「シェゾ!夏といえば!?」  
アルル17歳!夏!  
およそ人生の中で、青春時代のド真ん中のド真ん中。アルルのテンションはあがりっぱなしだ。  
学校は夏休みで、今年からは彼氏もアリ。これで謳歌しないでどうするの。  
毎日暑いけど、じっとしてなんかいられない。  
って感じで今日もアルルは意気揚々とシェゾに問う。  
「はあ……」  
シェゾはしばし考えて、答えた。  
「……いつがいいんだ?」  
よく分からない答えだった。アルルはぴんとこない。  
「なにそれ?」  
「つまり、夏といえば、海だと答えて欲しいんだろう」  
「うん」  
「それで、海に行きたいって言いたいんだろう」  
「うんうん」  
「だから、いつがいいんだ?」  
「連れてってくれるの!?」  
「ああ」  
シェゾが柔らかく微笑む。アルルは正直かなり驚いた。  
あまりの察しの良さにもそうだけど、彼は夏が苦手っぽいのに快諾してくれるとは思わなかった。  
(今自分は無理にでもおねだりしようとしてたのは置いといて)  
「17歳の夏だもんな。楽しみたいのも当然だろう」  
「いいの?」  
「ああ。それに、お前が楽しんでいるところを見るのは、嫌いじゃないしな」  
さすが二重人格者。時々ヘンタイになるぶん時々すっごく優しくなる。  
「嬉しい!シェゾ大好きー!」  
彼に抱き着いて感激を全身で表現する。彼もぽんぽんと抱擁を受け止めてくれた。  
暑い日にくっついて暑苦しいけど嫌な感じは全然しなかった。  
テンションは嫌が応にもあがっていく!  
 
で。海にやって来た二人。賑やかな海水浴場。民宿に一泊二日で。  
「イエー!」  
「はいはい。じゃあ……水着はもう着てるのか」  
「うん。下に着てるよっ」  
アルルはサンダル越しにさっそく伝わる砂の熱さを楽しみながらビーチを進む。  
適当な場所にシートを敷くと、威勢良くその場で自分の服を脱ぐ。  
タンクトップとミニスカートも、ほんとは水着のセットだけど、大胆に脱いじゃうことにした。  
その下は赤い紐でピンクの布地がけっこう小さめの、自分史上最も思い切ったビキニの水着。  
「あははー。どーお?ボク、かわいい?」  
腰に手をあててシートの上に仁王立ちして、しゃがんで荷物を置いてるシェゾにアピール。  
自分を見上げる彼が眩しそうにしてるのは、太陽のせいだけじゃないよね?と思いたいアルル。  
日頃キミに女を磨かれてる成果が、けっこう出てるでしょ?  
「ああ。よく似合ってる。が、もう水着になるんなら、さっさと日焼け止め塗れよ」  
「あ。そか。……でも、キミってば相変わらず現実的だねえ、もう」  
でも一応誉めてくれたから、まあ良しとしとこう。  
「日差しが強いからな。……どこかから傘借りてくる」  
「うん」  
シェゾがサングラスをかけて、海の家とかがある方に向かった。  
Tシャツとハーフパンツの彼の後姿を、日焼け止めを塗りながら眺める。  
…………やっぱりシェゾって、すっごくかっこいいよね。  
俺には夏や海はあまり似合わないがな、なんて言ってたけど、そんなことないよ。  
シェゾ、素敵だよ。  
アルルはシェゾが戻ってきたら、かっこいいってたくさん言ってあげようと思った。  
 
「くすくすっ、なにやってんのー」  
シェゾが遠くであちこちをうろうろしている。  
どこでビーチパラソルを借りればいいのかよく分からないらしい。  
こりゃ、戻ってくるまでもうちょっとかかるかな。  
アルルはシートにぺたんと座って、海のほうを向いて眺めた。  
空も海も真っ青で、大勢の人ごみの雑音も気持ち良かった。  
 
「ねえ、君ひとりなの?」  
「えっ」  
一瞬ぼーっとしてたら、見知らぬ一人の男に声をかけられた。ナンパだ!?  
まさかちょっと一人になっただけでもう声をかけられるなんて。  
もちろんナンパなんてアルルにはお呼びじゃない。  
でも、自分に、男に声をかけられるくらいの魅力があるのかなって思えたことは嬉しいかも。  
そういえば、ドラコは前はよくナンパされた数を誇ったりしてた。  
まあ今のドラコは他の男にいくらナンパされてもちっとも喜ばないだろうけど。  
そしてそれは自分だってそうなんだ。  
瞬間的にいろいろ考えて、目の前の男の人に鄭重にお断りする。  
「あの、ボク、彼と来てるんです。ごめんね」  
 
………すると、期待を込めて見つめていた男の表情が、目に見えて一瞬で冷めた。  
「……君、自分のことボクとか言ってんの?」  
「え」  
「なんかイタくねえ?」  
「………」  
「あっ、まあ人の勝手だけど。じゃあ…彼氏いるんならそういうことで」  
男はあっさり引き下がって、声をかけたことを後悔する素振りすら見せて、その場から去った。  
最後にちらっと、ヘンなヤツを見る視線で、アルルを見て。  
 
「…………」  
 
「くそ、もうちょっと看板を分かりやすくしろっての」  
シェゾが戻ってきた。ぶつぶついいながらパラソルを立ててくれる。  
「…………ね!シェゾ、サングラスかっこいいね!ちょっと貸して!ボクもかけてみたいよう」  
「あ、こら」  
「あははー!どー?似合うー!?」  
「おいおい……」  
「あはははは!」  
 
アルルははしゃぎにはしゃいだ。  
あらゆる食べ物を食べまくって、あらゆる遊具で遊んだ。  
泳ぎまくったり、知らないカップルとビーチバレー勝負したり。  
あとは急に人前でシェゾにべたべたしたり、ほっぺにキスしたりもした。  
終始超ハイテンションでシェゾを付き合わせた。  
「ふう……」  
「あははは!」  
「さて……。次はどうする?まだまだ遊び足りないって感じか?」  
「うん!もちろんー!」  
「なら……今度はあっちの岩場の方へ行ってみようか」  
「いいの?荷物は?」  
「かまわないさ。荷物は盗まれて困るものもないし、貴重品は民宿に預けてあるだろ?」  
 
ザザー……  
 
けっこう歩いたけど、岩場は全然誰もいなくて、いかにも穴場って感じの場所だった。  
波の音しかしない。  
「静かだな」  
「うん…………」  
シェゾが大きい平らな岩に腰掛けて、アルルも隣に座る。  
 
「…………」  
足の先だけ海に浸かって、ちゃぷちゃぷさせる。  
静かな場所で、アルルはハイテンションを維持できなくなってきてしまった。  
 
「…………今日のお前は、ここに来てすぐ、ちょっと様子が変になった」  
「え」  
「この俺が気付かないわけないだろう?」  
「シェゾ…………」  
「なにかあったか?」  
 
「俺に関係してることなら、言って欲しい」  
「…………あ、えと。そんな、なんでもない、ことだよ……」  
なんでもないって言ってしまうのは、なんかあるって言うのと同じだ。  
アルルはさっきまでのハイテンションが急に消えて沈んだ調子で答える。  
「そうか。まあ、俺に直接関係なくて、言いたくないことなら、無理には聞かないさ」  
シェゾがアルルの肩を抱き寄せた。  
「それで、俺と付き合ってて少しでも気晴らしになるなら、いくらでも付き合ってやるからな」  
「シェ、ゾ……」  
「それがちょっと言いたかっただけ、だ」  
シェゾは優しい。彼の優しさが現在最高潮だ。  
アルルは胸がきゅんとなる。それでちょっとほころんでしまった。  
「あの……あのね。全然大したことじゃないんだけどね。  
 …………さっきキミがビーチパラソル借りてる間ね、男の人に、ナンパされたの。  
 も、もちろん断わろうと思って、少し喋ったら、その人ボクのことすごく変だって言ったの。  
 ボ、ボク…が、自分のことボクって言うのすごく変だって……。  
 ボクのこと、おかしな女の子だって思ったみたいで、あっさりどっか行った……」  
アルルが自分のことをボクって言うのは、自分でも理由が分からないくらい無意識のことだ。  
でもそれって、客観的に見たら、すごくおかしく見られるようなことだったんだろうか。  
落ち着いた場所で、改めて言葉に出してみたら、なんだか落ち込んできた。  
シェゾも、自分のことをおかしな女の子だって思ったりするんだろうか。  
「……はー。なるほどなー」  
不安に思ってたら、彼は、思いっきり素でリアクションしてきた。  
「え、えと。シェゾは、ボクが自分のことボクって言うの、変だって思わない?」  
「んー。そういやそう言う女ってお前だけだな。でもまあ別にどうでもいいんじゃないか」  
自分はすっごくシリアスなモードなのに、シェゾはほんとに心底気にしてなさそうだった……。  
「ど、どうでもいいって……」  
「お前の一人称がなんだろうが、お前の魅力が損なわれるわけでもないしなー」  
「…………ボクの魅力って?」  
 
シェゾは、当然のように朗々と語り出す。  
「このかわいい顔だろ。あと最高のカラダも大きなポイントだな。  
 それに何度も言うがお前には魔導の素質がある。きっと素晴らしい魔導師になれる。  
 なによりその天使のような心に俺はどれだけ救われたことか。  
 そのくせ時々性格が悪くなるところも実は気にいっていたりもするな」  
アルルは、なんか、シェゾが自分のどこが好きかをすぐにいくつも言ってくれることに感激した。  
彼はさらに語り続ける。自分の言葉に自分で酔ってるフシも見受けられるような。  
つまり、ヘンタイモードがちょっと出始めてきた。  
「そうだ。もし、お前がボクって言ったら世の中の男に変に思われるというんなら、  
 これからもボクって言い続けろよ。それで俺以外の男を全員遠ざけちまえ。  
 そうすれば他の男にお前の魅力を気付かれる心配もなく、安心してお前を独占できるからな」  
シェゾはアルルを抱き締めてすりすりとかいぐる。  
「……くすくす」  
「ん…どうした?」  
「キミは相変わらずヘンタイだなって思って。それにボク、つまんないこと気にしてたなって」  
「うるさいぞ。いつもヘンタイ言いやがって。俺は俺のしたいようにするだけだ」  
「…………そうだね。じゃあ、ボクも、ボクのしたいようにするよ……」  
「ん?」  
アルルは、自分も彼を抱き締めて、口付けをした。  
 
「シェゾ、ありがと。大好き」  
 
「アルル……」  
そして今度はシェゾのほうから、抱き締め合って、キスされた。  
「ちゅ……ん…んぅっ、ちゅ…る」  
キスがだんだん甘くなる。  
アルルは、たぶん、これから当然のようにえっちされるんだろうなって思った。  
それはまさにその通りで、彼ははっきりとペニスを勃起させていた。  
そして、アルルも、実は体の奥が微かに疼き始めていた。  
 
「お前が欲しい……」  
「あ……。久しぶりだね。その、言葉……」  
アルルは、自分がこんな場所でえっちされることを受け入れてるのに、ちょっと驚いてる。  
穴場とはいえ、すぐに誰かが来るかもしれないような場所なのに、  
心も体も、はやくシェゾと愛し合いたいって望んでいる。  
夏の海で開放的になってるから、なのかな。  
 
アルルはビキニの水着を簡単に脱がされて、あっさり全裸にされた。  
「あ……」  
太陽の真下で全裸になるのは、生まれて初めてかもしれない。  
シェゾは背後からアルルのからだをまさぐってくる。  
足を大きく開かされて、アルルの大事な部分にも、太陽の光が直接当たる。  
なにか、恥ずかしいというよりも、熱くて別の世界にいるような不思議な感じがした。  
でも、からだはいつものように感じ始めている。  
彼の指を埋められて膣口から愛液がとろりと垂れた。  
「からだ、染みたりするか」  
「ん……んーん」  
「じゃあ、遠慮なく、いくぞ……」  
「うん……あっ」  
シェゾは後ろからアルルの首筋を舐めたり、胸を強く揉んだり、  
あそこをくちゅくちゅワザと音を立てるようにいじったりしてくる。  
「んぅ……んっ、ふぁ……」  
「ふぅ……アルル……ずっと俺だけのものでいろよ……」  
彼の指が膣壁の敏感な部分を擦った。  
「う、ん……あっ」  
アルルは今までシェゾ以外の男にからだを許したことはない。  
そしてこれからもずっと彼だけの女でいたいって思う。  
経験豊富な大人の女にも憧れるけど、一人の男だけの女ってのも、すごくいいかもしれない。  
彼が望むなら、自分もずっとそうでありたい。  
他の男なんかいらない……。  
 
「もう、入れるぞ…………」  
シェゾが自分のハーフパンツを下ろして、ペニスを露出させる。  
他の男のものなんて見て比べたこともないけど、いつも大きいなって思う、彼の大事な部分。  
それがアルルの中に入ってくる。  
ぐ…にゅ……  
「んッ!ん…ああッ!」  
シェゾがアルルを後ろから抱きかかえて、座っている彼の上に腰を下ろされた。  
背面座位の姿勢で、自分の体重で彼のペニスが中にめり込んでくる。  
がくがくとすごい快感が襲ってきた。  
今ではもうセックスも当たり前にしてて彼のペニスも難なく受け入れるようになったけど、  
最初はなんにも知らない処女だったのに、彼だけの手で開発されて、  
ボクは、こんなえっちなからだになっちゃたんだなあって、改めて思った。  
 
ぐっ……ぐちゅ……ぐちゅ…  
「ああっ、ふあぁん!シェ…ゾォ……!」  
シェゾが下から腰を突き上げてくる。でもいつもよりすごくソフト。  
なのにアルルは、それだけでなぜかあっさり限界近くまで感じてしまう。  
涙目になって、眼前の青い海と空がきらきらとぼやける。  
アルルは後ろから回されている彼の手をぎゅっと掴んだ。  
「アルル…愛してる……」  
シェゾが愛の言葉を囁きながら、もう片方の手で二人が繋がっている部分をいじる。  
クリトリスを包皮の上からくりくりとしごかれて、アルルはもういきそうになった。  
「あっ、シェゾ!だめ!もう…あ……い、きそ……ふああ!」  
「いっても、いいぜ……俺も、いくから……」  
「あっ、あっ!あッ!シェゾ!シェゾ!」  
びくんッ!!  
「ふああああぁん!」  
「……ふッ!」  
どくん!どくん!びくん!  
二人はすぐにいった。  
そして、早く身繕ろいしないといけないのに、二人ともそのまましばらく余韻に浸ってしまった。  
 
 
翌日も、二人は海に出た。  
二人の海水浴は民宿に泊まっての一泊二日で、あの後も民宿で夜をともにして、  
アルルは今日も張り切りまくって海水浴二日目へと乗り込む。  
テンションは異常にハイってわけじゃなくなったけど、笑顔満面だ。  
「よし、今日はさっさと傘を借りてくるぞ」  
シェゾは例によってビーチパラソルを海の家に借りに行く。  
今度はそんなにもたつかないで、すぐ戻ってきてくれるよね。と、アルルは待った。  
 
「…………ねえ、彼女!」  
なのにまた、こんな間にも昨日と同じように、今度は見知らぬ二人組の男が声をかけてきた。  
アルルは、ちょっと、びくんと警戒してしまった。  
で、でも、ボクはもうつまんないことなんか、気にしないもん……。  
「あの、ボ、ボク……」  
でもなんだかうまく言葉が出せない。  
「…………」  
詰まってしまって、一瞬妙な沈黙になった。…………すると。  
「か!かわいいー!」  
「へ?」  
「ね、ね!俺達と一緒に遊ぼうよ!ぜひ!」  
急に男達は、いきなりハート目の萌え萌え状態になって色めきだってきた!  
「え?へ?あの、あの」  
アルルは唖然としてしまって、ますます狼狽してしまう。するとシェゾが飛んで戻ってきた。  
「こいつは俺の女だ!消えろ!」  
「うわ!逃げろー!」  
「………………シェゾ」  
「ふー、ふー。…………お前、なにこんな僅かな間にナンパされてるんだ!」  
「え…………。えと……それは……ひょっとして…………」  
 
「やっぱり、ボクが、かわいいから?」  
アルルはまたなんかテンションがあがってきた。  
 
おわり。  

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