「ただいま。」と言っても今は誰もいない。
両親は共働き、弟もいるけど、いつも友達の家に遅くまでいる。
クツを脱いで立ち上がると、下駄箱の上にある一通の往復ハガキが目に飛び込んだ。
あたしあてだった。
『はじめての・・・』
魔導学校を卒業後、待ち続けたが、時間が経ちすぎてすっかり忘れていた同窓会。
その案内がついさっき、来たのだ。
足早にリビングへ行き、ボールペンを取った。
予定を確認する。当日の予定はない。
「御欠席」と、「御出席」の「御」を消し、名前と住所を書いた。
「あと2ヶ月かあ。早く会いたいな。」
母が帰ってきた。
母が夕ごはんの支度をしている間に、ハガキを出してきた。
帰り道、親子連れとすれ違った。
「みんな結婚したのかなぁ。」
不安と期待が入り混じった気持ちになった。だってあたしは独身だから。
「でもアコール先生もあの年でまだ独身だったし、あたしだって・・・。」
うやむやな気分のまま家に着いた。
眠るときも、そのことが頭から離れず、なかなか寝付けなかった。
そして2ヶ月が経ち、同窓会当日の早朝。
会場は聞いたこともないホテルだったけど、地図でしっかり場所と行き方も調べておいた。
駅へ行くと、ラッシュほどではないけど、人がたくさんいて驚いた。
でも、この駅は繁華街の近くなので、終電に乗り遅れた人がほとんどに思えた。
そんな初体験を後に、今日一番の電車に乗った。
乗り換えも難なくこなし、ホテルの最寄り駅に到着。
4時間も前に着いた。