「ねえ…、シェゾ…」  
裸のままで、シェゾに腕枕してもらって、もぞもぞ甘えながらアルルは小さな声で囁く。  
「なんだ……」  
彼は空いているほうの手で彼女の髪を撫でてあげながら答えた。  
今は、今夜の”第一ラウンド”が終わったばかりのピロートークで、彼の言葉も調子が優しい。  
 
学校も無事進級できて、アルルは春休みを満喫していた。  
遊んだり、だらだらしたり、カーバンクルとシェゾと一緒に小旅行に行ったり、  
自宅で春休みの宿題をまじめに頑張ったりもした。彼に手伝ってもらって、だけど。  
彼も極力日程を優先して積極的に楽しもうとしてくれて、二人と一匹で仲良く過ごせている。  
そして夜カーバンクルを寝かし付けた後はいつも遅くまで二人で愛し合った。  
 
「ドラコがね……、ラグナスにプロポーズされたんだって…」  
「ああ…。ラグナスの誕生日とか言ってた時か…。で、あいつはどうしたんだ」  
「もちろんOKで、二人は晴れて正式な婚約者同士になりました…ってわけで」  
「は……。ずいぶん性急だな」  
「……そんなことないよ。ボク、ドラコが羨ましい…って思ったもん……」  
「…………」  
アルルはドラコからそれを聞かされて、一度、自分もできるだけ色っぽい格好や仕種をして、  
シェゾを誘惑しようと頑張ってみたんだけど、それは空回りどころか気付かれもしなかった…。  
無意味な行為をしてしまったと我に帰ってから、こうやって普通の話題として切り出してみた。  
…………すると、彼は、いきなり変なことを言ってきた。  
 
「…………お前は本当にかわいい少女だよ」  
「……え?へ?」  
「そして間違いなく、これからもっともっと美しくなっていく。……容姿だけじゃない。  
 お前には素晴らしい魔導の才能があり、なにより全ての物を愛し、愛される力がある。  
 お前の未来には無限の可能性があるんだ」  
「…………シェゾ?」  
急に自分をものすごく誉めてきて、なにがなんだか分からず照れてしまうアルル。  
 
「そんなお前と今こうしていられることは、俺にとって信じられないくらいの幸福なんだ…。  
 永遠にお前を独占したいとも思うが、お前の可能性を狭めてしまうんではないかとも、思う」  
「シェゾ……そ、んな……」  
「だから、さ。お前がもう少し成長して、世の中のことや自分のことを見据えられるくらいの  
 大人の女になってから、でいいんだ…。それから、お前自身で選択して欲しい……。  
 それまでは、俺達は、今のままが、いい……。プロポーズなんて、な……」  
「…………」  
アルルは、ほとんどプロポーズと同じくらいのことを言われてるような気がした。  
ただ単純に結婚しようと言われるよりよっぽど現実味のある言葉で。  
「…………ん。もしかして俺は、今とてつもなく恥ずかしい発言をしている、か?」  
「……うん。…かなり……」  
「うう、う。今の発言はとりあえず忘れろ……。いや、とにかく気にするなっ」  
「気にするよう……」  
「あー、うるさいぞっ」  
じたばた、じたばた。  
 
「むぎゅう、くるしいよう……」  
自分で恥ずかしいセリフを吐いたくせに、いきなり照れてアルルを力尽くで組み伏せるシェゾ。  
「とにかくだ。あいつらはあいつらだ。そして俺達は俺達だ。ほっとけ!分かったか!」  
「わ、わ、わかったから、もう、やめて……放してよう」  
ぽすっ  
「うー、うー…。どうしてキミって、そう、態度の落差が激しいの……」  
解放されて、文句を言いながらアルルはうつ伏せ状態から元の体勢に戻ろうとしたが、  
彼はなにを思ったのか、また彼女の肩を押さえ付けた。  
「ちょっと…」  
「…………今の、いいな……」  
「なにがー?」  
「お前が”もうやめて”と懇願する様子が。………せっかくだからこのまま続けようか」  
シェゾがアルルの小さめでかわいいお尻をむにむにと撫で始めた。  
「やだっ…ヘンタ、イ……んぅっ」  
 
たった今まで、ものすごく真摯に語ってたかと思えば、急に悪ふざけしていじめてきて、  
そしてさらに平然とセックスを再開してしまうシェゾの神経に、アルルは呆れた。  
でも、なんだかんだ言っても大好きな彼にこんなにも愛されてると思うとまたすぐ感じてしまう。  
ついさっき彼の精液をたっぷり受けた筈の子宮が、かすかに疼き始めた。  
「んっ、んふぅ…もう…ヘンタイ…なん、だから…」  
「ふ……なんとでも言えよ……」  
彼はお尻の肉を揉みながら、舌を彼女の真っ白な背中に這わせた。  
そしてお尻を揉む手を、少しずつその間に差し込んでいく。  
「あっ、ん…んぁ……」  
アルルはさっそく反応を見せて、膣内では愛液が彼の精液と混ざり合って、じゅくりと溢れた。  
彼の手がそこに到達して、中指を突き入れられる。  
「あぁん!だめ!」  
「ほら…、尻、あげろよ」  
そう言って彼は指を挿入したまま、彼女の姿勢を変えさせる。  
アルルはうつ伏せで膝を立てて、彼に向けてお尻を突き出す姿勢になった。  
「あ……やぁ……」  
「お前のここから俺達の体液が溢れてふとももを垂れていってるぜ……」  
彼はその液体を指ですくうと、彼女のお尻の穴に塗りたくった。  
両手で膣とお尻の穴を同時に責められる。  
「んゃ!ああ!!」  
お尻の穴にも左手の中指を第一関節まで埋められて、ぐにぐにとこねる。  
そのたびに膣壁も締まって彼の右手の指を締め付けながら、体液をびゅくんと吹き出した。  
「うぁ……あう…うふぅ……」  
アルルは枕に顔をうずめながら、ぴくんぴくんと必死に快感と恥辱に耐える。  
「よし………」  
彼は膣から指を抜くと、膝立ちになって、その体液を自分のペニスにも塗った。  
左手でお尻責めを続けながら、右手で彼女の腰を掴んで、お互いの性器を擦り合わせる。  
「いくぞ……アルル……」  
シェゾのペニスがにゅぐにゅぐとアルルの膣内に侵入してくる。  
彼女はその瞬間、両手と両足の指をふとんのシーツにぎゅっとくいこませた。  
 
ぐちゅ…ぐちゅん……ぶちゅ、ぐちゅ…  
「ふぁッ…ああ!んあッ…シェゾォ!!」  
シェゾが腰の運動を開始させる。  
彼のペニスの先が一番奥の子宮口をずんずん突いたり、膣壁の敏感な部分を的確に擦るたびに、  
アルルはかわいい鳴き声をあげた。  
カーバンクルが起きるかもしれないから、枕で声を押し殺したいのに、  
彼に突かれると首や背筋がのけぞってしまう。  
「んはぁ…んやぁッ、だめ!もっと、ゆっく、り…!」  
「ふぅ……ッ」  
彼が要望に応えてくれて、運動を緩やかにしてくれた。  
右手をついて、彼女の背中に体が密着するような姿勢になった。  
「あ…はぁ……シェゾ…」  
アルルは体が密着する体位が好きなことを、彼はよく知っててくれている。  
「アルル、愛してる……。かわいいよ、アルル」  
優しい言葉を囁いてもらうことが好きなことも。  
でもこれは、たぶん彼も本当はそういう言葉を囁くのが好きなんだと思う。  
「お前は、どこもかわいい……。ここも、ここも…」  
シェゾがアルルの体のパーツを右手でひとつひとつ触る。  
口の中に指を突っ込まれたり、胸を揉まれたり、クリトリスをつつかれたりした。  
「あっ、うぁあ!んッ…、んうぅ!」  
「ここも……」  
左手のお尻責めがまた始まった。お尻の穴のヒダを丹念に押し広げられて、  
少しずつ奥まで指を挿入される。  
「ひん!ひゃ…あっ、あ!」  
ゆっくりと、お尻責めの動きに膣に埋まっているペニスも連動して、直腸をほぐされる。  
さらに右手の指でクリトリスをにゅるにゅるとしごかれた。  
三箇所を同時に責められて、全身が痙攣して限界が一気に近付いた。  
「んふゥ、う!うああああぁぁンッ!!」  
びく!がくん!びゅく!びゅくん!びくッ!!  
激しい絶頂が訪れて、それに合わせて彼もまた子宮に向けて精液を叩き付けた。  
 
「はぁ、はぁ…、はぁー……」  
くったりと崩れるアルルをシェゾが優しくキスして介抱する。  
「アルル、愛してる…」  
彼の愛の言葉が朦朧とする意識に響いて、彼女はそのまま眠りに落ちてしまいそうだったが、  
眠ってしまう前に、彼女にも今言っておきたい言葉があった。  
「シェゾ……」  
「ん…」  
「ボクは、自分の、未来は…、自分で選ぶから……」  
「ああ…」  
「そのときも、キミといっしょのをえら、ぶから…。これからも、ずっとそば、に…い、てね……」  
「アルル……ああ。俺も、ずっとお前のそばにいたいよ…」  
「…………」  
それを聞いて、アルルは幸福感に満たされながら、すうすうと眠りについた。  
 
…………。  
 
そして、アルルは、その夜、変な夢を見た。  
夢の中のアルルは、自分が夢を見てることには気付かずに、変な街をうろうろしていた。  
街は自分の街なんだけど、微妙な部分が違ってて、でもなにが変なのかよく分からない。  
うろうろしているうちに、4歳くらいの小さな変な女の子と出会った。  
変な女の子というのは、自分の4歳くらいの頃にそっくりなような気がするんだけど、  
なんだか妙に頭の良さそうな雰囲気の子で、なにより青い瞳をしている。それがなぜか変。  
 
その変な女の子が、声をかけてきた。  
「ねえ、ママ」  
「え?ママ…?」  
「うん、ママ。……ママってさ、たよりないよね」  
いきなり訳の分からないことを言ってきた。  
「あたしもパパもかーくんも、いっつもくろうしてるのよ」  
「え…。そうなの…。ごめんね」  
訳が分からないのに、なんか冷た〜い青い瞳に見つめられて、素直に謝ってしまった。  
 
「だからね、いまのうちから、しっかりするようにしなきゃだめなのよ」  
「あ、うん…」  
「じゃないと、しょうらいがたいへんなのよ。わかった?」  
「わ、分かったよ」  
なんのことが分からないのに分かったって答えてしまうアルル。  
「じゃあ、あたしもうかえるから。またね、ママ」  
「え…………ちょっとまって。キミ、誰?ボク、ママじゃないよ」  
「もう、ほんとにたよりないんだから。いまはそれでも、べつにいいのよっ」  
そう言って、その変な女の子は、走り去って消えてしまった。  
「……行っちゃった…」  
その夢はそれでおしまい。  
 
 
翌朝。  
目が覚めたアルルは、その妙に鮮明で変な夢を、ボーッと反芻する。  
二人と一匹で朝食を取るときも、ボーッとしたままで取った。  
「なんか……変な夢を見た」  
「へえ」  
「ぐう」  
シェゾとカーバンクルはどーでもよさそうな返事をする。  
シェゾはアルルに負けず劣らずの低血圧で、カーバンクルは基本的に食べるのに夢中。  
「変な女の子が出てきて、変な話をしたの。ママとか言って」  
「へえ。で?」  
「それだけ」  
「…………ふーん。よかったな」  
彼は心底どーでもよさそうに妙に冷た〜い視線で見つめてくる。……青い瞳で。  
「……………………」  
 
「……って、ああもう。なんでお前はそう意地汚ない食い方しかできないんだ」  
「ぐぐう」  
カーバンクルの口の周りのベトベトを、シェゾがしかめっ面してナプキンで拭いた。  
 
 
後日。  
今月も順調にアルルに生理が来た。  
もともと自慢の健康優良少女。だいたいいつも順調だし、生理痛だって大したことない。  
しかも処女じゃなくなってからは、ますます生理痛とは縁が遠ざかってるような気もする。  
だからそのへんはノープロブレムって感じ、だ。  
 
それより思うのが、無事に生理が来たってことは、いつも避妊がちゃんとできてるってこと。  
シェゾとえっちするって日は避妊薬を飲むし、飲んでない時は彼が必ず避妊具を装着するし。  
「避妊かぁ……」  
 
避妊するのは当然のことだ。  
自分はまだ学生なんだし、将来の計画が立ってもいない時に無責任な行動なんて取れない。  
子どもなんて、自分がもっと大人になってからだ。  
シェゾと結婚して、彼の子どもを産みたいって思うけど、それも、自分達には、  
大人として彼を選んで、彼に選ばれるっていうプロセスがこれから必要なんだ。  
 
アルルはこないだ夢に見た変な女の子のことを考える。  
彼女は確信していた。それをその子に語りかけた。  
 
…………キミに会えるのはまだまだ先のことになりそうだよ。  
でも、きっと会えるから、それまで待っててね。  
それまでにはボクももうちょっとしっかりした大人になって、  
キミやパパやカーくんにあんまり面倒かけないような、立派なママになるから。  
 
そのとき、また会おうね、ボクと、彼の…………。  
 
おわり。  

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