今日もあの人が来る  
今日こそは伝えよう、私の思い  
私に勇気をくれたあの人に  
今までの私でいたくないから  
今日こそは……!  
 
「ふう」  
日陰について一息つく  
シェゾはセリリの待つこの水辺で昼を食べるのが日課になっていた  
「ん?居ないのか?」  
きょろきょろとあたりを見回すが  
いつもなら見えるはずの笑顔が見えない  
「いや、誰か居るのを期待していたわけではないのだがな……」  
自分でもなぜ言い訳をしているのか分からぬまま  
後ろを振り向いて立ち去ろうとした時……  
 
「待ってください!」  
声をかけてしまった  
シェゾさんが振り向く  
思わず水の中に逃げ帰りたくなるのを必死でこらえる  
「どうした?」  
シェゾさんが近づいてくる  
言いかけた言葉が出てこない  
顔が熱くなるのが分かる  
逃げ出したい……でもそれじゃいけない  
今までと何も変わらない……だから!  
「あなたが好きです!」  
言った  
言ってしまった  
「シェゾさんがどう思ってるかは分かりません  
 でも私はシェゾさんが好きです  
 シェゾさんが始めて友達になろうっていってくれたとき  
 とても嬉しかったんです  
 でもそれでも私はだめで  
 ルルーさんやアルルさんにおこられたりしてました」  
 
だめだ何を言ってるのか自分でもわからなくなってきた  
でも止められない  
喋るのを止めた時に返ってくる答えを聞くのが恐くて  
言葉を続けてしまう  
「シェゾさんと一緒に居るとたのしいです  
 ずっと笑っていられます  
 前みたいに泣いてばかりいるのはもう嫌です  
 だから……」  
涙が出てきた  
上手く喋れなくなっていく  
それでも止まらない  
止めたくない  
無茶苦茶でもいい  
私の思いを聞いてもらおう  
「逃げたく……ないんです……もう……  
 私……いつも……でも……  
 シェゾさんが……好きです……」  
もうこれ以上声がでなかった  
涙で前も見えなくなった  
また泣いてしまった  
こんな大事な……えっ?  
あごをつかまれて上を向かされたかと思うと  
唇になにかがふれた……  
 
肩に顔をうずめて泣いているセリリの背中を優しくシェゾは叩いていた  
「シェゾさん……よかった……うれしい……シェゾさん……」  
泣きながらも何かを言っているセリリを見てもう一度キスをする  
さっきは泣いているセリリにキスをしたらいきなり抱きついてきたが  
今度は少し落ち着いたようで泣き声が小さくなった  
泣いているセリリを見ていると急に可愛く思えてキスしてしまったが  
今はなぜキスしたのかが分かるような気がした  
すがり付いて泣いているセリリを見ていると守ってやりたいと思う気持ちが  
自分の中で膨らんでいくのが分かる  
いや、前から自分もセリリのことが好きだったんだろう  
ただ闇の魔道士という立場からそれを認めたくなかっただけだ  
セリリが泣きやんだらもう一度キスをしよう  
そして自分も言葉で伝えよう  
勇気をだして告白してくれた恋人に……  
 

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