知らない。  
だからアルルは彼を探して待つことにした。  
前に彼とケンカして、そして風邪で倒れたときに助けてくれた街角で出会えるのを期待して。  
学校があるときもサボって探そうかと思ったけど、シェゾのことを考えたら、逆に、  
自分がすべきカリキュラムは果たそうという気になったので、ちゃんと行くだけは行った。  
夜は家にいれば彼が訪ねてきてくれるかもしれないと思ったけど、なかなか来なかった。  
そんな日がほんの数日続いただけで、アルルは切なくてたまらなくなった。  
寝る前は彼を想ってオナニーにふけるようになってしまっていた。  
今までそんなことしたこともなかったのに。  
 
「………ん………ん」  
アルルのオナニーはほんのささやかなものだ。  
ふとんの中でパジャマズボンとパンツをずらして、性器を指でそっと擦るだけ。  
パジャマはもちろん彼がくれたもの。着てると少しでも彼をそばに感じられる。  
モゾモゾと音と声を押し殺して、アルルは目覚めたばかりの自分の性欲を慰める。  
「ふ……ん」  
自分の性器を初めてじっくり探ってみて、一番気持ちがいいのはクリトリスだった。  
そこをこわごわと擦る。弱い刺激をじっくりと与え続けた。  
「………………」  
(シェゾォ………………)  
自分の指が彼の指だと想像する。陶酔するとオナニーに集中できるようだから。  
そして、彼のペニスも想像してみる。  
大人の男のペニスがどんなものか正確には知らなけど、想像するだけでも濡れた。  
今度は自分の指を彼のペニスだと思って膣口のあたりを触れてみる。  
ちゅく…  
「ん……っ」  
 
お、男の人のあれってほんとはおっきいんだろうなあ………。  
それで、シェゾは、おっきいあれを、ボクのここに押し当てて…………。  
思いっきり入れられちゃって、……ボクはシェゾに処女を奪われちゃうの。  
 
指先を膣に埋めてみる。  
自分の細い指を入れただけで、ぴきぴきと張った感覚が走った。  
「ひぅん………」  
 
これだけでもちょっと痛いんだから、あいつのあれを入れられちゃったときは、  
きっと、もっと痛いんだろうなあ………。泣いちゃうくらい痛いんだ。  
………………でもそれでもいい。  
あいつにしてもらえるなら、体がバラバラになっちゃうくらい痛いことされてもいい。  
シェゾ………。ボクに痛いことして………………。  
 
アルルは自分がシェゾに拘束されて乱暴に犯されるシーンを思い浮かべてみた。  
そんな想像でもゾクゾクする。もう彼になら、なにをされてもいいと思った。  
そして親指と膣の中の中指で、クリトリスと膣壁をぐっとおさえる。  
「ふっ、ふうぅッ………………!」  
軽くいった。あの夜シェゾが与えてくれた感覚は、自分でも掴めるようになった。  
「はぁー………」  
 
でも全然だめ。ボクの指なんかじゃだめ。シェゾじゃなきゃだめだ。  
シェゾ………………。早く会いたいな。明日はキミに会えるかなあ。  
 
アルルは今日も一人ぽつんと、あの街角でシェゾを待った。  
寒いけど、コート、マフラー、手袋してるからけっこう平気。  
あとこないだの看病とパジャマのお礼にと、黒い皮手袋が入った紙袋を持って。  
(シェゾ、受け取ってくれるかな…。もっともその前に会えなくちゃいけないんだけど)  
 
………………日が暮れてくる。アルルは今日もだめだったかあと諦めかけた。  
そんな時、遠目に、一人の男を発見する。買い物でもしていたらしい。  
(あ!シェゾだ!)  
会うのはほんの1週間ぶりくらいなのに、すごく嬉しい。  
向こうもこっちに気付いた。とてとてと駆け寄る。  
「シェゾ!」  
 
「アルル……」  
「シェゾ、会いたかっ…た、よ…」  
アルルはシェゾを一目見てすぐ違和感に気付いた。  
(ヘンタイじゃないモードのシェゾだ……)  
あの日は、ヘンタイな彼もそうじゃない彼も自分にとって同じシェゾなんだって感じたのに、  
今日の彼はまた分裂して元の二重人格に戻ってしまってるような印象を受けた。  
かっこいいけど、いくらかまって欲しくても、冷たいほうの彼。  
ちょっと前までは、ヘンタイなシェゾは嫌いでこのシェゾは好きだったんだけど…。  
「あ、あの………シェゾ………」  
「………………なにをしている」  
「え………」  
いきなり無下にあしらわれて、一瞬絶句する。  
「こんな場所に突っ立ってて、風邪がぶり返しでもたらどうする」  
「あ………………そ、それなら平気だよ。ほら、完全防備っ」  
コートをちょっと広げて見せて、マフラーとかもぱたぱたと振ってアピール。  
「あははっ」  
「ふう…」  
(よ、よかった……。シェゾはちゃんとボクのこと見てくれてるよね…?)  
 
「あの、あのね。これ、あの時のお礼なんだけど………」  
紙袋を両手で差し出す。  
「………………お礼?」  
「うん。あの、手袋なんだけど、君がくれたのとはつり合わないかもしれないけど、  
 ボクも、キミになにか贈りたくって……。あの時はほんとにありがとう」  
「………お前、俺に礼を?」  
シェゾはなかなか受け取ろうとしてくれない。無表情で紙袋を見つめている。  
「…………………………あの、め、迷惑だった?」  
「いや………。すまん」  
シェゾはようやく受け取ってくれた。それでアルルはひとまずほっとするが、  
彼は受け取った紙袋を不思議そうにというか、物凄く意外な物のように見ている。  
見当もつかないといった様子だが、アルルもどうして彼がそんな顔をするのか分からない。  
「………………」  
沈黙。あの日、シェゾと初めて心も、体も少し…理解し合えたと思ったのに、  
あれはあの日限りの錯覚に過ぎなかったのだろうか。彼の態度が怖い。  
でもアルルは好きだって伝えると誓った。なんとか会話を繋げて空気を作ろうとする。  
 
「シェ、シェゾ…なかなか会えなかったけど、ずっとお仕事だったの?なにしてたの?」  
「あ、…ああ。ダルに、遺跡調査で、な」  
一瞬また”お前には関係ないことだ”と返されるか不安だったが、一応受け答えてくれた。  
「ダル?ダル湖の?」  
「あそこにはダル湖より遥かに大きい地底湖があるんだ。地下遺跡の存在も確認された。  
 だが玄室の所在が不明でな。封印が下弦の月の時期に関係あるかと踏んだんだが…  
 ……ハズレだった。調査を続行する必要、が………………………………」  
シェゾは話の途中で黙ってしまった。せっかく話ができかけたのに、また沈黙。  
「………………なあ、アルル」  
するとシェゾが絞り出すように呟いた。贈った紙袋を示して。  
「お前、これ、どういうつもりなんだ?」  
「え………」  
彼はなにか非難しているのだろうか。アルルは心臓が握り潰されそうだった。  
 
「俺は、お前がなにを考えているか分からない」  
「な、なにをって」  
アルルは喉奥がひきつってうまく声を出せない。  
「あの夜あんなことをされて許せないと思っていないのか?」  
え………………?  
 
「あんなこと…」  
「………看病にかこつけてさんざん体に触れられたことだ………」  
シェゾがなんだか辛そうに明言する。  
彼が何を言っているかやっと分かった。あのことに罪悪感を感じてるらしい。  
「なんで…?ボク、あ…あのことはイヤだなんて、お、思ってないよ?」  
「なぜだ」  
「な、なぜって…それは…」  
ボクはキミのことが好きだから。大好きだから。  
「………………俺はあの夜からずっと自己嫌悪し続けているよ。  
 な、情けないことだが、もうお前に会わせる顔がないとすら思っていた。  
 さっき顔を見た瞬間、激しく罵倒されることを覚悟したんだ。それがお礼だなんて」  
シェゾが少しずつ、自分の感情を露呈してきた。  
「ボクそんなこと思ってないよ!どうしてそんな風に言うの…?」  
「それはこっちのセリフだ…。お前は今まで少し迫っただけでも激しく拒絶したのに。  
 なぜあの時のことだけは受け入れているんだ」  
「そ、それは…」  
 
そうだった。自分は前までさんざん彼のことをヘンタイと罵倒して拒絶し続けていたんだ。  
今は焦がれるほど彼を想っている自分に、前までの自分の行動がもう理解できなかった。  
よく彼に”自分をちゃんと見てくれない”とか不満に思っていたけど、  
自分のほうこそ彼をちゃんと見ようとしていなかったのかもしれない。  
で、でもそれはシェゾが二重人格で、ボクへの態度が両極端だから、いらいらしたから…。  
 
「………すまない。俺はお前に問いただせるような立場ではないのにな」  
アルルが何も言えずに詰まっていると、シェゾが気遣ってくれた。  
彼は、自分を気遣ってくれている。  
「……俺は卑怯者だ。あの時お前が拒絶しなかったのは、ただ病気で判断力が低下して  
 抵抗する気力も体力もなかったからに過ぎない。俺はそれをいいことに…」  
「ち、ちがう……」  
 
「お前も気付いているかもしれないが……。俺は自分の精神状態をうまく抑制できない」  
「……え?」  
シェゾも自身の二重人格性を自覚しているらしい。アルルはどきっとして話を聞く。  
「お、俺は、お前と会うだけで、心が異常に浮いてしまうことがある…………。  
 恥知らずな言動を取ってはお前に拒絶されて、後悔で落ち込んでばかりいたよ。  
 だが、お前はいつも笑顔で…、その笑顔を見るたびに…同じことを繰り返していた」  
「シェゾ…」  
「あの日は、お前は弱っていただけなのを、俺は想いが通じたと錯覚してしまって、  
 また自分を抑制できなくなった…。最後まで犯してしまわずにいるのが精一杯だった…」  
シェゾがそんな風に苦しんでいただなんて…。アルルは胸が熱くなる。  
「俺はお前が欲しい」  
いつものセリフ。でも今まで聞いたどれよりもアルルの心に響いた。  
「お前の力も体も心も全て俺のものにしたいと思っていた。だが違っていた……。  
 あの時は絶好のチャンスだったのにな。弱ったお前を騙して犯して虜にしてしまえたんだ。  
 でも…できなかった。そもそも抑制しようとしたことが本来の願望と矛盾している」  
シェゾはとても痛々しくて辛そうに自分の気持ちを語り続ける。  
「違っていたんだ。俺が一番欲しかったのは…なんというべきかお前の、笑顔だったんだ。  
 笑顔が消えてしまうくらいなら、お前の全てを手に入れられなくてもいいのかもしれん。  
 俺に向けての笑顔じゃなくてもいい。ずっと…笑っていて欲しい。それに気付いたんだ。  
 俺はそれを遠くから見ているだけでも、充分に、す、救われていたんだ…………。  
 な、なのに、お前…お礼だなんて………………」  
 
アルルはなんとか返す言葉を探す。うまく言えないかもしれないけど今こそ言わなきゃ!  
「ご、ごめんね…シェゾ。ごめんね」  
「なにを…謝る。全て俺の独善だ…」  
「ちがう…。ボク、今までキミにひどいこと言ったりひどいことしてたな。  
 キミをどんなに傷つけたか考えもしなかった。ボク、バカだ。ごめんね」  
「お、お前が責任を感じる必要はない!俺の自業自得だ」  
「ちがうよ…。ボクがバカだから、自分の気持ちも自分で分からなかったから、  
 あんなことしてたんだ。どんなシェゾでもかっこよくて優しいシェゾなのに、  
 シェゾのことずっと前から大好きなのに、それにずっと気付かなかったから…!」  
「アルル…?」  
シェゾが呆然とする。  
 
やっと言えた。  
頭の中で想像してた告白とはずいぶん形が違ったけど、一番言うべき時に言えた気がする。  
「ボク、キミのことが好きだ。大好き」  
自分では気付かないけど自然と微笑んだ。シェゾが好きだというアルルの笑顔。  
「ア、アルル」  
辛そうにしていたシェゾの体のこわばりがゆっくり解けていった。  
「だから、シェゾ、かんちがいしてるよ…。ボク、イヤじゃない。  
 あの夜のこともイヤじゃなかったよ。だって、大好きな人だもん。  
 だから、ありがとうなの。シェゾ…ありがと」  
完全に日が暮れて、街角からは人陰がほとんど消え、街灯も点り始めた。  
「他にもありがとうはあるよ。ボクがキミのこと大好きだって気付いたのは、  
 キミが優しく看病してくれて、優しいとこたくさん見せてくれたからだよ。  
 今ボク、キミのこと大好きでいると幸せな気持ちになるの。  
 これをくれたのもキミだよ。シェゾ、ありがと。大好き。大好き」  
もう大好きが溢れそうだ。  
「これからもボクが笑顔でいられるとしたら、それはもうキミがいてくれなくちゃだめだよ。  
 力ってのはあげないけど、ボクの心と体はあげる。もらってくれなきゃ笑ってあげない」  
 
アルルはシェゾにそっと寄り添って、彼の頬を両手で挟んでキスをした。  
彼の頬も唇もとっても冷たくて、アルルは自分の体温を彼に分けてあげた。  
「…………ね。ボクのファーストキス奪ったんだから、最後まで責任取って、ね…」  
「アルル…!」  
シェゾに抱き締められた。彼の胸板に顔を押し付けられる。  
「………お前、天使みたいな女だな」  
「そ、そんなことないよう」  
「……いや、ずっと想ってた。初めて会ったときから、ずっと…………」  
「………………」  
「………………」  
「ずっと…?」  
「………ずっと…俺だって、そんなお前が……好きだったんだ………」  
「過去形?」  
「いや……今も、ずっと」  
「うん、うん…」  
アルルは嬉しくてシェゾの胸板に頬擦りした。告白大成功。  
 
「ボクも、好きだよ」  
「ああ」  
「あの日のことは、錯覚なんかじゃないよ」  
「ああ」  
「これからもずっとそばにいてね」  
「ああ」  
「シェゾ、ああばっかり。なんか他のことも言って」  
 
「………アルル、愛してる」  
 
告白して見事両想いになれたのはいいとして、具体的にこれからどうしよう?  
よく考えたら街中で、他人の視線がないわけでもないのに、二人で盛り上がっちゃって、  
抱き合って、キスまでしてしまった。しかもアルルのほうから。  
「ここ、これから、どしよっか…?」  
アルルは、照れまくりながら、全身使ってコソコソしながら、シェゾに尋ねる。  
「帰ろう………」  
いったん抱擁を解いたのに、シェゾがまたアルルを背後からそっと抱き寄せた。  
彼はまだ気持ちが盛り上がってる状態のままみたいだ。  
「わあっ」  
「今夜は離したくない」  
自分の前でシェゾの両腕が交差されて、アルルは照れくさくてちょっと抵抗した。  
でも離してくれないので、あきらめて彼女もそれに付き合って彼の腕を抱きかかえた。  
「わ、わかったよ…いっしょに、いよう」  
彼の抱擁が嬉しくって、恥ずかしくって、アルルはぽっぽっと湯気を出した。  
 
シェゾのたっての希望でアルルの家に帰ることにした。  
ただ、その前にシェゾは薬屋に寄って、避妊薬を買いアルルに飲ませた。  
彼女も納得して薬を飲んだ。でも頭の片隅に赤ちゃんできてもいいのになって意識は少しあった。  
 
そして帰宅。  
「ただいま、カーくん」  
「おう」  
「ぐっぐっぐー!」  
「ありがとっ」  
二人と一匹でまたいっしょに食事をとって、その後カーバンクルと遊んであげた。  
シェゾがほんの余興にと、盲目の令嬢とその家に仕える職人の恋のお伽話を聞かせてくれた。  
思いやりと幸せに満ちた話で、アルルとカーバンクルはとても喜んだ。  
そのうちにカーバンクルを寝かせた。我が子を寝かし付けたあと夜を楽しむ夫婦みたいに。  
二人にとっては、初夜だけど。  
 
やっと二人きり。ベッドに並んで腰を掛けた。ちょっと無言になる。  
こんなにはっきり”これからセックスしよう”って意思表示してしまって、本当に照れる。  
首をすくめて隣のシェゾの顔を見上げた。  
「…あははっ。なんか照れちゃうね」  
「………………」  
シェゾは黙って、緩んだ顔で、アルルの手を取って、ぎゅっと握った。  
「ひゃ」  
「……ずっとこうしたいと思っていた。まさか本当にこんな日が来るなんて……」  
「………………うん」  
シェゾは本当に今この状況が、幸せでたまらないって表情をしている。  
それにお前を抱きたいって気持ちが握った手から伝わってくるような気もした。  
彼の幸せそうな表情を見るのはこの上なく嬉しい。  
それに彼に抱きたいと思わせてるのも女としてなんか誇らしい。照れるけど。  
本当に照れて照れて死にそうだけど、アルルも今から彼に抱いてもらう覚悟ができた気がする。  
「うん。あの、その………うん、いいよ…………」  
彼の手をぎゅうっと両手で握り返して、顔を真っ赤っかにさせて、なんとか言った。  
「あ、でも…………あのさ、シェゾさ、ボクのこと、はしたないって思う?」  
「いや……全く」  
「でも、だって、こんなことしちゃうなんてさ……。ほんとに特別だからねっ。  
 キミのこと世界で一番大好きだから、しちゃうんだから…。はしたないとか思わないでねっ」  
シェゾはもう片方の手でアルルを胸に寄せた。  
「だから思わないって。照れることはない…。それにむしろ、はしたなくなっても構わないぜ」  
「でもボク恥ずかしくって………」  
「ふふ。今にそんなこと気にならなくさせてやるよ………」  
そう言ってシェゾは唇を寄せてくる。  
(あ………シェゾったら、なんか)  
彼の言葉になんだか自惚れっぽい雰囲気が混じってきたような印象がした。  
きっとヘンタイモード…もとい、彼の言う”心が浮く”という状態になってきてるんだ。  
アルルはそんなことを思いながら、彼のキスを受け入れた。  
 
キスするのは、すごく好き。落ち着くというか。  
確かに、細々と考えていることが少しずつ気にならなくなっていくみたいで。  
「んふ、んっ」  
シェゾの舌が口の中に入ってきて、いろんなところを舐めた。  
ちゅ……ちゅる、ちゅぷ、にちゃ………  
かなり長い間ディープキスを続けられて、アルルは必死に息継ぎをする。  
口の中で、シェゾの舌が届くところは全部残さず舐められたころにようやく唇が離れた。  
「ふはぁ…………」  
「ほら、アルル、今度はお前が伸ばしてくれ」  
「え………………そんなの、って、んっ」  
息苦しいのにまた唇を塞がれて、彼がこっちからのディープキスを催促してくる。  
アルルもしかたなく、おそるおそる彼の腔内に舌を侵入させた。  
そこで舌を絡ませ合ったり、彼の歯や歯茎を舌でつんつんとつついてみる。  
自分じゃない人の口の中ってなんだか不思議な感じがした。  
でも…キスされるのってとっても嬉しくて気持ちがいいから、もしかしたら、  
彼も自分のキスで気持ちよくなってくれてるのかもしれない。  
そう思ったら、こういうのも悪くないかもって思えてきた。  
そういえば彼のあれを舐めてあげたら喜んでもらえるって話も聞いたことあるし。  
(アルルだってフェラチオの知識くらいはある)  
今えっちなことをしてて、これからするんだなあって実感してきてちょっと夢中になった。  
 
でもすぐに舌が疲れてきた。舌を伸ばすのって意外と疲れる。  
さっきはシェゾはずうっと自分の腔内で動き続けてたのに。  
アルルは舌をひっこめて唇を離してしまった。  
 
「っは………もう終わりか。せっかくよかったのにな」  
シェゾが物足りなそうに、でも愉快そうに、そう漏らした。  
 
「あ………………」  
シェゾがアルルの肩に手を回して、ゆっくりベッドに押し倒した。  
「お前キス上手だぞ。本当によかった」  
「そうかな……」  
「ああ。お返しに俺ももっとしてやるよ」  
ジェゾは横たわるアルルの顔中にキスを繰り返す。  
「お前、いい匂いだな………」  
彼は髪とかの香りもいっしょに嗅いでるらしい。  
やっぱりキスされると嬉しい。でも、耳にキスされたときはゾクゾクしてしまった。  
「んやッ…」  
耳たぶを唇で挟まれたり、耳の穴に舌の先端を差し込まれたりした。  
ぴちゃぴちゃっていう音が直接響いてくるのもたまらない。  
「やあ、あ、あ…そんなのだめえ」  
そしたら彼はわざと大きな音が立つように耳を舐めてきた。  
「やああん、だめだ、ってばあ…」  
哀願の声をあげると、ようやく彼はやめてくれた。  
と思ったら、彼は反対側の耳も舐めるようで、アルルの頭の向きをちょっと強引に変えさえた。  
さっきは左で今度は右側の耳も責められた。  
またしばらく卑猥な音を聞かされる拷問を受けるアルル。これだけでふにゃふにゃになる。  
この前に舌と指で触れられる経験はしたけど、こんなのはしなかった。  
まだまだ知らない感覚がたくさんあるみたい。  
シェゾはアルルの中にあるいろんなスイッチをひとつずつONにしていく。  
 
全部のスイッチを入れられちゃったら、ボク、どうなっちゃうんだろう…。  
 
シェゾは隣に寝て体を服の上からさすさすと撫でた。  
「ふぅ……ん」  
アルルはもうシェゾにならどこを触られても気持ちいいみたいだ。さっそく吐息が漏れた。  
 
胸を揉まれる。服の上からの愛撫は素肌の時とも違う感触だった。  
けっこう強く揉まれて、ブラの裏地が擦れて、その内の乳首が固くなっていく。  
「ん、ふ…ふぅ」  
「アルル…胸を触れられるの好きか?」  
「あ、ん…そ、そん…な」  
両手で両胸をよく揉まれて、ほぐされる。乳首の場所を親指でぐっと押されたり。  
「答えろよ。好き?」  
「ん、ん…………す、好き…」  
「服の上からなのに、敏感だな…」  
シェゾはアルルが感じ始めてるのを分かってて尋ねてるみたいだ。  
「そんなこと、言わないでぇ」  
でもシェゾはどんどん攻めてくる。  
抵抗して起きようとするアルルをぽすんとまた倒して、髪に手を伸ばした。  
髪を撫でたり、髪の中に指を入れて頭皮をそっと掻いてみたりした。  
「ん……んぅ」  
それだけでも心地よい。こんなところでも感じるなんて思いもしなかった。  
そして彼は後ろで結んでいる髪の束を掴んで、引っ張ってきた。  
全く痛みは感じない程度の、くいくいっていう感じで。  
「あっ、あ………」  
「ここもいいみたいだな……」  
よく陳腐な茶番劇で男が女を痛めつけるときに髪を引っ張るシーンを見かけたが、  
自分がそんなので感じるなんて信じられなかった。  
もちろんシェゾはそんなのと違って痛くないようにとても優しく引っ張ってるんだけど、  
そんなシーンを連想したから、アルルは”優しくレイプされる”ってイメージが湧いた。  
「だ、だめだよう…シェゾォ…」  
アルルはそんな自分の想像にも快感を覚えた。  
 
「はあ…っ」  
シェゾは手や足も愛撫した。  
手の甲にキスされた時はなんだかお姫様と騎士みたいでいい気分がしたけど、  
太ももを執拗に撫でられた時はまるで痴漢されてるみたいな感じだった。  
アルルの知識では髪とか手足なんてセックスの快感とはあんまり関係ないと思ってたのに、  
シェゾに触れられるとそんなところの感覚も目覚めていくみたいだった。  
 
まだ服も脱いで(脱がされて)ないし、一番大事なところも全く触れられてないのに、  
アルルはもう全身の力が抜けていった。シェゾに甘えるみたいにもぞもぞ動く。  
「シェゾォ…なんか、変だよう…なんで、こんなので」  
「感じやすいんだな…」  
「そんなこと…ない、よう」  
「…いや。前よりもはるかに反応がいいぞ、お前」  
「え…」  
「今は体調がいいからか?それとも感度があがるようなことでもなにかしていたか?」  
「そ、そんな!」  
アルルは前の夜シェゾに一度いかされてから、オナニーの常習者になっていた。  
それも彼に見抜かれてしまったのかもしれない。  
「そうか………………ところで、お前、オナニーってしたことあるか?」  
「!」  
いきなり直接的な単語が出てとまどう。それにやっぱり彼は、見抜いてるみたい。  
「したこと、ある?」  
「やだ、そんなの、しらない!」  
「知らないってのは意味がか?オナニーってのは、こことかを、自分でいじることだ」  
シェゾがアルルの手を取って、ミニスカートの中につっこんだ。  
「やだっ。やだよう…。ゆるして…」  
「じゃあ、答えたら許してやるよ…。ほら、したことあるか?」  
「ゃ………」  
あまりに恥ずかしすぎるのに、アルルはこくんとうなづいてしまった。  
「そうか。じゃあさ……ちょっと、して見せろよ」  
 
「やだっ…」  
そんなのできない。シェゾの前でオナニーを披露するなんて。  
「だめか?」  
「だめっ。シェゾ、お願いだから…あんまりいじわる、言わないで」  
「そうか…。だめか。残念だな……」  
シェゾが心底残念そうに呟いた。  
「処女がどんなオナニーをするのか一度見てみたかったんだがな………………。  
 今夜、お前を抱いてしまう前に見せて欲しかったんだが、そうか……」  
「………………」  
「すまないな。お前がそんなにいやがるとは思わなかった。許してくれ」  
シェゾはアルルの頬にキスする。  
彼がそんなに自分のオナニーを見たがってて、そんな風に謝られてしまって、  
なんだか、拒絶してしまったことが申し訳なくなってしまう………………。  
「………………」  
「どうした?………機嫌直してくれよ。ごめんな、アルル」  
「あ、あの…………」  
「…ん?」  
「その、ほんとにっ、ちょっとだけなら……………」  
 
アルルは仰向けに横たわったままシェゾの視線をじっと受ける。  
「どんな風にするんだ?」  
「えっと………………」  
アルルは自分のスカートをそろそろと自分でめくった。  
彼の前では常識とかの感覚が麻痺してしまうみたいだ。  
普通ならとてもできないことも彼に命令されるとやってしまう。  
スカートの中の白いパンツが少しずつ見えた。もう少し濡れてるのが分かる。  
そしてパンツを少しずらして、隙間に右手を入れた。寝返りをうって横寝になる。  
「んぅ……」  
シェゾは黙ってアルルの痴態を観察している。  
 
「はずかしい………はずかしいよう………………」  
そう言いながらも指が動き出す。さっきからキスや愛撫で疼いていたから。  
シェゾの視線を意識すればするほど、どうしてか指が止まらなくなる。  
(やだ、ボク…ひとりでしてるとこ、シェゾに、見られてる………)  
正しくは見られてるんじゃなくて見せている。処女の、覚えたばかりのオナニーショー。  
「なかなかかわいいじゃないか……」  
シェゾが嬉しそうにアルルにキスする。  
「んっ………………ん、ふぅ」  
「続けろよ………」  
彼にちゅっちゅっとキスされながら、必死になって指を動かし続ける。  
「なあ、こういうことする時は、どんなことを考えながらやるんだ?」  
「え、それは…」  
シェゾは自分の右手もアルルのスカートの中につっこんだ。  
アルルの中指が触っていたクリトリスを二人でいっしょに撫で始める。  
「んあッ」  
やっぱり自分の指と彼の指じゃ、快感の度合いが違った。  
「ほら、教えろよ」  
「ん、あっ、それは……シェゾのこと、考えてるのっ。  
 シェゾにえっちなことされてること考えてるのお!」  
「…ほう。やっぱりお前は本当ははしたない女なんじゃないのか…」  
「ごめんなさい、ごめんなさぁい……」  
シェゾはアルルの指を掴んで、その指でクリトリスを強く擦った。  
「いいさ。許してやるよ。これからも俺を想ってどんどんオナニーしていいぜ」  
「あああ、あッ、だめ!」  
アルルはぎゅっと全身を固く丸めて、いった。  
シェゾはアルルがいく時の顔を眺めている。涙が一筋こぼれた。  
「簡単にいくようになったな。本当はずっとこんなことばかりやってたんだろう?」  
「……あ…………はい…………」  
 
「はあ…………はぁ…………」  
「今度は俺を気持ちよくさせてくれよ」  
シェゾはアルルを休ませる間、彼女より先に、自分の服をすべて脱いで裸になってゆく。  
アルルは潤んだ目でその様子をじっと見ていた。  
 
初めて見る男の裸。だから他の男と比べようがないけど、アルルはかっこいいと思った。  
シェゾは痩せてるのに筋肉がたくさんついてて、それと、よく見れば体毛だってなくもない。  
男の体毛ってちょっとでもあると気持ち悪い筈だったのに、彼の体には嫌悪感を全く覚えなかった。  
そして彼が下も脱いで、ペニスが露出した。やっぱり目がそこに釘付けになった。  
「………………あ」  
横たわるアルルに、膝立ちの姿勢で上からその強い存在を見せつけられる。  
「これを見るのも、初めてか?」  
「………………」  
かすかに頷く。  
「お前があんまりかわいいから、もうこんなになってるんだぜ」  
おっきい。というのがほんとに正直な感想。  
普段男って普通にズボンはいてるのに、勃起すると、こんなに大きくなるなんて。  
(すごい…。こんなのが、ボクの…中に……)  
欲しい。と思った。  
入ってきたら痛いだろうけど、………………入ってきて欲しい。  
なんだか欲情してくる。  
 
シェゾはアルルに覆い被さると、寝返りをうって位置を反転させた。  
「ああんっ」  
アルルがシェゾの上に乗っかる姿勢になった。  
「今度は、俺の体を好きなだけ触ってくれよ」  
「触って、って………」  
「ほら、キスして」  
「………………」  
ちゅ  
催促されて、アルルのほうからキスした。  
 
「はあ……シェゾ……シェゾ……」  
さっきされたお返しのように、シェゾの顔のあちこちにキスする。  
彼も気持ちよさそうな顔をしてて、太ももに当たっているペニスぴくぴくさせていた。  
耳にキスしながら囁いてみる。  
「シェゾも、こういうの……きもちいい?」  
「ああ、すごくいいぞ」  
「じゃあ……もっとして、あげるね」  
ずり下がって、彼の裸の首筋や胸板に頬擦りする。あったかくて、なんだかざらざらってする。  
彼の乳首にもキスしてみた。  
「ちゅ……ちゅ」  
男の人の乳首ってなんか変な感じ。  
「…………ふ……」  
シェゾが吐息を漏らす。自分ほどじゃないけど男の人でも乳首は感じるのかも。  
あと、刃とかの傷痕もいくつかあった。  
もうとっくの昔に治ってる古傷だけど、そこも、治してあげるみたいにぺろぺろ舐めた。  
「シェゾ……だいすき………」  
愛撫をしてるのは自分の側なのに、なんだか興奮してきてまた体が疼いてくる。  
無意識に、横たわっている彼の膝に股間をぐねぐねと押し付けた。  
「はああ…あ…………シェゾ」  
彼も自分の膝を動かしてあげたりもしたけど、アルルがそっちに夢中になりそうなので、  
ほどほどでたしなめる。  
「ほら、アルル……。もっと、俺にもして…くれよ」  
「あ…はぁ……うん」  
アルルは愛撫を再開する。、胸からへそを舌と指でなぞって、さらに下。  
さっきから固く昂らせて、アルルに触れてもらうのを待ってるペニスを目指した  
 
間近で見るそれは、やっぱり大きくて、先端とか、形はちょっと変な感じだった。  
「……あ、あの…さわっても、いい…?」  
「ああ。…好きなようにしていいぞ」  
そっと指で触れてみる。熱くて弾力があった。  
 
「うまくできなかったら……ごめんね」  
「お前にならどうされたって、構わないさ」  
シェゾの声はちょっと上擦ってた。興奮してるみたい。  
両手で形や感触をいろいろ確かめる。アルルのちっちゃい手よりもずっと長い。  
「……………すごい………シェゾ…」  
アルルの声もかすれる。  
 
たった今男の性器を初めて見たばかりなのに、シェゾに命令されたわけでもないのに、  
アルルはシェゾのペニスに顔を近付けて、そっと口をつけて、フェラチオを開始した。  
キスを繰り返すうちに、先端の部分からじわりと液体が湧いてくる。  
アルルはそれを見つけると、ほとんど抵抗感も見せずに、尿道口を舌の先端で舐めた。  
ん…ぴちゃ  
「…………ん……」  
変な味だけど、いやじゃない。舌でつついたらまた液体がしみ出てくる。  
(男の人も、濡れるんだ………………)  
舌が動く度に唾液がペニスに少しずつ塗られていって、滑りがよくなる。  
アルルも自分の口の周りを唾液でべとべとにしていった。  
だんだん舌があちこちを動くようになる。  
ぴ…ちゅ…ちゅく  
「んっ」  
溝とか筋があるところが、シェゾはよく感じてくれてるみたいだった。そこを丹念に舐める。  
それに先端を口に含んでみた。中で舌を動かす。どこかの情報で聞いた、歯を立てないようにして。  
「………ッ」  
シェゾが肘で上半身を起こして、アルルの頭にそっと触れた。  
「んっ………あ、ごめん。ボク………やっぱりへただった…?」  
「違う………………逆だ。すごく……いいよ………」  
シェゾが苦しそうな顔をしたから失敗したのかと思った。  
男の人って気持ちよくなるとああいう顔をするのかも。  
 
「アルル…もっと、強く、してみてくれ……アルルッ」  
「ふ…………う、うぅん」  
アルルは彼のペニスの根元を両手で揉みながら、唇を激しく動かす。  
 
男の人のって、やっぱり、すごい………。  
これから、ボクは……これで、シェゾのものに、されちゃうんだ。  
 
顎がちょっと疲れてきたけど、アルルはフェラチオを中断しない。  
まだ処女なのに、フェラチオなんてもっと経験豊富になってからするものだと思ってたのに、  
彼に快感を与えることができるこの行為に夢中になった。  
それに、彼のペニス舐めてあげてると自分もどうしてかじんじんと興奮してくる。  
 
「ア、アルル………もうそろそろ、限界、だ…」  
げんかい?  
「出る時は、言うからな、ゆっくり、受け止めて…くれ」  
ああ。精液を、射精…するんだね。  
「うっ、く!ア、アルル……アルル!」  
ああ、シェゾ……。いいよ。射精して………。  
「よし!出すぞ!アルル!アルルッ!!」  
びくん!  
 
口の中で亀頭が膨張した瞬間に、熱い固まりが飛び出てくる。  
アルルはぎゅっと息を止めて、それを腔内で受け止めた。  
びくんっ…びくん……びく………………  
ペニスは何度か痙攣して、その度に固まりが、精液が、アルルの口の中に溜まっていく。  
(あ………あ………。これが、射精なの………………?)  
ペニスの痙攣がおさまると、アルルは腔内の精液をこぼさないように口から抜いた。  
ちゅるん……と音がしたような気がして、少し液体の糸が延びた。  
「はぁ………はー」  
シェゾはなんだか急激な運動したみたいに荒く息をついてる。  
 
「アルル………………」  
「………………」  
アルルは口の中の精液を舌で感触を確かめた。鼻で落ち着いて呼吸する。  
(変な匂い…………。それに、なんだか濃くて、変な味…………)  
美味しいとか不味いとか食べ物の味覚じゃなくて、たぶん、これが、シェゾの味なんだ。  
だから、飲み込んだ。  
 
「ア、アルル………」  
「………あ………へんな、かんじ」  
腔内に残ってるのを、ちょっと指に取ってみて、目で見る。  
「これが、男のひとの、なんだね………………」  
 
シェゾはちょっと驚いて、それからアルルをまた自分の上に抱き寄せた。  
「きゃ………」  
「アルル、すごく、よかった。ありがとう」  
「あ………うん。シェゾ、すごかったよ……」  
「お前の口、すごくよかったよ。あまりもたなかった」  
「そうなの……?」  
「そうさ。お前上手だよ。ありがとな。アルル」  
 
「全部、飲んでくれたのか」  
「え、あ…うん」  
「口、見せてみろ」  
「………………」  
「ほんとだな………………。もう口の中は綺麗か?」  
「うん……」  
「よし、じゃあ……」  
キスしてくれた。  
 
彼のペニスは射精しても大きいまんま。  
「でもな………。これでもう興奮がおさまったわけじゃ、ないんだ」  
「………そうなの?」  
「もっともっとお前が欲しい」  
「………………うん」  
「じゃあ、始めよう………」  
今まででも痺れるくらい気持ちよかったのに、やっとこれからが本番みたい。  
 
「お前が服脱ぐところ、見たい…………」  
シェゾに命令されると逆らえない。  
それがいやらしい命令であるほど、従うことに悦びを感じてくる。  
アルルは今パンツだけを太ももまでずらしてる、ある意味全裸より卑猥な格好。  
それを一枚一枚脱いでいく。シェゾはやっぱりじっと見ている。  
彼に見つめられることは、手で触れられてるのと同じくらい……興奮するかもしれない。  
指がうまく動かなくてストリッパーみたいに華麗には脱げないけど、  
ゆっくりゆっくり彼の視線を意識しながら、裸になっていった。  
ブラを外して、パンツも足から抜いて、全裸になって、ベッドにぺたんと座った。  
彼の前で裸になるのは二度目だけど、今度は二人とも生まれたままの姿になってる。  
「……手をどけて」  
胸と股間を覆ってる手をどけるよう命令されて、それに従う。  
お互いの裸をじっくりと見つめ合う。心臓がどきどき高鳴った。  
「アルル………きれいだ」  
シェゾがアルルの手を取って、指を組み合わせる。  
「愛してる」  
「あ…………ボ、ボクも…」  
「本当に、俺でいいか?」  
「………うん………。シェゾが、いい………」  
濃い愛液がじわりと垂れるのを感じた。彼のペニスもひくひくと濡れて脈打ってる。  
「じゃあ、ひとつになろう…」  
アルルはゆっくりとシェゾに横たわされた。  
 
「ん………あ、あ」  
シェゾがアルルの上に覆い被さる。彼は腕とかで体重を支えたけど、少し重みを感じた。  
素肌と素肌が密着する感触もたまらなく心地よい。ちょっと擦れただけでも声が出る。  
しばらくもぞもぞとその感触を楽しんだあと、シェゾが本格的にアルルの体に触れ始めた。  
 
「ん………」  
彼の両手が頬に当てられて、そこからすっと首や鎖骨も撫でられて、胸に辿りついた。  
最初は全く力を込めずにさすられて、だんだん力を入れて揉まれる。  
「ん……んんう………あ、あ」  
性欲もオナニーも全く知らなかったちょっと前までは、少し触れても痛みを感じてたのに、  
今はもうかなりほぐされて快感を覚えてきた。やわらかく彼の手に吸い付く。  
乳首を指で掴まれて、くにくにとこねられた。ぴくんと反応する。  
「んあああっ」  
意外にボリュームある乳房をシェゾは中央に寄せて、左右の乳首を同時に口に含んだ。  
彼の舌のざらざらとぬるぬるが乳首をこする。  
「んくっ!シェゾ!」  
乳首から口を離された。ピンク色の小さな乳首が唾液で濡れて精一杯固くなってる。  
シェゾは今度は乳房全体を舐める。周囲から乳首に向けて何度も舌を動かした。  
片方の乳房を攻めている間、もう片方は乳首を指でいじる。  
「うああ、やああん」  
何度も左右を交代して、指と舌でかなり執拗に胸をいじめられた。  
キスマークがつくくらい乳房に強く吸い付かれたり、  
わざと歯を立てて、乳首をほんの少し噛まれたりもした。  
わずかに痛みを感じたけど、アルルにはそれも気持ちよくてたまらなかった。  
シェゾは気持ちいいのと痛いのとの境界線をよく把握してるみたいだった。  
ただの苦痛になることは決して絶対にしないで、甘い痛みをたくさん与えてくれる。  
アルルは彼の両肩あたりを掴んで、快楽に耐えた。  
 
シェゾが囁いてきた。  
「……自分の乳首、自分で舐められるか?」  
彼が乳房を掴んで持ち上げてくる。  
「そ、そんな…の……したこと…」  
「じゃあ、やってみろよ。ほら、舌…出して」  
また命令されて、彼の唾液にまみれて勃起している乳首に、舌を伸ばす。  
「ん、う、ん!」  
……届いた。  
「よし……じゃあ、二人で一緒に舐めよう」  
彼も舌先を伸ばして、アルルの乳首と舌をちろちろと舐めた。  
「んっ、うー…、んあっ、だめえ」  
たまらずに悲鳴をあげた。  
「ね、ね…シェゾ、お…おねがい、むね…ばっかりじゃなくて……」  
胸に集中して愛撫されてじんじんと快感が湧いてくる。  
その快感は神経を伝って下のほうに反応が集まってくる感じ。  
もう、とろとろに、失禁したみたいに濡れてしまってた。  
「胸じゃなくて?」  
シェゾがまた分かってるのに質問してくる。  
「………そ、その…あぁっ……下の、ほう…も……」  
控えめなおねだりだけど、彼はそれで満足そうに答えた。  
「ああ、分かった……。たくさんしてやる…………。  
 じらしてごめんな。お前にたくさん気持ちよくなって欲しいんだ」  
「あぁ、おねがい……シェゾ………」  
 
シェゾはアルルの両足を掴んで開かせる。ほとんど力なく開いた。  
そして今まで誰にも見せたことのない女の子の部分が初めてシェゾの目に晒された。  
「あ………あ、あ………」  
「アルル…………」  
アルルは両手で顔を隠してるけど、彼の視線が分かる気がした。  
(あ………全部、シェゾに見せちゃった…。ボクの一番大切なところ………)  
 
頭がくらくらして胸が熱くなる。  
その気持ちにすぐ体も反応して、また膣口から愛液が溢れていく。  
そして、その様子も彼に今じっくりと見られている。  
「あ、だめ………」  
アルルはたまらずに腰をくねくねとうごめかせた。  
シェゾがやっと触れ始めた。開きかけてる中心を指でそっと撫であげた。  
「あああぁッ!」  
その瞬間、アルルはすごい衝撃を感じた。  
「あ………あ………な、に……?」  
長い時間をかけた前戯でそこは格段に敏感になっている。  
彼は左手でそこを左右に割って、右手の指で中身を愛撫していく。  
周辺の肉を上下に撫でたり、尿道口を指先でくりくりと押したり。  
「ああぁ、やあ、ああぁーッ!」  
太ももをぴくぴくさせてアルルは悲鳴をあげた。  
またすぐにでもいってしまいそうだった。  
シェゾは小指の先を膣の中に入れた。じゅく…と愛液が溢れて、難なく入っていく。  
「やぁああ!んああ!」  
アルルは頭を振って、手でふとんのシーツをぎゅっと掴む。  
いってしまいそうというより、小さいエクスタシーを何度も連続して味わっていた。  
アルルはまだ膣ではそれほど快感を得られない筈なのに、彼の小指が出し入れされるたびに、  
気持ちよくておかしくなりそうになる。  
小指が根元まで入って中で動かせるくらいにほぐれてきた。  
膣内がきつく締まったり弛緩したり繰り返すようになって、小指が中指に変わった。  
「ひ!ひううぅん」  
中のきつい肉襞、処女膜もずいぶんほぐれて、彼の指に少し血が滲んだ。  
「ああ………………あ………………」  
「…………痛むか………?」  
「いたく、ない…。シェゾォ……すごいよお…」  
アルルは息も絶え絶えに答える。痛みはまったく感じない。  
 
シェゾはアルルの両足の膝の裏を掴んでさらに大きく開脚させた。  
「っや、きゃあ!」  
そして、腰を抱えて大きくもちあげる。  
前転の途中みたいな姿勢で固定されて、アルルのそこがもっと大きく晒された。  
お尻の穴までよく見えるくらいひっくり返されて、愛液がそこに垂れていく。  
「やああん………」  
アルルは身をよじったが、体は完全に快感に支配されてて言うことを聞かない。  
心のどこかでもシェゾに羞恥を煽られることを喜んでいた。  
「かわいいよ。アルル………」  
彼はそこに顔をうずめて、アルルの性器を舐め始めた。  
「ひ…………ひぃん………」  
飛び出たクリトリスを、舌でいじられた。  
びくんびくんとアルルがのたうつ。  
前までオナニーで得て満足していたくらいの快感はとっくに越えている。  
肉体的快感はもとより、愛する男に体を支配される幸せも感じていた。  
シェゾの舌は性器のあちこちを丹念に舐め回して、膣口にもうずめてくる。  
そこから愛液をすくい取って、お尻の穴にも塗られた。  
彼はそこもぴちゃぴちゃと舐める。指もお尻攻めに加わってきた。  
「はぁああ!だめえええ」  
体の中でたぶん一番恥ずかしいところもシェゾに晒してしまった。  
(ボクは………もう、なにもかも、シェゾのものに、なっちゃうんだ………)  
もう理性的な思考ができなくなってきた。  
お尻もいじられて、あまりの快感に、汚いのに、とかも意識できない。  
 
シェゾが長くて濃厚なクンニリングスをようやくやめる。  
「そろそろ………いいか」  
アルルの体をいったん解放してあげた。  
 
アルルは美しいラインの乳房を激しく上下させて荒い息をついた。  
涙をぽろぽろ流して目の焦点もぼやけてきて、全身を小さく痙攣させた。意識も朦朧。  
徹底的に全身をいたぶられて、限界以上に昂って、もう彼の手だとどこを触られても、  
快感以外のなにも感じなくなってきた。  
 
そしてシェゾは自分のペニスの先端をアルルの膣口にこすりつけた。  
お互いの性器が初めて触れ合った。アルルのそこもひくひくと開いて待ち構えている。  
「はあー……はぁ、ん」  
「アルル……いくぞ…」  
「シェ、ゾォ…」  
シェゾが両手でアルルの腰を抱えて、アルルの両足を自分の背中に回させた。  
「アルル、愛してるよ……誰よりも、愛してる」  
彼の優しい言葉が頭に響く。  
その言葉が嬉しくて、アルルは泣きながら手を伸ばして、彼の首にしがみついた。  
「シェゾ…、シェゾ………ボクも、愛して、るよ…………」  
シェゾはペニスをぴったりと膣に照準を合わせた。  
「いれるぞ……」  
「うん………きて………」  
 
シェゾが腰を進めた。  
に………ちゅ  
膣口が押し広げられて先端がゆっくり埋まっていく。  
「あ……あ……あ…………」  
アルルは首をのけ反らせて、かすんだ両目を思いきり見開いた。  
シェゾはゆっくりゆっくりアルルの中に入っていく。  
アルルはやっと、この世で一番愛する男の腕の中で、処女喪失を迎えた。  
 
シェゾのペニスは三分の二ほど埋まって、いったん侵入が止まった。  
「ア、アルル………」  
「はあぁ……は、ああ」  
アルルは必死に破瓜の衝撃を受け止めている。  
といっても…………………………痛みを感じなった。それどころか気持ちいい。  
痛みはあるんだろうけど、脳がそれを痛みだと認識してないというか。  
 
現に処女膜が裂創して少し出血もしてるのに、アルルは苦痛を苦痛と感じてない。  
もともと初体験することを前々から心の準備ができていたことと、  
シェゾが徹底的にアルルを性的に興奮させ、多少の痛みは快感に変わるようになっていること、  
なにより大好きな相手と結ばれることができた喜びが、痛みを麻痺させていた。  
 
でもアルルはそんなの理解してなくて、ただあまりの快感に戸惑っていた。  
「アルル………平気、か?…………アルル」  
「なんで…………いたく、ない………」  
(初めてって、痛いものなんじゃなかったの…?すごく、気持ちいい……!)  
シェゾが両手を腰から離して、アルルの上に覆い被さった。  
アルルも下から彼を力一杯抱き締めて、自然口付けをかわした。  
「んふぅ、んーっ」  
だめ。体をほんの少し動かしても、彼の体のどこが触れても、びりびり快感が走る。  
シェゾが頃合いを見計らって、腰をゆっくり少し動かした。  
「んやああぁ、…うあぁん!」  
それだけで体がびくんびくんと痙攣して、アルルはまたいった。  
しかもだんだんいき方が深く強くなっていく。気持ちよすぎて怖くなってくる。  
「ふぇ……シェ、ゾ、おねが…ぃ……………ちょ…と、まって」  
「………………つらいか?」  
「ちが………………こわい…………よす、ぎる………」  
「ん………とにかく…ゆっくり、落ち着け、な」  
シェゾが動きを止めてくれた。  
 
シェゾはアルルが落ち着くまでじっと待ってくれた。  
「アルル………俺、嬉しいよ」  
そのままで語りかける。  
「お前とこうすることができて、今まで生きていて一番嬉しいかもしれない」  
声が上擦ってて、言葉使いがなんだかいつもより実直。目が涙ぐんてるような気もする。  
たぶん彼もすごく興奮してるに違いない。  
「はー…はああ……シェゾ……」  
「アルル……愛してる!アルル…!」  
「シェゾ………シェゾォ!」  
ひとつになったままで、心に穏やかな幸福感が満ちていく。  
そしたらなにも怖くなくなってきた。彼と一緒なら、彼にされるなら、どうなっても怖くない。  
「シェゾ……ボク、もう…だいじょうぶ。続けて、シェゾ…」  
「ああ…。アルル、愛してる…」  
シェゾがまたゆっくりとまた動き始めた。  
痛い筈なのに痛くなくって、逆に気持ちよくなりすぎるための覚悟をするっていう、  
普通とはちょっと違った感じのアルルにとって初めてのセックス。  
 
にちゅ……にちゅ……ぬ、ちゅ……  
「はあぁ、シェゾ、すごい……よう………」  
「ふぅ………アル、ル……」  
シェゾがゆっくりペニスを往復させて、アルルの膣内を押し延ばしていく。  
だんだんとペニスの根元まで挿入できるようになってきた。一番奥に当たっている。  
ときおりアルルの愛液と血が混じった液体が繋がった隙間からこぼれる。  
 
やっぱりたまらなく気持ちいい。  
いったん落ち着いたせいか、節操なくいきまくる感じではなくなったけど、  
快感がどんどん蓄積されていって、たぶん最後で爆発するような感じ。  
「はあぁ…んっ。シェゾォ…!」  
 
シェゾが膣奥まで突く瞬間に、クリトリスが圧迫される。  
その度にびくんと反応してしまう。  
「あぁ……あ!シェゾ…やあぁ!」  
「アルル…アルル…好きだ!」  
それにシェゾがしきりに好きだ、愛してると繰り返す。  
その言葉もアルルの心と体を確実に高めていった。  
 
だんだん運動が激しくなっていく。  
ぐちゅ、にちゅ…!にちゅん!ぐちゅん!  
二人が繋がっている部分からの音も大きくなる。  
でもアルルはだんだんその音も、シェゾの声もよく聞こえなくなってきた。  
ただ感じるのは限りなく純化された快感と幸福だけ、みたいで。  
 
アルルはしばらく…その快感に浸っていると、シェゾのひときわ大きな声が聞こえた。  
「アルル!もういくぞ!アルル!」  
その言葉でアルルの中も弾けた。  
 
びくん!!!  
「ああああぁーーッ、はああっああーーー!」  
「ううっ………………く!う!」  
びくん!びくん!びくんっ!!がく、がく…!  
二人は同時にいった。  
アルルがさっき口の中で体験した射精を今度は膣奥の子宮口で味わう。  
膣壁を激しく痙攣させてペニスをぎゅっと絞りながら。  
どくん…どくん……どくん……  
「…………は……あ………………シェ………………」  
とてつもない快楽を感じて、アルルは、失神した。  
 
 
アルルが次に目を覚ましたときは、夜明け前だった。  
しばらく、自分がいつ眠ったとか、状況が全く理解できなかった。  
なんだかすごく幸せで、ずっとこうしていたいとだけ思った。  
でもだんだん覚醒してきて、やっと今どういう状況で、誰と抱き合って寝てるか把握してきた。  
がばっ  
飛び起きる。その瞬間、下腹にぴきっていう痛みと、なにか膣からこぼれる感触がした。  
(そ、そうだった。ボク……シェゾに告白して、それで、えっちしたんだ……)  
夜のことを思い出して紅潮した。だいたい覚えてる……。  
普通だったら恥ずかしくて死にそうなセリフとか姿勢とか行動を平気で取って……。  
頭がおかしくなるくらい気持ちよくって……。  
そして、処女を彼に捧げて……。  
 
自分の股間を触れてみる。ちょっと痛くて、血の混じった白濁液が出てきてた。  
シェゾの精液と、自分の血………………。いつの間にかそのまま寝ちゃったんだ。  
慌ててると、隣のシェゾがもぞもぞと起き出した。  
「ん………………んんー………アルル?」  
「あ、あ。シェゾ………」  
「あ、……っと。………………大丈夫か?」  
「あ……うん」  
薄暗い部屋で二人とも全裸で、ひとつのふとんの中で、お互いにかしこまった。  
「………ふふ」  
「あ、あはは………」  
「………………」  
「………………夜明け、だよ」  
「ああ……。そうか。新しい一日だな……」  
「うん……。あたらしい、一日、だね」  
今までとはちょっと変わる。ボクたちの新しい一日。  
どちらからともなく、そっと手を握り合った。  
 
「……………仕事だと言ってるだろうが」  
「ボクも行きたいよう……」  
「学校があるだろう」  
「ちょっとくらいならサボッたって………」  
「真面目に行けよ。落ちこぼれるぞ」  
「それはそうなんだけど。ん〜。じゃあさ!キミがボクの休みの日に日程合わせてよ」  
「だから無理だって。遺跡の封印と月齢の関係を調査する必要があるんだから、な」  
「ちぇ。もー……いいなあ〜。ダルいいなあ〜。ボクもダル湖見たいなあ〜」  
「ぐ〜」  
「……………うるさいな」  
「いいなあ〜。いいなあ〜」  
「ぐ〜ぐ〜。ぐ〜ぐ〜」  
「よし……。分かった」  
「え、ほんと!?」  
「カーバンクルはカバンにでも入れて連れてってやろう。それで感想をこいつから聞け」  
「ぐー♪」  
「これで問題解決だろう」  
「全然解決じゃないよっ。てゆうか悪化してるよっ。ボクだけ仲間外れじゃん!」  
「わがままな奴だな……。どうしようもなかろう」  
「そんなすぐ諦めないでよ。シェゾ、はっきり言って愛が足りないよ!」  
「愛、ねえ」  
「そうっ、愛っ」  
「そうだな……愛だな。………アルル」  
「うんうんっ」  
「愛してる」  
「え……」  
「俺は世界の誰よりもお前を愛してるよ」  
「あ、うん……ボクも……」  
「だから来んな」  
「なんじゃそりゃー!!」  
 
街角でアルルとシェゾとカーバンクルがなんか騒いでる。  
というより騒ぎながら二人と一匹で仲良く歩いてる。いつもの光景。  
その光景を偶然見かけたドラコにもさして物珍しいものではなかった。  
「あんたらまたやってんの?」  
「あ!ドラコ!聞いてよー!」  
「あー、待った待った。別に聞かせてくんなくていいわよ」  
「う。ひどいっ」  
「バイト前に買い物しなくちゃいけないから長話に付き合ってらんないの。  
 ただ、ほどほどにしとけって言いたかっただけ。じゃね」  
 
あれから。アルルはシェゾと晴れて念願の恋人同士ってやつになれた。  
……なれた筈なんだけど、やってることは前とあんまり変わってないような。  
シェゾはやっぱり自分につれないクールネスで、かと思えば、  
デリカシーをいまいち理解しない自惚れ屋(つまりヘンタイ)に急に性格反転したりと、  
例の二重人格に振り回されっぱなしな感じがする。  
 
「ほら、ドラコだって自分の仕事にちゃんと行ってるだろ。お前もとっとと学校行け」  
「うん……ホントはそんなの分かってる。…けど」  
(シェゾ……冷たくない…?せっかくボクたち…)  
しゅんと沈んだら、シェゾが言ってきた。  
「なあ、アルル……。俺達に大切なのは、無理矢理二人でいる時間を作ることか?  
 俺はお前のことを考えると面倒な仕事も頑張れるようになったよ。  
 お前はどうだ?学校なんか行くのやめて、ただ即物的に俺の近くにいたいのか?」  
「…………ううん」  
「別に俺はお前がダルに来ることを足手まといだとは決して思っていないぞ。  
 日程が合うものなら、どこへだって一緒に行きたいよ。  
 だが、自分のなすべきことを放って好きなことだけやるなんて、俺は嫌いだ」  
あ…………。そうだった。ボクも、もともとそれを大事に考えてた筈なのに。  
シェゾと恋人同士になれたからって、ちょっと浮き足立って、見失ってたかも。  
反省…。やっぱりシェゾはボクのことをしっかり考えてくれてる。  
 
「…うん。ごめんなさい。ボク、わがまま言ってた。ちゃんと学校行く。  
 ………お仕事がんばってきてね」  
「ああ行け。学校が休みの日は極力一緒にいるからな。卒業できたら、もっと一緒だ」  
「え。それって」  
「さあな」  
シェゾが立ち止まって向き合った。  
「さて。四日ほどで戻る。途中でもいったん戻れそうなら飛んで帰るよ」  
「え、あ……うん」  
「お前はどうするんだ?」  
「ぐー」  
「だめっ。カーくんもボクとお留守番!」  
「ぐぅ…」  
「ふふ」  
 
そして、彼はアルルの肩に手をやって耳元に小声で囁いた。  
「会えない夜はオナニーでもしてろ」  
「…なッ!!」  
かあああぁ……………ッ  
「バカ!ヘンタイッ!!」  
ヘンタイだ!やっぱりヘンタイだ!  
アルルがぶんぶんと通学カバンを振り回して、シェゾがひょいひょいと跳んで交わす。  
そのまま彼は転移魔法を唱えた。  
「もう…!」  
「ふふっ。じゃあ、行ってくる!」  
 
やっぱり前と同じようで、やっぱり違う。これからはずっと一緒。  
「……………行ってらっしゃい!」  
笑みがこぼれた。  
 
おわり  
 
 

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