「全く。いくじが無いですわね。」
ウィッチが長い金髪を揺らして、店のカウンターに頬杖をついた。
「わたくしにウジウジ相談してても仕方ないでしょう?
どーんと告白すればいいのではありませんこと?」
まだ幼さの残る美しさのさきで、一人の少年がうつむいた。
ラグナス・ビシャシ。
これが彼の名前だった。
明らかにブカブカのブルーの甲冑を身にまとい、
子供の体には大きすぎるロングソードを腰に下げている姿は、
まるで勇者のコスプレをしている子供その物だ。
「でも、オレは呪いの所為でこんな姿だし、あの人には、あのにっくき変態魔道士がいるし・・・・」
「だったらスパッっとお諦めなさいな。」
「それも絶対いやだぁーーー!」
子供らしい高い声で絶叫し、ラグナスは落ち込んだ様にぐすぐすと涙を流した。
「だいたいなんであんな変態がいいんだぁーーー!!絶対おかしいって!!」
(変態・・・ってシェゾさんのこと・・・ですわよね・・・・)
「え?なにかいった?」
「あ、いえなんでもありませんわ。」
ひとり言ですわと付けたして,ウィッチは小さく楽しそうに微笑んだ。
「で、ラグナスさん。あなたは一体どうしたいんですの?」
「それがわからないから相談に来てるんだろうが!告白して失敗したらどうするーー!?
オレはもう立ち直れないーーーー!!」
「まだ振られて無いのだからそう落ち込む事も無いでしょうに・・・・・」
この世の終わりの様な声を出してカウンターを涙で濡らすラブナスを見ながら、
ウィッチはあきれ果てて溜息を漏らした。
「ほれ薬でも売って差し上げましょうか?」
(必要無いでしょうけど・・・)
「そんな勇者にあるまじき行為は出来ない!」
「じゃぁシェゾさんを殺してうばってしまうとか・・・・」
「あの人が哀しむ!」
どんな案を出しても即答で却下される事に多少腹を立てながら、
ウィッチはそれでもいくつかの案を出してやった。
それもことごとく却下され、半分諦めた様に投げやりに
「じゃぁあの方が喜びそうな物でもプレゼントしてみたらどうですの?
幼稚なあの方の事ですもの、案外落ちるかもしれませんことよ。」
と言って見た所、ラグナスはパッと目を輝かせた。
「成る程!その手があったか!ありがとうウィッチ!!」
物で釣る事になると言う事実を思いつかなかったのか、
ラグナスは凄まじいスピードでウィッチのみせを後にした。
「・・・・・大丈夫、きっと上手くいきますわ。」
しばらく呆然と扉を見つめていたウィッチだが、そのうちクスっと微笑、
店の奥へと消えていった。