ハーピーはなによりも歌が好きだった。
でも、自分がいわゆる音痴であることに気づき始めていた。
「うまくなりたいな…」
今日もひとり森の奥深くで練習するハーピー。
その姿はまるで森に舞い降りた天使。
その歌声はまるで悪魔のおたけび。
「うまくなりたいなあ…」
ある日ハーピーは森に向かう途中、ラグナスに会った。
「よう、ハーピー」
「あ〜、ラグナスさん、こんにちは〜。
今日はどちらへ?」
「なんかサリコの町に魔物がでたらしいんだよ。
まあ2週間くらいで帰ってこれるかな。」
「そうですか〜。気をつけて下さいね」
「ありがと。ハーピーはどこにいくの?」
「私は…森に…」
「森?何しに?」
(どうしよう…音痴なのにわざわざ歌いにいくなんて笑われちゃう…)
「えっと…あっ!」
突然強い風が吹き、ハーピーの手の中の楽譜を空にまいあげた。
「おっと。」
瞬間、ラグナスがキャッチ。
「あ…ありがとうございます…」
「楽譜?」
「は…はい〜…」
(うわ〜うわ〜見られちゃったよ〜!)
うつむいて赤面するハーピーをよそにラグナスは楽譜を見つめる。
「『ジュ・トゥ・ヴ』か…俺この曲好き」
その言葉にハーピーが顔をあげると…ラグナスはよくとおる声で歌い始めた。
軽快な3拍子にラグナスのさわやかで甘い声。
思わずハーピーは聞き入ってしまった。