ラグナスといつものようにデートして、外で食事してた時、彼がふと尋ねてきた。
「ドラコはもう美少女コンテストって出ないの?」
「え」
「ほら、あそこのポスター」
振り返ると、彼が指差した壁にジルパの町の花祭りのポスターが貼ってあって、
そこのイベントのひとつに”ベゴニアの美姫”っていうミスコンテストが告知されていた。
近隣にあるジルパの町は生花栽培がさかんで、毎年春と秋には盛大な花祭りが開催されている。
そこではちょっとしたミスコンも行われてるようだ。
「ほえ〜」
一通り見てみても、大して気の入ってない返事しか出ないドラコ。
ドラコはもともとミスコン大好きだったんだけど、
ラグナスと関係を持つようになったらぴたりとやめてしまった。
「う、ん。別にもういいかも」
だって、一番好きな人からかわいいって思ってもらえたら、
もう他の大勢に認められたいとは思わなくなったし。
「そうなの?前はあんなにミスコン出るの好きだったのに」
「ま、まあ。それはそうなんだけど」
「でももう出る気ないんだ」
「うん」
「そっか……」
なんだか残念そうなラグナス。
「……出て欲しいの?」
「うん。そうかも」
「なんで?」
今度はドラコがなんとなく残念な気分になって言う。
「あたし、もうあなた以外の人に見てもらいたいとか思わない」
はっきりそう言ったら、ラグナスはけっこう照れながら返した。
「そ、それは、俺だって君のことずうと独り占めにしたいって思ってるけどっ。
でもさ、ドラコ、最近すごくきれいになったよ。もちろん元からすごくかわいいけど。
だからこういうのに出てみたら絶対楽勝で優勝できるんだ。
1回くらいなら、そういうところ見たいかな、って思って」
「そ、そんなこと、ないよう」
「それにさ、俺、前にこのイベント偶然見たことあるんだ。
優勝した美姫ってほんとにきれいだったんだよ?
ドラコがなったら、もっときれいだろうな、って」
「そ、そんな……」
ドラコもまた照れる。
「結婚したらもうミスコンって出れなくなるんだし」
「あ……そっか」
ラグナスと結婚してお嫁さんになったら、ミスコンは完全卒業になっちゃうんだ。
彼が出場を望むなら、最後の記念として1回だけ出てみるのもいいかもしれない……。
「でも、優勝なんて、自信ないよ?」
結局出ることにしてしまった。
ま。出ると決めた以上はまじめに取り組んで下調べしてみた。
ベゴニアの美姫というコンテストは、あくまでいち町が開催する中くらいのもので、
だいたい100人くらいが応募して、書類審査と1回予選して10人を選んで、
その中から本選でグランプリと準グランプリを決定するらしい。
このくらいの規模のコンテストでなら予選はかなりの確率で通ったし、
優勝したことだってそこそこある。
でもラグナスにはあんまり自信を表明しないでおいた。
「本選に出られたらオーケーってくらいだから、あんまり期待しないでね」
「うん」
彼はそれでも嬉しそうに返事した。
ドラコは複雑な気持ちで予選に向けて特訓とボディケアに取り組んだ。
予選はあっさり通った。
ジルパの町の会館に普段着で(もちろん普段着なんか着てかないけど)集まって
花祭りの役員さんが審査員で、ごくありふれた予選風景だった。
ドラコはかつてミスコンマニアだったときに覚えたノウハウを発揮した。
「ドラコさんの特技は格闘技ですか。じゃあなにか見せてくれますか?」
「はいっ」
笑顔を心がけながら、あまり強すぎないように、華麗さを意識して演武した。
それだけで審査員たちだけじゃなく、周囲の少女たちかも注目を浴びたのが分かった。
昔のカンは忘れていないみたい。
ただ、昔は、そういう注目を浴びることこそが喜びだったんだけど、
今回はさほどそれを実感しなかった。それが拍子抜けというか。
(やっぱりあたしミスコンとかあんまり興味なくしちゃってるかも)
でもその理由は実際はそれだけではなかった。
ドラコは、周囲の少女たちもみんな魅力的だと思っていたからだった。
他人と美しさの優劣を決めたいって気持ちがドラコにはもうとっくに消えていた。
「やったね。おめでとう!」
予選通過を報告すると、ラグナスは大喜び。
「って、予選くらいで喜んでたら、失礼かな」
「そ、そんなことないってば、うれしいよ」
うん。あなたが喜んでくれるのは、うれしいけど。
「次は本番だね!」
「う、うん。でもやっぱり、そんなに期待しすぎないで。正直言って自信ないから」
「うん!」
ほんとに分かってくれてるのかな?
そして花祭りの日が近づく。ふたりは期間中休みを取って、
前日にはジルパの町に入って、ホテルに泊まった。
「もう町は祭りって雰囲気だったね」
「う、うん」
「…………どうしたの?」
自慢のしっぽもいまいちしゃきっとしなくて、あんまり元気が出ない。
「なんだか、緊張してきたみたい……」
「え?」
そう言ったらラグナスが意外そうなリアクションをした。
「や、やっぱり久しぶりだからかな。前はこんなことなかったのに。
もっとすごい規模のコンテストに優勝したことだってあるのに、ね……」
苦笑してみせる。
「そっか。ごめんね」
ラグナスはほんとに申し訳なさそうに謝ってきた。
「え」
「それって、俺が出て欲しいなんてわがまま言ったからだよね」
慌ててフォローする。
「そんなことないよっ。久しぶりだからなだけだもん。
だいたい、ほんとに嫌だったら断ってるよ?
あたし、あなたがわがまま言ってくれるの、嬉しいもん」
「ほんと?」
「ほんとだよ?」
ちょっと見つめ合う。
日が暮れても町は花祭りの準備で活気に満ちてて、
ホテルの建物内も観光客が大勢泊まっていて、
無言でいたらそんな喧騒が部屋の中にも聞こえてくる。
でも二人にはそれがだんだん耳に入らなくなっていった。
花祭りに来たのはコンテストのためだけど、別にそれだけってわけでもない。
二人は祭りをめいっぱい満喫しようとけっこう旅行気分でやってきた。
ちょっといいホテルの部屋を取って、ダブルのベッドに並んで腰掛けている。
素敵な部屋で、今彼に寄り添っているんだなって意識したとたん、
しっぽがぴくんと元気に跳ねて、頬がぽっとなって、顔色がよくなってきた。
「……ラ、グナス……」
ロマンチックな雰囲気、全開。静かに盛り上がっていく二人。
「ドラコ……」
ラグナスが顔を寄せて来て、ドラコは自然と目を閉じる。
そしてキスしてもらった。
「ん……」
そのまま肩を抱かれて、ドラコも彼の胸板に手を添える。
そうしてとってもいい感じでキスすること数秒。
彼が唇を離した。
「あ……」
舌を入れないライトキスで終わって、物足りなくて思わず声を出してしまった。
自分がはしたない子みたいで恥ずかしくて、ドラコはますます顔が赤くなった。
ラグナスが言う。
「明日は、本番だから。その、今日は無理だよね……」
気を使ってくれて、遠慮してるらしい。
そんな彼を見てるとますますきゅうんってなってきて、
ドラコは死ぬほど恥ずかしいのを必死に耐えながら、自分から誘った。
「ううん。その、ちょっとくらいなら。い、いいよ……。
し、し…してくれたら、緊張もほぐれるかもしれないし……」
「ほんと?いいの?」
「うん…………。あ、でも…キ、キスマークは、つけないで、ね…?」
「ん、んんぅ」
また彼に唇を塞がれて、ベッドに押し倒された。
「そうか。明日は水着審査もあるんだよね」
「うん……」
「ドラコのきれいな肌、他の奴にも見られちゃうんだ」
そう言いながら彼が服を脱がしてくる。
Tシャツとジーパンをあっという間に剥ぎ取られた。
「あ、あなたが出ろって言ったんじゃない……」
「そうなんだけどね」
彼は嬉しそうに返してくる。
スポーツブラとパンツだけになったドラコの全身を、ラグナスが優しく撫でてくる。
「ドラコはほんとにかわいいから、見せびらかして自慢したいんだよね。
俺にはこんなにかわいい彼女がいるんだよって。
でも他の奴に見せちゃうのが悔しいような気もする。微妙なんだなあ」
男心、なのかな?
聞いててうれしくて恥ずかしい。
でもそれはドラコも思っていることだった。
ラグナスのことはほんとに素敵な男性だと思うし、
他の女の子と仲良くしてたらすぐやきもちを焼いてしまう。
そんなときいつも彼は俺は君のことだけが好きって言ってくれるので
ドラコもそうすることにした。
「あの、あのね。あたしはね……全部、あなただけのものだよ……。
ちょっと他の人に見せたくらいじゃ、あなただけのものだってことは
絶対変わったりしないもん……」
照れくさいセリフが自分でもびっくりするくらいスムーズに出た。
「ああ、ドラコ…」
「きゃ、ああっ」
そのセリフに喜んでくれたのか、ラグナスが抱きしめてきて、
お尻をぎゅっと掴んできた。
いきなりの刺激にしっぽが硬直して反応した。
そしてブラをたくし上げられて、乳房に頬をすりすりされた。
乳首を唇で挟んで、先端を舌先でちろちろ舐められた。
「やあ、あっ……」
「………ねえ、ドラコ。水着で隠れるところなら、キスマークつけてもいいだろ?」
「え……」
ラグナスは弱いタッチで乳首の周辺を舐めながら聞いてきた。
いつもはもっと強い調子で愛撫されるので、もどかしくてぞくぞくする。
「あ、あ……えと」
「ドラコのこういうところは、見ていいのは世界で俺だけなんだよね……」
「え……うん…」
彼の囁きに無意識にうなずく。
「じゃあ、ここに、俺の跡つけるから……」
「う……はあぁ!」
「…………明日は、これつけて出て」
彼が乳首の周囲に強く吸い付いた。
ちょっと痛くて気持ちよくて、乳首がますますじんじんした。
「あ、ああっ、ふやあっ」
左の乳首のとなりに、赤い跡がついた。
(キスマークつけちゃだめって言ったのに〜)
確かにここなら問題ないし、彼の痕跡が自分のカラダに刻まれるのは好きなんだけど。
「ふふ」
彼は満足そうに微笑んだ。
胸をちょっといじられただけなのに、パンツの中はもうぐっしょり。
ラグナスは次はそこに手をのばした。
足を開かされて、パンツの上から指でぐりぐりされた。
じゅく……
「ふやあぁ!」
愛液が染みだして、指がやわらかくめり込む。
大きく勃起したクリトリスを下着ごとしごかれた。
包皮がめくれて、布地が直接芯にこすれる。
「ドラコのここも、俺だけのものだよね……」
「はああ、はあ!ひゃああん!」
気持ちよくてまともに返事を出せない。
そのかわりに、かわいい鳴き声と感じているっていう事実で、
ドラコはあたしのここもあなただけのものですって彼に答えていた。
「ひゃ!あああ、だ…め!もう……いっちゃ…いそ…ひあぁ!」
哀願しても彼はかまわずにクリトリスをいじめ続ける。
「あ!あひっ、い……くううぅん!!」
びくん!
(…………またすぐいっちゃった……)
いつものことだけど、あまりにたやすくいかされてしまう自分のカラダに呆れてしまう。
ラグナスとセックスをすればするほどカラダは感じやすくなっていくのに、
彼にいくところを見られるのは何度しても恥ずかしさが消えない。
「じゃあ、そろそろ、いくよ……」
そして彼はというと、自分をいかせるのが楽しくて仕方ないらしい。
意気揚々と服を脱ぎ捨てて、半端に脱がされた自分の下着も取り去られる。
そしてお互いに生まれたままの姿になってカラダを重ねてきた。
また今夜も彼に何度もいかされちゃうのかな…って思ったら彼が言ってきた。
「明日があるから、今日は1回だけにしとこう」
「え……あ、うん……」
ほっとしたような、残念なような。
「入れるよ……」
「う、うん…来て……」
彼が巨大なペニスの先端を膣口にあてがった。
ドラコは羽としっぽを震わせながら彼の侵入を待った。
そしてぬるぬるの膣内にペニスがずぶずぶと沈んでいく。
「は……あ……あ……!」
難なく一番奥まで届いて、さらに彼はずんずん突いてきて、根元までめり込ませる。
「んふううぅん……」
彼と繋がった一体感と子宮口をぐりぐりされる感覚がたまらなくて、
ドラコは両手両足を彼にしがみつけて、ペニスを締め付けた。
「あ、あ……すごいよ、ドラコ……」
彼が言うにはこの締め付けがぐにぐに絡み付いてきて最高に気持ちいいらしい。
でもドラコはそんなことは分からなくて、ただ快感と幸福感に喘いでいるだけだ。
絶妙の名器は無意識のうちに彼を歓迎して、二人はひとつになった。
彼がゆっくりと動き出した。
「はぁ……はひっ……はあっぁ!」
さっき軽くいかされたばかりだけど、また快感の並が急上昇していく。
ぐちゅぐちゅ……にゅる、にゅぐ……!
「ドラコ、好きだよ……ドラコ!」
「あた……し、ひぃ!」
あたしも、大好き!
そうしてしばらくそうしてたあと、彼が聞いてきた。
「もう……いきそう……?」
「あう、う〜…」
ドラコは首をこくこく振って頷いた。
「じゃあ、俺もいくから、いっしょにいこう」
彼がスパートをかけてきた。
ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅ!
「ひゃあああぁ!ああ!あひ!ひいぃ…!」
「よし……ドラコ……いって……!」
「ら、らぐ……!ああ、あああああぁーッ!!」
びくびくびくッ!!
ドラコが思いっきり絶頂を迎えて、彼も子宮に精液を注ぎ込んだ。
「は…………あ……あ……」
ドラコは朦朧としながらも、思い切り締め付けて彼の精液を搾り取っていった。
「はあ……」
いつもよりかなり短めのセックスだったけど、とってもしあわせ。
「ねえ、ラグナス」
「ん?」
「あなたのドラコは、明日、がんばるからねっ」
彼のおかげで緊張もずいぶんほぐれた。
ドラコは昨夜ラグナスに愛して貰ったあと、早めに寝て早めに起きた。
隣で眠る彼を起こさないようにベッドから出てシャワーを浴びる。
しゃきっと目が覚めたあと、カラダを洗って手入れして自分チェック。
むくみなし、肌荒れなし、ムダ毛なし、けがなし!
左胸のキスマークも彼からもらったお守りみたいで、いいかもしれない。
服着て、化粧水つけて、コンディションベストでバスルームを出た。
「ラグナス、ラグナス」
ゆさゆさ
「ん……う、ん……」
「おはよっ」
コンテストは昼からなので、午前中は二人で花祭りを見て回った。
ジルパの花祭りは文字通り華やかで、たくさんの花が飾られて盛り上がっていた。
おいしそうな食べ物屋もいろいろ店を出してたけど、
今はぐっと我慢してラグナスのを一口食べるだけにした。
「おねえさん、お花をどうぞ」
途中で小さなかわいい女の子が声をかけてきた。
この町の子らしくて、フラワーバスケットをかかえている。
「今みんなに配ってるんです。ただであげます」
「ふふふ。そうなんだ。ありがとね」
思わず微笑んで小さなブーケを受け取る。
その中の黄色い花に目が止まった。
「きれい。これはなんていう花?」
「アルストロメリアです」
女の子即答。さすがは花の町の子ども。
「いいね。コンテストのときどこかにつけたら?」
ラグナスがなにげなく言ったら、女の子が反応した。
「コンテストってもしかしてベゴニアの美姫?おねえさん出るの?」
「え。うん」
「うわー。うわー。すごい。いいなあ。頑張ってね!」
「あ、ありがと」
「あたしも15歳になったら絶対出ようって思ってるのー!」
女の子はハイテンションになって応援してくれた。
「おねえさんなら絶対優勝できるよ。あたし絶対応援しに行くから!
じゃあね!ばいばーい!絶対見に行くからね〜!」
「ば、ばいばい」
二人はちょっと戸惑いながら、ぶんぶん手を振る女の子と別れてホテルに戻った。
「さっそくファンがついたね」
「もう!」
コンテストの時間が近づき、ホテルで衣装や道具を取って、会場に向かう。
「俺も入っていいの?」
「うん。身内ってことで。控え室まではだめだけど」
「それは分かってるって」
受付を通って、ロビーで彼と分かれて、控え室に入る。
「じゃあ、俺も応援してるから」
「……うん!」
「……おはようございまーす」
控え室に入る。
「おはようございます」
「どうも」
出場者は10人。先に3人来てて、しばらくして全員揃う。
いち地方のコンテストだからそんなにぴりぴりしてない。
でも一応みんなライバル。
そんな緊張感が漂っていた。
けどもう萎縮はしてないし、むしろいい感じで気持ちを高めてくれる。
ドラコはコンテストの醍醐味を久しぶりに肌で感じた。
女性スタッフが控え室に入ってきて説明した。
まずは水着で全員で入場してオープニングで、そして全員一旦退場したあと
1番から一人ずつ出て水着のまま自己紹介とインタビュー。
自分の番が終わったら退場してすぐ着替えて、
また一人ずつ今度は好きな衣装でのアピールタイム。
で会場客の先着50人と審査員5人の投票で夕方に結果発表。
「いきなり水着なのね……」
10人の出場者はそれぞれ着替えとメイクを始めた。
さすがはファイナリスツ、みんな美少女でスタイルもいい。
その中でドラコはとくに一人の少女に目を引かれた。
ぱっちりした目にストレートロングの髪で、額に大きな一本角があって、
お尻に真っ白で流れるような馬のしっぽがある、獣人族の少女。
ユニコーンの眷属のユニコニュートって種族の子だ。
目が引かれたのは、お互い角があって希少種族同士っていう共通点だけじゃなくて、
ものすっごくきれいで、華というかかなりオーラをその子に感じたからだ。
(ああ、この子が優勝候補だろうなあ)
なんて思いながら見とれてたら、その子と目が合ってしまった。
「……」
「あ。ごめんなさい」
「いいえ」
にっこり。
「……決勝は獣人族って私達だけね」
「え。うん、そうだね」
「お互いがんばりましょ!」
……見た目だけじゃなくて性格もすごくいいみたいだ。
(ラグナスごめんね。今回はけっこうきびしいかも……)
水着のブラをつけながら、キスマークに謝るドラコだった。
そんなこんなで全員準備が終わって、いよいよコンテストが開始された。
ドラコの順番は、7番目!
「いえーっ!」
「こんにちはー!今日はいい天気になってよかったですねー!」
会場の公民館は大いに盛り上がっていた。
美人な司会のお姉さんが流暢にMCして、観客が応える。
ちなみに観客には意外と女性が多いみたいだ。
このコンテストは老若男女に人気があるらしい。
「……今回は125人の応募者がありましてー、その内10人が予選突破しました。
みーんなすてきな女の子達です。……見たい?はやく見たい?」
「見たいー!」
「おっけー!じゃあさっそく登場していただきましょう!選手入場ー!」
選手?
「では順番に入場してください」
舞台袖にいたドラコ達にスタッフが案内した。
「1番!キャシー・ミュートさーん!19さーい!……」
番号を呼ばれた少女達が一人ずつ入場していく。
そのたびに歓声があがった。
(よーし、がんばるぞ!)
ドラコは何度か肩を上下に揺すって気合を入れた。
「5番!ユニコニュート族のユーニさん!16歳!」
(……あ、あの子だ)
すらりとしたスタイルに、青いタンキニ。
彼女…ユーニがさっそうと入場していった。
「おおおー!」
「かわいー!」
歓声がひときわ盛り上がったのが分かった。
(やっぱりかわいい……)
ドラコちょっとたじたじ…………なんてしてられない!
「7番!ドラコケンタウロス族のドラコさーん!17歳〜!」
すぐにドラコ入場の番が回ってきた。
スタンダードな黒のビキニの上下に、足元にアンクレットとミュール。
しゃんしゃんと音を鳴らして会場に出ていった。
入場した瞬間、さっきのユーニと同じくらいの歓声があがる。
まず客席のラグナスを探して、前列の応援席にすぐ見つける。
彼が微笑んで手を振ってきたので、アイコンタクトで返事した。
そして、自分をアピールするモデルウォーキングで舞台中央に向かう。
…………そうしようとした時、あることに初めて気づいた。
ゆさゆさ……
水着でモデル歩きをすると胸がすごく揺れるということに。
「……っ!」
ドラコは処女だったころはAカップのぺたんこ胸少女だった。
それで彼に抱かれるようになってみるみる成長して、今ではDカップになってる。
そうなってから、初めてコンテストに出場したもんだから、
ドラコは人前で巨乳を晒すことも、今、初めて経験しているのだった。
かあああっ
ドラコ思いっきり赤面。
一瞬慌てて手で隠しそうになったけど、そこは意地で我慢した。
かすかに目を潤ませて、必死に照れ笑いしながら、手を振って歩いた。
(もう!ラグナス!恨むからね!)
当のラグナスは相変わらず楽しそうに観覧している。
そんな感じでオープニングは、恥ずかしさと戦うので精一杯だった。
……だからドラコは、その照れている様子が観客大いにウケていたことも
それまた自分で気づくことはなかった。
会場はオープニングの時点で注目がユーニとドラコの二人に集中していた。
涼やかに微笑んでいるユーニと、頬を染めてはにかんでいるドラコ。
対照的な様子の二人の獣人族の美少女が会場を沸かせていた。
オープニングが終わって審査が始まる。
ドラコは舞台裏のソファーに座って、改めて精神集中していた。
(落ち着けー。落ち着けドラコ。胸揺れ見られるくらいなによ。
水着着てるんだし、これくらい、どってことないわ!)
ぶつぶつぶつ……。
ようやく落ち着いたころにはユーニのインタビューが始まっていた。
「83、56、80です」
「おお〜、スリムねえ〜。じゃあえ〜、このコンテストに出たきっかけは?」
「あ、私、劇団で役者したり歌ったりしてるんですけど、
このコンテストに出たら劇団の宣伝になるんじゃないかな、と」
「あはは。じゃあちょっと宣伝する?」
「はいっ。劇団フォーナインです。今ムーンゲートという舞台をやってます。
ぜひ見に来てくださいねっ」
脇からその様子を見るドラコ。
(舞台やってる子なんだ。なるほどって感じ……)
でも作り物って印象は一切しなくて、本当にいい子そうで、本物って感じ。
そしてドラコの番がやってくる。
「ドラコさんはスタイル抜群ですね。スリーサイズは?」
「え、えと……89、58…ヒップはしっぱ抜きだと85です……」
「すご〜い。ぼんきゅっぼんですね」
スリーサイズ言うくらい平気だって思いつつもやっぱり赤面してしまった。
でも司会のお姉さんはどんどん質問してくる。
「ドラコさんはどうしてこのコンテストに出ようと思ったの?」
「あ…彼がすすめてくれたから」
「彼氏いるんだー。どんな人?」
「強くてかっこよくて……世界で一番好きな人です……」
ほとんど無意識に素で答える。
客席のラグナスと一瞬、見つめ合った。
インタビューは照れまくったけど、途中でラグナスを見たら落ち着いてきて、
そのあとはスムーズに受け答えができて自分の番を済ますことができた。
ほっとしながら舞台を降りる。
けど。
(………………………………………………………………って!
あたし彼氏がいること言っちゃってるよ!)
彼氏がいてもそのことは普通言っちゃだめだっていうのは
ドラコが学んできたミスコンの攻略法では基礎の基礎だ。
彼氏がいたことなんてずっとなかったからすっかり忘れていた。
(あ〜、なにやってんのあたし!)
きっと会場の人はインタビューで「彼氏いない歴16年です」って言ってた
ユーニのほうを断然支持するだろう。
(ただでさえ不利なのに……もう負け決定かなあ……)
うなだれるドラコであった。
でもちょっとしたら、そうなって案外良かったかもって思えてきた。
別に優勝は絶対目標ではないんだ。
もともとラグナスのために出たんだから、彼が喜んでくれればそれでいいんだ。
彼が愛する人だってことも隠す必要なんてない。
ユーニや他の出場者と自分の出来を比較するのも無意味だと思った。
それにこれからのアピールタイムをがんばれば上位には入れるかもしれない。
「よし!あたしはあたしだ!」
今日は一喜一憂してばかりだけど、今度こそ完全復活!たぶん!
張り切って着替えに走った。
水着から、自前のノースリーブのロングチャイナに着替える。
花祭りに合わせて選んだ赤地に白い花の刺繍が入ってるやつで、
深〜いスリットが大胆なとっておきのドレスだ。
あと、これを着て演武するから、ピンクのアンダースコートもはく。
見えてもいいやつ。
着替え終わって、メイクや髪も手直しした。
「ん〜…………あ、そうだ」
ドラコは今朝女の子から貰ったブーケから花を一輪取った。
黄色いきれいな花。それを左胸に挿して飾った。
そういえば、あの子も応援するって言ってくれてたっけ。
ドラコはまたまた力が湧いてきた気がした。
舞台袖に戻ると、4番の子のアピールタイムが終わるころだった。
そして5番のユーニが入場していった。
ユーニは歌を歌った。
さすが本職だけあって、とてもすてきな歌声だった。
ハーピーとは比べもの……って、比較するのが根本的に間違いなくらい。
ドラコは素直に感嘆した。
ユーニの番が終わり、彼女が戻ってきたとき、ドラコは拍手で迎えた。
「すごくいい歌だったよ!」
「あ……ありがとうっ」
ユーニが微笑み返してくれる。やっぱりかわいい子だと思う。
「すてきなチャイナドレスね」
「でしょ。えへへ」
「あなたもがんばってね!」
「うん!」
そしてドラコのアピールタイム。
題目は拳法演武披露。
入場したとたんわっと歓声が沸いて、ドラコは笑顔で応える。
でも舞台中央に立って一礼すると、すっと静まった。
そして一拍置いて、ドラコは舞い始めた。
しゃん……しゃん……ひゅおっ
演武は最高の出来で披露できた。
全身が流れるように動いて、型のひとつひとつが美しく決まったと思う。
観客も魅了されていた。
水着で恥らってたときとは別人のように華麗に映っていた。
……しゃん!
演武が終わったら拍手喝采。
りりしい表情がまたすぐはにかみ顔に戻ったところもまた可憐だった。
はふー……やりとげた。
舞台袖に戻ったとき、ユーニが待っていて、拍手してくれた。
「すごーいきれいだったよ!」
「そ、そんなことないよう」
「ううん、最高だったよ」
「あなたの歌も最高だったじゃない」
彼女と二人で、笑い合った。
全員のアピールタイムが終わり、再度舞台に並ぶ。
「それではこれより客席代表50人と審査員の投票していただいて、
そっこーで集計して、グランプリと準グランプリを決定いたしまーす。
結果発表は5時です。みなさん5時までには戻ってきてくださいね!」
そして退場。
控え室に戻る途中で、ラグナスが待っていた。
「おつかれさま」
「もうー。緊張しっぱなしだったよう」
「うん。見てて緊張してるなって分かった。でも後半はふっきれてたよね?」
「えへへ」
寄り添っていちゃいちゃしてたら、ユーニがそこを通っていった。
「……彼氏?」
「あっ…………うん」
「かわいいし、かっこいい彼氏はいるし、私完敗かも」
「そんなことないってば!」
ユーニはひやかしながら先に控え室に戻った。
「……ねえ、あの子、かわいいし歌うまかったし、すごかったと思わない?」
「ん?んー、まあそうかも?」
ラグナスはあんまり興味ない様子。
「それより結果発表までの時間はどうするの?」
「ん〜、外に出るものめんどいし、このへんで時間つぶす」
「俺もいっしょにいていい?」
「くす、いてくれなきゃやだよう」
館内のすみっこにあるベンチを見つけて、二人で腰掛けた。
「手ごたえはどう?」
「まあベストは尽くせたから、もうどんな結果でも満足よ」
「あれ。落ち着いてるね。結果が気になって不安になったりしないの?」
「…わざわざ不安にさせること言わないでよう。なんでそんなこと言うの〜?」
「ドラコが不安になってたら、やさしく励ましてあげようと思ってたのに」
ラグナスはそう言ってドラコの肩を背中の羽ごと抱いてきた。
…………周りには誰もいない。
「もちろん、不安なことは、不安だけど」
「じゃあ励ましてあげる!」
そうして、キスした。
「………………そろそろ時間じゃない?」
「……うん」
結果発表の時間まで二人でほとんどなにもせず抱き合いながら過ごした。
ずっと彼の腕の中でぼ〜っとしてたドラコがぼんやりうなずく。
「ほら、しっかりしなきゃ!」
「……ふぇ。あ、うん!そだね!」
「ほら、いっといで」
「うん!いってくる!」
「おまたせしましたー!」
ベゴニアの美姫コンテストの結果発表は審査のときより観客が増えていた。
1000人収容のホールが確実に満員以上。
そんな中出場者の少女たちは舞台に並んで発表を待っていた。
「いよいよ今年度春のベゴニアの美姫が決定しますよー!
まずは審査委員長の総評をお願いします」
「はい。今回もとても素晴らしいコンテストでした………………」
委員長のおばさんの話が続く。
そんな中、出場者はみんな固唾を飲んでいたけど、ドラコは落ち着いていた。
これでコンテストに出るのも最後。審査結果に関係なくめいっぱい楽しめた。
「ありがとうございました。…………さて、ではお待ちかねの結果発表です!
まずは…………準グランプリ〜!」
ドラコがなんか無の境地を悟ってる間に、結果発表の時がきた。
だらららららららら……なんてドラムロールは鳴らなかったけど、
司会のお姉さんと審査委員長は間をためまくる。
「準グランプリは………………」
「5番ッ!!ユーニさーん!!」
「わああああぁ!」
会場盛り上がり。
ドラコは目をぱちくり。
え?なんで?あの子はグランプリじゃないの?
うそ!?
ドラコが唖然としてる中、当のユーニは大喜びで一歩前に出て表彰を受けた。
「おめでとうございます!」
「はいっ、嬉しいです。最高です!」
さっきまでの無の境地はどこへたら、ドラコはとたんにうろたえまくった。
ドラコの中ではグランプリはユーニになるのが完全に決定事項だったのだ。
じゃあじゃあじゃあじゃあじゃあグランプリは?だれ?だれなの?
もしかしていやそんなでもまさかあるいはひょっとして?
ユーニが銀のティアラを授かって、表彰と賞品目録授与が終わる。
「ユーニさん、おめでとうございました!」
ぱちぱちぱちぱちぱち!
「…………ではぁ〜…………続きまして!」
どきーん!
ドラコ心臓爆発寸前。
「グランプリの発表です!委員長発表おねがいします!」
「え〜……、今年度春期ジルパ、ベゴニアの美姫、グランプリは…………」
お姉さんと委員長はさっき以上にもったいぶりまくり。
ドラコ固唾飲みまくり。
おねがいぃ、早く言ってぇ、死ぬぅ……!
……………………ッ!
「グランプリは………………7番!ドラコさんですっ!!!」
優勝が決定した瞬間、ドラコはまじで心臓が一瞬止まった。
これは卑下でも謙遜でもなく、ドラコはほんとに自分の優勝はないと思い込んでいた。
照れてしまったり彼氏がいるとか言ったり、そういうのは大きなミスの筈だったのだ。
それにユーニや他の出場者もとても輝いて見えていたし。
うそ……。
「ほらっ」
ぼーっと突っ立ってるとユーニがやってきて手を引っ張った。
他の出場者も結果に異存がある様子もなく拍手して祝った。
(もちろん多少悔しそうではあったけど)
うおおおおぉお!
会場も最高潮に盛り上がった。
「おめでとうございます」
「あ……う…信じられない……です」
「きゃー!」
「ドラコちゃーん!」
表彰やエンディングはほとんど夢心地。
今まで優勝してきたどんなコンテストよりも嬉しかったかもしれない。
金のティアラを戴冠したときには、ちょっと涙ぐんでしまった。
涙で目がぼやけたけど、客席のラグナスがほんとに喜んでるのが分かった。
(あぁ…ラグナスゥ……信じられないよう)
コンテストは全てつつがなく終了して、ドラコ達は声援がまだ続く中舞台をはける。
「……やっぱりあなたが優勝すると思ってたわ」
ユーニがこっそりと話しかけてくる。
「舞台に慣れてるみたいなのに、すごく初々しくて不思議な魅力があった。
そんな魅力があるの、プロでもそうそういないわよ」
「…………あ、あたしは、あなたが優勝すると、思ってた……」
「そう?私は自分では今回は準優勝だなーって思ってたよ。すごく納得してる。
劇団の宣伝できたし、それなりに賞金と賞品ゲットできたし大満足よ。うふふ」
「ユーニ……」
「あ、ほら。彼が待ってるよ。じゃあ、ね。……あ、そうだ。
ドラコも良かったら私達の劇団の舞台観に来て!」
「……うんっ。絶対行くよ!」
「やったね!ドラコ!」
「ラグナスーッ!」
舞台裏で待っててくれた彼の胸に思い切り飛び込んだ。
後片付けで忙しい舞台裏だったけど、その場にいるみんながそんな二人を祝福した。
「すっごく接戦だったのよー」
二人で感動の名場面を演じたあと、司会のお姉さんと話す機会があった。
「ここだけの話、票はほとんどあなたとユーニさんの二人に集中してたの。
あなたが28ポイント、ユーニさんが26ポイント。たった2ポイント差!
どっちが勝ってもおかしくない、まれに見る名コンテストだったわ〜」
「うん。あたしも、ユーニが勝ってもおかしくないと思いました」
その後二人がホテルに戻れたのはけっこう遅くなってからだった。
優勝賞品受け取りの手続きとかがいろいろあったから。
「お帰りなさいませ。ドラコ様、ラグナス様、お待ちしておりました。
そしてドラコ様、グランプリおめでとうございました!」」
ホテルのフロントがうやうやしく出迎えた。
「それでは部屋の準備は出来ておりますので、お荷物を運ばせます」
「は、はい」
これも賞品のひとつだった。ジルパホテルのスイートルームご招待。
二人はさっそくそれを今日使うことにして、
スタンダードダブルからロイヤルスイートに部屋を移った。
二人ともスイートルームなんて入ったこともないから、戸惑いまくりながら。
「すご……い」
客室スタッフが退室して、スイートルームにやっと二人っきりになって、
ドラコは呆然と声を漏らした。
今日2度目の夢みたいな気分。
いくつもの広い部屋に豪華な家具と調度品。たくさんのドリンク。
コンジェルシュとかターンダウンとか、聞いたこともないVIPなサービス。
美しいカーテンの大きな窓から見えるきれいな町の明かり。
「ドラコのおかげだね。こんな部屋に泊まれるなんて」
「そ、そんな」
「照れることないよ。今日の君はここに泊まる資格がある女の子なんだから。
ほんとに”お姫さま”になったんだから」
「お、お姫さま……」
「うん」
「…………じゃあ、少しはあなたと釣り合いがとれたかな」
勇者のあなたと。
「…………ドラコはもともと、俺のお姫さまだよ。
まがりなりにも俺は勇者だから、俺が選ぶ女性は姫君なんだ。
それは国の王女って意味じゃない、そして俺が思い込んでいるだけでもない。
今日はあそこにいたみんなが君のことを祝福してた。
君はほんとに姫君っていうのにふさわしい女性なんだよ」
「…………」
「今日は俺のわがままをかなえてくれてほんとにありがとう。
さすがは俺のお姫さまだ…………好きだよ、ドラコ」
「あ…ラグナス……うれしい……あたしも、好きよ……」
お姫さまは勇者の熱い口付けを受けた。
「…………ドラコ、シャワー浴びておいで」
「……はい」
「ゆっくりしていいよ。俺は部屋探索して楽しんでるから」
「うふふ……うん」
バスルームも超ゴージャス。
なにもかもがすごくロマンチックすぎて、まるで、夢見がちな少女が
初体験するならこんな場所と空想するような部屋だった。
……って、自分はもうとっくの昔に処女じゃなくなってるんだけど。
それどころかもう何百回といやらしいことをされたカラダなんだけど。
でも、ラグナス以外の男に汚されたことは一度もない。
だから、あなたから見れば、きれいなカラダだって言ってもいいのかな。
……そんなあなただけのあたしは、今夜もすべてを捧げるわ。
彼はゆっくりしていいって言ったけど、やっぱり早めにあがった。
そして備えてあったバスローブを羽織る。
背中に羽があるから大きく胸をはだけた格好で、彼のもとへ向かった。
彼はハリウッドツインのベッドにくつろいでいた。
「おいで。これ、ナイトキャップだって」
高級そうなワインをちょっと開けたりしてる。
「飲んでみる?」
「うん……あっ」
彼はドラコを抱き寄せると口移しで飲ませてきた。
「んふ、ん……」
甘いワインと彼の舌が口の中に入ってくる。
そのまま押し倒されて、ずっとキスが続く。
だんだんワインの味がしなくなって、ぽ〜っとしてくる。
ドラコはワインを一口飲んだだけでは酔ったりしない。
非現実的なシチュと彼のキスにさっそくとろけてきたのだった。
「んん、ん…んふぁ、んう……」
ラグナスの舌がドラコの口の中をむさぼる。
ワインの次に彼の唾液を送り込まれて飲まされた。
やってることは昨日とあまり変わらないのに心の高まりがまるで違う。
「……ふう…………ドラコ」
「ラグナス…………んぅ」
昨日は心の不安をかき消すためにカラダとカラダで慰めてもらったけど
今は逆で、カラダはコンテストでちょっと疲労してるけど、
精神的なラブラブ度のほうが絶好調になっている。
もう彼が愛しくて愛しくてたまらない。
格闘家なんてやってる獣人の自分がこうして人間の勇者の
お姫さまになってしまうなんて。
彼がバスローブの前を開いて、裸身をあらわにする。
「あぁ……」
空気と彼の視線が火照ったカラダに晒された。
「今日さ……会場にいた男たちがみんな君のこと見てたよ」
「え……」
「水着姿とか、チャイナで演武してスカートがめくれるところとか、
みんなが君のカラダを夢中になって見てた」
全裸姿を見つめられて、急に変なこと言われて、羞恥心がぶり返す。
「やだぁ、なんでそんな……」
「手で隠したらだめ」
ラグナスが両手を掴んで制した。
「どうだった?みんなに見られて恥ずかしかった?」
「は、恥ずかし…かった……」
「今は?俺にはだか見られて恥ずかしい?」
「は…ずかしい……」
ラグナスは上体を起こして膝立ちになってドラコを上から見下ろした。
「…………ドラコ、自分で足ひらいて」
「えっ、やだ…」
「だめ。俺今君のこと恥ずかしい思いさせたくて仕方ないの。
ドラコの一番恥ずかしい姿を、俺にだけ見せて欲しいんだ」
「…………うぅ」
ドラコはラグナスの命令に応えて、おずおずと開脚していく。
自分の一番大事な部分を晒すことの恥ずかしさを改めて彼に強調させられて、
ドラコは処女みたいに真っ赤になって悶えた。
「ほら、もっと。お尻の穴がはっきり見えるくらいに」
「いやぁ……」
関節が柔軟なドラコの足が限界まで開く。
「…………じゃあ次は、おまんこを自分の指で開いて、奥まで見せて」
無慈悲な命令はまだ続く。
ドラコは泣きながら命令に従わされた。
くぱ……ちゅく……
性器を指で広げた瞬間、かすかに淫らな水音がした。
「もう濡れてるね。愛液がお尻の穴まで垂れてきてるよ」
「うぅ……ぐすん……」
彼は今夜はお姫さまのように優しく愛してくれると思ったのに
いきなり辱めを受けさせられてドラコは泣いた。
でも、ドラコは屈辱に泣きながら確実に股間を濡らして感じていた。
「ドラコはすぐおまんこを濡らすいやらしいお姫さまだね」
「ひどい……ラグナス……どうしてそんないじわるするの……」
「うん。俺、ほんとはこうやってひどいことするの好きなんだと思う」
あっさり肯定した。
「え……?」
「これじゃあ勇者じゃなくてお姫さまを陵辱してる悪の魔導師だよね。
誰にも秘密だよ。俺がほんとはこんなひどい奴だってことは。
……ドラコがこんないやらしいお姫さまだってことも俺だけが知ってる秘密。
だから、ぜんぶ、二人の秘密だよ?」
「ふたりのひみつ……」
「そう。分かった?」
「…………うん」
なんだか急に安心してきた。
二人だけの秘密なら、いじわるされても、それで感じちゃっても、全然かまわない。
勇者とお姫さまは、二人だけのときだけはとってもいやらしい二人になっても。
「さて、じゃあ、たっぷりかわいがってあげるからね……」
「う、うん……かわい、がって……」
ラグナスはゆっくり全裸になって、勃起したペニスを見せ付けた。
ドラコのといっしょで、熱くなって先端を濡らしている。
「じゃあ、どうして欲しい?」
「……い、入れて欲しい」
ドラコはいやらしい欲望を素直に求める。
まだ彼にほとんどカラダを触られてないのにもう完全にできあがっていた。
もういきなり突っ込まれても、きっと気持ちよくてすぐいってしまうだろう。
「もうちょっと具体的に言ってよ」
彼がまたいじめてきた。
「……あ、あたしの」
そして彼のいやらしい欲望にも応える。
「あたしの……おまん、こに、あなたのおちんちん…入れて、ください……」
羞恥心を煽られながら卑猥な単語を口にした。
(い、言っちゃった…よう……)
恥ずかしくて死にそうになる。
なのに膣口からはまた薄白い粘液が溢れて、ますますじんじんと興奮していった。
「……ふぅッ」
その様子を見て彼も興奮していくのが分かった。
彼は自分のペニスを握ってごしごしと擦った。
その拍子に彼の先走り液がぴゅっとドラコのお腹に飛び散る。
「……欲しい?」
「ほ、しい……」
「…………じゃあ……もうちょっとお預けしようかな」
……彼はまだいじめるつもりのようだった。
ドラコはくらくらして、おかしくなりそうだった。
「お、おねがいぃ……」
「だーめ」
「ひゅあん……!」
ラグナスはドラコの両足をかかえて、股間に顔を寄せた。
そして舌先でひくひく動く膣口をつんつんした。
「ひいぃ!ひあ!」
彼は弱いタッチであちこちに舌を滑らして、そしてお尻の穴をとらえる。
ちゅ…にゅ……
「いやっ、いやあぁぁ!」
「もういきそうになってるね。これならお尻舐めてるだけでいっちゃうかな」
舌先が肛門を押し入ろうとしてきた。
あまりの恥ずかしさと快感に太ももがびくんびくんと震えた。
「ひッ……ひゃあ!」
また涙がぽろぽろ出てくる。
いじめられて、なにされても感じるカラダになってても
いくらなんでもそんなのはいやだった。
「やめてやめて……い……や……!」
それでもカラダはどんどん高ぶって、いきそうになった瞬間に、
ラグナスがお尻攻めをやめた。
「……ちょっとやりすぎた?」
「ラグ…ナ…ス……」
いじわるされてつらかったけど、ほんとにいやだって思ったときには
ちゃんとやめてくれたことが、心が通じた気がしてちょっとうれしい。
「ごめんね……じゃあ、いくよ?」
「うん…うん」
ラグナスがドラコのカラダに覆いかぶさった。
彼の体重や、自分の乳房と彼の胸板が密着する感覚が心地よい。
もっともっと密着したくて、お互いの全身を絡ませあう。
「んふう……ん」
「ほら、じっとして」
彼がカラダを押さえつけてペニスをゆっくり突き立てていった。
「ん……あ……あ……っ」
ぐにゅ……
ドラコは彼が入ってきた瞬間口をぱくぱくさせて喘ぐ。
奥まで入ってきたら、彼が囁いてきた。
「ドラコ……大好きだよ……」
「はあぁ……あっ、あっ」
びくん!
やっとペニスを入れてもらえて、愛の言葉を囁かれて軽くいってしまった。
膣壁がぎゅっとペニスを締め付けて二人の体液が混ざって結合部から漏れる。
ドラコは口を開けて舌をふるふるさせて必死に呼吸した。
そうして喘いでたら、彼が唇を塞いできた。た。
そしてラグナスはキスしながらもぞもぞ動いて全身をすり合わせる。
膣内のペニスも膣壁をごりごりこすりつけた。
「…………ひ……んっ」
息苦しくて気持ちよくてしあわせで意識が朦朧とする。
そんな中を彼が激しく突いてきた。
クリトリスを押されて、膣壁をこすられて、子宮を突きあげられる。
ついさっきいったばかりなのにまたあっけなくいきそうになる。
「ふぁ!……ドラコ!ドラコ!」
「ひいぃ!ひあッ!ああぁぁ……!」
ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅん!
そして珍しく彼のほうが先に射精した。
「ドラコ……ッ!」
どくん!!
ほんとに子宮に精液が注がれた感覚がした気がして、その刺激でドラコもいった。
「あっ…あ……あぁ……!」
「ドラコ、ドラコ……」
「…………ぁ」
ドラコはちょっと失神してしまったみたいだった。
ラグナスに起こされた。
「……んあ……ごめん、あたし、また失神しちゃった……?」
「うん。俺のほうこそ、ごめんね……また無茶して……」
「ん、んーん」
やさしいラグナスに戻っている。
ドラコはすりすり甘えた。
気絶したのはほんとに一瞬だったみたいで、まだ二人は繋がっている。
自分の中の彼は、また全然衰えていない。
「あの、ドラコ……」
「なあに?」
「もう1回、してもいい?」
「んぁっ」
ぐりっ
「も、もう1回だけなら、いいよ……」
二人はそのまま第2ラウンドを始めた。
でももともと超人的に強いラグナスは、そのもう1回だけでドラコを、
まるで4、5人の男たちに輪姦されたみたいにぐちょぐちょにしてしまった。
結局ドラコはまた何度もいかされて失神して、そのまま朝まで眠った。
でも、こういうことは割といつものことだったりする。
もしこれが並みの女の子だったら、きっとすぐ壊れてしまってるだろう。
体が丈夫で心から彼を愛してるドラコだから彼のパートナーが務まるのであって、
そういう意味でもラグナスにとってドラコは唯一無二のお姫さまなのかも。
翌朝、花祭りの二日目は二人ともけっこう遅くまで眠り込んでしまった。
やっと目が覚めたときは昼近くになっていた。
「…………あ!今日パレードがあるんだよね!」
「んや……そうだっけ?」
「ドラコ覚えてないの?ベゴニアの美姫は今日のパレードにも出るんだよ!?」
「……!?」
昨日はいろいろあって混乱してたけど、優勝したあとの手続きで、
そんなことも言われたような記憶がよみがえってきた。
「もうあんまり時間がないよ」
「……ええ!?あたしまだこの部屋ほとんど見てないよ?
せっかくのスイートルームなのに〜」
しかも立ち上がろうとしたら、ちょっと足腰ががくがくした。
昨夜はロマンチックにエッチに最高に盛り上がったのに、今朝はもう最悪。
わたわたとパレードの準備本部に駆け込む。
「主役がこなかったらどうしようかと思いましたよ〜」
スタッフの女の子達がぼやいた。
「すいません…」
遅刻せずにすんだけど、とりあえずラグナスが謝る。
すると女の子の一人が彼をじっと見てきた。
「……昨日から気になってたんですけど、彼氏さん、前に会ったことありません?
でもこの町の人じゃないですよね?この町によく来てる人ですか?」
「いえ、この町は前に1、2回だけ……」
「あれ、あんた知らないの?この人勇者のラグナスさんよ」
「え!勇者さまなの!?」
「前この町で魔物やっつけてくれて、お礼に何回か前の花祭りに招待したのよ」
「うそー!あの勇者さま!?」
女の子達がラグナスについてきゃーきゃー騒ぎ出した。
(ラグナス、そんなことがあったんだ……やっぱり勇者なんだなあ)
「え!じゃあじゃあ、勇者さまの恋人が今回の美姫になったってこと!?」
「すごーい!かっこいー!絵に描いたような美男美女ですかー!?」
女の子達の騒ぎはさらに続いた。
ラグナスとドラコはちょっと呆気に取られる。
「そうだ!それならさ!勇者さまにもパレードに出てもらおうよ!」
「……そうね。いいかも。……どうですかラグナスさん?」
「え、いやその」
「お願いしますー!」
「……ちょっと、あんた達なにやってんの。さっさと準備しなさい」
「あ、はーい。じゃあ、ドラコさん、こっちで準備しましょう!」
「え…はぁ……」
「ラグナスさんはこっちへ!」
「あの」
「ねえ、どんな衣装着てもらおうかー?」
怒涛のようだった。
結局ラグナスもパレードに出ることになってしまった。
お姫さまに仕える騎士みたいなイメージ、なんて白い礼装を着せられて。
「まあ、いいか……」
「うふふ、ラグナス、かっこいいわよ」
「……君こそ、よく似合ってるよ」
プリンセスドレスを着せられたドラコは、照れくさくてうれしくてはにかんだ。
たくさんの花々で飾られた町のメインストリートをパレードがゆっくり進む。
マーチングバンドに花のパレード隊。両脇には大勢の観光者。
その全ての中心の馬車に、ドラコが乗っていた。
傍らのラグナスといっしょに。
わあああああああ…………!!
すごい盛大な歓声に、舞い踊るさまざまな花吹雪。
ドラコはまたまたまた夢みたいな気分になった。
「なんだかさ……」
ラグナスが呟いた。
「結婚式してるみたいだね」
「……ラグナス」
実はドラコもそう思っていた。
スイートルームに泊まったり、純白のドレスを着たり、大勢から祝福されたり。
「俺達がほんとに式をあげるときは、こんなに盛大なのはとても無理だろうなあ」
「うふふ。そうね」
二人で苦笑する。
「じゃあ、”盛大な結婚式”の気分は、今これで味わっておこうよ」
「うん!」
(それで、ほんとの結婚式は慎ましやかに、静かに挙げるの)
ドラコは静かな式と盛大な式と、どっちにもひそかに憧れてた。
実際はどっちかでするしかないわけなんだけど、これで憧れが叶ったような気がした。
今日のパレードは盛大バージョンの花嫁にこっそりなりきっちゃおう!
「おねえさーん!」
街頭から一人の少女の声がふいに飛び込んできた。
見ると、昨日、花を配ってくれた小さな女の子が、精一杯手を振っていた。
「優勝おめでとー!おねーさーん!」
ドラコは彼女に気づくと、周囲のスタッフになんとか頼んで、
彼女を馬車のそばまで呼び寄せてもらった。
馬車の脇に連れて来られた女の子は、嬉しそうに言ってきた。
「あたしの言うとおりだったでしょ!おねえさん絶対優勝するって!」
「ええ!ありがとう、これ、お礼!」
ドラコは馬車の上から手に持っていた豪華なブーケを彼女に投げた。
「わーあ!」
たくさんのリボンをはためかせたブーケを無事彼女が受け取って、
喜んでくれたのを確認すると、ドラコも嬉しくなって微笑んだ。
おわり。